■ 異次元緩和でサムライ債の復活 ■
「サムライ債」をご存知でしょうか?
海外の金融機関などが、日本国内で円建てで発行する債権の事です。
1) 日本の金利は海外よりも低い
2) 日本人は金利の高い金融商品を探している
3) 海外の企業や個人は、金利の安い円で資金調達すれば金利を低く抑えられる
4) 将来的に円安になれば、実質金利はさらに低下する
5) 円建てなので、投資する側は為替リスクを取らなく良い
これは、要するに円キャリートレードの債権版だと言えます。
問題は円建てなので、実効金利は為替レートに左右されるというリスクです。
資金彫琢側は、返済時に、円安に振れていれば有利ですが、
逆に円高が進行すれば実効金利は上昇します。
日銀の異次元緩和で低利の資金が潤沢に供給されるので、
海外の金融機関は日本でサムライの発行を加速させている様です。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MO5ETE6S972801.html
「【クレジット市場】JPモルガンがサムライ債再開、異次元緩和の恩恵」(Bloomberg 2013.06.10)
■ サムライ債を踏み倒したアイスランド ■
サムライ債と言えば、リーマンショック直後のアイスランドを連想します。
アイスランドは漁業しか主要産業が無い国でしたが、教育に力を入れ、
IT産業を育成して成長します。同時に、金融改革も行いました。
その結果、経済が急激に拡大し、一方で投資を呼び込む為に国内金利が上昇したので、
アイスランド国民は他国通貨建てで住宅ローンを組む人も現れます。
日本で販売された債権が「サムライ債」です。
しかし、アイスランドは金融と不動産バブルが膨らんだだけだったので、
リーマンショックでバブルは崩壊します。
この時、多くのサムライ債がデフォルトします。
これは「借金踏み倒し」と同じで、アイスランドの経済はその後急回復します。
一方、アイスランドのサムライ債を引き受けていた日本の金融機関や投資家は損を被りました。
「借りた金は出来るだけ返さない」といのが西洋諸国の金銭感覚です。
どんなに利回りが良くても、サムライ債にはリスクは付き物です。
これはサムライ債に限らず、外国株式でも、海外の債券でもリスクは必ず存在します。
■ 海外の債権と株式の投資比率を増やし、日本国債を減らす年金基金 ■
日本株を買い支えるのでは無いかと噂されていた年金の積み立て金ですが、
次の様なニュースをロイターが報じています。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0EL0O920130610
<一部引用開始>
GPIFが見直したのは14年度までの中期計画で定めた資産配分比率だ。資産110兆円の大半を占める国内債券の比率は67%から60%に引き下げ、外国の債券と株式は、それぞれ8%から11%、9%から12%に引き上げた。だが、国内株式は11%から12%にとどめており、その幅は1%ポイントと他の資産に比べて見劣りする。
<引用終わり>
年金の積み立て金の運用の改革は以前より話題になっていました。
日本の年金運用はGPIFが保守的な為、日本国債中心で運用されていましたが、
将来的な年金資金の不足を補う為に、
もっと高利回りな運用をするべきだと主張する人たちが大勢います。
要は、
「ダウが下がったから、日本の年金に買わせよう」
「米国債の売れ行きが良くないから、日本の年金に買わせよう」
「日本株が暴落しそうだから、年金資金で買いさえよう」
「日本株バブルを作りたいから、年金資金に買上げさせよう」
こういう思惑の人が沢山居るのです。
リーマンショックの後も、年金資金が日本株や米国株に投資されたと思いますが、
相場が持ち直せば儲けが出ます。
ですから、年金資金による買い支えは、正当化されて来たとも言えます。
しかし、リーマンショックよりも大きな危機が襲ってきたら・・・・。
米国株が暴落して、損失が膨らめば、年金資金は尻尾を巻いて日本に逃げ帰ります。
当然、米国危機ともなれば、為替も円高に振れるので、為替差損も発生します。
■ オネダリを助長する異次元緩和 ■
結局、異次元緩和は国内の期待インフレ率を多少引き上げましたが、
それでも日本の金利は世界最低水準なので、
日本国内の資金は、金利差につられて国外のズルズルと流出しています。
黒田緩和で本当に景気回復や、良いインフレが発生すれば良いのですが、
「期待に働き掛ける政策」は根拠が希薄なので、期待が弱まれば効力は失われます。
後はだぶ付いた資金が金利を求めて徘徊します。
国内に留まれば、プチバブルを形成しますが、
これが海外で運用されれば国内の景気は刺激できません。
結局異次元緩和は、海外からのオネダリを増大させるだけのものとも言えます。
■ 貿易収支よりも所得収支が大きい日本 ■
日本は貿易立国だと私達は思い込んでいましたが、
日本はいつの間にか、貿易赤字国になっています。
一方、日本の経常黒字が維持出来ているのは、
所得収支の黒字額が貿易収支の赤字を上回っているからです。
日本はいつの間にやら、世界に投資して、その収入で支えられる国になっています。
自分は海外投資などしていないぞ・・・そう思う人も多いはずです。
しかし、銀行も、生命保険も海外投資で金利を稼いでいます。
企業の内部保留も、海外運用されて金利を稼いでいます。
年金資金も、外国株や外国債券に投資されています。
特に円安が進行すると予測される場合は、海外投資の実質金利が上昇します。
こうして、アベノミクスは円安によってリーマンショックで萎縮した海外投資を増加させています。
■ 海外で消失するかもしれない日本の資金 ■
日本の金融機関や生命保険各社はリスクを嫌うので、
海外投資といってもその中身は米国債が多くの比率を占めています。
しかし、個人向けの投資信託などの金融商品は、少しでも利率を上げる為
海外の社債や住宅債権、外国株などに投資されています。
これらの金融商品の多くは元本が保障されていないので、
一度大きな金融危機が発生すれば、リーマンショック直後の様に大きな損失が発生します。
トヨタ自動車の社内保留は海外の投資で運用されていましたが、
リーマンショックでの損失は巨大でした。
この様に、日本の所得収支が巨大になったという事は、
一度巨大な金融危機が発生すると、日本の資金が海外で消失する事を意味します。
小泉政権時代の露骨に推奨された「貯蓄から投資」の裏には
「借りた金は返さない」という海外金融機関の常識が強く働いています。
世界はリーマンショックの損失も正確に計上する事も無く、
2度目の危機の原因を膨らめています。
私達の大切な年金資金や、預金や、生命保険が危機に曝されています。
「金利=リスク」である事は常識ですが、
現在の危機は、金利が低すぎてリスクを正確に判断出来ない事です。
たった、2%、3%の金利に、大きなリスクが潜んでいるのが現在の世界なのです。
■ 秋に発表される「第三の矢」のオマケは投資減税 ■
秋に「投資減税」が発表されるだろうと報道されています。
日本株の株価維持が難しい状況で、キャピタルゲイン減税を打ち出せば、相場が持ち直すだろうという安直な思惑が感じられます。
何とかして日本人の預金を引きずり出して、外資にプレゼトしたくて仕方が無いようです。
安倍さんは、後世に汚名を残さないように、そろそろお腹でも痛くなった方が良いのでは?
汚れ役は小泉Jrにでもやらせればいいものを・・・・
どうやら、安倍政権の役割は、小泉Jrの露払いなのかもしれません。
これ、設備投資減税みたいでした。汗、汗・・・。
<追記>
サムライ債の起債が活発化するという事は、円は再び下落に転じるのでしょう。
日本株も、外資はまだまだ美味しい思いをしていませんので、
再び15000円を回復するかも知れません。
尤も、それはアチラさんの一方的な都合ではあるのですが、
政府と日銀があちらさんの言いなりなので、
日銀と年金資金を使って、株価回復を捏造するでしょう。
当然、外資も誘いを掛けて来ます。
何回か、細かい上下を繰り返しながら少しずつ株価が上層し始めると、
思わず食いつきたくなる人達も出て来そうですが、
以外に、それは老人では無くて、
今回の暴落で味を占めた国内の投資家の様な気もします。
今度は空売りも交えて、もう一儲け・・・・なんて考えていると危ない・・・。