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借金が通貨の価値を生む・・・ペーパーマネーの本質

2014-12-11 08:42:00 | 時事/金融危機
 

■ 誰かの借金が紙切れのお金に価値を与える ■

ニクソンショックで金兌換制が停止されてから、世界の通貨は事実上「紙切れ」に過ぎませんん。

ところで、紙切れに過ぎないお金はどうして価値を失わないのでしょうか?

1) 紙切れだけれども「物が買える限り」は価値を持つ
2) 紙切れだけれども「運用して増える限り」は価値を持つ

実は現在のお金の価値は、「物が買える」という実質的価値と、「運用で増えるかもしれない」という期待によって支えられています。

「運用で増やす」方法には2種類あります。

1) 投機的な取引で増やす(博打)
2) 貸付の金利利益で増やす

現在は投機的な面が前面に出ている金融市場ですが、本来の目的は「お金と貸したい人」と「借金したい人」との仲介機能です。

1) 一生懸命働いて使いきれないお金が手元に貯まる
2) 使わないお金は本来価値を生まない
3) 誰かに貸すと金利でお金が増える=借金する人が居るからお金が増える
4) お金が増えると色々なものが買える
5) よし、お金を増やそう!!

お金は「物が買える」から価値が有りますが、同時に「増やす喜び」をも与えてくれます。多分、人間の根源的欲求の訴える「増やす喜び」は案外通貨の価値に重要な役割を担っているのかも知れません。

極言すれば、現在の通貨の価値は「借金する人」が居るから保たれているとも言えます。

現在の通貨システムを支える「信用創造」のシステムの原動力は、「増やしたい」という人間の根源的な欲求なのかも知れません。

■ 変化する「借金をする人」 ■

現代のペーパーマネーの原型は既に14世紀のモンゴル帝国に生まれています。「交鈔」という不換紙幣をモンゴル帝国は発行します。

モンゴル帝国の財務官マフムード・ヤラワチ(1175~1256?)は、「通貨(オカネ)は金や銀への交換を保障されているから価値があるのではなく、それを有利子で借りるものがある限り価値を保つ」と主張しました。

モンゴル帝国は国家の膨張に伴って拡大する財政をペーパーマネーの発行でファイナンスしますが、その価値を担保する為に「オルトク」と呼ばれる「ファンド」を立ち上げます。

このファンドは最初は貿易商人達に運転資金を貸します。
これが飽和すると次に鉱物や陶器製造の設備資金に貸します。
これが飽和すると次に王侯貴族や軍閥に貸します。

そして80年で「交鈔」というペーパーマネーは価値を喪失します。

1) 貿易商・・・「現物」という保障が存在する        =「オイルダラー」
2) 設備投資・・「実体経済の拡大」というバランスが存在する =「世界経済の拡大」
3) 貴族や軍閥・「資産や信用を担保」にしている       =「借金」

増刷され続ける「交鈔」の価値を担保する為には、「交鈔」を欲しい人達の存在が不可欠です。要は「借金」をする人が居ないとペーパーマネーの拡大は止まってしまいます。

ところが「交鈔」があまりに増え過ぎると、「借金」をする人が減ってしまい、だんだんと「信用の低い」借り手にお金が貸される様になります。そして借金の返済はいつかは滞る様になり、その時点で信用収縮が発生してペーパーマネーの価値が失われるのです。

「交鈔」は発行されてから80年間使われました。
ペーパーマネーにはどこかの時点で寿命が存在するのかも知れません。

■ 借りての質が低下し続けるドル ■

ドルも借り手の質を落しながら増刷を続けています。

1) 1970年代・・・貿易決済や石油決済という実需
2) 1980年代・・・アメリカの不動産バブル(オフィスビルなど)
3) 1990年代・・・ITバブル
4) 2000年代・・・サブプライム層の住宅バブル
5) 2010年代・・・国債バブル(政府を通じて国民が借金)

■ 金融革命によって世界に「借金」を売りさばく ■

金融革命が何故必要だったかと言えば、アメリカ国内でお金を貸す人が足りなくなったからだとも考えられます。

アメリカ国内の住宅に融資するのがアメリカの金融機関に限定された場合、直ぐに貸してが不足します。そこで、住宅債権を証券化して世界に向けて売り出したのがサブプライムローンだとも言えます。

1)ドルの増刷ペースに借金が間に合わない
2)信用力の無いサブプライム層にまで借金をさせて「借金」を増やす
3)「借金」をMBSやCDOと言った金融商品に加工して世界中に売りさばく

金融革命などと呼称するとカッコ良く聞こえますが、要は信用力の低い「借金」をお化粧して売っただけの事なのです。

■ 「借金」が支えるアメリカの財政 ■

「ドル=小口の米国債」だという事は既に常識化と思います。
要は、ドルが増えるという事は、米国債も同時に増えているのです。

結局、米国と米国民の借金である米国債を世界に売りさばくシステムが「ドル」であり「金融革命」だとも言えます。

1) 金融商品に加工された「借金」を買う為にドルが必要
2) 海外のドルの需要が高まる
3) ドルが増えた分だけ米国債が発行される

・・・・こう考えると、ドルやアメリカは誰かの「借金」によって価値が保たれています。

さらには、リーマンショック前のヘッジファンドなどはレバレッジという「借金」によって利益を拡大しようとしました。ここでも旺盛なドル需要が生まれていたのです。

■ 「借金」を生み出す事で正当化されるリフレ政策 ■

日本の失われた20年の原因は、国内で「借金」をする人が居なくなった事にあります。「資金需要が低い」とも言われます。

日銀の異次元緩和の目的は、将来的なインフレを予測させる事で「借金をした方が得」というインセンティブを作る事にあります。「借金」の連鎖が周り始める事で、経済を拡大しようとしているのです。

■ アメリカの「借金」の方が魅力的 ■

しかし、世界を見回せば「借金」はどこにでも転がっています。特に借金大国だであるアメリカには借金の在庫に困りません。

日本の借金とアメリカの借金を比べた時、同じリスクなら金利の高い借金の方が魅力的です。

日本は異次元緩和によって金利が抑え込まれていますから、相対的にアメリカの借金の方が輝いて見えます。

こうして、日銀の表向きの目的とは裏腹に、日本の資金は国内で運用される事無く、金利差に引かれてどんどんアメリカの「借金」に吸い寄せられて行きます。

これが「円キャリートレード」という現象になって現れます。為替市場で円を売ってドルを買い、これでアメリカ国内の「借金」を買うので、為替は円安が続きます。

■ 問題はアメリカの「借金」が飽和する事 ■

リーマンショックの原因はサブプライム層の「借金」が返せなくなった事です。

アメリカはQEというリフレ政策で再び国民の「借金」のインセンティブを高めようとしています。さらには利上げによってアメリカの「借金」を魅力的にお化粧し、海外の資金を集めようとしています。

多分、利上げに成功すれば、アメリカ国内では再び「信用力の低い借金」が増産され、リスクに見合わない金利で世界にばら撒かれると思われます。

ところで「リスクに見合わない信用力の低い借金」がアメリカ国債だったらどうなるでしょうか・・・・。


多分、次なる危機は、思わぬ所から発生するでしょうが、危機の本質は米国債の信用に及ぶ気がします。米国債の信用が低下した時、日本国債だけが信用を保つ事は難しいと思われます。

結局、中央銀行が超緩和的金融政策を取り、各国が国債を増刷せざるを得ない状況に追い込まれた時点で、現在の貨幣システムは終末期に足を突っ込んでしまったのかも知れません。



本日は忘年会の二日酔いの残る脳味噌で、どーでもよい妄想を垂れ流してしまいました。冬の冷たい雨が降っていますが、皆様、風邪などひかない様に・・・。