ケン・ローチがサッカー選手のエリック・カントナとコンビを組んで放つコメディー映画だ。こういう軽いタッチのハートフル・コメディーを彼が手掛けるのは初めてのことではないか。しかも、ケンローチ史上初のハッピー・エンドである。重く暗い現実をじっくり描くのが、いつもの彼なのに、そういう意味では今回はまるで彼らしくない。
だが、作品の底に流れるものは、いつもと同じだ。今回も労働者階級の貧困が描かれる。最 . . . 本文を読む
こんな女たちがいたら、絶対つき合いたくない。(まぁ、彼女たちと僕とではまるで接点がないからつき合うはずもないし、僕なんか彼女たちからは絶対に相手にされないタイプだろうからそんな心配は無用なのだが)男も大概だがこの姉妹と、妹の娘。こいつら、たまらん。なんか不道徳だ、とかそんなことが言いたいのではない。生理的に耐えられない。不快だ。
僕はもっと真面目に生きている人が好き。この姉妹が不真面目だとい . . . 本文を読む
笑いをテーマにして見せていく。「コント公演」と銘打っている。1時間ほどの短編集。1本の長編とは違うけど、ともにょ企画らしいさりげなさがいい。ことさら笑いに拘っているわけではない。さらりといくつかのシチュエーションを見せるだけだ。人間観察の方がメーンとなる。ひとつの状況下で複数の人間のとる行動の差異で笑わせる。
第1話が一番おもしろかった。鈴木さんらしいシュールさがいい。絵を描いていた女の子が . . . 本文を読む
3年半振りのスピルバーグの新作だ。しかも30年も暖めてきた企画だという。期待しないではいられない。ドキドキしながら、スクリーンと対峙する。古典であるこの児童向けの本を、スピルバーグがどう料理したのか。気になるところだ。お話は単純なよくある冒険活劇だ。絵本の世界を実写ではなくモーションキャプチャーで見せる。これはゼメギスの得意技だ。(でも、彼はいつも失敗している)
正直言ってこのシステムの映画 . . . 本文を読む
『マシニスト』のブラッド・アンダーソン監督が放つパニック大作か、と思わせる写真と、予告編。誰もいなくなった街の風景なんか今までも数々の他の映画で見てきたから、いまさら驚かないけど、それが『マシニスト』のブラッド・アンダーソン監督だと思うと期待できる。しかも、飛行機が真っ逆さまに落ちてくるシーンとか散々予告で見たし、ポスターにも使ってるし。だから、これってなんか大作か、と思ったし。
でも、実際の . . . 本文を読む
ちょっと季節はずれになったけど、これはハロウインの夜のお話。クリスマスには早いけど、ハロウインは終わってしまったこの時期に敢えてこの企画で勝負する、ってほんの少し間抜けでそこがかわいい。当日パンフでも自分たちでそのことに触れている。これは芝居なのだから別にそんなこと気にしなくてもいいのに、と思ったけど、そこを敢えてちゃんと気遣う姿勢がいい。
芝居には(というか、芝居にかかわらず芸術表現ならい . . . 本文を読む
アメリカ映画には、野球映画に優れた作品が多い。しかも、途切れることなく作られる。今回もまた傑作の予感がしたのだ。監督はあの『カポーティー』を作ったベネット・ミラーだ。ブラット・ピット主演というのも、なんだかいい作品の予感。いい監督とその時代のトップスターがタッグを組んで野球映画に挑む。昔、ロバート・レッドフォードがバリー・レビンソンと組んで『ミラクル』を作ったときの感動を思い出す。あの映画は野球 . . . 本文を読む
20周年記念作品だ。なのに、わかいさんの休病で延期になった。ほんとうに久々の未来探偵社なのに、残念でならない。だけど、こんなふうに未来探偵社が今もちゃんと活動を続けていることがうれしい。コンスタンスに毎年1,2本定期的に上演できなくてもいい。自分たちのペースでずっと続けられることが大事なのだと思う。
今回、彼らは、記念公演ということで、客演を盛大に呼んでお祭り騒ぎの芝居を作ろう、とはしなかっ . . . 本文を読む
今年2月に公開された『冷たい熱帯魚』は凄い映画だった。その時のはもう既に、この新作は完成していて、宣伝していた。あの映画を見た直後なので、一刻も早く見せろ、と思ったのに、なんとそれから10ヶ月である。いくらなんでもこれは長すぎる。公開がここまで遅くなったのは僕たちの与り知らぬことだが、恐るべし園子温。さらには次の新作である『ヒミズ』も待機中だ。
今回は18禁である。それは性描写だけではなく、 . . . 本文を読む
これは凄い予算を投入した超大作だ。これだけのビジュアルを作るためには、いくらCGでなんでも出来る時代になったからと言っても、それなりには湯水のようなお金が必要だろう。『セル』『落下の王国』に続くターセム監督の美意識が全編を彩るアート映画。これは娯楽アクション大作映画を期待した観客を見事に裏切る。だいたい何が描かれているのか、それすらわからない人も多いのではないか。スペクタクルであることは認める。 . . . 本文を読む
これはありえん、と思った。ここまでわがままな商業映画はない。一応これって商業映画なんのだよね。でも、いくらなんでもこれはない。ビクトル・エリセが認めた才能、という宣伝に乗せられてレンタルしてきたのだが、むちゃする。僕は基本的に説明なんかいらない人だが、ふつうの人はこれでは怒ると思う。自主映画なら、ありそうだが、劇場映画ではこれはしない。アート映画でもこういうのって、やりそうなのだが、これはそんな . . . 本文を読む
廣木隆一監督が中上健次に挑む。まずそのことが何よりも興味深い、と思った。中上健次の映画化はほとんどない。映画にするのは難しい。しかも興行的にも絶対にうまくいかない。それだけのリスクを抱えてそれでもやろうという奇特な人はいない。映画はまず商売だから売れなければ成り立たない。自主映画で採算を度外視したものもあるだろう。だが、これは違う。まぁ、今の角川映画はなぜこんなものを、という映画を結構連発して、 . . . 本文を読む
このアホなタイトルを見ただけで、力が抜けてしまうはずだ。しかも、このサブタイトル。これって、一体なんだ? と、ふつうの人なら思うだろう。五反田団の前田司郎の原作小説を本人の脚色で贈る脱力コメディー。本田隆一監督作品。惜しい出来だ。
こんなバカな映画を平気で作れる本田監督は偉いとは思う。だが、一筋縄ではいかない原作者のやりかたを忠実になぞるには彼はまじめすぎた。両者の齟齬が後半どんどん大きくな . . . 本文を読む
この騒々しくて、めちゃくちゃな話をあの端正で静かな傑作『そして、私たちは愛に帰る』のファティ・アキン監督が作ったということに驚く。倉庫かなんかを改造した大衆レストランを舞台にして、そこに集まってくる人々とオーナー、スタッフとのやりとりを描くハートフル・コメディーのスタイルなのだが、よくあるパターンにはならない。
ソウルキッチンのオーナーである本編の主人公ジノス(アダム・ボウスドウコス)は仕事 . . . 本文を読む
とてもいやな話だ。主人公は中3の女の子。家の中には全く自分の居場所がない。こんな状況で、どんなふうにして毎日を生きていけばいいのか。家だけではない。学校にも、塾にも、どこにも自分の居場所なんかない。
それでもまだ、学校があるときはましだ。行かなければならないから、仕方なく行く。楽しくはないが、それで、時間が潰れる。塾も同じだ。学校が終われば夜は塾に行かなければならない。後は、帰って寝るだけだ . . . 本文を読む