■ IMFのレポートが推奨した日銀の追加緩和 ■
【ワシントン=川合智之】国際通貨基金(IMF)は23日、日本経済に関する年次審査報告書で少子高齢化に伴う労働力減少などで、日本の中長期的な経済成長が0.7%前後で安定するとの予測を示した。日銀に対し、2%の物価目標の達成に向けた強い姿勢を示すため、追加金融緩和を準備するよう要請した
ご存じの方も多いと思われますが、IMFが日本に追加緩和を勧める内容のレポートを発表しています。中国を始めとする海外の需要低下による輸出の減少や、アジア通貨に対する円安の停滞の影響を指摘しています。
■ リスクオフの流れは利上げの準備運動 ■
米利上げに世界の注目が集まっており、それが9月に発表されるのか、12月に発表されるのかで市場は戦々恐々としています。リスク市場から相当な規模で資金流出が起きている様で、原油価格、金価格などが下落し、新興国市場も下落が止まりません。ダウもここに来て少し持ち直しましたが、だいぶ調整が入りました。
まさにバーナンキショックに似た様な状況になっていますが、利上げ前にリスクを低減する事は各中央銀行が推奨していた事なので、リスクオフの動き自体は「過剰なリスクの整理
」として、利上げをスムースに行う為の準備運動の様な物で問題とは言えません。
■ 米9月利上げのリトマス試験紙は日銀の追加緩和 ■
利上げの時期を占うものとして日銀の追加緩和に注目が集まるものと思われます。テーパリングの開始半年前に日銀は異次元緩和に突入しています。QE3終了直前には追加緩和を発表しました。
私はバーナンキは日銀の異次元緩和の直後にテーパリングに踏み込もうとした所、バーナンキショックの規模が比較的大きかった為にテーパリングを先延ばししたと妄想しています。
日銀の追加緩和の市場への好影響という観点からは、米利上げから追加緩和があまり先行すると効果が薄れます。市場を安心させる意味からは、日銀の利上げの直後に米利上げが行われる方が安全です。
そういう視点から見ればIMFのレポートは色々と意味深です。
■ GDPがマイナス成長に陥る日本 ■
日本の4-6月期のGDPは年率1─2%台の大幅マイナス成長になっています。海外の需要軟化が影響していますが、9月以降も弱気な予測が出ています。
もともと異次元緩和は偽薬みたいなもので、ゼロ金利の罠に落ちている経済ではその効果は円安以外には限定的です。原油価格が下落傾向にあり、さらには世界的に需要が低下する中では日銀の目標とする2%のインフレ率達成はとても無理と言えます。
ただ、IMFのレポートは「2%の物価目標の達成に向けた強い姿勢を示すため、追加金融緩和を準備するよう要請」しています。これ、イヤらしい見方をすると、「異次元緩和に効果があるかどうかは分からないが、効果がある事を前提にもっと緩和規模を拡大しなさい」と言っているに等しい。
要は「米利上げの援護射撃をしろ」とは言えないから、「異次元緩和の効果が思わしくないのは規模が足りないからだ」と言っているのです。
ここら辺、「緩和が足りない」と主張する一部の安易なリフレ論者とは異なり、かなり生臭い匂いを感じます。
■ ECBはバックアップかな・・・ ■
ギリシャ問題でバタバタするヨーロッパですが、ECBの量的緩和の規模拡大は日銀のバックアップかと思われます。
ギリシャ問題を解決しない事でいつでも追加緩和のセーフテーロックは解除していますから、米利上げで不測の状況が発生した場合は、ECBの出番となるのでしょう。
いずれにしても、世界経済が弱含みの中で9月にFRBが利上げに踏み切るならば、その前に「実弾の補給」は不可欠でしょう。