■ 初期の「国民国家」では「資本家の利益」と「国家の利益」は一致していた ■
昨日の記事は多分の「舌足らず」だったので、少し捕捉してみます。
「近代国民国家」が「封建的」な前近代国家を凌駕するには、
それなりの合理的な理由が存在するはずです。
その最大の原因は、産業革命による「生産性の飛躍的増大」と、
「国民が国家を守る」という「愛国心」の高揚です。
「封建性」の時代、領主によって領土に縛られていた人々は、
産業革命による旺盛な労働力需要によって都市に移動してゆきます。
都市は豊富な労働力を得て、飛躍的に生産性を拡大してゆきます。
労働の対価は「貨幣」で支払われるので、
「貨幣経済」も同時に発達して、
銀行によって集められた預金が、資金を必要とする資本家に投資される事で、
経済のスピードも飛躍的に向上します。
「資本家」と「労働者」の間には、「賃金の妥当性」に関する対立が常に発生しますが、
「収益性の向上」は、「賃金の上昇」として、労働者に還元されました。
「植民地時代」は植民地での企業収益が国内経済を拡大しました。
「植民地」は宗主国に原料を提供すると共に、
産業革命で拡大した生産物の消費を支え、
その対価を宗主国に原料の提供という形で支払います。
帝国主義の国々が、植民地の獲得に凌ぎを削る時代に、
「国家」の力とは「植民地を獲得し、そして防衛する力」でした。
ですから、第二次世界大戦前の世界において、
国民の生活の豊かさは、資本家の利益の拡大と比例し、
それらは、「国家の力」によって支えられて来ました。
「国民が国を支える」という「愛国心」は、
国民にとっても、「合理的選択」だったのです。
この流れは、第二次世界大戦後も、グローバル化の時代が始まるまで続きます。
■ 「愛国心」に支えられた「帝国主義支配」 ■
「帝国主義」の時代は「力」が全てを決める時代です。
列強間でも、度重なる戦争が発生し、
本国のみならず、植民地においても、争奪戦が繰り広げられます。
封建時代の戦争は、職業軍人同士が戦うとおう至って小規模の戦争でした。
しかし、「近代国民国家」の戦争は、規模が拡大して行きます。
戦力の基本は兵士ですが、「国民国家」では徴兵制によって
「国民」が「兵士」として徴用されます。
「徴兵制」事態は、封建時代やそれ以前の時代にもありましたが、
「国民が自分達の国家を守る為に、自発的に戦う」戦争は、
やはり、「近代国民国家」の成立後の戦争の形です。
この戦争を支えたのは「愛国心」です。
「愛国心」の強さが、戦争の結果を左右したと言っても過言ではありません。
日清戦争で日本が清国に勝利した理由の一つに、
兵士の士気の高さの違いが指摘されています。
国民国家の意識に目覚めていた日本軍の兵士に対して、
清国軍兵士は、「戦わされている」という意識が強く、
戦況が不利になると、清国兵士達は、戦場を放棄して闘争したと言われています。
日露戦争も同様で、日露戦争と平行してロシアでは社会主義革命が進行していました。
戦場の兵士達は、ツァー(皇帝)を愛する純朴な心は持っていまいしたが、
一方で、農奴性など、前時代的な社会システムに対する不満も鬱積していました。
戦力と物量において圧倒的な優位を誇るロシア軍が
戦争を維持出来なくなったのは、ロシア国内で帝政ロシアが国民に否定された事が原因です。
この様に、「帝国主義」の時代の戦争は、国民の「愛国心」に支えらており、
日本においても「愛国教育」に力が注がれました。
■ 「人」と「資本」が軽々と国境を「越境」する時代の「愛国心」 ■
「国家」と「国民」そして「資本家」の利害の一致が崩れるのは、
「人」や「資本」が軽々と国境を「越境」する時代になってからです。
一般的には「グローバル化」と呼ばれる時代の始まりです。
例えば、資産を米ドルで保有している日本人が居たとします。
彼にとっては、円が力を失い、ドルの価値が円に対して高まる事は喜ばしい事です。
これは企業にも言える事で、
輸出企業の多くが、本来なら国力の衰退を意味する円安を望んでいます。
さらに、企業の国際化が、国家と企業のあり方をも変化させています。
アップルは生産工場を中国に構えています。
アップルの売り上げの向上は、米国内での雇用を生み出しません。(工場労働者に限定)
さらに一部の企業は、タックスフリーの地域に本社を構え、
納税の義務を回避しています。
グローバル化は、人の動きもダイナミックにします。
より高い賃金を求めて、多くの人々が国境を越えています。
日本で働く中国人達は、短期的には自分達の職を失うような日本の衰退を望みません。
同様に、中国に進出した日本企業は、中国社会の混乱を望みません。
■ グローバル化の時代に、突然噴出した「愛国心」の不思議 ■
日本の尖閣国有化に端を発する、今回の日中対立で、
日本国民の多くが「愛国心」を刺激されています。
李 明博大統領の「天皇発言」は、進歩的な知識人と呼ばれる人達をも
「愛国心」に目覚めさせるキッカケとなりました。
日本人は戦後、「愛国心」に後ろめたさを持って過ごして来たのですが、
「愛国心」発揚の大義名分が生まれた途端、多くの国民が「愛国心」の発露に酔っています。
グローバル化の現代では、国家の利益と、国民の利益は必ずしも一致しないのですが、
国民は「愛国心」という言葉に弱いようです。
■ 「愛国心」は「民族意識」では無く、「群れへの帰属意識」 ■
「愛国心」は「民族意識」と絡めて語られる事もあります。
しかし、合成国家であるアメリカ人の「愛国心」は世界屈指です。
むしろ帰属する民族が希薄が故に、アメリカ人は「愛国心」を心の拠り所にしています。
人間は「社会的動物」なので、本能的に「群れへの帰属意識」を持っています。
「家族愛」や「愛社精神」、「郷土愛」などは、
帰属する「群れ」への「忠誠心」の表れとも言えます。
一方、現代の社会において、私達を規定する「群れ」の拘束力は弱まっています。
「家族」や「地域」や、「学校」や「会社」への愛情は薄らいでいます。
個人主義の浸透は、自由を保障すると同時に、
「群れたい」とい人間の根源的欲求の充足の妨げにもなりました。
特に、「ネット」に居場所を求める若者達は、
一見自由に見えて、「帰属意識」の充足をココロの底では求めています。
日中、日韓の間に生じた軋轢は、
「愛国心」という分かり易くて、
それでいて「日常的な煩わしさ」の無い繋がりを提供しました。
ネットに溢れる「反韓・反中」の声は、
私には、「日本人に帰属している」と気付いた若者達の「喜びの雄叫び」の様に聞こえます。
■ 分かり易い「敵」を攻撃する事で、現実の「敵」から目を背ける人々 ■
「他人に対する罵詈雑言や誹謗中傷」は、本来なら恥ずかしい行為です。
ところが、「愛国心」という「免罪符」が、これらの行為を正当化してしまいます。
現在の日本において、若者の未来を抑圧しているのは
「日本政府の政策」であったり、「世代間格差」であったりします。
しかし、日本の若者達は、怒りの矛先を裕福な老人に向けたりはしません。
「老人を敬うもの」という儒教的思想が、深層にまで刷り込まれているからです。
「オレたちが貧しいのは、政府が悪いからだ!!」と概念的には考えても、
では、「どうしたら現状を打開できるか」という発想を持つ知力もありません。
■ 「右傾化」を巧みに操る人達 ■
「愛国心」を政治利用されるという点で、
今の日本人は、自分達が馬鹿にしている中国人や、韓国人と何ら変わりありません。
日本人を非難する韓国人や中国人の姿は、そのまま鏡に映った私達の姿です。
一方で、韓国や中国の「反日」は極めて政治的です。
韓国では李 明博大統領の人気取りや、
低迷する国内経済への不満の捌け口に、反日が利用されています。
中国でも、政権交替の時期を控え、
軍部や共産党幹部への影響力強化の為に反日暴動が利用されていあます。
この構図は日本国内でも全く変わりません。
民主党政権は、政権を維持出来る状態ではありません。
しかし、竹島問題で強硬姿勢を示したり、
尖閣国有化でワザワザ中国の反日感情を刺激する事で、
国民の支持を回復しようとしています。
野田政権への支持率は回復しなくとも
現在進められている「外国人参政権」や「人権保護法案」や「消費税増税」から、
国民の目を逸らす効果は絶大です。
■ アメリカの甘言に乗せられた日本と韓国 ■
今回、先に事を起したのは日本と韓国です。
本来、実効支配している国から、領土問題を荒立てる事は不自然です。
日本や韓国が単独で、アジアの安全保障に重大な影響を与える決断をするとは考えられません。
では、誰が?と考えたら、やはりアメリカが背後に居るのは明確です。
日本に至っては、時期を同じくして第三次アミテージ・ナイ報告書が提出され、
今回の騒動の裏側がバレバレの状態です。
■ 中国で暴動を扇動したのは、習近平副主席? ■
ここに来て、中国の暴動を扇動したのは習近平だとの情報が出始めました。
比較的、日本との関係を平穏にしておきたい胡錦濤に対して、
対日強硬派の姿勢を明確にする事で、軍部や対日強硬派を取り込もうとしたと言うのです。
中国は10月にも胡錦濤主席が退任し、その後任に習近平副主席が就くと目されています。
この二人の対立は、中国の保守派と、上海閥の戦いでもあるのですが、
先日までは、胡錦濤派の優性が噂されていました。
胡錦濤主席は、上海閥の上層部を失脚させるなど、
胡錦濤派の権力維持を確実に進めていました。
ところが、ここで勢力逆転の事件が起きたというのです。
胡錦濤の腹心である、令計画の息子が、フェラーリで事故死するという事件が発覚します。
本人は半裸、同乗者の女性は全裸と言うスキャンダルです。
この事件を胡錦濤派が隠蔽した事をネタに、
上海閥が反撃を開始したと言うのです。
今回の反日暴動やデモでは、毛沢東の肖像画が目に付きました。
ですから、私などはデモの首謀者は、中国の保守勢力である胡錦濤派だと思っていました。
しかし、尖閣事件の発端は、ヘリテージ財団で発表された、
売国奴、石原都知事の尖閣買上げ発言です。
ヘリテージ財団は、ロックフェラー系のシンクタンクですから、
アメリカの軍産複合体や、ジャパンハンドラー達と繋がりが深いと思われます。
さらに、習近平副主席は上海閥に近く、上海閥はロックフェラーの息が掛かっています。
アメリカ本国では、高齢のD・クフェラーの影響力は縮小しています。
しかし、アメリカの利権を二分するロックフェラー派や、
軍産複合体である、兵器産業が軍部が、大人しくししているとは思えません。
特に、中国での利権である上海閥の衰退は、彼らには死活問題です。
そこで、石原都知事を使って尖閣問題を荒立て、
さらにはノーと言えない野だ内閣に、尖閣を国有化させたのでしょう。
当然、中国軍部は強く反発しますので、
それに乗じて、習近平一派と軍の絆を深めさせたと見る事が出来ます。
これなら、アメリカの狙いが、実は中国の内政である事に合理性がもてます。
■ 習近平政権は、反日、反米政権になるのでは? ■
アメリカのクリントン国務長官の論文では、
アメリカは太平洋の国々と協調して、環太平洋地域での繁栄を築くと書かれています。
この動きに呼応するのがTPPです。
TPPには中国は含まれていません。
アメリカの描く、近未来のアジア連合には、中国は含まれないのでしょう。
中国と日本や韓国、東南アジア諸国の間の領土問題を、
ヒラリーは事ある毎に煽り立てて来ました。
一旦はフィリピンから撤退した米軍は、
再び、フィリピンに駐留しています。
海兵隊をオーストラリアに駐屯させるなど、
中国と経済的に繋がりを深めるオーストラリアも牽制しています。
これらの政策の向う先は、「中国封じ込め」以外に考えられません。
■ アメリカ人の新たな「愛国心」の源泉である「反中国」 ■
アメリカ人の「愛国心」の源泉は、「外敵」です。
911以降、米国民は「反イスラム」で結束していました。
しかし、アメリカは中東での影響力を決定的に後退させています。
そして、アメリカが選んだ、近未来のアメリカの姿が環太平洋地域のリーダー。
環太平洋国家群と、アメリカ国内の結束の為には、分かり易い「敵」が必要です。
そこで、アメリカが選んだ、新たな「敵」が中国なのでしょう。
これは、ロックフェラー一派の描くシナリオです。
しかし、欧州からアメリカを支配するロスチャイルドやイギリスが
好んて用いてきた、地域支配の方法でもあります。
中国がアメリカと敵対すれば、中国の市場はヨーロッパに開放されませす。
これは、ロスチャイルドとしては、悪くない選択です。
これは私の完全な妄想ですが、
もしアメリカとドルが次なる金融危機を生き延びたならば、
こんば、アジアの未来もあり得なく無いと思います。
さて、その中で日本に振られて役割とは何か?
「愛国心」を刺激され、踊らされるだけというのも情けない・・・。
だから、「愛国心」について、今一度考えてみたかったのです。