マッジーニ四重奏団(naxos)CD
アイアランドで最も有名な作品(原曲ピアノ曲)とされているが極めて短い旋律音楽であり、印象派後の響きを用いているが寧ろ同時代のイギリス民族主義の民謡編曲のような風あいの曲である。アイアランドのピアノ曲を俯瞰すると時期により変化がある。比較的複雑でしばしば呪術的と言われる神秘主義の曲こそ昔はよく取りざたされ(音が多い曲を書いたからスクリアビンと比較された)、その対極にある後期のロマンティックな、特にサルニアのような曲は個人的に愛好される傾向にあった。この曲はその中では後者に位置づけられる。突出したものとは思えず自国でメロディが愛好され、さまざまに編曲された結果代表作のように扱われたにすぎないように思われる。古典的で形式的とも感じ取れる部分も目立ち、取り出してこのような編曲で中継ぎに演奏されるのはありかもしれないが、アイアランドを味わうには音が少なすぎる。カルテットは美しい編成だが、アイアランドにしてはあまり頭に残らない。自作自演が2つも残る「April」もこちら側だが、歌謡的な旋律にくわえサルニアに近い透明なロマンスが編み上げられており、私はHoly Boyより薦めたい。演奏は精度の担保された良い物。