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「デフレ脱却」というアメで票を集めたアベノミクス・・・騙された国民が悪い

2014-04-05 02:11:00 | 時事/金融危機
 

■ 「デフレ脱却」「景気回復」というアメ ■

アベノミクスの1年が過ぎました。

1) 景気が回復傾向にあったのは積極的に財政出動した昨年前半のみ
2) 日銀の異次元緩和が齎したのは円安
3) 円安と異次元緩和の相乗効果で株を始め資産市場でプチバブルが発生
4) 貿易赤字が拡大して経常赤字に転落

国民がアベノミクスを支持したのは、「デフレ脱却」や「景気回復」に期待したからです。だから11年秋の衆議院選挙と昨年の参議院選挙で多くの国民が安倍自民党に投票し、自民党は安定多数を獲得しました。

■ アメとムチ ■

世の常として、「美味しい話」にはだいたい裏があります。

安倍政権は3本の矢で日本経済を回復させると公約しました。

1) 財政出動
2) リフレ政策
3) 規制緩和と構造改革

巷では「規制緩和と構造改革」が遅れていると言われています。尤も、これに期待しているのは「国民」では無く、一部の企業や海外の投資家や、外国企業です。

報道では「第三の矢」が不発と言われていますが、実際には安倍政権は議会の安定多数を足掛かりにして日本に変化をもたらそうとしています。

1) 消費税増税
2) TPP参加
3) 特定機密保護法案

これらの政策の多くは「ねじれ国家」では実現が難しいものばかりです。いわばアベノミクスの「ムチ」の部分です。

さらにはナイーブな問題にも手を付け初めています

1) 公的年金の株式運用や海外投資の拡大
2) ゆうちょ銀行の完全民営化の推進
3) 移民導入の検討
4) 特区の設置
5) 集団的自衛権の確立

■ アベノミクスの本質は対米従属 ■

「改革無くして成長な無し」として財政改革や構造改革を進めた小泉政権と、積極的な財政出動で景気回復を狙った安倍政権は一見すると相反する政策を実行しています。

ただ、小泉政権時には国民は「改革」を望み自民党に安定多数を与え、安倍政権でぇあ「景気回復」を望んで自民党に安定多数を与えました。

要はその時に国民が望む政策、あるいは国民に支持される政策を「マスコミ」が作り上げる形で、国民は小泉政権や安倍政権を支持したのです。

小泉元首相も安倍首相も自民党の清和会ですから元々対米従属が強い傾向があります。一方、自民党内でかつて対立していた経世会は利権集団ですから、アメリカと利害が相反する点も多々あります。

安倍首相やそのブレーンの巧妙な点は、「財政拡大」というアメで自民党内の経世会を味方に付けた事です。そもそも一昨年の自民党の総裁選が始まる前は、安倍氏の再出馬など多くの人が予想だにしていませんでした。石破氏や石原氏の下馬評が高かったと思います。ところが安倍氏が積極的な財政拡大で総裁選の票を一気に集めてしまいました。政権から離れ、利権の旨みが減り始めていた地方の自民党党員にとって「財政拡大」は悲願でした。

こうして、自民党内の対立勢力をも取り込んで、対米従属色の強い清和会が久しぶりに日本のトップに返り咲きました。

■ 見せかけの中韓強硬路線 ■

安倍総理は幹事長時代から中国や韓国への強行姿勢を貫いて来ました。これは彼の本心だと思うのですが、右傾化する日本人が安倍首相を支持する理由にもなっています。

ところが先日の朴大統領との会談で「パククネ テトンニョンニムル マンナソ パンガプスムニダ」とやってしまった・・・。これには多くの安倍支持者も度胆を抜かれた事でしょう。

そもそも日韓首脳会談をお膳立てしたのはアメリカで、その目的はウクライナ情勢が緊迫化する中でアジアでのこれい以上の日韓対立を避ける事でした。ロシアが北朝鮮に接近する中で、韓国を存在がウクライナ化する可能性があるからです。アメリカは韓国の利権を握っていますから、これを短期的には中露には渡したくは無いのでしょう。

安倍首相の中国強硬路線は、中国封じ込めを狙うアメリカの勢力には好都合でしたが、日韓対立に対してはオバマ政権は冷ややかでした。

結局安倍氏自身は中国や韓国を好きでは無い様ですが、オバマに韓国との関係改善を迫られて断る事が出来なかったのでしょう。

■ 国民を如何に上手く騙すかが政治家の手腕 ■

日本は民主主義国家ですから、国会で法案が通らなければ政策を実行する事は出来ません。ですから日本人は「国民主権」を疑う事はありません。

しかし、国民はマスコミの煽動や、財政拡大というアメに実に弱い・・・。

バブル後の閉塞感から改革を求めた国民を上手く騙したのが小泉元総理ならば、長引く不況からの脱却を切に願う国民を見事に騙したのが安倍総理だとも言えます。

「景気回復」や「デフレ脱却」は安倍総理の本心だった事は私は疑いませんが、その方法である「リフレ政策」や「財政拡大」は結果的には一時的な効果しかありませんでした。

一方で自民党が獲得した安定多数は、確実に日本を変えつつあります。

■ 私は改革に反対しません ■

私自身はTPPや構造改革や規制緩和に頭から反対してはいません。

グロバル化が進展する中で、世界のルールの一元化は日本が世界の中でビジネスをする上でも重要な事柄です。さらに海外からの投資を呼び込む為にも、日本国内の独特な制度は障壁となっています。

一方でグローバル化が日本人の大多数を幸せにするものでは無い事も確信しています。労働市場を開放すれば、単純労働は安い海外の労働者に置き換わりますし、高度な知的労働の多くも海外の優秀な人材との競争に曝される事になります。

しかし、少子高齢化で競争が少なくなる日本は、大学生の学力低下でも明らかな様に確実に衰退の道を歩んでいます。

結局、日本経済が競争力を回復する為には、市場開放という荒療治が必要な時期に来ているのでしょう。当然、競争に負ける人が大勢出て来ますが、それが資本主義の本質であり成長への原動力でもあります。

■ 騙された改革を受け入れるのでは無く、自発的に改革すべき ■

私がアベノミクスや安倍氏の構造改革を批判するとするならば、それは国民を騙して改革を実行しようとしている点です。

この場合、批判の対象は安倍氏では無く騙される国民側です。

日本や日本人は現状ではジリ貧ですが、多くの人達が「変わらない事」を望んでいます。その願望が日本の長期に渡る経済の停滞を生み出している事に私達は気付いていません。

アジアの向上心旺盛な人々と付き合う事で実感するのは、日本人が失ってしまったギラギラとした感じです。結局は良くも悪くも人々の「欲望」が経済を発展させるのでしょう。


日本は成熟国家ですから、新興国と同じ成長力は持ち得ませんが、少なくとも若者ぐらいはギラギラしていたいものです。

アベノミクスを評価するならば、偽薬によって日本人にギラギラとした欲望が残っていた事を証明した事では無いかと思う今日この頃です。

貧富の差が拡大する世界・・・ストック市場の拡大が意味するもの

2014-04-03 11:12:00 | 時事/金融危機
 

■ 先進国の成長力の低下 ■

日本の貿易赤字が定常化しています。
短期的な原因は二つあります。

1) 原発停止によって天然ガスの輸入量が増大
2) 海外の消費が回復していないので円安でも輸出量が減っている

アベノミクスの支持者達は、上記の短期的理由に着目して、世界経済が回復すれば輸出も回復し、原発が再稼働すれば天然ガスの輸入量も減るから問題無いと主張するでしょう。

一方、歴史的に見れば先進国の製造業が衰退するのは避けられません。
同じ製品が出来るのならば、コストの安い国に創造設備が移転する事は止められないからです。

1) イギリスはかつての工業国であったが繊維産業は海外に移転した
2) アメリカもかつての工業国であったが、日本やドイツにその座を譲り渡した

工業が隆盛で加工貿易によって外貨が流入する時期は、貿易収支は大幅に黒字になります。同時にその様な時代は、国家のインフラ整備が盛んな時期に重なるので、内需も大幅に拡大します。

インフラ整備には財政出動が伴いますが、経済成長による税収の増加と高いインフレ率によって財政状態は良好に保たれます。

しかし、製造業が海外に流出し、さらには国内にさらなる生産性向上になる新規インフラ投資が少なくなるにつれて、経済は停滞を始めます。

1) 製造業の海外移転で貿易黒字が減少しやがて赤字が定着する
2) 新規公共事業による生産性の向上がゼロかマイナスに転じる

多くの先進国がこの様な経緯を辿って、低成長時代へと突入して来ました。

■ 製造業から金融業へのシフト ■

イギリスは大英帝国時代に世界中から富を簒奪します。
彼らはその富を金融という手段を用いて運用して来ました。

イギリスはアメリカを成長させる事による、アメリカを介して世界の富を集めるシステムを構築します。

アメリカの銀行の株を通して、アメリカの利益の上米を効率欲ピンハネする方法を編み出したのです。

アメリカは基軸通貨ドルの力を使って世界の富を集めています。
ドルはニクソンショック以降は単なる紙切れに過ぎませんが、人々の幻想によってその価値は保たれています。そしてFRBがドルを発行すれば、アメリカは世界中の物を買う事も出来ますし、世界中に投資する事も出来ます。

その代償として財政赤字が膨らみますが、その借用書としての米国債ですら、世界中で大人気です。

こうして、かつての覇権国家は、製造業が衰退した後も利益を確保する方法を生み出しています。


■ お金でお金を稼ぐのは効率が良い ■

製造業は生産を拡大する事で利益を拡大します。
その為には設備投資や雇用の拡大が必要で、資金を借りれば金利負担も生じます。
作った商品が思い通りの価格で全部売れる訳では無いので、損失も発生します。
この様に製造業が利益を上げるには大変な労力や計画性が必要です。

一方、お金でお金を稼ぐ方法は効率的です。
経済が安定して成長している国に投資すれば高い金利が得られます。
業績が確実に上昇する企業に投資しても、それなりの金利が得られます。

■ 見せかけのお金がお金を生む ■

資産(ストック)の美味しい所は、相場の上昇によって生まれる「見せかけの利益」がさらなる利益の源になる事です。

例えば保有する株価が上昇すれば資産総額は増大します。この「見かけ上増えた資産」と担保にさらにお金を借りて投資する事も出来ます。

土地も価値が上昇している時には担保価値が上昇するので銀行は沢山のお金を貸してくれます。

■ ストック経済はやがてバブル化して崩壊する ■

ところが相場が過熱すればいつかはバブルが弾けます。

ストックに依存した経済は、さらなる利益を求めて「架空の利益」を膨らめてゆきます。「架空の利益」とは実質的な価値に裏打ちされない利益です。

ストック市場の拡大速度は、実体経済の成長速度を大きく上回っていますから、どこかで限界に達すると実体経済の規模まで縮小します。これがバブルの崩壊です。

■ ストック市場の崩壊を資金供給で食い止めるのが量的緩和政策 ■

現在、世界の中央銀行が行っている量的緩和政策は、ストック市場の崩壊を資金供給によって強引に食い止める政策です。

ストック市場の価格は「見かけに価格」なので、危機が去れば元の「見かけの価格」に徐々に戻って行きます。量的緩和の目的は、紙くず同然になったMBSなどを政府や中央銀行が買い取ったり、銀行の損失を公的資金で補てんする事で、「見かけの価格」を維持する事です。

こうしてリーマンショックによって減少したストック市場の価格は、近年、リーマンショック前の水準かそれ以上に回復しています。

■ 実体経済の成長を犠牲にするストック市場 ■

近年問題なのは巨大化し過ぎたストック市場が実体経済本来使われるはずの資金を吸収してしまう問題です。


1) 人々が労働の対価となる賃金の一部を預金する
2) 銀行は金利が高い投資を選好する
3) 実体経済への投資より、資産市場での運用が高利回りならば資金は資産市場に集まる
4) 実体経済で必要な資金が不足するので、結果的に需要が圧迫される。

近年、先進国で問題となっているのは「潜在需要の不足」です。
本来、人々の物欲は再現が無いので、資金が実体経済で循環していれば、人々の旺盛な購買行動が経済を発展させます。

しかし、資金が資産市場に滞留すると、一部の資産家が資金を独占する為に一般の労働者の賃金が伸び悩む事になります。一部の資産家の消費出来るモノの量は限られていますので、富が資産家に集中すればする程、実体経済は停滞します。

■ 投資によって成長力の高い国が発展する ■

資産家は金利の高い投資を好みます。

成長が鈍った先進国よりも新興国の資金需要は旺盛なので、金利も当然高くなります。こうして本来国内で循環するはずの資金は、資産家や銀行の投資によって国外で運用されます。

先進国の経済成長率が低下する分だけ、新興国の経済が拡大します。

資産家や銀行は投資利益を国内に還元せず、新興国に再投資するので、新興国経済は過熱しながらも拡大を続けます。

■ 先進国の量的緩和は新興国を発展させている ■

FRBのテーパリングで新興国経済が最初にダメージを受けるのは、新興国経済を支えていう資金が量的緩和に供給されているからです。

一方、新興国の国民がせっせと働いて生み出した製品の多くは先進国の国民、特にアメリカ国民が買っています。

新興国には貿易黒字のドルが積み上がりので、外貨準備は米国債へと姿を変え、アメリカがさらなるドルを刷る手助けをする事になります。

■ 新興国の経済成長をドルを支えている ■

米国債の海外保有分の40%がコンスタントに日本と中国によって保有されています。
かつての新興国である日本と、現在の新興国である中国は、米国債とドルをせっせと買い支えています。

特に中国は為替をドルに緩やかにペッグさせている為、香港市場で大量のドルを買って元を売っています。

■ 日本は金融では損をしてばかり・・・ ■

日本の実体経済の成長が鈍化する中で、「貯金から投資」への変換を促したのが小泉政権でいした。

老人達は老後の資金を「投資信託」に投資する様になります。
その結果、利益を上げた人は居るでしょうか・・・・・。
多分、リーマンショックで皆さん損をしてしまいました。

世界はバブルを成長させたり、あるいは崩壊させたりしながら巨大な資金を生み出したり、消失させたりしています。

その過程で成長力の低い国の資金は、「投資」を通して成長力の高い国へと誘導されます。市場を拡大するにはある程度の資金が必要ですから、日本の老人の資金までもが「投資」として利用されます。

そして、バブルが弾ける直前に「相場を作った人達」は一足先に売りけ、巨大な利益を手にします。後には可哀そうな逃げ遅れた人達が残されます・・・・。

こうして、日本の老人の様な「小金持ち」の資金をも吸収しながら金融資本家達は巨大になり続け、日本の若者達は、「スカンピン」になった老人達を押し付けられる事になるのです。



アベノミクスはNISAによって、ささやかな庶民のお金までも投資市場に投げ込もうとしています。



確かに「お金でお金を稼ぐ」投資は儲かります。しかし、それは「見せかけの利益」である事が世界の真理です。


人々のささやかな欲望が、貧富の差を生み出している事に私達は気付いていません。そして最大の欺瞞は、中央銀行が失業率を金融緩和の理由にしている事です。金融緩和こそが貧困を生み出しているという歪みに気づくべきなのでしょう。


日銀の異次元緩和の生み出したものは、賃金の上昇無き物価上昇でした。要は、私達の実質賃金は下がったのです!!