ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】博士の愛した数式

2006年11月14日 20時09分33秒 | 読書記録2006
博士の愛した数式, 小川洋子, 新潮文庫 お-45-3(7807), 2005年
・いまどきの流行りの本の中では数少ない、ソソられる本のうちの一冊でした。ブックオフの105円コーナー専門のため、手にとるのはずっと先のことだろうと思っていたら、なんと105円で発見!即購入。
・淡々として静かな展開。結果、『ちょっと物足りない』印象。そんなに大騒ぎするほどの小説だろうか?? 評価がイマイチな理由として、『数学の雑学にやたらと詳しい数学者』の設定に違和感を覚えるのが一つ。例えるなら『ゲームのルールは完璧に頭に入っている野球選手』とか『楽器の歴史や構造にやたらと詳しいバイオリニスト』だとか。その本業にとって本質的に必要ではない能力について強調されている点がひっかかる。暗記科目の代表格的なイメージのある法律よりも、数学の方が必要とされる暗記量が桁違いに多い、というのをどこかで読んだ事がありますが、それにしても、『こんな"数学者"ホントにいるの??』という疑わしい思いは拭いきれません。 文章で数学の凄さを表現する。そんな難題をどうにかスリ抜けるための苦肉の策だったという気もしますが。
・「[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた――記憶力を失った博士にとって、私は常に"新しい"家政婦。博士は"初対面"の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子(√(ルート))が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。」カバー紹介文
・「しかし、博士は教えるだけの人ではなかった。自分が知らない事柄に対しては謙虚であり、マイナス1の平方根に負けないくらい思慮深かった。」p.8
・「「5761455だって? 素晴らしいじゃないか。1億までの間に存在する素数の個数に等しいとは」」p.14
・「「僕は今考えているんだ。考えているのを邪魔されるのは、首を絞められるより苦しいんだ。数字と愛を交わしているところにずかずか踏み込んでくるなんて、トイレを覗くより失礼じゃないか、君」」p.21
・「「直感は大事だ。カワセミが一瞬光る背びれに反応して、川面へ急降下するように、直感で数字をつかむんだ」」p.30 数学者としては「直観」の字を好みそうですが・・・なんとなく。
・「見てご覧、この素晴らしい一続きの数字の連なりを。220の約数の和は284。284の約数の和は220。友愛数だ。滅多に存在しない組合せだよ。フェルマーだってデカルトだって、一組ずつしか見つけられなかった。神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字なんだ。美しいと思わないかい?」p.32
・「「問題を作った人には、答えが分かっている。必ず答えがあると保証された問題を解くのは、そこに見えている頂上へ向かって、ガイド付きの登山道をハイキングするようなものだよ。数学の真理は、道なき道の果てに、誰にも知られずそっと潜んでいる。しかもその場所は頂上とは限らない。切り立った崖の岩間かもしれないし、谷底かもしれない」」p.55
・「「問題にはリズムがあるからね。音楽と同じだよ。口に出してそのリズムに乗っかれば、問題の全体を眺めることができるし、落とし穴が隠れていそうな怪しい場所の見当も、つくようになる」」p.56
・「「そう、まさに発見だ。発明じゃない。自分が生まれるずっと以前から、誰にも気づかれずそこに存在している定理を、掘り起こすんだ。神の手帳にだけ記されている真理を、一行ずつ、書き写してゆくようなものだ。その手帳がどこにあって、いつ開かれているのか、誰にもわからない」」p.68
・「当然、完全数以外は、約数の和がそれ自身より大きくなるか、小さくなるかだ。大きいのが過剰数、小さいのが不足数。実に明快な命名だと思わないかい?」p.70
・「『神は存在する。なぜなら数学が無矛盾だから。そして悪魔も存在する。なぜならそれを証明することはできないから』」p.156
・「「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目には見えないのだ。数学はその姿を解明し、表現することができる。なにものもそれを邪魔できない」」p.180
・「「0を発見した人間は、偉大だと思わないかね」 「0は昔っからあるんじゃないんですか」(中略)「で、誰なんですか? 発見した方は」 「名もないインドの数学者だよ。(中略)無を数字で表現したんだ。非存在を存在させた。素晴らしいじゃないか」」p.218
・「1993年6月24日の新聞に、イギリス生まれのプリンストン大学教授、アンドリュー・ワイルズによって、フェルマーの最終定理が証明されたという記事が載った。」p.270
・解説(藤原正彦)より「小川さんはこの作品で、数学と文学を結婚させた。」p.291

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3 コメント

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なるほどですねー (やこ)
2006-11-15 23:29:56

私も「オビ」にそそられて大分前に読みました。
私が読んで里子に出した本がぴかりんさんの手元に行った本かもしれません。

…なんてね!

確かに嫌いではないけれども、ぴかりんさんと同様、大騒ぎにならなかったもう1人、かもです。
返信する
> 里子に出した (ぴかりん)
2006-11-16 19:57:27
昔の小・中学校の図書室の本についてた『貸し出しカード』を連想しました。○年○組の誰それが借りたという記録。今でも母校に行くと私の名前が残ってるんでしょうかね・・・
いろいろ古本を買っていると、書き込みがあったり、ハンコが押してあったり、前の持ち主を想像するのも楽しいです。
返信する
自然数の本性  (三文字(i e π)寄れば文殊のヒフミヨ)
2024-08-24 21:30:49
≪…神は存在する。なぜなら数学が無矛盾だから。そして悪魔も存在する。なぜならそれを証明することはできないから』…≫について、昭和歌謡の本歌取りと絵本の力で・・・

 「愛のさざなみ」の本歌取り

  [ i のさざなみ ]

この世にヒフミヨが本当にいるなら
〇に抱かれて△は点になる
ああ〇に△がただ一つ
ひとしくひとしくくちずけしてね
くり返すくり返すさざ波のように

〇が△をきらいになったら
静かに静かに点になってほしい
ああ〇に△がただ一つ
別れを思うと曲線ができる
くり返すくり返すさざ波のように

どのように点が離れていても
点のふるさとは〇 一つなの
ああ〇に△がただ一つ
いつでもいつでもヒフミヨしてね 
くり返すくり返すさざ波のように
さざ波のように

[ヒフミヨ体上の離散関数の束は、[1](連接)である。]
            (複素多様体上の正則函数の層は、連接である。)

数学の基となる自然数(数の言葉ヒフミヨ(1234))を大和言葉の【ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と】の平面・2次元からの送りモノとして眺めると、[岡潔の連接定理]の風景が、多くの歌手がカバーしている「愛のさざなみ」に隠されていてそっと岡潔数学体験館で、謳いタイ・・・


 もろはのつるぎ 
    (有田川町ウエブライブラリー)
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