○カーティス指揮スワン管弦楽団(naxos)CD
これは見事な編曲。アイアランド後期の憧れに満ちた作品〜その島の思い出はナチ侵攻によりひときわ悲しさを増す〜を均質な弦楽合奏で紡ぎ直すというのは、この曲のひときわロマンティックであるところと、緩徐楽章ということもあり要求される繊細な情感を変質させず広がりをもたせるのにうってつけだ。透明に安らかに、密やかに、原曲にも増して本質を掴んだような曲になっており、まるでフェンビーの描きなおしたディーリアスのように水彩画風の淡い色彩感が出ている。編曲者が変な作家性を持ち込まず真摯にやったものを、現代の弦楽合奏の精度で(音の多いピアノ曲は和音を終始綺麗に響かせていないと本質が損なわれてしまう)ノンヴィヴに近い音を交えながら雑味のない音を揺らがせ、それはこのような曲にはとても重要なことなのだ、と思わせる。今の精度からすれば最高級の腕ということもないのだろうが、この編曲を十二分に活かした名演だと思う。雑味のないアイアランドは瞑想的で何度でも聴ける。