習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

吉田修一『悪人』その2

2007-10-18 22:35:21 | その他
 最後の告白シーンを読みながら、涙が出てきそうになった。単純に可哀想とか、そういう話ではない。彼が「悪人」になってしまった理由なんかを突き詰めたって何の意味もない。  出会い系サイトで知り合った女性を殺し、さらには同じように出逢った別の女性を連れて逃亡し、最後にはその女の首を絞めようとした男を「悪人」と呼んでもいい。しかし、彼を認めるのではないが、彼の最後の告白の中にある彼の人に対する優しさが、 . . . 本文を読む
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川上健一『ららのいた夏』

2007-10-18 21:59:41 | その他
 読みながら、途中で「これ以前読んだことある」と気付いた。数年前の話なのにもう忘れているなんてスゴイなぁ、と自分でも驚く。でも、面白いからどんどん読みすすめてしまい2日程で400ページくらいあるのにラストまで読んでしまった。  シリアスな物語ではなく、ちょっとファンタジー的なお話で、一瞬で駆け抜けた夏のことが、主人公のららの走り同様に軽快に綴られる。高校の運動会の5キロマラソンからスタートして、 . . . 本文を読む
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川上未映子『わたくし率イン歯ー、または世界』

2007-10-18 21:43:20 | その他
 いかにも芥川賞候補になりそうな作品だ。こういうちょっと、とんがった文体を持つ作品は確かに目を引くが、小手先で作ったキワモノと紙一重だ。芥川賞の選考委員のセンセー方は、ここをしっかり見極めなくては結局1作だけの泣かず飛ばずの作家を受賞作家として、作ってしまうことになりかねない。  川上さんは今回残念ながら落選したようだが、この1作では彼女の真価は伝わらない。まだなんとも言い難い。  前半、なん . . . 本文を読む
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『ヘアスプレー』

2007-10-18 21:09:40 | 映画
 オリジナルのジョン・ウォーターズ版同様、ストーリーらしいストーリーはほとんどない。ハリウッドのミュージカル大作なのに、ここまで何もない話でいいのか、なんてこちらが心配になるくらいだ。  オリジナルでディバインが演じた母親をジョン・トラボルタがやる!とても綺麗でキュートなオデブさんで、はまっているが、それだけでは飽きる。もちろん主人公は彼女の娘である同じようにオデブさんの女の子のほうで、彼女が堂 . . . 本文を読む
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『パンズ・ラビリンス』その2

2007-10-18 20:44:23 | 映画
 前回はあまりに簡単に書いたのでもう少し補足したい。  あのギレルモ・デル・トロの映画とは思えないくらいに端正なファンタジーである。とても美しく哀しい。でも、デル・トロなんで、やはりかなりグロテスクで、残酷なシーンがいっぱいある。  ただ、内戦下のスペインを舞台にして、(なんとエリセの『みつばちのささやき』を意識したらしい!)少女の不安と孤独に焦点を当てているので、グロが暴走することはない。 . . . 本文を読む
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『シッコ』

2007-10-18 20:04:15 | 映画
 突撃レポーター、マイケル・ムーアが、今度はアメリカの医療問題に挑む。相変わらずエンタテインメントしてるのが、凄い。なのに下品にはならない。  キューバ行きのシーンから、ラストまで、こういう救いをしっかり用意しているところが凄い。ストーリーラインもしっかり用意してあり、クライマックスもあるし、当然カタルシスもあるというハリウッド映画のような明快さが、ドキュメンタリーであるにも関わらず、本国でも大 . . . 本文を読む
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角田光代『予定日はジミー・ペイジ』

2007-10-18 19:33:56 | その他
 角田光代がこんなものを書くなんて。きっと実体験をベースにした半分ノンフィクションなんだろう。日記スタイルで、妊娠から(性交した、なんて書き出しだ!)出産なでの日々が静かに綴られていく、と書いてからあとがきを読むと、「私、妊娠してません。まして出産なんて」と書いてあったので苦笑する。  僕たち読者は単純なんで、こういう小説を読むとすぐ、ついつい私小説だと思ってしまうのだ。ごめんなさい。  これ . . . 本文を読む
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