ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】失投

2007年10月20日 21時34分26秒 | 読書記録2007
失投, ロバート・B・パーカー (訳)菊池光, ハヤカワ・ミステリ文庫 HM110-1, 1985年
(Mortal Stakes by Robert B. Parker 1975)

・私立探偵スペンサーシリーズの第三作目。謎解き中心のミステリー物を期待して読みましたが、解説にもあるように主人公のスペンサーが活躍するヒーロー物という雰囲気でした。"いかにも" なアメリカンジョークをとばしていたかと思うと、その一方で哲学的な香りがする議論を闘わせたりもする、その饒舌さが印象に残ります。
・紹介文「スペンサーは、我が耳を疑った。レッド・ソックスのエース、マーティ・ラブが八百長試合を? 野球賭博には大金がからむ。あり得ない話ではない……球団の極秘の依頼で調査を開始したスペンサーはラブの妻リンダに疑いをもつ。彼女の秘められた過去が事件の鍵なのか? やがて冷酷な犯罪組織がスペンサーを襲うが……現代の騎士、私立探偵スペンサーが、大リーグの黒い霧に挑む! 人気沸騰のシリーズ会心作、待望の新訳」カバー
・「シンフォニィ・ホールからわずかに下ったハンティングトン街の古風な煉瓦造りのマクドナルドでチーズバーガー二つとチョコレイト・シェイクを取った。」p.42 いくら好きだからって、同じハンバーガーを二つ注文するという行為に度肝を抜かれました。アメリカでは普通なのでしょうか。私(日本人?)には無い発想。
・「「この中に、二組の指紋のついた写真が一枚入っている。一組は俺の指紋だ。もう一組の指紋の主を知りたい。FBIに照会してくれないか?」  「なぜ?」  「俺は結婚する事になっていて、花嫁候補の信用状態を調べたいんだ、信用するか?」  「しない」」p.65
・「私はフィルムが本物であるという前提に立って全てを考えているので、確認しないで事を進める訳にはいかない。」p.133
・「スペアリブが出来上がって、パンが熱くなった。薄切りのズッキーニをビールの練粉にさっと入れて、少量のオリーヴ油で揚げた。一人で食事をするのは、何もこれが初めてではない。今日は楽しくないのは、なぜだろう?」p.212
・「しかし、俺には、いかに行動するか、という事しかない。俺に当てはまるシステムはそれしかないんだ。俺がどのような人間であるにせよ、部分的には、自分がやるべきでないと思う事はやらない、という事が基盤になっている。あるいは、やりたくない事をやらない。」p.267
・「とにかく、俺は、自分の死というものをかすかに味わった。誰でもたまにそういう事があるのだと思う。それが自信喪失という事になるのかどうか、俺には判らない。事によると、人間であるがために避けられない事かもしれない」p.268
・以下、解説(北上次郎)より「スペンサーにとって大切なのは事件の解決ではなく、ましてや依頼者の幸福でもなく、現実と対しながら自己の名誉をどこまで保ち続けられるかということである。そのためであるなら暴力をふるうことに何のためらいもない。現代の騎士物語として、この暴力、肉体の強調はいささか特異だ。」p.272
・「ロバート・B・パーカーはあるインタビューに次のように答えている。  「どちらかというと、冒険小説と呼んでほしい。スペンサーは探偵だが、シャーロック・ホームズとか、エラリイ・クイーンみたいな探偵じゃない。複雑な謎を解かないんだからな。チャンドラーがかつて "隠れた事実を探る一人の男の物語" と言ったことがある。同感だね。男、心情、名誉の行動についての本なんだ。西部小説と同じ伝統だ」(木村次郎『尋問・自供』早川書房)」p.273
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする