■ 仮想通貨って何? ■
マウント・ゴックス事件で世間的に注目を集める「仮想通貨」。
私自身不勉強だったので少しまとめてみます。
■ ネットワーク上の仮想の金山 ■
ビットコインの概念は次の様なものです。
1) ビットコインはネットワーク上の仮想の金山を採掘する事で生まれる
2) 埋蔵量は2100万BTと予め決められている
3) 採掘は複雑な計算を解く事で行われる
4) 複数の採掘者の内、一番先に正解した元が採掘権を得る
5) ビットコインは採掘される度に埋蔵量が減って行く
6) 採掘者の数が増える程、埋蔵量が減る程、採掘は難しくなる
7) 最初はPC単体で採掘が可能であった
8) 現在では高性能のグラフィックボードを並列処理したり、専用のチップを用いて採掘
9) 採掘の難易度が上がる程、専用PCや電気料金などの採掘コストが上昇する
この様に、ビットコインを無から作り出しているのは、現実の金鉱脈を採掘するのと同様に、仮想空間内で「高度な計算」という道具を使ってビットコインを掘り出す行為です。
■ ビットコインの価値 ■
ただ単にビットコインを採掘するだけならば、それはコンピューターゲームと何ら変わりはありません。ゲーセンのコインをいくら集めても、何も買えないのと一緒です。しかし、誰かがビットコインを現実のお金に替えてくれれば、その時点でビットコインは現実の世界で通貨としての価値を持ちます。
パチンコ屋の景品のライターの石そのものは無価値ですが、景品交換所で現金化される事で現金と同様の価値を持つのと同じ事です。
1) マウントゴックスの様な取引所でビットコインを通貨と交換出来る
2) 取引所で通貨をビットコインに交換出来る
この様に取引所を介して、ビットコインは通貨と同等に扱われ、その時々のレートで交換されます。
■ P2Pシステムという利便性 ■
何ら価値を持たない仮想な存在のビットコインが普及したのは、ビットコインが現実の通貨や決済システムよりも便利で決済コストが安い事が原因です。
1) ビットコイン利用者は特定のビットコインIDを取得する(メアドみたいなもの)
2) 誰かにビットコインを送信するのはビットコインID当てに送金すれば良い
3) この取引でビットコインの権利者が変更される
この様に金融システムを仲介する事無く、送金が行えるビットコインは手数料の発生も無くb便利です。さらには、送金の手数料も既存の金融機関よりも安く、通貨間のレートの変動といったリスクも避けられるので、ビットコインは国際決済にも非常に適した通貨だと言えます。
■ 取引の一切が記録される ■
ビットコインの取引は全て記録されています。要はお金の全てにIDが存在し、権利者の記録を保有しているのです。
1) ビットコインの送金の一切はネットに配信(ブロードキャスト)される。
2) 受信した採掘者は取引をブロックという記録にまとめブロックチェーンに書き加える
3) 受信した採掘者の中で最初に複雑な計算を解いた人がブロックを書き加える権利を得る
4) 採掘者はブロックを書き加える事で手数料が得られる
この様に、本来金融機関を通して行われていた送金も、ネットの中の不特定の人達によって安価に行われ、かつその記録が全て残ります。
■ 預金は権利の委譲と同じ ■
ビットコインは通常、自分のコンピューターの中に蓄えられます。
1) ビットコインは自分のPCのハードディスク上のデータとして存在
2) ハッカーがハッキングによってビットコインを盗む事は可能
3) ビットコインを守る為には次の様な手段がある
A) ネットに繋がっていないPCに保存する
B) USBに記録して金庫などに財布(ウォレット)の鍵を保管する
C) プリントアウトに財布(ウォレット)の鍵を記録して保管する
ハッキングなどのよって所有権を書き換えられない手立てを講じるのは利用者の自己責任とされています。
ビットコインを業者に預ける事も出来ます。マウント・ゴックスもこの様な預金を受け付けていましたが、今回はこれが盗まれてしまいました。
ビットコインの預金は、所有権が預金者から業者に変わる事で成立します。ですから、業者がハッキングを受けてビットコインが盗まれた場合、ビットコインの所有権はハッカーに移ります。
この様な事を避ける為に、ビットコインには所有者の履歴が記録されています。本来ビットコインは犯罪に対して非常に耐性が高い通貨のハズでした。
■ ビットコインのセキュリティー ■
電子時代の通貨としてビットコインは便利なので、アメリカでではレストランの支払いもビットコインで可能な所が出て来るなど、現実の通貨と同等に認識され始めていました。発行額が少ないので、ビットコインが現実の経済に与える影響は大きくありませんが、次世代の通貨としての期待も集めていました。
ただ、通貨として一般に普及する為には、セキュリティーが脆弱な事がネックになります。そしてセキュリティーの甘さが露呈する度に、ビットコインの信用は失われます。
1) 成りすまし財布
ビットコインは財布(ウォーレット)と言われるソフトウエアでPC内に記録されますが、この財布に成りすすまして他人のビットコインを送金させる。
2) ブロックの改ざん
ビットコインの流通履歴の改ざんで、他人のビットコインを盗む
3) ビットコインの偽造
ブロックの改ざんで偽のビットコインを作り出す
この様な攻撃に対してビットコインは単純ですが有効は抑止手段を講じています。
1) ビットコインはネット上の多くのPCに取引情報(ブロックチェーン)を記録
2) 一部を改ざんしても、その他のより多くのブロックチェーンの情報が優先(多数決)
3) 何等かの理由でブロックチェーンが枝分かれした場合、計算量の多いチェーンが優先
4) ビットコインは取引の仮定で多くの計算が必要であり、その大量の計算の痕跡を偽造する事は困難とされている
私達が通常「お札」や「硬貨」として認識している「お金」も、銀行のネットワークシステムの中では電子データに過ぎません。ここだけを切り取れば、ビットコインと現実の通貨の差は少ないと言えます。
銀行などのシステムでは通帳や帳簿を管理する事でお金を管理しています。そして、専用ネットワークを用いる事で、セキュリオティーを確保しています。
一方、ビットコインはお金自体の取引情報をネット上のコンピュターで分散管理する事でセキュリティーを確保しています。
■ ビットコインは盗めるのか? ■
今回、マウントゴックスの事件では、ビットコインが盗まれた事になっています。
マウントゴックスの利用者が預けていたビットコインの権利は、顧客からマウントゴックスに移っているはずですから、ビットコインの最大の特徴であるお金の流れをマウントゴックスからトレースすれば、誰が盗んだのかは明らかになるはずです。
ただ、盗んだパソコンからハッキングしてビットコインをマウントゴックスから「送金」させた後に現金化されてしまえば、ビットコインの現在の所有者は判明しても、犯人を特定する事は難しいのかも知れません。
■ ビットコインは偽造出来るのか? ■
一方ビットコインの偽造は難しいのでは無いでしょうか?
同じIDのビットコインが存在すればシステムが矛盾として検出するはずです。システム運用上は複数存在するビットコインは、ブロックチェーンの計算量が多い方が優先されるはずなので、自動的に一つのビットコインしか存在出来ません。
しかし、ブロックチェーンの計算量自体を偽造する方法があれば、偽物のビットコインが本物と置き換わる事は可能なのかも知れません。その場合、現実のお札の様に「偽札」が出回るのでは無く、偽造コインが「本物」になってしまうのかも知れません。
■ ビットコインは通貨に成り得るのか? ■
今回の事件で信用に傷についたビットコインですが、はたしてビットコインは通貨としての条件を満たしているのでしょうか?
1) 発行額が限られている事で価値が守られる
2) 現実の通貨と交換できる
3) 現実の品物が買えたり、サービスを受けられる
4) 流通性や保管性が高い
5) 偽造や盗まれ難い
1)から3)の条件を満たせば通貨と同等の価値を持つと言えます。
ビットコインはさらに4)において現存の通貨よりも便利なので利用者が拡大しました。
一方で、5)に関しては不安が多く、ビットコインの普及を阻む要因となっています。
■ 中央銀行制度に対する挑戦 ■
仮想通貨の最大の問題点は、現実の中央銀行券(通貨)の価値に疑問を呈する事です。
現実の通貨は、信用のある中央銀行が発行する事で価値があると判断されます。さらに、一国の通貨の発行権は、原則としてその国の中央銀行しか持ちえない事も重要です。
ところがビットコインの様な仮想通貨は、中央銀行と関係無く、勝手に「採掘」されて流通しています。それどころかビットコインはそれを管理する中枢が存在せず、ネットワークに分散された記録と運営者の存在によって支えられています。端的に言えば、人々が仮想通貨を通貨と認識するだけで、国家の後ろ盾が無くとも仮想通貨は価値を持ちうるのです。結局通貨の価値が人々の共通幻想に支えられている事は、仮想通貨でも現実の通貨でも大差ありありません。
仮想通貨が通貨として現実に価値を持つ以上、本来は「偽造」として法律に抵触してもおかしく無いのですが、通貨当局は何故かビットコインなどへの規制には消極的です。
多くの人が未だビットコインを手にし(?)た事も無く、それ故に信用もしていないので、ビットコインを中央銀行券への脅威とは認識していないのかも知れません。
■ 中央銀行券と補完関係にある仮想通貨 ■
多くの人達仮想通貨を中央銀行券と敵対関係になるであろうと予測しています。
金融当局が仮想通貨を半ば野放しにしていたのは、その発行量が少なく現実の通貨への脅威とはなりえないと考えているからだと・・・。
しかし、私は仮想通貨の成り立ちに、金融マフィアが関与しているのではないかと疑っています。
何等かの原因によって現実の通貨の信用が失われた時、それをバックアップするシステムは不可欠です。例えば、ドルの信用が失われたら一時的に金兌換制度が復活して通貨の価値を担保する必要があると言う人も居ます。
しかし、そうなると金の価格は高騰しますし、金を多く持っている国が多くの通貨を発行出来、金を保有していない国は通貨が不安定になります。
そこで「国家の都合による通貨の増刷による通貨価値の喪失」という現実の通貨の弱点を克服し、さらにネットワーク時代に適した通貨として仮想通貨は無視出来ない存在になって来ています。
政府が中央銀行に影響を与え得る限り、あるいは金融市場の崩壊やバブルの崩壊を中央銀行が食い止めようとする限り、通貨の価値は危機にさらされ続けます。
仮想通貨のシステムは、中央銀行制度を批判する過激なリバタリアンや、金融システムの究極の自由化を求める人達に支持されて、潰ぶされても、潰されても雨後の筍の様に次々と登場するかも知れません。
1) 発行量が制限されているので過剰発行を避けられる
2) 既存通貨の信用が失われれば、それに代わる便利なシステムが求められる
3) 仮想通貨の信用は国家や中央銀行に依らない
現状、ビットコインは既存通貨に両替出来る事で価値が認められています。
はたして既存通貨の価値が喪失した時、仮想通貨の価値も等しく失われるのか、それとも価値が高まるのか・・・・。
仮想通貨は実験段階に入ったばかりですが、カード社会のアメリカなどでは、比較的スムースに受け入れられるシステムなのかも知れません。
本日は仮想通貨に関する妄想を垂れ流してしまいました。