りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

バスロマン。

2010-04-15 | Weblog
それは、あまりにも突然だった。


「もう、一緒に入らないから」


僕が一緒に風呂に入ろうと娘を誘ったら、娘はそう答えた。
素っ気なく。壁にもたれて。少女漫画を読みながら。

たしかにこの半年ほどの間に、娘は一人で
風呂に入れるようになった。
しかし、僕が息子と一緒に「入るか?」と誘えば、何の躊躇も
なく一緒に入ることもまだ当たり前のようにあったし、時には、
自分から僕に向かって「一緒に入ろう♪」と誘ってくることも
つい最近まであったのだ。
それが突然・・・・。

10年もの間、目の前にいるこの娘の親をしてきたのだから、
僕には分かる。
娘は、本気だ。
何よりも、僕の顔を一切見ずに、漫画雑誌を眺めながら
僕の誘いを断ったことが、最も娘の気持ちを表している。
だって、漫画を読んでるはずなのに、まったくページを
めくる気配がない(笑)

「お前なぁ、人が話しかけてる時は、その人の顔を見なさい」
僕の少し強めの口調を耳にした娘は、少女漫画を置いて、
僕の顔を見た。
「一緒に入ろ
「イヤ」
「・・・・・

なんなんだ、この豹変ぶりは
まるで佐野元春のバラード「彼女」の歌詞のような変わりっぷりだ。

「あ、バスロマン、今日から変わったんだって(妻を見る)
・・・今日から“森林の香り”だって。だから・・・」
「いいよ、バスロマン入れといても。後で入るから」
「・・・・はい

しびれを切らしたのか、僕と娘の低レベルの会話を見ていた妻が
僕をキッチンの隅に呼んだ。そして、こっそり真相を教えてくれた。

どうも新学期がはじまったばかりの娘は、新しいクラスの友達と
何気ない会話をしている中で、自分だけがいまだに父親と風呂に
入っていることを知ってしまったそうなのだ。
他の仲のいい友達は、みんな一人で、もしくは親と入るにしても
母親とだけ風呂に入っているらしい。

娘は、どちらかといえば無口でおとなしい性格だ。
きっとその会話の最中、恥ずかしいのを堪えながら、黙ったまま
みんなの会話を聞く役に徹していたのだろう。

僕にも経験がある。
周りの友達と違っていたら、とたんに不安になったり
恥ずかしくなったりした覚えがある。
ちょうど娘くらいの年齢だった。


仕方ない・・・・か。


息子は風邪気味なので、今日の風呂は休み。
本当に一人で風呂に入った。

湯船の中でぼんやり考えた。

娘と風呂に入ることは、もう本当になさそうだ。
そう思うと、やけに風呂が広く感じる。
願わくば、もう少し先まで一緒に入りたかったなぁ。

予定としては、娘の体つきが丸くなりはじめたのに
気づいた僕が、一緒に入るのが恥ずかしくなって
僕の方から「もう一緒に入るのをやめよう」って
言うつもりだったのに・・・。

やっぱり、世の中、思い通りに行かないものだ。

バスロマンの「森林の香り」でグリーンになったお湯をすくう。
悪い香りじゃない。清々しい気分になる。
でも、僕は前の「ミルクの香り」の方が好きだ。
コメント
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