■ 何だか方向性が読めない世界経済 ■
投資をされている方は今年に入ってから世界経済の方向性が読み難くなっていると感じられているのではないでしょうか。
アメリカの利上げを前にして、様々な市場がナーバスになっている表れだとも言えますが、本日は最近目に付く変調をメモ程度に。
■ 国債金利が上昇(価格は下落)に転じた ■
国債金利は世界的に歴史的な低さを更新していましたが、ドイツ国債の金利反転をきっかけにアメリカや日本でも金利が上昇に転じています。
投資家達は安全資産として国債に投資して来ましたが、気付ば金利は極限まで下がっていました。ドイツ国債などはマイナス金利に突入していましたから、これ以上の金利低下にも限界があります。
そこで、はたと皆さん我に返って国債のリスクを少し軽くし始めたという感じでしょうか。これが本格的に金利上昇になるとは思われませんが、資金のグランドローテーションが変化した事で、行き場を失った過剰流動性が別の市場に流れ込んでいます。
その一例が株式市場でしょう。米株市場は不安定ながらもダウは高値で推移しています。日本株市場にも資金流入が起きている様です。
■ 上海株式市場はバブル? ■
中国政府は不動産市場の後退と、製造業の不振を打開すべく、株式市場への資金誘導を行っている様です。上海株市場が急激に上昇をしています。
これをバブルと呼べるかどうかは崩壊するまでは分からないのですが、中国経済もいろいろとツジツマが合わなくなってきているのでしょう。
中国のバブル崩壊は、即、アジアの新興国に波及し、さらには中国人の「爆買い」が支える日本の小売り市場にも、部品などの輸出部門にも大きな影響を与えます。
危ない、危ないと言われ続けても、なかなか崩壊しない中国経済ですが、ここが崩れる時は世界を道連れにするので、多分、中国バブル崩壊は次なる金融危機と時期を同じくして起きると私は妄想しています。
それまでは、何だかんだ言ってバブルを維持するのでは無いか・・・。
■ 日経平均は強すぎる ■
日本株に関しては夏頃まで19000円を割った辺りで調整を続けるかと思いましたが、これが意外と強い。公的資金、準公的資金で下値を支えているので、現状、「世界で一番オイシイ市場」或いは「世界で一番安全な市場」となっているとも言えるので、ギリシャ危機の避難先としてヨーロッパの資金が流入しているとの噂も。
ここに来てドル/円、ユーロ/円とも円安方向にシフトしており、海外勢の日本株投資には良い環境が出来上がっています。
「sell in May」の法則は、今年は4月後半から5月上旬で発動しましたが、下げ幅は小さなもので、その後の日経平均は結構強気です。
ただ、国内投資家や個人投資家が強気に買い上げているというよりは、海外勢が円安分だけポジションを積み増した感が強いかと。
■ 円安が加速と米利上げ予測 ■
FRBのイエレン議長とフィッシャー副議長が年内利上げを示唆した事で、一気にドル高が加速しました。まさか123円まで円安が進行するとは・・・。FX取引をされている方は冷や汗をかいた事でしょう。
アメリカの経済指標はあいかわらず良い数字と悪い数字がまだら模様に出て来る感じで、原油安によるガソリン価格の低下で、どうにか個人消費を持ち上げている感じにも見えます。
年内利上げが本当に可能なのか微妙な所ですが、実は利上げの影響は実態経済よりも金融市場の方が敏感に反応します。ある意味、実態経済の指標は「後付の理由」に利用されているだけで、金融市場のリスクテイクの度合いによって利上げをするかどうかの判断が成されるのだと思います。
イエレン議長は先日の「株価は高すぎる」等の発言で、リスクオフを促していますが、市場は結構強気を崩していません。バーナンキショックで損をした投資家も多いと思いますので、その教訓から市場がFRBの揺さぶりに鈍感になっているのかも知れません。
■ アジア新興国でバブル終焉の兆し ■
マレーシアやシンガポールで対外債務が積みあがっています。シンガポールはGDPの400%、マレーシアは65%。
シンガポールは金融センターなのある程度高くなるのは当然とも言えますが・・・この2国の建築物件をしばらく見てきた私としても、バブルの匂いがプンプンしていただけに、資金流入が逆流すると結構ヤバイ状況となります。
両国にはチャイナマネーも相当流入しているので、中国経済の変調の煽りをモロに受ける可能性も有ります。さらに米利上げによる資金逆流の影響もあるので、アジアの新興国の経済はこれから不安定になるかも知れません。
■ 英王手銀行の本社アジア移転 ■
HSBCとスタンダードチャータードという英大手銀行2社がアジアに本社を移転する事を計画しているとか。税制の問題が原因の様ですが、アジアで今後成長が見込める富裕層ビジネスを睨んだ動きだとも。
ここら辺は長期的な展望に基づく企業戦略なのでしょうが、世界金融を影で支配する英大手銀行のアジアシフトは次の時代がアジアの時代に成る事を予感させます。
まあ、その前に色々と混乱があって、世界の勢力地図に大変革が起き、元の国際化が達成されるという前提は付きますが・・・。
■ 米軍が南シナ海問題で中国にチョッカイを出し始めた ■
アメリカはこれまで東アジアの領土問題を静観していましたが、南沙諸島の中国の人工島建設を牽制するなど、中国にチョッカイを出し始めました。当然、中国もこれに強く反発しています。
まあ、ここら辺は表向きのパフォーマンスで、アメリカは本気で中国と事を構える事は無いでしょう。ただ、オバマ政権も大統領選を前にしてレイムダック状態にありますから、点数稼ぎのパフォーマンスは今後増えて来るのでしょう。
軍事的には南沙諸島に中国の飛行場が建設される事は、南シナ海の覇権にとっては重大な問題で、シーレンの要衝に中国の不沈空母がドーンと居座る事になります。
アメリカが本気になれば空爆でも何でもするのでしょうが、結局何もせずに米軍はハワイ-グアムラインまで後退するでしょう。
南沙諸島の中国軍基地は米軍無き後の「アジアの棘」としてアジアの軍事対立を煽る装置として機能して行きそうです。
■ ISILの勢力拡大とサウジアラビアとロシアの接近 ■
ISIL(イスラム国、NHKなどでは最近はISと呼称していますね)はイラク、シリアで勢力を伸ばしています。
そもそも欧米諸国と湾岸産油国の後押しで成長したISILなので、これらの国のメリットを生む為に活動しているはずです。短期的にはイラクやシリアのシーア派の弱体化と、イラク北部の油田地帯支配あたりが目的となりそうですが・・・・。
中東情勢で気になるのはサウジアラビアとロシアの急接近です。軍事同盟を締結するなど、アメリカ(イギリス)の傀儡政権であるサウジ王室は、イラクに対して毅然とした態度を取らなうアメリカに対して疑心暗鬼になっているのかも知れません。
巨大な産油国同士のサウジアラビアとロシアの接近は、石油市場にもある程度の影響を与えます。かつてのOPECでは有りませんが、原油カルテルとしての新たな枠組みが作られるのかも知れません。その過程でサウジアラビアとアメリカの関係性は薄れ、中東からアメリカは徐々に影響力を失って行くのかも知れません。
イスラエルの存在が不気味ですが、ロシアや中国が仲立ちとなってイランとのバランスを取るのかも知れません。それに対してISILがチョッカイを出すという構図が何となく見えて来たような・・・・。
本日は最近の気になるトピックスをメモ程度に取り上げてみました。
ピリピリとした空気は無いのですが、何となくオカシイ・・・。そんな所でしょうか・・・。