湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆ホルスト:歌劇「どこまでも馬鹿な男」よりバレエ組曲

2016年11月18日 | イギリス
○サージェント指揮シンフォニー・オブ・ジ・エア(NBC交響楽団)(DA:CD-R)1945/3/11live

録音の悪さは同日のウォルトンのヴィオラ協奏曲同様。ただ、オケの繊細で金属的な響きがよりビビッドに捉えられていて、雑音を除けばサージェントがホルストに示した適性というか、近現代作品を鮮やかにさばく手腕を感じ取ることもできる。

惑星と同時期の作品というのはどうしても惑星と比べてしまうものだが、素材や書法に共通するものがないとは言えない。正直、多い。目立つのは天王星と共通する箇所だろう。作曲時期によって晦渋であったり平易であったりその極端な差がホルストであったりするのだが、惑星程度の近代性を主張し、それでいて平易な曲というのはやはり、このあたりの似通った楽想をもつ作品ということになる。ブラス、とくにボントロの重用は後年よく作曲した小規模作品とは異なり、大管弦楽をメインに据えた野心的な作風のころをよく示している。同時に神秘主義が最も「雄弁に」表現された時期とも言える。「ポジティブな神秘主義」とでも言うべきか。「アグレッシブな神秘主義」でもあろう。なにせ、魔術師がダンスしてしまうのだから。

オペラ嚆矢のバレエ音楽としてよく取り出して演奏されるものだが、オペラティックな構成の中で生きる部分と明らかに独立した楽想として舞踊的にもしくは「印象派的に」かかれた部分が交錯し、前者は陳腐ともとれるロマンティックなものとしてあらわれ、後者は神秘的な音楽としてあらわれ、ほぼ繋がってメドレーされていくが、噛み合わせが少しちぐはぐな感じもする(そもそもバレエ音楽部分は他作品からの転用らしい)。その後者において、まさしく惑星の各楽章を髣髴とさせるものが多く聴かれる。それゆえ楽しめる向きも二番煎じと捉えてしまう向きもいるだろう。形式上神秘主義的題名を冠された三曲からなるが楽想自体はそれぞれの中に更に詰め込まれている。

サージェントは弱音部においては金属的な音響を緻密に響かせながらメランコリックな楽想を陳腐化させることなく爽やかに昇華させており、舞踏的表現においてはトスカニーニを彷彿とするような前進力に明快なリズム処理で清清しい感興をあたえている。メインプロとしてはいささか短い曲だ。○。

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