大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アーケード・9《西慶寺本堂にて》

2018-03-05 15:52:52 | 小説

・9
《西慶寺本堂にて》



 商店街の幼なじみ達は西慶寺の本堂に集まった。

「……というワケなのよ!」
 文香はバレー部のポイントゲッターで、ガタイも大きいが声も大きい。その文香が興奮して喋りまくるのだから、御本尊の阿弥陀様もびっくりだ。
「要するに~、けしから~んということね」
 お寺の花子がノンビリとまとめようとしたた。
「え、え、そうよ。学級崩壊してるわけでもないのに、学年の途中でクラス替えなんて絶対やってはいけないことよ! それも小学校の1年生の4月だよ、そう思うでしょ、みんな!?」
 文香は腕をブンブン振り回しながら続ける。
「こんなの許したら、あたしたちの相賀小学校は死んでしまうわよ!」
「ふーちゃんの想いは伝わったから、ね、お確かめしよう。りょうちゃんお願い」
「え、なんでオレ?」
 幼なじみたちには不文律がある。大事なことを決める時は、発案者ではないものが中身を確認して、きちんと共通理解が得られていることを確認する。

 お確かめと言って、相賀五万石の昔からの慣わしである。

 殿様の御前で評定をするとき、声の大きい者に流されないよう、また、冷静に共通理解が得られるようにするために一番口数が少なかった者が評定の中身を確認することになっている。
 このとき花子が遼太郎を指名したのは口数の少なさではなく、脱線する発言が多く、ほとんど聞いていないからだろうと思われたからである。
「お確かめ!」
 文香が催促し、幼なじみたちの視線が遼太郎に集まる。
「え、えと……相賀小学校があ、4月のこんな時期に1年生のクラス替えをやるのは、おかしい……って、えー、ことだよな?」
「たよりないなあ、りょうちゃんよー!」
「まあ、基本は外してないから。ありがとうりょうちゃん。みーちゃんも、これでいいかな?」
 花子はみなみにも振った。みなみの弟の正親も相賀小学校の1年生だからだ。
「うん、まーちゃんも変な顔してたしね」
「よし、じゃ、あたしとこうちゃんが事情を聞きに行く~ってことでいいわね?」
 みんなが頷いた。
「ついでに運動会のことも聞いてくるわね~」
 それだけでみんなには分かった。去年休止になった『相賀騎馬戦』のことなんだと。

 花子は、穏やかに話しをしに行くために運動会のことを付け加えたのだ。クラス替えのことだけでは角が立つと思った。

 だが、お寺さんらしい花子の気配りは相賀小学校の校長の一言でワヤクチャにされてしまった。

――卒業生のご意見は嬉しいけど、未成年であるあなたたちとはお話しできません――

 穏やかだけれども、明らかすぎる拒絶だった。
「こまったなあ」
 花子から話を聞いた甲は自分の顎を撫でた。言葉の割には深刻そうには見えない。
「どうも、郷中のことを分かってもらえてないようね……」
 花子も腰かけた本堂の階(きざはし)に後ろ手着いてこぼした。昼ごはんを食べ損ねた程度の穏やかさだ。

 この穏やかさは、相賀の地生えの者にしか分からなかった……。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・12『青木ナントカ』

2018-03-05 14:10:54 | 小説3

通学道中膝栗毛・12

『青木ナントカ』        

 

 

 更地の主は青木ナントカという若い俳優さんらしい。

 今年の大河ドラマにも梅雨ごろには出るらしく、鈴夏の熱い語り口では流行りのスマホのCMにも出ているらしい。

 

 ちょっと説明が要るよね。

 

 鈴夏は親友だけど趣味が合う訳じゃないんだ。鈴夏は羨ましいほどのお調子者で、流行りの映画やテレビやらに詳しい。

 わたしの部屋のテレビは、もっぱらパソコンのモニターになり果てていて、本来のテレビの機能はオリンピックのここ一番という時くらいしか発揮しない。だから流行りのテレビなんかは観ないんだ。

 鈴夏も知ってるから、わたしに、そういう話題を振ることはめったにしない。

 しないんだけども、とくに配慮してくれてのことなんかじゃない。お互いがビビっとくるような話題を自然に振ってくれる。

 配慮してのことじゃないんで気が楽だ。配慮とか気を使ってのことなら、ほとんど毎日登下校を一緒にするようなことはないと思う。

 

「え、青木ナントカ(鈴夏は正確に言ったんだけど、わたしが憶えていない)知らないの!?」

 改札を出たところで鈴夏が目を剥いた。

 まるで総理大臣の名前を知らないおバカみたいに言う。で、大河ドラマやスマホのCMのことを言ったわけ。

「わたしも知らなかったんだけど、青木ナントカさんのお父さんが亡くなって相続したらしいんだけど、サッサと売っぱらちゃったんだって」

 それは分かる。

 家というのは人が住まないと朽ち果てるのが早い。建坪だけで五十坪、庭と離れを入れれば二百坪になろうかという家らしい、固定資産税もうちなんかとはケタ違いだろうし、売っぱらう気持ちはよくわかる。

「でも、あの家が青木ナントカの実家だとは知らなかったなあ……」

「知ってたら、どうすんの?」

「そりゃあ、帰ってくる日を狙ってサインくらいもらうわよ!」

「おおーーー」

 鈴夏にも、こういうミーハーなところがあるんだと感動した。

「月に一二度は戻ってきてたらしいからね、ラッキーにも通学路でしょ、待ち構えるわよ!」

「不審者だと思われない~?」

「女子高生をスゲナクしたら七代祟るんだよ~」

「あんたはお岩さんか(^_^;)」

「ほらほら、昔の写真だけど見てみー(。・_・。)ポッ」

 立ち止まってスマホを見せる鈴夏。こういう点お行儀がいいから歩きスマホなどはいたしません。

 それにしても、こういうことの情報収集能力は大したもんだと思う。更地になる前の青木ナントカさんの家とご本人の写真がズラリと出てきた。写真で見せられても――ああ、そうなんだ――にならないのは、やっぱ周囲が似たようなお屋敷ばっかだろう。

 そのうちの何枚かは青木ナントカさんの姿が映っている。最近のは爽やかなタレントさんという感じだけども、俳優になる前のパンピー男子のころは、ちょっと不良っぽい。

 あ!?

 一枚の写真に衝撃を受けた。

 青木ナントカさんが小学校高学年くらいで、家の前で小さな女の子と映っている。

 そして、その小さな女の子は……まちがいない、幼稚園に入ったばかりくらいのわたし自身だった!

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・センセがこんなカッケーわけがない!01・いま二時間目、チョーつまらん

2018-03-05 06:43:52 | 小説7

 センセがこんなカッケーわけがない!01

 いま二時間目、チョーつまらん

☆ 間違えるか~!?

 いま二時間目、チョーつまんない。で、出来心でブログを始めることにした。

 世界史の授業かと思ったら、日本史だった。気づいたのは授業が始まってから8分経ったころ。
 あ、オレのことバカだと思っただろ!?

 間違えたのは、オレじゃなくて、目の前でつまらん授業やってるセンセのほう。

 板書やりはじめて、みんな、なんだかソワソワしはじめてさ。全部書き終ったあたりで委員ちょが「それ日本史じゃ……?」と呟いたわけよ。
「え、あ、あ、このクラスは日本史だったっけ? 先生、世界史も持ってるから、勘違いした」
 で、黒板消して……え、黒板は消えない? そそ、黒板の字ぃ消して。ここで突っ込む君もどーかと思うんだけど。
 みんなから盛大なため息の抗議。

 まあ、まちがえるセンセも悪いんだけど、委員ちょが言うまで黙々とノートにとってる生徒もどーかと思う。
 オレは、ハナからとっちゃいないけど。

 で、日本史が始まるのかと思ったら、きたる参議院選挙の話になる。
 
 中立の立場でって言ってるけど、あきらかにヒダリに寄った話。

「いま、日本の平和というか安全保障が問われている。積極的安全保障という言葉も言われてる。ベテラン女優のYさんが言ってた『本当の意味で積極的安全保障は、すすんで武器を持たないこと』ってさ……」

 このセンセ、四月にYさんの大ファンだと言ってた。

 みんなが静かにしってから、正義の先生って感じになってる。
 みんな、ただ、つまらん授業が無くなっててよかったと思ってるだけなのにな。

 99%の確率で、このセンセは授業の準備忘れたんだぜ。正直に言えば、まだ可愛げがあんのにさ。

 だから、スマホで、こんなブログを始めてしまったじゃねーか。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする