Constructions hazardeuses
kettererkunst
ヴォルスは、20世紀の激動のヨーロッパで、独立した精神の持ち主であることを貫いた芸術家だ。
後人がつけたカテゴリーでは、アンフォルメルに分類されるが、彼自身、どこにも所属したくはなかっただろうとおもわれる。
ヨーロッパでは、列強国がしのぎを削って覇権争いをし、ついにはナチズム台頭という狂気へまっしぐらの、自由を重んじる人々にとっては暗黒の時代。
ドイツ人でありながら、その狂気の渦に抵抗した彼は、放浪の人となった。
しかし、そのような時代にあって正気を保とうとするのは、想像を絶する困難を極めたに違いない。
彼の描く絵は、ぴりぴりとした苦悶に歪む魂の叫びが押し込められているようだ。
壮絶な美が、画面の牢獄に繋がれている。
同じカテゴリーの人、フォートリエのそれとは、いささか趣が違う。
ヴォルスは、たぶん振り切れた世界に足を踏み入れてしまったのではないか。
同国人の愚行に心を痛め、ドイツ人というだけで他国からは敵として見做される、寄る辺なきそのやりきれない境遇。
これは、誰しも身に降りかかることで、茨の道を進みたくなければ、間違っていようとも大多数に迎合するのが世の常なのだ。
果たして、それでいいのかは、個人の理性にかかっている。
精神の独立と自由は、自分で守り貫くしかないということだ。