大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アーケード・17・こざね編《親指姫~!》

2018-03-14 18:46:15 | 小説

・17・こざね編
《親指姫~!》



 商店街の子どもたちは、愛称の呼び方に法則性がある。

 名前の最初の一字または音を伸ばして、~ちゃんをつけて呼ぶ。

 アニキの岩見甲は(こうちゃん)、近江屋履物店の娘沓脱文香は(ふーちゃん)、室井精肉店の息子室井遼太郎は(りょうちゃん)、喫茶ロンドンの孫娘百地芽衣は(めいちゃん)、上野家具店の娘上野みなみは(みーちゃん)、フラワーショップ花のあやめは(あーちゃん)、西慶寺の藤谷花子は(はなちゃん)という感じ。

 あたし1人だけが、こざねちゃん。ちゃんの上に、まんまの名前が載る。

 こざねというのは、本来は漢字で小札と書くんだよね。
 でも漢字だと「こふだ」と読まれてしまうので平仮名で書いてある。
 小札というのは、鎧の最小パーツ。7センチ×2センチくらいの皮や鉄でできていて、これを数千枚繋げることで鎧ができあがっている。いくら見場の良い鎧でも、この小札がチャッチイと防御力が低くなる。小札が良いと刀はおろか弓矢や槍も通さない。ある程度の距離なら鉄砲だってへーきなんだ。

 つまりぃ、小さいけれど世の中の大切なワンノブゼムになって欲しいという親の願いが籠められている。

 いかにも甲冑師の娘って感じ……なんだけどぉ。
 ま、いいや「それを言っちゃあおしまいよ」的なことを言いそうなのでやめとく。

 商店街の法則性でいけば「こーちゃん」なんだろうけど、アニキが「こうちゃん」なんで区別がつかないんで「こざねちゃん」。

 でもね……思っちゃうんだよねぇ。
 あたし一人がハミ~ゴ。ま、名前はいいんだよ。でもね、アニキたち7人の結束をねぇ。
 ま、みんな同い年で、それこそオムツのころからの幼なじみ。商店街には、あたしと同い年の子どもはいない。履物屋のすーちゃん、家具屋のまーちゃんは1年生。ハミーゴの同志というのには歳離れすぎ。
「ね、幼なじみとかの友だち少ないけど、気にならないかなあ?」
 一度聞いたことがあるけど「なんで~?」という健康的な答えが返ってきた。
「商店街の外に友だちいっぱいいるよ」だって。
 商店街というくくり方は気にならないようだ。

 なんで、あたしが商店街というくくりを気にするか?

 仲のよさ……もう、なんちゅうか、子どもたちみんなが兄弟姉妹ってとこ。むろんあたしも、その一員なんだけどぉ。
 ちょっちハミ~ゴ。

 でさ、男はともかく女の子ね。みんなイカシテてカッコいいってか、クールなんだよね。
 たとえば西慶寺のはなちゃん。きのうお父さんの代わりに月参りに来てくれた。
 お坊さんの格好も板についてる。お経もうまいし、そのあとの話だって、お父さんお母さんと対等に話してるし、お弟子のきららさんより大人に見える。
 で、普段は相賀高校の制服とかで、すっごく清楚な女子高生。他のオネーサンたちもそうなんだけど、とってもイケてる。

 今だって、西慶寺の本堂で商店街のアイドルグループ『アーケーズ』の衣装合わせをやってるんだけどね。
 はなちゃんはガチすごい。制服や衣姿では分かんないけど、衣装を着ると違い歴然。ボンキュッボン!のスタイル抜群。お肌は雪みたく白いし、ミニスカとニーソから覗く太ももなんて、あたしでも鼻血が出そー。
 ルックスも一重の瓜実顔でさ。それでも美人美人してなくて、とってもフレンドリー。

 あたしはさぁ、写メを撮ってもね、スズメの子かタヌキの子。

 ま、衣装着てみんなに混じってしまえば一山いくらの商店街アイドル。その他大勢のモブ子さん。
 なんて思っていると落ち込み~!

 今から、子どもの日のイベントのためのリハやります。

 あ、そ-そー、あたしの数少ない特技。どんなとこでもスマホとかで文章打てること。右手にスマホ持って、親指でパパッとね!

 親指姫のこざねちゃんとお呼びくださいませ~!(o^―^o)!

※ アーケード(白虎通り商店街の幼なじみたち) アーケードの西側からの順 こざねを除いて同い年

 岩見   甲(こうちゃん)    鎧屋の息子 甲冑師岩見甲太郎の息子

 岩見 こざね(こざねちゃん)   鎧屋の娘 甲の妹

 沓脱  文香(ふーちゃん)    近江屋履物店の娘

 室井 遼太郎(りょうちゃん)   室井精肉店の息子

 百地  芽衣(めいちゃん)    喫茶ロンドンの孫娘

 上野 みなみ(みーちゃん)    上野家具店の娘

 咲花 あやめ(あーちゃん)    フラワーショップ花の娘

 藤谷  花子(はなちゃん)    西慶寺の娘

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高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・19『下駄を履いてみた』

2018-03-14 11:44:51 | 小説3

通学道中膝栗毛・19

『下駄を履いてみた』        

 

 

 意を決して下駄で出かける!

 

 いろいろ考えたんだけど、Gパンにパーカー。

 放課後の帰宅後なんで、セーラーの上だけ脱いでとも考えたんだけど、それだとじゃりン子チエのイメージと重なる。

 見てる分にはチエちゃんは活発でかわいい下町少女。ギトギトの大阪弁だけど、あのまま東京弁で喋っていても違和感はない。

 でも、わたしには可愛い属性も活発属性もない。

 

 学校からの帰り道、その決心を鈴夏に伝えると話半ばで「帰ったら夕飯つくらなくっちゃ」と逃げを打たれる。

 

 チエにはひらめちゃんという親友がいる。いつも二人で下駄ばきで遊んでいる。

 ネットの画像で鈴夏を誘おうと閃いたんだけど、敵はすでに読んでいたようなのだ。

「チ、読まれたか」

 伝法に呟いた時は、一人で実行することを覚悟した。

 

 カラ~ンコロ~ン………。

 アスファルトの道に響く下駄の音、ちょっと響きすぎ!

 道行く御通行中の老若男女のみなさんの視線が痛い。

 そりゃ見るよね、こんな騒音をまき散らして公道を歩くのは、ちょっと期せずして暴走族になった心境だ。

 けして高級住宅街という風情ではないご近所だけど。我が下駄の音だけが響いて、こんなに静かだったっけと思い知る。

 能のないことに通学路を歩いている。それも遠回りコースに踏み込みかけている。第三回にも書いたけど遠回りコースはお屋敷街。うちの近所よりも静謐で、目立つこと間違いなし。

 お屋敷街に踏み込む寸前で道をそらして近道ルート。公園とコンビニの駐車場と神社の境内を斜めに抜ける。

 神社でホッとする。下駄の音が響かないのだ。

 鳥居をくぐると真ん中が石畳で、その両側は土なのだ。下駄を履いて初めて分かる土に感触は「これなら恥ずかしくないや」である。なんとなく親しい視線を感じると、神主さんが下駄で歩いている。

 見ると、わたしの下駄よりも異形で、高さが三倍くらいある。

 同類っぽく見られるのが、なんだか気恥ずかしくペコリと一礼して、そそくさと拝殿の脇を抜けて道路に向かう。

 でも、なんで神主さんは、あんな異形な下駄を履いていたんだろ、いつもは白い鼻緒の雪駄だったのに?

 思う間もなくカラ~ンコローン、アスファルトの道に出てしまった。

 なんだか恥ずかしさマックスになって、神社の外周をグルーッと回って家路につく。

 

 玄関のかまちに腰かけて、下駄を脱いだ足をチェック。

 親指と人差し指の間が赤くなっている。鼻緒が擦れて、もうちょっと歩いていたら皮がむけていただろう。

 ほんの数百メートルだったけど、歩いたという実感がヒシヒシと湧いてくる。

 ヨイショッと!

 掛け声上げてかまちを上がると、足の親指に緩い痛みが走る。

 わずかな距離だったけど、しっかりつま先まで使って歩いていたことを実感する。下駄にどれほどの効用があるのかと思っていたけど、さすがは鈴木先生!

 でも、指の股の皮が剥けそうなので、明日は休もうとズルケルわたしであった。

 

 

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