■ 東京から一番近い棚田 ■
棚田と聞くと、能登半島当たりを思い浮かべますが、
実は東京の近くにも棚田があります。
場所は千葉県鴨川市。「大山千枚田」と呼ばれています。
近いと言っても、東京からは100Km以上離れていますが、
外房の鴨川と、内房の保田を結ぶ長狭街道のちょうど中間くらいの場所です。
■ 棚田は生き物がイッパイ ■
私の一押しの鴨川の名名勝地とあらば、これは行くしかない。
梅雨の晴れ間を利用して、自転車でひとっ走り行ってきました。
田植えから1ヶ月くらいでしょうか?
稲もしっかり生育しています。
ウグイスやホトトギスの声が響く山間の田んぼには生き物がイッパイ。
これはホッスモだと思うのですが、水草です。
この他にはタニシの赤ちゃんや、タイコウチが居ました。
あぜ道にも生き物が溢れています。
ハルシオンの蜜を吸っているベニシジミです。
こちらはナガメ(菜亀虫)。
菜の花を食べるカメムシですが、上が成虫。下が幼虫です。
結構キレイなので、思わず手で触ってみたくなりますが、
他のカメムシ同様クサイ臭いを発するのでご注意を。
ハチの様に見えるのはカノコガ。
フタオビドロバチに擬態していると言われています。
実際にはヒラヒラと弱弱しく飛ぶので、チョウだと間違える人も・・。
モンキチョウのランデブー。
後ろの白いのはメスだと思います。メスには白い固体も居ます。
■ 草花も良く見ると不思議 ■
あぜ道の小さな草花も、良く見ると不思議な形をしています。
都会の芝生の中でも良く見かけるネジバナ。
クルクルと花が螺旋状に捩れて咲くので、そのまんま名前になった例。
「まんまやねん!ヒネリなさい!」と突っ込みたくなりますが、既に充分ひねっています。
百人一首に、「・・しのぶもじずり誰ゆえに・・」と歌われるモジズリとはこの花。
とても小さな花ですが、一応ラン科です。
これはノアザミ。
最も普通に見かけるアザミです。
皆さんお馴染みのアカツメグサ。マメ科の植物です。
こちらはシロツメグサ。・・・クローバーの事です。
こちらは巨大なオオバコのトウオオバコ。
花の長さが普通のオオバコの二倍以上あります。
山間の棚田で見る生き物達は、都会で見るよりも、生き生きしています。
親に連れられて来た子供達は、カエルやチョウを見るだけで大喜びです。
子供達自身も都会で見るよりも生き生きしています。
■ 都会の人に守られる棚田 ■
棚田の最上部に「棚田倶楽部」という建物があります。
ちょっとした軽食と飲み物を売っていて、
テラスから棚田を見渡す事が出来ます。
シソジュースを頼むついでに、置いてあったパンフレットを読んでみました。
「棚田倶楽部」というのは、建物の名前であると同時に、
棚田オーナー制度の運営組織でもある様です。
実は大山千枚田は、農家の高齢化で耕作放棄される田が増えていました。
機会が入れられない棚田のコメ作りは手作業に頼らざるを得ないからです。
そこで、棚田の景観を残そうと地元の人達が始めたのが
「棚田オーナー制度」です。
「作業参加交流型」と「農業体験・飯米確保型」があります。
「作業参加交流型」は1区画(100㎡)を年間3万円で借ります。
農家の人に指導されて、手作業のコメ作りを全て自力で行なう様です。
3月 畦塗り
4月 代掻き
5月上旬 田植え
6~7月 草取り
6~9月 畦刈り
9月上旬 稲刈り
9月中旬 脱穀・籾摺り
10月~ 荒越し
上記の作業を自ら行い、収穫は自分で持ち帰ります。
「農業体験・飯米確保型」は1区画(100㎡)を年間4万円で借ります。
田植えと、稲刈りだけに参加して、
60Kgのお米が保障されます。
この「棚田オーナー制度」は「大山千枚田」だけでなく。
長狭街道沿いのいくつかの棚田でも行なわれています。
結構、都会の人の応募がある様で、
私の実家の近くでも、町内会がオーナーになっている様です。
こういう取り組みでもしなければ、効率化の望めない棚田は消え行く運命なのでしょう。
その甲斐もあって、今では青々とした田んぼが再生され、
鴨川の新しい観光名所になっています。
私た行った時も、観光バスのコースになっているのか、
何台のも刊行バスが来ていましたし、
乗用車で訪れる人も沢山居ました、
農業の新しい在り方の一つなのでしょう。