■ 順調に成長するアメリカのGDP ■
上のグラフはアメリカの「名目GDP」の推移です。
リーマンショックの2008年に急落した後に
2009年を底にして順調に回復して来ている事が分かります。
名目GDPは以下の様に定義されます。
「すべての商品・サービスに対し、その年の生産数量に市場価格を掛けて算出した金額を総合計」
名目GDPはインフレ率を考慮していませんから、
単純に金額的に増えた量をです。
2009年 --- 13,973.65 (十億ドル)
2012年 --- 15,684.75 (十億ドル)
15,684.75 - 13,973.65 = 1,711.10(十億ドル)
アメリカでは2009年から2012年の間に
名目GDPが約1.7兆ドル増大しています。
■ マネタリーベースの増加を見てみる ■
上のグラフはアメリカのマネタリーベースの推移ですが、
リーマンショック以降、アメリカはだいたい、2兆ドルのマネタリーべースを拡大しました。
マネタリーベースが2兆円増えて、
名目GDPが1.7兆ドル増えています。
供給された資金は実際には資産市場にプールされているので、
マネタリーベースの増加がそのまま材やサービスの消費に結びついている訳ではありません。
しかし、2008年以前はマネタリーベースは横這いですから、
アメリカの成長は、FRBの資金供給にほぼ支えられていて、
そして、乗数は1を割っているので、極めて実体経済の回復は鈍いとも言えます。
要は、量的緩和でジャブジャブ資金を供給しても
実体経済のエンジンが回せていないのです。
■ 緩和マネーは何処に行ったの? ■
では緩和マネーは何処に行ったのでしょうか。
ロイターの記事がその一旦を覗かせます。
「米国の一部大都市、住宅バブルのリスク=ロバート・シラー氏」
(ロイター 2013.06.28)
<全文引用>
[27日 ロイター] - 米S&P/ケース・シラー住宅価格指数の共同開発者ロバート・シラー氏は26日、米国の一部の大都市で住宅価格が大幅に上昇しており、新たなバブル発生のリスクがあるとの認識を示した。
ラスベガス、ロサンゼルス、サンフランシスコ、マイアミ、フェニックスで、住宅価格が上昇しており、バブル発生のリスクがあるという。域外から大量の投資資金が流入していることが一因。
同氏はロイターに「こうした都市ではバブルのリスクがある。住宅価格が大幅に上昇している。前回のバブルの初めの頃のようだ」と述べた。
こうした都市では、住宅在庫が低水準で、ウォール街の投資家がキャッシュで住宅を購入しており、今後1年間価格が上昇した後、下落に転じる可能性があるという。
S&P/ケース・シラー住宅価格指数によると、4月の主要20都市圏の住宅価格は前年比12.1%上昇と、7年ぶりの高い伸びとなった。
地域別では、サンフランシスコが24%上昇、ラスベガスが22.3%上昇、フェニックスが21.5%上昇、ロサンゼルスが19%上昇、マイアミが13%上昇だった。
<引用終了>
多くのアナリスト達が、ケース・シラーの住宅指標の改善を指して
「アメリカ経済は確実に回復している」などと言います。
ところが、ケース・シラー住宅指数を開発したシラー氏自身が、
大都市の住宅価格はバブルであると警告しています。
要は、潤沢に供給されたFRBのマネーは金融市場のみならず、
住宅市場でもバブルを作り出していたのです。
これは大都市だけでは無く、地方では競売に掛けられた大量の住宅を
金融機関が買い上げて、賃貸物件として貸し出しています。
個人の住宅需要は低調ですが、
金融機関の住宅需要は緩和マネーの運用先として好調なのです。
これも一種の、バブル現象です。
■ FRBの緩和縮小発言の影響が実体経済に出てくるだろう ■
バーナンキは今年後半からQE3を段階的に縮小するかもしれないと発言しました。
この発言に市場は過敏に反応し、世界の市場は大荒れになっています。
しかし、QE3の縮小予測は、緩和マネーの逆転を引き起こしますから、
住宅市場も当然下落し、住宅価格の下落は個人の信用を縮小させるので、
結果的に、消費を縮小します。
■ FRBもバーナンキもQE3の縮小が不可能な事は100も承知している ■
バーナンキもFRBも、そして市場参加者も、
今年後半のQE3の縮小なんて出来ない事は100も承知しています。
しかし、緩和縮小を匂わせなければ、市場は行くところまで行って暴走します。
あまりにも巨大な流動性を抱えてしまった世界の市場は、
先ごろまでは、債券から株式、株式から資源、
あるいは、ドルから円、円からユーロの様に、
その資金を移動させながら利益を拡大してきました。
ところが現在起きている事は、株と債券と現物の同時下落です。
では、お金は何処へ行ったのか・・・。
多分、現金が相当積みあがっているはずです。
その現金が再び市場へ向かうのか、
それとも徐々に資金が引き揚げられて
バブルの崩壊へとつながって行くのか・・・・
どのシナリオも確立的可能性でしかありませんが、
そろそろ金融緩和の副作用が顕著になって来る様です。
ここしばらくは、6月決算の化粧相場で株も持ち直していますが、
7月になったらどうなるか、市場関係者の不安は募ります。