■ 小湊鉄道で養老渓谷に行こう ■
いつもは自転車で通過するだけの養老渓谷ですが、この時期は新緑が見事なのでゆっくりと散策したい。土曜日は自転車をかついで川沿いの散策コースを堪能してきました。
あまりに新緑が美しかったので、翌日は母を伴って小湊鉄道で再訪する事に。粟又の滝へ続く遊歩道はコンクリートで整備されているので趣には欠けますが、高齢者も歩き易く手軽に自然散策を楽しめます。
自転車で浦安から最速で3時間で着く養老渓谷ですが、電車を乗り継いでも家から2時間半・・・自転車って意外に速い乗り物ですね。
小湊鉄道は電化されていないローカル私鉄です。のどかな田園風景の中を走る赤とクリーム色のツートンカラーの車体は写真映えも良く、鉄道マニア御用達の路線です。
五井駅を出発してからしばらくは田んぼの中をコトコトと進みます。ちょうど田植えのシーズンで水を張った田圃が太陽をキラキラと反射します。上総牛久を過ぎると車窓の風景がガラリと変わり、時折、里山の木々の中を走ります。
単線なのですれ違いは駅で行います。里見の駅では未だに「タブレット」を利用しています。「タブレット」は輪っかの形をした通行証の様なもので、それを持っていない車両はその区間に侵入出来ません。結果的に区間の車両を1つにコントロールする事で衝突を防ぐものです。現在は信号が有るので「タブレット」を利用している路線は少なくなりましたが、小湊鉄道では未だに使用しています。
実はこの「タブレット」は2013年に復活したものだそうです。小学生の通学の需要から列車が増発されるに伴い、牛久-上総中野間を2閉塞区間にする必要が生じました。本来なら人手の掛らない自動閉塞(信号)方式が安全でコスト面でも有利です。しかし、小湊鉄道は徹底したローコスト化で黒字を実現しているので、信号機設置のコストをケチったのでしょう。小学生を見守る為に駅に駅員を配置するならば、「タブレット」を利用した非自動閉塞方式が一番ローコストです。結果として鉄道マニアには嬉しい「タブレット」の受け渡しが復活する事になりました。
小湊鉄道は鉄道マニアの気持ちを良く理解している鉄道です。橋梁も防錆塗装の赤色で、これが電車の色と相まってノスタルジーを掻き立てます。
「飯給」と書いて「いたぶ」と呼びます。桜が見事な駅ですが、「世界一大きな公衆トイレ」が有る駅でもあります。(ネットで調べてみてください)
「月崎」の駅は絵本の中から飛び出して来た様な佇まいです。
昔懐かしい扇風機です。昭和50年代初め頃までは、旧国鉄でも冷房車は珍しかったと思います。満員電車で汗だくになりながら、扇風機がこっちを向くのを心待ちにするのですが、吹いて来るのは汗臭くて生ぬるい風でした。今の若い方には想像も付かないでしょう。
五井から時間程で養老渓谷の駅に到着します。いつもは自転車で来る駅ですが、ホームに降り立つと新鮮な気分です。
列車の時刻に合わせて「粟又の滝」行きバスが待っています。
終点の粟又の滝まで行かずに、「滝めぐりコース」の終点でバスを降ります。この方が最後に「粟又の滝」を見るので感動が大きい。集落の中を案内板に沿って歩いて行きます。
家屋が途切れると畑の向こうには新緑の山が広がります。畑の先に川へ降りて行く階段があります。それ程急では無いので高齢者でも安心して降りられます。
階段を下りると、いきなり別世界が広がります。集落と畑の目と鼻の先に、ここは上高地?といった渓谷の風景が広がります。
このシーズン、新緑が目に沁みます。
海底堆積岩の滑らかな岩床を流れる養老川は水量も少なく、水深も浅いので子供達でも安心して川に入る事が出来ます。川エビが沢山居るので、タモアミですくう事が出来ます。
カジカガエルの透明な鳴き声が響いていますが、こちらはツチガエル。
養老渓谷は200万年前の海底が隆起した「大田代層」を養老川が浸食して出来た警告です。凝灰岩、黄色砂岩、青灰色泥岩の互層を観察する事が出来ます。岩質は柔らかく簡単に浸食されるので、房総の川は深くて複雑な谷を刻んでいます。
川岸の山肌からは水が滴り落ち、いくつもの沢筋が養老川に合流しています。それらが小さな滝を作るので、2Km余りの間に大小いくつもの滝を見る事が出来ます。
ここが東京から電車で2時間とは思えない風景です。
滝めぐりコースのハイライトは「粟又の滝」です。滑らかな岩肌を水が滑り落ちる、日光の湯の滝の様な滝ですが、ボリューム感があってそれなりの見応えがあります。
実は「粟又の滝」は滝の上に登れてしまいます。ちょっとコケで滑るのですが、若者達が果敢にチャレンジしていました。
東京からアクセスできる渓谷と言えば、奥多摩や丹沢山系がメジャーですが、手軽さという点では養老渓谷は特筆に値します。70歳を過ぎて、ちょっと脚力に自信が無い方でも、自然を満喫する事が出来ます。
ローカル線の雰囲気を堪能できる小湊鉄道とセットで楽しめる、お手軽ハイキングでした。