湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ヴォーン・ウィリアムズ:チェロと管弦楽のための暗い牧歌(マシューズ編)

2018年12月01日 | ヴォーン・ウィリアムズ
ジョンストン(Vc)イエーツ指揮王立スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(dutton)2012版・CD

ヴォーン・ウィリアムズが第二次大戦中手を付けながら未完の緩徐楽章のみ残されたというチェロ協奏曲を、単独楽章のものとしてBBCの依頼によりマシューズが完成、2010年プロムスにて披露された(イッサーリス独奏、youtubeで聴ける)。dark pastralという題名はRVWがつけたのではない。duttonのRVW未完曲目発掘録音のメニューの中に取り入れられ、録音されたのがこの唯一のCDということになる。ヴォーン・ウィリアムズのこのての静謐な作品は必ずしもライヴに向かない。ノイズレスでたっぷり時間をとって、精緻に作り上げた音響をもって初めて味わうことができる。これはまったく、全盛期ヴォーン・ウィリアムズの牧歌である。40年代のRVWにしてはむしろ古風とすら言える。複調性で深みを出してきた「野の花」よりは田園交響曲や揚げ雲雀の世界で、旋律はけして「ダーク」ではない。これが暗いなら、タリスの主題〜も暗いことになる。奇麗過ぎて諦念を感じさせる点で、ヴォーン・ウィリアムズ好きにはたまらない曲で、ヴォーン・ウィリアムズにしてはチェロの使い方が上手いと言えるかもしれない。音域的にチューバ協奏曲を彷彿とさせるかもしれないが、中身にシニシズムはゼロである。むしろドヴォルザークの協奏曲を思わせるところがある。ヴォーン・ウィリアムズは似せて作ることが比較的容易とみえてパスティーシュが多く作られるが、これもそこを汲み取って作ったのだろう。演奏はゆったり、よくできている。ヴォーン・ウィリアムズ好きならどうぞ。それ以外は他の曲と区別がつかないだろう。「チェロ協奏曲」です。
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