アンドロイド アン・6
『今日から学校・1』
今日から学校だ。
いや、俺は学校は毎日いってる。
アンだよアン。
いろいろ手続きとかがあって、アンの登校が今日からって意味なんだ。
「ど、似合ってる?」
自治会の運動会が終わって、飯の前に風呂に入って、出て来てぶったまげた。
レディーファーストでアンを先に入れてやって、その間に米を研ぐとか、俺のやれる範囲で晩飯の用意をした。
――お風呂空いたわよ~🎵――の声に「おお」と返事して、ざざっと一風呂浴びて出て来たところ。
制服モデルみたく、フワリと旋回してポーズを決めるアンが居た。
「明日っから学校だっけ……」
「そだよ、おソロのお弁当とか作ってあげっから、いっしょに行こうね!」
「それは断る!」
「えーーなんでえ!?」
俺は、なにごとも目立たないことをモットーにしている。
女と一緒に、たとえそれがアンドロイドで従妹設定であっても、いっしょに学校なんてあり得ない。
それに、アンのデータベースにある女子高生というのは、かなり偏差値の高いそれだ。
制服モデルか、アイドルの制服姿。渋谷なんか歩いていたら確実にスカウトされそうなオーラに満ち満ちている。
さらに、言葉遣いが「そだよ」とか「おソロ」とか「えーなんでえ!?」とか微妙にJKスラング。うちの男子生徒からはギャップ萌えの高偏差値で見られることは確実だ。
それで、いろいろ言い渡した。
制服の着こなしはともかく、男子を瞬殺しそうなスマイルとか視線の送り方とか言葉遣い、それに一緒に登校することなんぞの禁止事項を申し渡した。
それで、一夜明けての今朝。
俺より七分後に出ることを申し渡して、俺は家を出た。七分違うと同じ電車に乗ることがないからだ。
そうして、通勤通学のモブキャラに溶け込み、無事に、その角を曲がったら学校の正門というところまでやってきた。
登校のピークにさしかかる時間で、正門前の4メートル道路は制服姿でいっぱいだ。
そのいっぱいの制服の背中が微妙に向かって左、学校の看板があるほうの門柱に傾斜している。
また捨て猫か?
高校生と言うのは萌とか可愛いものが大好きで、それをいいことに捨て猫をする事件が二度ほどあった。
また、その伝かと思い、子猫の顔ぐらい拝んでやろうと背中を傾斜させながら近づいた。
おにいちゃ~ん💦
背中群の向こうからヘタレ眉でブンブン手を振って飛び出してきたのは、夕べ言って聞かせたばかりのアンだった!