1952
1945
ベン・ニコルソンは、20世紀のイギリスの抽象画家。
幾何学形態を使い淡色で描く。
彼の絵と出合ったのは、働いているアートショップで扱っていた商品のアートポスターの中の一枚として。
縦1メートル以上もある大きなもので、薄いブルーと明るいグレーが基調となり、差し色として黄色と赤が細く黒い線の中に控えめにある、ちょっと寂しげな作品だった。
その店が存続していた6年間、ポスターコーナーでどこかの壁に掛けられる日をじっと待ち続けていた。
しかし、ついにその日はやって来なく、店が閉まって後そのポスターがどうなったかはわからない。
もし、そのときに戻れるのであれば、彼を我が家に連れてきたい。
いなくなって始めてその存在の大切さに気付く、そんな作品なのだ。
彼は、部屋の隅に置かれた椅子に座って、イエイツの詩を蝋燭の揺らめきのように温かく静かな声で語り聞かせてくれる。
聞きたいときに聞き、そうでないときはただ彼の存在があるということをどこかで感じるだけでいい。
今も彼のその絵は、しっかりと私の心の中にいるけれど、控えめなゆえに誰にも買われていかなかったことが残念で、それなのに救えないでいた自分を悔いている。
ベン・ニコルソンの、澄んだ悲しみを感じさせる淡いブルーは、空の色から涙の色になって、私の心を浸すのだ。