久々に山下敦弘監督らしい映画ではないか。でも、こんなにも貧乏くさい映画を、全国東映系で一斉公開するなんて、なんだかとても勇気ある行為だ。いくら前田敦子が出ていてもそんなものほとんどなんの効果もない。1986年なんていう時代設定も、今の観客にしてみれば何の興味も惹かないだろう。「なに、それ、」って感じだ。もちろん芥川賞受賞作品の映画化なんて言うのも、まるで意味をなさない。大体、日雇い労働者を主人公 . . . 本文を読む
『ヒラカタ・ノート』はずっと見たかったお芝居だ。でも、なんだか機会がなくて、今まで見れなかった。今回そのバージョンアップ作である本作を見ることができて、とてもうれしい。ごまのはえさんの自伝的作品なのだろう。枚方の団地で生まれ育ったひとりの少年が、自分と自分の周りの世界をどんな目で見て生きてきたのかが、いくつものエピソードの積み重ねの中で描かれていく。
だが、ほんとうはそんな単純な構造ではない . . . 本文を読む
これはとっても小さな初恋の物語だ。中西邦子さんの自伝的作品、なのかもしれない。あまりにさわやかで、でも、ささやか過ぎて、なんだか恥ずかしい。声に出して友だちに、あるいは、もっと漠然と、周囲の誰かに、話すことすらできないような、話である。本人には大事なことでも他人にとってはどうでもいいようなことってある。それがこれなのだ。だから彼女はそれをお芝居にした。ひっそりと小声でおしゃべりするように始まる。 . . . 本文を読む
チャン・ウエンがこの大作映画を手掛け、国内ナンバー1ヒットを記録したことを喜びたい。こういう国民的娯楽大作が、中国で作られ、それは同時に芸術作品としても歴史に残るものであること。その事実を心から喜びたい。これは中国映画の『七人の侍』である。ストーリー面での類似だけではなく、いや、それ以上に大事なことは、その精神面である。
チャン・ウエン演じる男は盗賊団のリーダーであるだけではなく、体制と戦い . . . 本文を読む
女たちはものすごく頑張る。そんなに頑張ったらきっと疲れて、倒れてしまうよ、と思う。たまには息抜きをしなくちゃ。でも、彼女たちにはそんな余裕はない。全身全霊で全力投球。涙ぐましい。これが男だったなら、こんなにも頑張らなくても、同じくらいにやれたはずだし、生きていきやすいだろう。
だが、彼女たちは女に生まれたことを恨んだりはしない。それどころか、100回生まれてきても、100回とも女でありたい、 . . . 本文を読む
このあまりの感傷に、ついていける人はほとんどいない。自伝的小説といっても、ここまで自分に(自分の世界に)作者自身が酔ってしまってはいけない。これでは読者が退いてしまうこと必至だ。僕はこの人と全く同年代だからこの人の考えていることや、感じたこと、時代の気分は十分にわかる。だから共感できるけど、それにしても甘すぎるし、小説としての批評性はここにはない。素人のマスターベーション小説としか、いいようがな . . . 本文を読む