大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・30『制服を脱いだらご用心』

2018-03-27 14:56:18 | 小説3

通学道中膝栗毛・30

『制服を脱いだらご用心        

 

 

 連休明けの気温なのだそうだ二十四度は。

 

 夏の二十四度は間違いなく涼しい。

 でも、新学期始まって間もない四月の二十四度は堪える。

 学校も分かってくれていて、校内では上着を脱いでブラウスだけで過ごすことを認めてくれている。

「ストーブじゃ、みんなの意に添えなかったから、上着くらいは自由にしていいからね」

 お上にも慈悲はあるぞってな感じで先生は言うけど、分かってるんだ。ストーブはガス代がかかるけど、上着脱ぐのにお金はかからないものね。ま、そこまで言っちゃ先生が可哀そう。

 教室に居る時は、おおせの通り上着を脱ぐけど、教室を離れる時は着る、もしくは手に持って歩く。

 なぜかというと、無くなることがあるからだ。

 むろん上着に足が生えて逃げていくわけじゃない。はっきり言って盗まれる。

 中学校でひどかった。制服を改造してる子がいて、その子たちが盗っていく。

 集会での服装検査があるときや、職員室に呼びだされたりするときに、適当に持っていく。用が済んだら、そのへんに放置される。ただの放置ならネームが入っているので戻ってくるが、ゴミ箱に放り込まれたり、中には便器に突っ込まれたりすることもある。

 時にはネームをカッターで削り取りスペアの制服にしている奴もいる。万一見つかった時は「卒業生にもらったのでネームを削った」と嘘を言う。

 こんなこともある。

 教室に戻ると制服がズタズタに切られてしまっている。

 これならゴミ箱や便器に突っ込まれている方がマシだ。クリーニングに出せば済む話だもんね。

 それは――人から恨まれているんだ――と言われるが、恨んでなくてもやるやつがいる。

 動機は、ただ面白いから。

 だから、わたしは脱いだ上着を放置することはしない。

 

「一年生で上着を盗られる事件が二件ありました、みんなも制服の管理はしっかりしてね」

 

 HRで先生が注意を促す。

 紛失ではなくて盗られたと言っている。紛失とは言えない状況だったことが偲ばれる。

 今のところ二三年で盗られた話は耳にしない。みんな平和な顔をしているけど、経験則から分かっていて、わたしのように予防策を取っているんだ。

 

 学校の帰り道、夏鈴の不在をメソメソ思っていても仕方がないので、通学道中の新名所を開拓して見ようと思い立つ。

 駅を降りて反対側に出てみる。

 こっち側は、秋に新規開店のファンシーショップに行った時以来だ。

 商店街は駅の反対側にも伸びていて、ぶらり歩いても退屈はしない。

 一時間ほどほっつき歩こうと思うのでお茶を確保しようと自販機に向かう。

「お、発見!」

 五台ほど並んでいる自販機の一つ、なんと、一個100円なり!

 ラッキー!

 ポケットの手を突っ込んでお財布を出そうとする……う、なにか手に触った!?

 キャーーー!

 思わず叫んでしまった。

 なんと、ポケットの中に毛虫が入っていたのだ!

 わたしの心は疑心暗鬼でいっぱいになった。

 

コメント
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