この小さな一歩は、とても大事な始めの一歩となる。これまでどんどん加速するように大きな話を作り続けてきた金哲義が『ボクサー』で大河ドラマとしての自分史の完成形を極めた。そこで、「家族のこと、生野のこと、在日朝鮮人であること」といった自分を巡るいくつもの問題ととことん向き合い、それをドラマにしたのだが、今、とりあえずそこに一区切りを付けた後、ようやく新しい第1歩を踏み出したのが本作だ。
日本人で . . . 本文を読む
25年も前の作品となる。犬の事ム所時代の作品だ。これは20年振り、2回目の再演となる。今改めて見ると、これは作品としては甘い。でも、そんなことは当たり前のことだ。まだ大竹野が20代だった頃の作品である。そこに完成度を望むなんてナンセンスな話だ。そんなことよりもこの作品も孕み持つ不穏な空気や、熱気と勢いの方を大事にしたい。それは若さゆえではなく、大竹野正典という作家の資質の問題であろう。だからこそ . . . 本文を読む