ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】文学入門

2007年05月31日 20時10分24秒 | 読書記録2007
文学入門, 桑原武夫, 岩波新書 (青版)34(E1), 1950年
・あまりにシンプル、かつ強烈なインパクトを与え、ツッコミどころの多い書名に惹かれ思わず手にとってしまった書。内容はなんのことはない、小説(世界的名著)の読書のススメ。しかし恐ろしく密度の濃い本です。180ページ程と薄めだったので気軽に読み出したところ、読むのになかなか骨が折れました。
・最終章『アンナ・カレーニナ』読書会の模様にて、そこで交わされるあまりに高尚な会話に目が回る。こんな読書会、無理無理。
・「文学は人生に必要か、などということは問題にならない。もしこのような面白い作品が人生に必要でないとしてら、その人生とは、一たいどういう人生だろう! この傑作を読んだことのある人なら、おそらく私とともに、そういいたくなるだろう。そして文学の傑作は、『アンナ・カレーニナ』だけではないのだ。」p.2
・「人々は何のために文学を読むのか? 修養、教養、美意識の向上、趣味の向上、等々のため、と答える人もあろうが、そしてそれは偽りではなく、文学はそうした役目をはたしはするが、大多数の人々は、文学が面白いからこそ、強制もされないのに進んで読むのである。」p.6
・「なお文学は、大都会以外に生活する人々にとっては、唯一の真正の芸術品だという事情を知っておく必要がある。地方では、展覧会、演劇、舞踊、音楽会等はほとんどなく、あっても調子をおろしたものである。レコード、ラジオ、美術品の複製などはあるが、要するにもとのままではなく間接的である。文学作品のみが、地方でも都会と全く同じ形で、本ものに接しうる。」p.8
・「それは文学は面白いという点において、囲碁、将棋、茶番などと似てはいるが、文学の面白さは人生そのものに緊密に結びついているからである。」p.9
・「たとえというものは必然的に一面的であって、たとえで議論をすすめることはつねに危険である。たとえをすてよう。」p.10
・「要するに、読者は面白さを求めるが、作者は読者を面白がらせようとしてはならないのである。これは矛盾のようだが、真の文学者とは、そうした矛盾を背負わされた人間なのであり、文学者が悲劇的といわれる理由の一つもそこにある。」p.11
・「よき行動とよき人生を生み出すためには、さらに人生にインタレストをもち、感動しうる心と、つねに新しい経験を作り出す構想力とが必要である。ところが人はこの二者の重要性を忘れ、その正しい養成をややともすれば怠りがちである。しかもその二つのものなくしては、明日のよき生活の建設は決してありえないのである。」p.24
・「文学以上に人生に必要なものはないといえる。」p.26
・「ここで私は、まず、トルストイが『芸術とはなにか』(河野与一訳・岩波文庫)の中で、芸術品に不可欠の資格として要求した三つのもの――新しさ・誠実さ・明快さ――を借用することにする。」p.28
・「報告だが、真にすぐれた文学は題材の新しさのほかに、発見をもっている。つまり、その作品が現れるまでは何人にも、その作品によって示されたものの存在、むしろ価値が全く気づかれずにいたのが、一たびその作品に接した後では、いままでそれに気づかなかったことがむしろ不思議とさえ感じられる、そうした気持を読者に抱かしめるものをもっている。」p.35
・「トルストイは、万人に理解できぬような芸術作品は無価値であるといった。この大胆な提言は二十世紀美学における最も重大な問題を差出したものといえる。」p.41
・「日本は三百年の鎖国と停滞とのために、民族がいわば一家族のようになった面がある。わずか十七字で無理な省略法を行なう俳句のようなものが文学となりえたのは、その「共通なもの」の過度の存在のためであろう。」p.43
・「すべて発見者の仕事には一種の難解さがある。これを在来の文学観から明快さを欠くといって、否定することは、新しさを求める文学の本質と矛盾することとなるだろう。」p.47
・「これを要約すれば、すぐれた文学とは、われわれを感動させ、その感動を経験したあとでは、われわれが自分を何か変革されたものとして感ぜすにはおられないような文学作品だ、といってよい。」p.60
・「すぐれた文学と通俗文学との差異はどこにあるか? もちろん両者の中間にある文学もあるが、両極において、その差異を考えてみれば、一言でいって、前者が人生において一つの新しい経験を形成にしているのに対して、後者は新しい経験を形成していない、ということである。」p.63
・「文学者の偉大さとは、彼がその胸の中にいかに多くの人間を生かしうるかによって定まるといえる。日本の純文学者も自己の孤独の誠実の道をたどってはいる。ただ不幸にして彼らの胸の中には彼一人しかいないのだ。」p.64
・「すぐれた文学は生産的、変革的、現実的、といえる。」p.65
・「以上のことを山登りにたとえてみれば、すぐれた文学は初登攀であり、通俗文学はハイキングである。(日本独特の私小説は、自分の家の庭ばかり見ている人といえるだろう。)」p.67
・「不利な状況においても抵抗をこころみるもののみが、批評家の名に価する。」p.91
・「作品を売りつつ、しかも商業主義に対する抵抗を放棄しないという、この矛盾を切りぬけるもののみが真の文学者である。」p.93
・「日本のみならず、一般に東洋の文学には、社会からの逃避の傾向がつよい。中国では隠逸、日本では世捨人である。」p.98
・「要するに、詩の鑑賞は予備的教養ないし訓練を必要とする。」p.108
・「私は、まず散文から入って、次第に詩・戯曲に及ぶのが、近代文学への大道だと信じる。」p.110
・「物語は、日常生活をはなれた何か異常な出来事を物語るものであって、そこでは事件にあやつられる人物よりも、事件そのものに興味の中心がおかれる。小説は、日常の世界を描くものであり、たとえ異常な事件があっても、それは日常生活と同じ原理をもって解しうるものとして現れている。そこでは事件そのものよりも、作中人物に重点がかかり、全体は特異な個性による世界発見という形をとる。」p.111
・「日本では各人が、それぞれ「独自性」を発揮して読書の選択をしている。だから、ものを書くときでも、議論するときでも、こちらの読んでいるものはあちらが知らず、あちらの読んでいるものはこちらが知らず、共通の地盤がない。」p.116
・「日本でも、各部門ごとにこうした必読書のリストを作成することが、新制大学の教養課程においてなさるべき、第一の仕事と思われる。」p.118
・「大きな長もちのする独自性を養おうとするものは、まずその基盤として、共通なものを身につけることが、大切であろう。」p.119
・「国民の文化教養における「共通なもの」の必要はいうまでもない。そして、普遍を通過せぬ独自性というものはありえない。その意味で、読書の基準化ということは、今の日本に最も大切なことと考え、その試みの一つとして「世界近代小説五十選」をつくってみた。」p.129
・「使う材料は、トルストイの『アンナ・カレーニナ』、中村融さんの訳です。この小説は、ドストイェフスキイも、芸術として完全だ、ヨーロッパ文学中これに匹敵しうるものは何もない、とまでいっていますし、また、この間お目にかかった志賀直哉さんも、近代小説の教科書といっていい、ともらされておりますし、これを選んだことは、お認め願えるかと思います。」p.132
・「リアリズムというのは、ものを目に見えるように描写するというより、むしろ、ものを見たかのように意識させる方法といえましょう。」p.134
・「はじめから理屈ばかりを考えるのなら、小説を読む楽しみはどこにもない。小説はまずすなおに、つぎつぎと現われてくる場面を一々感覚と理知とで、つまり生きた私たちの身体全体でうけとめる、そういうものです。」p.140
・「偉大な作品は、それを読んだあとではどんな偉い批評家の説をよんでも、きっとそれに満足させないだけのものをもっているのです。」p.171

世界近代小説五十選
イタリー
1 ボッカチオ『デカメロン』
スペイン
2 セルバンテス『ドン・キホーテ』
イギリス
3 デフォオ『ロビンソン漂流記』★
4 スウィフト『ガリヴァー旅行記』★
5 フィールディング『トム・ジョウンズ』
6 ジェーン・オースティン『高慢と偏見』
7 スコット『アイヴァンホー』
8 エミリ・ブロンデ『嵐が丘』★
9 ディケンズ『デイヴィド・コパフィールド』
10 スティーブンスン『宝島』★
11 トマス・ハーディ『テス』
12 サマセット・モーム『人間の絆』
フランス
13 ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』
14 プレヴオ『マノン・レスコー』
15 ルソー『告白』
16 スタンダール『赤と黒』
17 パルザック『従妹ベット』
18 フロベール『ボヴァリー夫人』
19 ユゴー『レ・ミゼラブル』
20 モーパッサン『女の一生』
21 ゾラ『ジェルミナール』
22 ロラン『ジャン・クリストフ』
23 マルタン・デュ・ガール『チボー家の人々』★
24 ジイド『贋金つくり』
25 マルロオ『人間の条件』
ドイツ
26 ゲーテ『若きウェルテルの悩み』★
27 ノヴァーリス『青い花』
28 ホフマン『黄金宝壺』
29 ケラー『緑のハインリヒ』
30 ニーチェ『ツアラトストラかく語りき』
31 リルケ『マルテの手記』
32 トオマス・マン『魔の山』
スカンヂナヴィア
33 ヤコブセン『死と愛』(ニイルス・リイネ)
34 ビョルンソン『アルネ』
ロシア
35 プーシキン『大尉の娘』
36 レールモントフ『現代の英雄』
37 ゴーゴリ『死せる魂』
38 ツルゲーネフ『父と子』
39 ドストエーフスキイ『罪と罰』★
40 トルストイ『アンナ・カレーニナ』
41 ゴーリキー『母』
42 ショーロホフ『静かなドン』
アメリカ
43 ポオ短編小説『黒猫』『モルグ街の殺人事件・盗まれた手紙他』
44 ホーソン『緋文字』
45 メルヴィル『白鯨』
46 マーク・トウェーン『ハックルベリィフィンの冒険』
47 ミッチェル『風と共に去りぬ』★
48 ヘミングウェイ『武器よさらば』
49 ジョン・スタインベック『怒りのぶどう』
中国
50 魯迅『阿Q正伝・狂人日記他』


・多少長くなりましたが、本書は現在絶版であること、またその価値があるものと考え『世界近代小説五十選』も書き抜きました。私が読んだ本には★印。たったの8冊。。。とてもじゃないが『本好き』とは口が裂けても言えないお粗末さ。気長に50タイトル完読!目指したいと思います。
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ゴミの山は宝の山??

2007年05月30日 23時02分50秒 | 日記2005-10
 写真は、粗大ゴミ収集日直前のゴミ捨て場。パソコン、モニタ、プリンタ、冷蔵庫、机、椅子、ロッカーなどなど。いったいどこにこんなにあったの!? というほど出てきます。特に今回は建物の改修工事が入る関係で量が多い! ほどなく、どこからともなくドライバーを手にした学生さんがポツポツと現れ、パソコンを解体しパーツを物色。以前なら、パソコンを棄てるときは、ハードディスク、メモリ、各種ドライブ、各種カード、果てはジャンパピンに至るまで引っこ抜いて保管または再利用し、棄ててあったらあったで必ずパーツをチェックしたものですが、最近はサッパリそこまでしなくなってしまいました。結局、今回はカラーボックスを二つゲットしたのみ。
 まだまだ使えそうなものがたくさんあり、もったいない気がするのですが……どうにもならないですね……少しでも拾われて再利用されることを望みます。パーツ漁りは雨が降るまでが勝負。
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【論】Smyth,2003,Normalization of cDNA Microarray ~

2007年05月30日 19時14分41秒 | 論文記録
Gordon K. Smyth and Terry Speed
Normalization of cDNA microarray data.
Methods 31, 265-273. (2003)
[PDF][Web Site]

・cDNAマイクロアレイデータの正規化法の紹介。

・正規化とは「Normalization means to adjust microarray data for effects which arise from variation in the technology rather than from biological differences between the RNA samples or between the printed probes.
・「Normalization is usually applied to the log-ratios of expression, which will be written M = log2R - log2G. The log-intensity of each spot will be written A = ( log2R + log2G) / 2, a measure of the overall brightness of the spot.
・「It is convenient to use base-2 logarithms for M and A so that M is units of 2-fold change and A is in units of 2-fold increase in brightness.
・論文の概要「The plan of this article is as follows.
Section 2 describes diagnostic plots to visualize intensity and spatial trends.
Section 3 describes the basic normalization method, print-tip loess normalization, designed to adjust for intensity and spatial trends.
Section 4 describes composite loess normalization in which use is made of control spots known to be not differentially expressed.
Section 5 considers normalization for other trends, in particular, correcting for print-order effects.
Section 6 describes scale normalization between arrays.
Section 7 describes the use of spot quality weights
Section 8 gives detailed commands to implement the normalization techniques using freely available software.
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意外と重労働 ~パソコン教室

2007年05月29日 22時58分56秒 | 日記2005-10
 大学で開催される週一回の公開講座にでています。内容は、インターネット・ワード・エクセル以外のパソコンの使い方も知っておくと、今後の活用の幅も広がりますよ、という趣旨で、ファイル管理・音楽編集・画像編集ほか。受講生16名に対してサポート役が5名。この人員配置でギリギリカバーできる状態。で、例によってまたカメラマンも兼ねなければならず、一眼デジカメ片手に受講生のフォローのため、お花畑のミツバチのごとく花から花へ…… 二時間の授業時間はあっという間ですが、体力的・心理的ダメージはかなりのもので、終わったときはクタクタです。
 残り一回。撮るぞ! ベストショット!!

 今日は洞爺で札響の演奏会(無料)があったのに… よっぽど行こうかとも思いましたが、さすがにそれは… ハゲしい葛藤の末、泣く泣くあきらめました。ま、しょーがない。

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【演】T君&Kさん結婚式

2007年05月28日 22時24分34秒 | 演奏記録
T君&Kさん結婚式
2007.5.27(日)12:00開宴, センティール・ラ・セゾン(札幌), 関係者のみ
演奏 室蘭工業大学管弦楽団有志, パート 1st Violin

モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジーク
・ケーキ入刀 第3楽章
・新婦お色直しのため退場 第2楽章
・余興 第1・4楽章

・工大オケOB&OGである、T君(Tp)とKさん(Vc)の結婚式。記憶が曖昧ですが、私が修士を出た年に入れ替わりで入ってきた世代だったと思います。二人は在学時からお付き合いがはじまり、そしてそのまま卒業し、いつになったら結婚するのかとずっと気になっていましたが、お付き合いがはじまってもうすぐ9年というところで、今回晴れてご成婚の運びと相成りました。メデタシメデタシ。
・演奏メンバーは、1stVn ぴかりん、2ndVn リンダ・いだ、 Va 熊、 Vc まっく。現役団員を中心に構成された5名。
・幾多の紆余曲折の末、曲はアイネクの全楽章(2楽章中間部除く)に決定。これが決まったのが前日だったというのがまた急でした。さらに当日会場で打ち合わせると、余興のみで演奏するつもりだったのが、ケーキ入当時にもBGMをつけるようにとのことで、急遽、楽章をバラしてそれぞれのシチュエーションに振り分けました。
・ケーキ入刀:儀式終了と供に、曲もピッタリ終了。素晴らしいタイミング。
・新婦退場:退場時ドアが閉まるまで演奏、という手筈だったので、そのとおりドアが閉まった時点で曲を止めました。曲がブツッと切れてしまったので、もうちょっと切れのいいところまで弾いておけばよかったと、ちょっと反省。このように状況に応じたタイミングで演奏というのは、オペラやバレエに通じる所があるなぁ、などとも思いました。
・余興:あとは、タイミングを気にせず通常どおり演奏。1楽章は各メンバー何度もやっているだけあって安定感は抜群。4楽章は速くて着いてこれなかったメンバーもいたようです。弾いてるぶんには気にならなかったのだけど、飛ばしすぎ??
・演奏中の私を話題にしつつ、すぐ側のテーブルでなにやら盛り上がっているのが気になって、思わず弾きながら会話。『なに?? どうかしたの??』 後から聞いたところ、演奏中、A君の娘さん(2才)が私をジィィーーっと興味深げに見入っていて、何が彼女を惹きつけているかが話題になったとのこと。議論に出た説は三説。
説A.ぴかりんのバイオリンの音色にウットリ
説B.ぴかりんにウットリ(初恋??)
説C.ぴかりんの後頭部にウットリ(2才児には理解不能)
・『アイネク全楽章をカルテットで演奏』。おそらくはかなりの上級者でも難色を示すであろう、無謀とも思える選曲でしたが、冷や汗かきつつどうにかやり遂げました。これをロクに練習時間も取れない中、工大オケの面子で実現できたというのは感慨深いです。数年前なら考えられなかったこと。しかし、『なぜアイネクだったのか??』は未だ謎。
・参加した工大オケ関係者は20名強。OBが一度にこんなに集まる場は初めてかも。卒業以来など、数年ぶりの再会がゴロゴロ。皆さん社会に出てちょっとずつ大人になっています。そんな中、某OBより一言。
ぴかりんさんて変わりませんよね。自分が入学して以来ずっと変わってないような……
(*´∀`*)フフフ…
・客数約50名[目測]:近親者のみの手頃な規模の式でした。『各自のポラ写真にメッセージ』とか『人前結婚式』とか『新郎がコックになって自ら料理』とか『〆に外で風船飛ばし』とか初めて見るイベントがいろいろ。そういえば私が子供の頃には、必ず『新郎の胴上げ』っていうのがあったような気がするのですが、最近見ませんね……そんなのなかった??
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【本】タイムマシンの作り方 光速突破は難しくない!

2007年05月27日 18時39分57秒 | 読書記録2007
タイムマシンの作り方 光速突破は難しくない!, ニック・ハーバート (訳)小隅黎 高林慧子, 講談社ブルーバックス B-798, 1989年
(FASTER THAN LIGHT by Nick Herbert, 1988)

・題名よりトンデモ本的内容を期待しましたが、いたってマジメな内容でした。超光速(=タイムマシン実現)の可能性を、過去考案された様々な理論を基に考察する。難易度はやや高めで、しばしばついていけなくなる箇所あり。著者オリジナルの理論が無いところが残念。
・今のところ未来から来ている人は見たことないからタイムマシンなど不可能、などと思ったりもしますが、ちゃんとそれをかわす理論もあるようです。タイムマシン完成後の時間は行き来自由だがそれ以前は不可能、とか、宇宙は複数存在し我々がいる宇宙はたまたま未来人が立ち寄っていない宇宙である、とか。
・「時間というものが、三次元の空間につぐ第四の次元であるという考え方は、新しい物理学の基礎となっている。ではなぜ人間は、空間を動くのと同じように、時間の中を行ったり来たりできないのか? 空間では前後左右どちらへでも行けるのに、時間だけは一方通行である。」p.5
・「彼(チャック・イーガー)は自伝『イーガー』の中で回想している。「さんざん心配して音速を突破してみると、あとはまるで舗装された高速道路をつっ走っているようなものだった」」p.14
・「地球上でもっとも速く動いている赤道では、地球の自転がひき起こす遠心力のために、北極や南極にいるときより体重が実際に60~80グラム減る。」p.37
・「物理学は主としてそういうパターン――くいちがう観測結果を総合して誰にとっても同一の体系を形成する方法――をさがす学問である。」p.39
・「タイムトラベルの物理学のために、アインシュタインの相対性理論は、動機(ミンコフスキーの時空には過去が永遠に存在する)と手段(超光速関係および相対論的同時性のずれ)を両方とも提供してくれた。」p.60
・「相対性理論の法則がある以上、どんな手段で加速したとしても、期待はずれのおそい速度しか出せない。(中略)極端な話、ほぼ光の速さで航行するロケットから光線を発射しても、光は光速の二倍ではなく、ただ光速で走るだけだ。ここでは相対性理論は、1+1=1という奇妙な結論を出すわけである。」p.64
・「宇宙船を光速の90パーセントにまで加速するには、少なくとも宇宙船の静止質量にひとしいだけの量のエネルギーが必要になる。フォルクスワーゲンの小型車をこの速さで走らせるためには、ほぼ1トンの物質をエネルギーに変換しなければならない。これは、アメリカ合衆国の年間エネルギー消費量にひとしい。」p.66
・「不思議な偶然の一致だが、地球の重力加速度・1Gと一年間の秒数との積は、だいたい光の速さにひとしい。」p.67
・「もっとも、大陸横断の飛行機旅行くらいでは、手っ取り早い長寿法とはならない。たった一秒寿命を延ばすために、世界一周旅行(東まわり)を2500万回もしなければならないからだ。」p.70
・「星々が天球を一昼夜に一回まわっているように見えても、実際には、星が光よりも早く運動しているわけではない。」p.76
・「角運動量がその質量を越えたために崩壊したような物体を、超極限のカー物体(SEKO=super-extra Kerr object)と呼んでもいいだろう。SEKOは裸のリング状特異点を持つ一個の反重力宇宙で、そこでは、時空全体がひどく悪性の領域になっている。」p.167
・「量子力学を利用して超光速通信をしようという計画は、いわゆる "量子結合(カンタム・コネクション)" に集中している。」p.211
・「つまり、間違いのない記録と、時間を逆行して信号を送れる能力さえあれば、過去へ行ったのと同じことができる。」p.223
・「EPR実験によって、超光速通信の研究は大きく一歩前進した。タキオンを生成するとか、時空をねじって閉じた時間の環をつくるというような異様な計画を立てる必要はない。読者諸君、信号を光より速く送信するためには、光子の偏光を個別に測定する方法を発見すればいいのだ!」p.232
・「今日、物理学の間隙をぬって超光速通信機をさがし求めるのは、19世紀における永久機関の探究と似たところがある。」p.235
・「量子論で最大の未解決問題と言えば、「測定とは何か?」である。波動的な可能性を粒子的な現実に変えることができる "観測" を行うとき、いったい何が起こるのか? この基本的問題については半世紀以上も議論されてきたが、まだ答えが出ていない。」p.249
・「こうしたいくつかの抜け穴にひそむ超光速の可能性に対する、筆者の相対的信頼度を表す指標として、仮に1000万ドルを超光速研究に投資するとしたら、量子結合と一般相対性理論には同じ金額――たぶん400万ドルずつ――を、そして100万ドルを先進波の研究に充てたい。残りの100万ドルはその他全般の、実用的なタイムトラベル機構としてはあまり見込みがなさそうなものにまわすとしよう。」p.250
・「ニュートンの決定論的法則にしたがって特殊相対性理論が描いたひとつづきの宇宙は、過去と未来が永遠に定まり、博物館のように静的で、その全歴史は初めから終わりまで琥珀の中に固められたかのように不動のものである。」p.257
・「簡単に言えば、量子論は、この世界が可能性の集まりであるとし、測定を行うことで、その可能性の一つが現実になるというのだ。」p.259
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明日、結婚式。

2007年05月26日 23時05分18秒 | 日記2005-10
なんて書くと、ビックリドッキリされる方いらっしゃいますかねぇ…
 明日は大学オケ後輩(同士)の結婚式です。一曲弾くハメになってしまいました。(ほぼ)カルテットで、軽~くさらっとアイネク全楽章を……

 重い…重すぎる…

どうなることやら、御臨席の方々には、ご歓談に専念していただくことを祈るのみです。
 本日は夕方から時折激しい雨。明日は晴れますように。

 なんかお腹が空くと思ったら、晩御飯たべるの忘れてた…ボケてるボケてる。

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【論】Sangurdekar,2006,A classification based frame~

2007年05月26日 18時49分58秒 | 論文記録
Dipen P Sangurdekar, Friedrich Srienc and Arkady B Khodursky
A classification based framework for quantitative description of large-scale microarray data
Genome Biology 2006, 7:R32
[PDF][Web Site]

・遺伝子クラス分け法(Entropy reduction)の提案。
・データ:Escherichia coli (大腸菌)、30種以上の環境(薬品投与[濃度変化]・物理刺激[時間変化])
・比較したクラス分け法:k-means clustering, hierarchical clustering, signature algorithm (SA)

・概要「In this study, we propose a novel method based on a condition-specific entropy reduction of functional groups to determine well-defined physiological responses to diverse experimental treatments.

・実験の設定も、識別アルゴリズムもなんだかよくわからず。Shannon entporyを指標に発現量データのエントロピーが小さくなるような組み合わせの遺伝子集団を抽出する?
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ニュースより ~麻疹

2007年05月25日 20時17分28秒 | 日記2005-10
はしかに3人感染 道栄高が休校(05/22 07:12)
 【白老】胆振管内白老町の北海道栄高校(笹本隆悦校長、生徒数三百六十一人)は二十一日、生徒六人がはしかに感染または感染の疑いが強いとして、二十二日から五月末まで十日間休校することを決めた。首都圏ではしかが大流行し、大学や高校などが臨時休校している今春以降、道内の教育機関で、はしかによる休校措置を取るのは同校が初めて。
 (中略)
 また、はしかが流行している室蘭保健所管内では、患者数が十五日現在で六十五人に上り、室蘭市内の室蘭工大では、十四日に学生一人の感染を確認。それ以降、学内での感染者は増えていないため、休講措置はとっていない。ただ、大学側は、はしかへの警戒を強めており、感染した場合や周りに感染した人がいれば、すぐに学生課へ報告するよう掲示板で学生に呼び掛けている。

北海道新聞より
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/27450.html

 なんだか、北海道での流行源は室蘭近辺みたいな話になってますね。。。下手に咳込んだりすると、人が離れていきそう。おちおち咳もできません。知り合いなど周囲でかかったという話はまだ聞きません。しかし、もし工大で広まったとして『十日間休校』なんて話になったら、学生さんたちは喜び勇んで遊びに行くなり実家に帰るなりして、かえって被害は広範囲に広まりそうな気がしないでもないです。
 まだ私、はしかやってないんですよねぇ~…

?はしか・ましん【麻疹・痲疹】 (「はしか(芒)」がのどに立ったような感じであるところからとも、「芒」にふれたように痛がゆいところからともいう)ウイルスによる全身性伝染病。二~五歳の幼児に多く、春秋に流行し、罹患すると終生免疫を得る。潜伏期は一一日間前後。最初発熱、咳(せき)、鼻汁、目やに、上気道炎を示し、口腔粘膜に発疹を生じる。次いで全身的に小さい紅斑が現れ、融合して拡大する。ふつう一〇日ぐらいで全快するが余病を併発することも少なくない。ましん。
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【本】ぼくは勉強ができない

2007年05月24日 20時37分05秒 | 読書記録2007
ぼくは勉強ができない, 山田詠美, 新潮文庫 や-34-6(5648), 1996年
・高校生、時田秀美(男)が主人公の青春小説。9編収録。同著者の作品は、昔『ベットタイムアイズ』を読んだことがあります。話の内容は全然覚えていませんが、「ナンジャコリャ!?」と、よくわからなかったという印象だけが残っています。それと比べて、今作品は素直におもしろいと思いました。全く視点は異なりますが、どこか灰谷健次郎の作品と共通した部分を感じます。
・「どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする。女にもてないという事実の前には、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。」p.17
・「ぼくの祖父が、前に、ぼくに教えてくれたのだ。女に口を割らせたければ、誉めて誉めて誉めまくれ、と。」p.35
・「確かに、空腹時のラーメンの至福は、恋愛のそれより上等だ。」p.39
・「知識や考察というものは、ある大前提のその後に来るものではないのか。つまり、第一位の座を、常に、何か、もっと大きくて強いものに、譲り渡す程に控え目でなくてはならないのだ。」p.43
・「「おじいちゃん、ぼくは苦しいよ」  「そうか、そうか、それは良かったなあ」  お話にならねえや。ぼくは、恋愛に最も役立たないのは肉親であると確信した。」p.64
・「肉体って、即物的なものだもん、恋愛においてはね。解り易いっての? でも、精神状態も、健全だってのは困るのよ。もっと、不純じゃなきゃ。いやらしくないのって、つまんないよ(中略)ね、秀美、もっと、やらしい男になんなよ。まだ子供だから無理かもしれないけどさ。あんた、いい人だけど、あんまり色気ないよ」p.79
・「世の中には生活するためだけになら、必要ないものが沢山あるだろう。いわゆる芸術というジャンルもそのひとつだな。無駄なことだよ。でも、その無駄がなかったら、どれ程つまらないことだろう。そしてね、その無駄は、なんと不健全な精神から生まれることが多いのである」p.83
・「近頃の高校生は、ファミコンのソフトを買うために避妊具の節約をする程、経済観念を発達させているのだ。」p.102
・「病人にとって大切なのは、その病気が取るに足りないものであると悟らせてくれる周囲の無関心かもしれないなあと思ったりもするのだ。」p.117
・「ぼくは、側に寄って、耳許で、「お茶目さん」と囁きたい欲望に駆られた。確か、鉄棒で失敗した主人公に、「わざ」と、やっただろうおまえは、と言葉にならない冷笑を与えた警告者の登場する小説があった筈だ。」p.140
・「自分が非凡であると意識することこそ、平凡な人間のすることではないか。」p.140
・「これなら、どんな男も夢中になるだろうと、ぼくは思った。彼女のすべては、無垢な美しさに満ちている。けれど、この世の中に、本当の無垢など存在するだろうか。人々に無垢だと思われているものは、たいてい、無垢であるための加工をほどこされているのだ。白いシャツは、白い色を塗られているから白いのだ。澄んだ水は、消毒されているから飲むことが出来るのだ。純情な少女は、そこに価値があると仕込まれているから純情でいられるのだ。もちろん、目の前の女の子は美しい。そのことに疑いの余地はない。けれど、何かが違うのだ。ぼくの好みではない何かが、彼女の美しさを作っているのだ。」p.149
・「くだんないことで悩んでるのは確かだけど、あなたの悩みの実態は、手を替え品を替え、沢山の小説に書かれているのよ。もちろん、どんな文豪も、射精の瞬間には、そんなこと忘れているでしょうけどね」p.163
・「母親は、教師に救いを求めてこそ、その愛情が教室で還元されるのだ。」p.183
・「気付かないということ。それが子供の純粋さであり、特性であるのだ。」p.187
・「他の子供と自分は違う。この事実に、秀美は、とうに気付いていた。自分の物言いや態度が、他人を苛立たせるのも知っていた。そのことで、彼は、たびたび孤独を味わっていたが、自分には、常に支えてくれる母親と祖父が存在しているという安心感が、それを打ち消していた。」p.193
・「過去は、どんな内容にせよ、笑うことが出来るものよ。母親は、いつも、そう言って、秀美を落ち着かせた。」p.193
・「生きてる人間の血には、味がある。おまけに、あったかい(中略)だからな、死にたくなければ、冷たくって味のない奴になるな。いつも、生きてる血を体の中に流しておけ」p.197
・「悪意を持つのは、その悪意を自覚したからだ。それは、自覚して、失くすことも出来る。けどね、そんなつもりでなくやってしまうのは、鈍感だということだよ。」p.211
・「大人になるとは、進歩することよりも、むしろ進歩させるべきでない領域を知ることだ。」p.243
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