■ 表面上は普通の国、普通の軍隊になっただけ ■
自衛隊法改正が話題になっています。
表面的に見れば、今までのガンジガラメの自衛隊法が異常なのであり、「普通の国、普通の軍隊」になっただけとも言えます。
戦後、「お花畑左翼」の方々は、「戦争を放棄し、さらには軍隊を持たなければ戦争を仕掛ける国は無い、もし戦争を仕掛ける国があるのなら国連が制裁してくれる」という非常識を信じてきました。
しかし、子供のケンカを例に取っても、弱いヤツはターゲットにされ争いを避ける事は出来ません。国家間においても、適切な防衛力を持つ事こそが平和の基本です。「やられたら、やる返す」のが安全保障の大前提であり、それを怠る国家は標的とされます。
あらゆる普通の国家が、「我が国は平和を尊重し戦争を憎む」と口では言いながら、体の後ろでキツク拳を握っているのです。だから平和は保たれます。
■ 「アメリカの戦争に巻き込まれる」という心配 ■
多くの方が懸念しているのは「アメリカの戦争に巻き込まれる」事です。既に「巻き込まれる」という表現自体が受動的で、安全保障をアメリカと共同で確立するという本来の安全保障の概念を理解していない様にも感じます。
尤も、問題はタッグを組む相手にあります。アメリカは第二次世界大戦後、最も多くの戦争を起こしてきた国です。こんな国とタッグを組んだら不要な戦争に巻き込まれる可能性が有ると心配するのは当然と言えます。今回は法律の名前から「周辺事態」すらも消え、地球の裏側の戦争にさえ巻き込まれる可能性が高まりました。
■ 戦争は「やらせ」で始まる ■
法律的には「自国の国民や軍隊が攻撃された場合のみ」自衛隊の武力行使が許されます。ですから「戦争に巻き込まれる事は無い」と安倍総理は説明しています。
しかし、歴史を遡れば、戦争はいつでも「ヤラセ」で始まっています。皇太子が暗殺されたり、真珠湾が攻撃されたり、トンキン湾で魚雷が発射されたり・・・。
要は戦争の口実など簡単に作れるのです。例えば、イラクで日本人ジャーナリストがISIL(イスラム国)に拉致されたら、「国民の生命が危険にさらされた事」になります。平和維持活動に従事する自衛隊をISILに攻撃させる事も容易でしょう。
この様に戦争が必要な時、そのきっかけは簡単に作られてしまいます。これは盧溝橋事件で日本軍が使った手段でもあります。
「戦争の必要性」の前に法律はあまりにも無力です。
■ 法治国家のアメリカですらシビリアンコントロールは厳密には機能していない ■
日本は現在まで憲法や自衛隊法を恣意的に解釈して、自衛隊の活動範囲を拡大してきました。今回の法改正は「恣意的解釈」を止めて、きちんと法制化する正当な動きであるとも言えます。
ただ、法制化したら恣意的解釈は無くなるのかと言えば・・・多分無理でしょう。
「法治国家」と思われているアメリカが良い例で、海兵隊は大統領の直属部隊です。大統領が必要と認めるならば、海兵隊は議会承認無しに戦闘を始める事が出来るのです。議会は事後承認を与えるのみです。
「国民が選んだ大統領の判断は国民の判断だ」と言ってしまえば問題は無いのですが、これこそがアメリカ人が盲信する民主主義の落とし穴です。そもそもアメリカの大統領選挙でアメリカ国民は「大統領を選ばされて」います。
■ 戦争が遂行される様な状況では議会は形骸化している ■
そもそも、国家間の戦争が行われる様な事態が起きた時には議会は形骸化しています。
日本が太平洋戦争に突入した時も、翼賛体制によって議会は機能していませんでした。ただ、これは国民が選択した事とも言えます。
仮に、尖閣諸島に中国が侵略したとします。自衛隊は自国領土を侵犯されたのでただちに防戦します。この戦闘で自衛隊員に死傷者が出れば、世論は「打倒中国」で結束します。この様な状況下でも「戦争反対」の方は少なからず居るのですが、国民の大勢は「戦争止む無し」に一気に傾きます。
こうなると、議会など有って無きに等しい。国民が戦争を望むのだから、議会も戦争を望む事になります。
■ 将来的に自衛隊が戦闘する様な戦争が必要となるのか・・・ ■
今回の自衛隊法の改正はアベノミクスの本当の狙いだたっと思います。
1) アベノミクスによるデフレ脱却という餌をちらつかせて議会で安定多数を確保する
2) 自衛隊法改正を実施する
国民は景気回復という飴に釣られて、自衛隊法改正という果実を与えてしまったのです。メディアもこれを後押ししてきました。
しかし、問題は自衛隊法が改正される事よりも、それを必要とする「戦争」が起きるかどうかではないでしょうか?「陰謀論者」である私にはそちらの方が気になります。
■ アメリカはアジアの前線から撤退して行く ■
アメリカ議会の演説で安倍総理が日米の結束を再確認する一方で、米軍は静かに日本や韓国から撤退しています。
沖縄の海兵隊の本体はグアム移転が決まっており、その準備も着々と進んでいます。在韓米軍の撤退は2016年に実施される予定で、既に朝鮮半島有事の際の指揮権は米軍から韓国軍に移っています。
米軍は東アジアのみならず、世界中の最前線から撤退してゆきますが、これは2001年の国防計画見直しで明確にされました。これを「米軍のトランスフォーメーション」と一般には呼ばれています。
1)装備の軽量化(戦車からストライカー装甲車への変更など)によって、米軍は航空輸送により世界のどこにでも瞬時に戦力を投入できる体制を整える。
2)主力戦力を前線より後退させ、グアムなどに集結させる
在韓米軍の撤退も、沖縄海兵隊のグアム移転も全て「トランスフォーメーション」も実現に向けた動きの一環です。
短距離、中距離ミサイルの進歩は敵の前線基地を一気に無力化する事が可能となりました。韓国や沖縄に兵力を置く事はナンセンスな時代となっているのです。韓国や日本で米軍が戦争に巻き込まれ、大きな損害を発生しない為に、米軍は周到に戦力を後方に移動してゆきます。
しかし、これでは「見せかけの戦力」という安全保障上の重要事項が空洞化してしまいます。だから自衛隊法を改正させ、日本が通常な国と同等の「攻撃力」を持つ国である事をアピールする必要があるのかも知れません。
実際に自衛隊は世界で有数の規模を誇る軍隊です。自衛隊法改正で正面戦力の拡充が図られ、日本はアメリカからオスプレーを始めとする兵器を今後大量に購入するはずです。資金は日銀が輪転機グルグルで生み出します。
■ 自衛隊は中東で戦争をするのか? ■
実際的な問題として、自衛隊が戦争に巻き込まれる恐れの一番高い地域が中東でしょう。
アメリカはこれまで国民の血の犠牲と多くの資金を費やして中東での利権を守って来ました。しかし、アメリカは財政的理由から、この地域の戦力を縮小しなければなりません。これ自体を自衛隊が肩代わりする事は有りえませんが、いざ戦争となれば、米軍は機動的に中東に軍を投入する能力が有ります。(トランスフォーメーションの成果)
ただ、米軍の予算削減で戦争で最も重要な兵站輸送が手薄になる事は確かで、この部分に各国の協力を仰ぐはずです。自衛隊が中東に投入されるとすれば、アメリカ軍の兵站輸送の補助でしょう。
問題は、兵站路はゲリラの標的に成り易いという点です。ですから自衛隊法を改正して、そこそその装備で兵站路を防衛する必要があったのだと思われます。
自衛隊が中東で正面戦闘をする可能性が極めて低いと思われますが、ゲリラとの戦闘は十分に有りえるかと・・・。
■ 中国との全面戦争は起こるのか ■
アジアに目を転じれば、尖閣諸島で対立を深める中国との戦争が起こるのかどうかが重要になります。
これに関しては、フォークランド紛争の様な尖閣紛争は起こったとそても日中の全面戦争は有りえないとしょう。双方にメリットが無いと同時に世界の経営者にとってもメリットが無いからです。
ただ、尖閣有事という限定的な戦闘は起こり得ます。その目的は日中の分断と、新たなる冷戦の幕開けです。
ただ、尖閣紛争が起こる時は、新たな金融危機が起こる後になると思われます。要は、経済の崩壊による国民の不満を、世界的に戦争で解消するという常套手段が用いられるのでしょう。
陰謀論者としては自衛隊法改正は世界的金融危機の準備に思えてなりません・・・。