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国家の借金は国民の資産・・・理解出来るけど、納得出来ない事象。

2012-09-06 04:07:00 | 時事/金融危機
 

■ 国家の借金は国民の資産 ■

三橋氏を中心とした積極財政論者達はこう主張します。

「国家の借金は国民の資産」

「財政赤字=悪」という刷り込みを、
マスコミや経済学者にされている私達には、
一見、「トンデ論」の様に思える意見ですか、
彼らの論調は至って論理的で、データ的な裏付もしっかりしています。

1) 不景気の時は国家が借金をして資金供給をしなければデフレは解消しない
2) 国家が負債は、公共投資や福祉という形で国民の所得になる
3) 国民の所得は、消費と貯蓄に使われる
4) 消費は経済成長を促し、貯蓄は日本国債の購入資金となる
5) 一時的に財政バランスは悪化するが、経済成長の税収増で次第に財政は改善する


実に明確な理論です。

1) 日本は世界の国の中で、最も財政拡大が少ない国の一つである
2) 日本の不況は、政府支出が伸びていない事が原因である
3) 民間の資金需要が無いので、銀行は日本国債を買うしか金利を得られない
4) 現実的に、日本国債は財政赤字が拡大しても、金利は下がり続けている
5) 自国通貨建ての国債で、国内消化率が高ければ、海外からの売り浴びせに強い


これも間違っていないと思います。

■ 理解出来るけど、理解出来ない ■

私は日本の財政が破綻するという「妄執」に取り付かれています。

ですから、上の様な意見を見ると、
「そうか、財政を拡大すれば、景気が回復して、日本は破綻から救われるのか!!」
一時的には、安心します。

・・・・しかし、しばらくすると、フツフツと「財政破綻」の不安が沸きあがってきます。

「財政は破綻しない」と頭では理解出来ても、
心の奥底で「理解出来ない」自分が居るようなのです。

これは「破綻願望」と呼ぶ事は簡単ですが、
「何か引っ掛かる」事から目を背けて、後で酷い目にあう経験は良くあります。

はたして、「不安」から目を背ける事は正しいのでしょう?

■ 財政拡大で景気は回復するか ■

「不安」の根本は、一般的な認識に起因します。
「借金はいつかは破綻する」
これは、世間一般の常識です。

借金で身の丈以上の消費をすれば、破綻は確実に訪れます。
民間では当たり前の事象が、政府には適用されないのでしょうか?


積極財政派の方達が提示するデータは、現状のところ、この不安を打ち消しています。
その最大の根拠は、次の一言に集約されます。

「円は日本の国から消えて無くならない」

うーん、確かにその通りだと思います。

現在は民間の資金が、国債購入という形で政府に流れ込んでいます。
景気が回復すれば、この流れは逆転して、民間に資金が流れます。


では、素朴な疑問として、民間の資金が枯渇した場合はどうなるでしょうか?

何にでも「限度」というものが存在します。
民間から政府への資金流入が過度に進めば、
民間の経済は麻痺し、税収が大幅に減少します。
国債の利払いが拡大した状況での税収の縮小は、国家財政を破綻させないのでしょうか?


ここが意見の分かれ目です。
財政積極論者の方はこう主張します。

1) 経済を縮小させない為に、財政を拡大して景気を刺激を優先すべきだ
2) 一時、国債の発行額が増えたとしても、長期国債ならばすぐには税制破綻しない
3) 景気回復による税収の増額によって、次第に財政は危機的状況を脱する
4) 景気回復による自然なインフレ率の上昇によって、財政負担は軽減される


一方で、不確実な景気回復に賭ける事が正しいのかという疑問も生じます。

財政を拡大して、景気が回復しない場合はどうなるのだろう?

1) 確実に訪れる少子高齢化による経済規模の縮小
2) 世界的金融危機による対外資産の喪失と、所得収支の減少
3) 世界経済の減退による対外黒字の大幅縮小

4) 原発停止による火力燃料輸入増大による貿易赤字の拡大
5) 原発停止によるGDP0.9%に当たる燃料コストの増大
6) 原発停止による、電力料金値上げによる企業収益の悪化

7) グローバル化に伴う企業の海外流出による国内景気の後退


悲観的な視点に立てば、財政を拡大しても、中長期的な景気拡大は懐疑的です。

■ 財政拡大による景気回復は地方には当てはまるが、国全体には当てはまらない? ■ 

確かに地方経済は、財政依存度が高く、
財政拡大の影響は、公共事業を通して、土木建設業から速やかに民間に波及します。
これは、地方の財布がほとんど、財政に依存している事の表れです。

一方、経済活動の中心である大都市圏では、
インフラ整備はほぼ終了しているので、大規模な公共事業は望めません。
用地買収コストや、その調整に時間が掛かるので、
公共事業自体が、直ぐには増やせない状況です。

日本の国内の経済価値の多くは大都市圏で作られますが、
徴税と公共事業によって、価値は地方に流出します。

本来生産性の高い都市部での「再投資や再生産」に宛てられるはずの資本が、
生産性の低い地方に流出したらどうなるでしょうか?
都市部の経済成長にブレーキが掛かるのでは無いでしょうか?

こういう考え方を「格差の助長」として非難される方も多いでしょう。

しかし「稼ぎ主」のお父さんのご飯は減らして、
子供にたらふく食べさせたら、きっとお父さんは過労で倒れます。
或いは、家族を捨てて、家を出て行ってしまうかも知れません。
ましてや、お父さんの会社が業績不振で、
お父さんが過剰労働を強いられていたら、
なおさら、お父さんも我慢の限界が訪れます。

確かに地方の経済が活性化すれば、内需が拡大し、
家電や自動車の売り上げが伸びます。
これは、都市部の経済にも短期的には好影響を与えます。

しかし、これは補助金と同様に、
海外で勝負する、家電や自動車業界の国際競争力を低下させます。
エコポイント制度や、エコカー減税の結果、
日本の製造業は延命しましが、そのしわ寄せが今になって顕著になっています。

結局、大企業優遇、都市部優遇というのは、
「投資効率」を最大化にする為には、現実的な選択です。
豊な時代には、その波及効果が地方まで及びましたが、
世界的な競争激化の時代には、都市の現状を維持する事もままなりません。
結局現在は、大企業優遇すらが、国際的な企業体力を削ぐ様な時代なのです。

自民党が主張する「国土強靭化」は、地方経済では機能しますが、
国家全体としてはマイナスに作用すると私には思えます。

■ 日本は破綻しないが、政府は破綻する ■

「円は増えも、減りもしない」のだから、
国の借金がいくら増えても、日本が破綻するはずは無い。


一見、正しく思えますが、

しかし財政支出を拡大して、経済が回復しなければ、
国債負担が拡大しても、税収が増えないという状況を生み出します。


日本は破綻しないが、政府は破綻するのでは無いでしょうか?


こんな賭けがはたして成立するのか?

世界の状況を見るにつけ、
現状、こんな賭けが出来る人は、相当勇気があるのではと思えてしまいます。


はたして、私はチキンなのか、
あるいは、私は「破綻願望」があるのか・・・・。


日本は破綻しないという論理は、
今年とか、来年という期限付きの議論であり、
それも世界経済が現状を維持するという、希望的観測の上でしか成立しないのでは?



日本の財政の将来について、何が「正解」なのか・・・・
少なくとも日銀は理解しているのでしょうか?