
『地球少女アルジュナ』
■ アニメなんて大人が見るもんじゃない!! ■
「アニメなんて大人が見るもんじゃない!」
そうお思いの方も多いと思います。
確かに普段、私がこのブログで紹介している現在放映されているアニメは、
大人が見るには、いささか幼稚でオタクな作品ばかりです。
だからと言って、それらが文化的に無意味かと言えば、
子供達の気持や、時代の雰囲気を
「大人の文化」よりも端的に表現している作品も多くある事も事実です。
一方、世界に目を向ければ、「日本はアニメの国」という見方が広がっています。
欧米人はアニメは子供の文化という意識は日本よりも強く、
「ジャパニメーション」に憧れを抱くのは、若い世代か、余程の文化通に限られます。
ひと昔前、「禅」に熱中する欧米人が多く居ましたが、
日本人の自分よりも、ビジネス相手の欧米人の方が、
日本文化に造詣が深いなんて経験をされた方も多いのではないでしょうか?
今後は、「ジャパニメーション」に憧れて育った世代が成長して
確実にビジネスシーンにデビューして来るに至り、
「日本のアニメを知っている事」がビジネスで有利に働くような事も起こるのではないでしょうか。
そんなバカナとお思いでしょうが、
空手有段者のプーチンの国のロシアでは「空手熱」が盛り上がっており、
日本人ビジネスマンは、当然空手が出来るものと思われているとか、いないとか・・。
空手が出来る事が、ロシアではビジネスで役立つのです。
もし、あなたが海外の若者と仕事をする時に、
相手が日本の代表的アニメのタイトルを幾つか上げて感想を求めたら
あなたはどうするでしょうか?
「アニメなんて、子供かオタクしか見ないよ」と、
そこで話題を打ち切ってしまうでしょうか・・・。
しかし、それでは相手にとって、「お前はオタクだ」と言っている様で、
とても失礼なのではないでしょうか?
(かなり無理のある設定ではありますが・・・)
■ 大人の鑑賞に堪えるアニメ作品 ■
『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』以来、
アニメなんて、子供と見たジブリやディズニー作品しか見ていない大人は、
現在の日本のアニメの何を見たらいいのか、さっぱり分かりません。
確かに「ワンピース」や「NARUTO」や「キャプテン翼」などは昔から海外で人気ですが、
これは、子供達が見ているので、大人が熱く語っても・・・的な所もあります。
「大人の鑑賞に堪えるアニメ」を幾つか紹介したいと思います。
先ず筆頭に上げられるのは、、
「押井守」の『攻殻機動隊』シリーズや、『パトレイバー』の劇場版でしょう。
これらの作品を見れば、50代の方でも
「あれ、日本のアニメってスゴイじゃないか」と見識を新たにされると思います。
ここら辺の作品は海外でも人気がありますから、
きっと相手とも話しが合うはずです。
さらに海外でも人気のある作品としては
「カウボウイ・ビバップ」という作品も見逃せません。
少し古くなりますが、「AKIRA」などもテッパンでしょう。
■ 『地球少女アルジュナ』という隠し玉 ■
ビジネスには隠し玉が必要です。
「エ、そんな作品があるの?」と相手に興味を持たせ、
そして、相手が見たとしても、決して失望しないアニメは何か?
私ならば『地球少女アルジュナ』をお薦めします。
『マクロス・フロンティア』の「河森正治」と「菅野よう子」のコンビが、
2001年に作った、TVアニメです。
普通の女子高生の有吉 樹奈(ありよし じゅな)は
恋人のバイクに二人乗りして事故に逢い、死亡します。
ところが、彼女は、地球を救う事を条件に、生き返ります。
彼女は「時の化身」として、地球の自然を脅かす存在のラージャと戦うのです。
「時の化身」も「ラージャ」も多分に宗教的抽象概念です。
画面では「魔物」の様に描かれる「ラージャ」ですが、
実際には、不法廃棄物であったり、農薬であったり、
遺伝子組み換え作物であったり、原発であたりします。
「時の化身」として「樹奈」が戦うのは、
地球が抱える環境問題そのものなのです。
人々には、「原発事故」であったり「食中毒」や「伝染病」として認識される自称は、
実は「ラージャ」が引き起こしている・・・これがこの物語の根幹です。
実は、私も先日契約したバンダイチャンネルで見出したばかりなので、
未だ7話までしか見ていませんが、
一話、一話に見ごたえがあり、とても一気に全話見る事など出来ません。
■ 「福島原発事故」を予見したかの様な1話、2話 ■

原発事故シーンの制御室・・・『地球少女アルジュナ』

決死の覚悟でバルブの開放を試みる所長・・・『地球少女アルジュナ』
『地球少女アルジュナ』で驚愕するのは、1話、2話の原発事故です。
まるで、福島原発事故を予見していたかの様な映像が続きます。
「ラージャ」による送電線の事故により冷却系が故障します。
システムトラブルで、バックアップ電源も作動しません。
緊急炉心冷却装置は、配管の破断により作動出来ません。
結局、所長が職員を全員退去させた後、
単身で配管の破断箇所のバルブを調整しに、原子炉内に入ってゆきます。
援護に駆けつけた隊員と所長との会話が
今の私達には、胸に突き刺さります。
隊員 「でも、原子炉はリスクが大きすぎるわ。
それに、建設コストや核廃棄物の保管を含めれば、ほとんど採算が取れない。」
「現に欧米では原発の建設を中止したり廃止したりする国がある。」
所長 「キミに言われなくても分かている!」
「15年、たった15年前に、
バブル弾ける前の、この国が一番豊だと言われた頃の電力消費量に戻すだけで、
原発を一つ残らず無くせるのに・・・・」
隊員 「それとも真夏の2週間、冷房を我慢するか・・、
でも、たったそれだけに事が私達には出来ない・・・。」
所長 「だから、俺たちがせめて安全だけでも守らなければ!」
・・・これこそが、日本のアニメの真髄です。
福島原発事故の11年前も、あたかも未来を予見したかの様な作品が作られる。
原発問題に限らず、環境問題、遺伝子組み換え作物問題など、
現在、社会問題化している様々げ問題に、
10年以上も前に作られた作品が、これ程までに自覚的なのです。
そして、残念な事に、この作品は商業的は失敗しています。
「早過ぎた」名作とも言えますが、
きっと、現在放映されても、この重たいテーマの数々を
アニメを観る様な世代は受け入れる事が出来ないでしょう。
■ 「菅野よう子」のサントラは絶品 ■
何故だかこの作品のサントラCDだけは、私はずい分前から持っています。
近所の西友で「菅野よう子」の作品を探したら、
「ターンAガンダム」と「カウボウイ・ビバップ」と「アルジュナ」があったのです。
この時代の「菅野よう子」の作品は絶品です。
何というか、躊躇が無いというか、
あふれ出るアイデアに突き動かされるような楽曲が目白押しです。
「アルジュナ」のサントラを、私は映像未見のまま、随分と聴いてきましたが、
プログレッシブ・ロックの現在のあるべき姿を示す名作です。
さらに、坂本真綾が歌う「マメシバ」も、今聴くと良い曲です。
(当時はアニソンを嫌いだったので、ボーカルトラックはほとんど聴きませんでしたが)
■ 今でこそ再評価されるべき、隠れた問題作 ■
アニメをエンタテーメントと捉えた場合、
『地球少女アルジュナ』が名作と言えるかどうかは微妙です。
問題の提示がストレートで、登場人物の描写がリアルなので、
作品の世界にのめり込んで鑑賞する事は出来ません。
所謂、「萌え」的な鑑賞とは、対極にある作品です。
その点、押井作品にも通じるものもあります。
尤も、押井作品が支持されるのは「軍隊萌え」という別の「萌え」要素にあるのですが。
ですから、『地球少女アルジュナ』は名作というよりは「問題作」と定義出来ます。
ただ、子供向けと思われがちな「アニメ」というジャンルが、
真正面から社会問題を扱い得るという事を、見事に証明した作品と言えます。
外国人とアニメを語る時、「隠し玉」としてポケットに忍ばせるのには
最適な作品とも言えます。
・・・あ!!でも相手がアメリカ人の場合はご注意を。
ましてや、穀物メジャーの社員の方だったりした、激怒間違い無しです!!