明日の日食を拝めますようにとお供えを用意したクアトロの父だ。
ナポリのあるカンパーニャから水牛のモッツァレラを取り寄せた。チェリーのように小さくまとめたモッツァレラで「モッツァレラ・ブッファラ・カンパーニャ・チリエジーネ」という。ハリー・ポッターのおまじないのような名前だ。
とても神経質な水牛のミルクは今や希少価値がある。その水牛のモッツァレラの味わいは、牛乳のものよりも数段味わい深く感動的である。もう日食が雲に隠れようが、このモッツァレラの美味しさで充分だと思ってしまう。
しかしこのお供えは日食と十五夜を勘違いしているクアトロの父だ。
「えー、わたくしのぶれた発言、土用に“う”の字の付かないチーズを大量に用意したり、海の日に海にいない稚鮎をおすすめしたり、日食に水牛のモッツァレラをお供えしたりと、国民の皆様に政治不信を与えたことをお詫びしなくてはいけません」
涙ぐむクアトロの父だった。
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