大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・9『エマージェンシー! エマージェンシー!』

2018-08-16 12:56:15 | ノベル

アンドロイド アン・9
エマージェンシー! エマージェンシー!』

 

 

 

 従兄妹同士の婚約者という噂は急速に収まった。

 

 クラスが離れているし、特段イチャイチャするわけでもないので、みんなの関心が続かないのだ。

 やっぱ、最初にカマシテおくというアンの狙いは正しかったのかもしれない。

 

 ボム!

 

 くぐもった爆発音がした、いつかネットで見た地雷の爆発音に似ている。同時にリビングの照明が落ちた。

 マンガ読む手を休めて首をひねると、ソファーの向こう、キッチンの方で小さな原子雲みたいなのが上がっている。

「どうかしたか、アン?」

 スーっと立ち上がると、ソファーの向こうに突っ張らかった形のいい手足が見えた。

「ア、アン! 大丈夫か!」

 脚をも連れさせながら寄ってみると、ジューサーのプラグを持ったまま、白目をむいてアンがひっくり返っている!

「ア、アン、アンアン!」

 ファッション雑誌のタイトルみたいなのをバカみたく繰り返すんだけども、オロオロするばかり。

「す、すまん、俺がジュースなんか作ろうって言ったばかりに、おい、アン、アン、アン、どうしたらいいんだよ!?」

 ワイドショーでやっていたジュースが美味そうなので、いっちょ作ってみるか! と、思い立ち「それなら、作ったげる!」と、アンがキッチンに立った。アンに作らせたら間違いは無いし、栞を挟みっぱなしのマンガも読みたいし「じゃ、頼むわ」と返事したのが悔やまれる。

 コンセントとプラグには黒っぽいホコリが付着しているところを見ると、どうやらトラッキングのようだ。

 ジューサーも、何年かぶりで棚から下ろしたもので、チェックしなかったことも悔やまれる。

 

 人間だったら救急車を呼ぶところだけど、アンドロイドを救急病院に搬送しても仕方がない。

 

「え、えと、えと……」

 オロオロ狼狽えていると、開きっぱなしの白めに、なにやら虫が行列……と思ったら、白目の左から右へテロップが流れている。

――エマージェンシー! エマージェンシー! 緊急回復ボタンを押してください 急回復ボタンを押してください ――

「え、え、急回復ボタンて、どこのあるんだよ?」

―― 胸部のエマージェンシーパネルを開放し 赤いボタンを押す ――

「え、え、胸部?」

 ためらいながら、アンのカットソーを捲り上げる。

 人と変わらない白い胸がせわし気に息づいている。

「パ、パネルって、どこにあるんだよ?」

 肌はバイオなんだろう、すべすべで、ちょっと触れるにしても罪悪感がある。しかし、事態は急を要する。

 フニ

 あーーー(ヾノ・∀・`)ムリムリ!

 再び白めに目をやる。

―― パネルが見つからないときは マウストゥーマウスで息を吹き込む 空気圧で緊急回復ボタンを押せる ――

「マウストゥーマウス?」

 去年、保険の授業でやった人工呼吸の要領を思い出す。

―― 人工呼吸の実施方法で可能 ――

「よ、よし、えと……まずは気道確保だよな……」

 

 アンの顎に手を当てて、クイっと持ち上げ、鼻をつまんで口づけの要領。

―― や、柔らけ~ い、いかん、実施だ実施 ――

 

 中略

 

 三分ほど人工呼吸を続けると、白目のテロップが消えて瞳が回復した。

 フーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 空気が抜けるような長い息をして、アンが蘇った。

 

 ただ、時間がかかり過ぎたのか、俺の人工呼吸が不備だったのか、そのまた両方か、アンには後遺症が残ってしまった……。

 

 主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 

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高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 04『バアチャンと恵美さんが同時に時めいた』

2018-08-16 06:37:02 | 小説・2

高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ04

『バアチャンと恵美さんが同時に時めいた』




 帰宅部エースの俺は、放課後は真っ直ぐ帰る。

 ここを曲がると自分ちが見えるというところで、気配がした。


 モモとココの気配だ。
 一見猫の名前のようだが、れっきとした秋田犬、まだ子犬なんだけどな。
 それが、玄関前の犬小屋に居る。
 
 ファンファン! ファンファン!

 向こうも気配を感じたようで、挨拶をし始めた。
「おー、一週間ぶりだな、おまえら元気にしてたか!?」
 犬小屋から出てきた二匹が、俺にじゃれかけてくる。俺は両脇に抱えてワシャワシャとしてやる。
 まだ子犬のせいか、ワンワンとは鳴かない。
 どこか空気が抜けてるみたいにファンファンと鳴く。

「あら、坊ちゃん、お帰りなさい!」

 お手伝いの恵美さんが玄関から出てくる。

 この人の声を聞くと、グータラな俺でもシャッキッとしようかと、一瞬思ってしまうのだ。
「大奥様、坊ちゃんが帰ってこられましたよ」
 家の奥に向かって声を掛ける恵美さん。

「お帰り~新ちゃん~」

 のどかなバアチャンの声。
 俺は、週一回のバアチャンの訪れが嬉しい。
「洗濯物溜まってたわよ、どう、もう観念して一緒に暮らそうよ」
「あ、わりー、またキチンとやっから」
「掃除もこまめにやらなきゃ、この季節は油断するとカビが生えるわよ」
「あ、うん、エアコンの掃除だけはやっといたんだけど」
「みたいね、恵美さんにみてもらったら、やってないのは新ちゃんの部屋だけだったって」
「ハハ、いつでも出来ると思うと、ついね」

 この家には七台のエアコンがある。

 ちょっと多いと思うだろうが、リビングとキッチンの他にも部屋が六つもある。
 延べ床面積は二百平米ほどある。
 世間の基準ではお屋敷の部類に入るかもしれない。
 これでも駅三つ向こうの本宅の半分もない。ここは、親父がいくつか持っている別宅の一つなんだ。
 その別宅に、俺は妹の舞と二人暮らしなんだ。

 四月に、今の高校に入るのにあたって、舞と二人で学校に一番近い、この別宅に移り住んだ。

 最初は、バアチャンが恵美さんと一緒に住むはずだったんだけど、それは、俺も舞も断った。
 いろいろ理由はあるけど、ま、自由にやりたい……ということかな。
 舞と俺との意見が一致する、数少ないポイント。

「「大丈夫きちんとやるから」」

 誓ってはみたものの、俺も舞も高校一年生、加えて、この家の広さ。
 週に一度、バアチャンは恵美さんを連れて、至らぬところを掃除してくれる。
「どうです、坊ちゃん、モモとココ置いていきましょうか」
 好物の水ようかんとお茶を出しながら、恵美さんが、もう何度目かの提案をする。
「いや、やっぱ、面倒見きれないから通いで良いよ」
「そうですか、あの子たち、週に一回だけだけど、ここが自分の家だと思ってるみたいですよ」
「あ、そだね。犬小屋も居心地良さそうだったもんね」
「でしょ!?」
「でも、きちんと世話できないから」
「ハハ、新ちゃんは正直だ。ハッタリとか、その場の思い付きだけで決めてしまわないのは美徳なんだけどね……」
 俺は――そうだろ――という屈託のない笑顔を向けておく。

 モモとココは、ペットが欲しいという舞の意見で決まった。

 二匹の名前は、話が決まった時に舞が付けた。
 でも、名前から分かると思うんだけど、舞は猫のつもりでいた。
 猫なら、家の中で手数もかからずに飼えるが、犬は散歩に連れて行ったり仕付けをしたり手間がかかる。
「犬ならいらないや」
 そういうことで、モモとココは週一回の通いの番犬になっている。

 まだまだ説明しきれていないけど、ま、少しずつ分かってくれたらいいさ。

「マイマイはどうしてるの?」
「あいつ……」
 二つの変化があったけど、俺は一つだけ話した。
「モデルの誘いがあるみたいなんだぜ」

「「え、モデル!?」」

 バアチャンと恵美さんが同時に時めいた。

 

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高校ライトノベル・秋物語り・28『それぞれの秋・3』

2018-08-16 06:20:10 | 小説4

秋物語り・28
『それぞれの秋・3』
     

 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗(シホ) 高階美花=呉美花(サキ)

 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名




 今まで足を向けたことのない渋谷に踏み込んだ。

 秋元君と前後しながら歩く。
 どちらがリードするわけでもなく、そこの前にたどり着いた。

 そして当たり前のように中に入った。

 入って直ぐ脇に、部屋の写真のパネルが並んでいる。1/3程が暗く陰り、残りの部屋が明るくなっている……空室だ。
 
「ここがいい」
「うん……」

 一瞬ためらって、秋元君はボタンを押した。

 本能的に分かっていた。変な間が空くととたんに萎んでしまいそう。
 穴だらけの風船を膨らまし続けるためには、続いて息を吹き込まなければならない。
 萎んでしまえば、もう二度と秋元君と、こんなところに来ることはないだろう。

 かそけき音をさせてキーが落ちてきた。

 自販機みたいな音を予想してたので、少し拍子抜け。秋元君がキーを取る間にエレベーターの前に行きボタンを押す。
 意外に落ち着いてここまで来れた。まずは合格。
 シックに照明を落とした廊下では誰にも会わなかった、客の流れがよく管理されている。

 そして、キーホルダーと同じ番号の部屋にたどり着いた。

 このホテルは、以前麗がスマホでからかい半分に見せてくれたところだ。
「今は、使うようなことはしてないよ」
 わたしが眉をひそめると、麗は、イタズラっぽくスィーツのお店に切り替えた。ほんの数秒だったけど、わたしは覚えていたんだ。でも秋元君は……まあ、似たようなことがあったんだろう。オチケンにも発展系の人は何人か居た。

「ウェルカムドリンクがあるけど」

「お茶がいいな」
「あ、うん……」
 わたしが、備え付けのポットに手を掛けるのと、秋元君が冷蔵庫のお茶のペットボトルに手を掛けるのが同時だった。
「落ち着こうよ。わたしは友だちの家にお泊まりだって、メールしといたから」
「あ、そうなんだ」
 ティーバッグのお茶だけど、入れてゆっくり飲むことで、気持ちをシンクロさせたかった。
「やっぱ、オチケンは、暖かいお茶でしょ……」
「なんか一席やりたくなるなあ」
「フフ、それは、また今度聞かせてもらうわ。今夜は二人羽織よ」

 秋元君の喉がゴクンと鳴った。

 お風呂がガラス張りなのには、少したじろいだが、ここは思い切りだ。
「シャワーだけにしとくから、いっしょに入らない?」
 ペラペラのナイトガウンを持って声を掛ける。
「ぼく、あと……」
「もちろん、脱ぐのは別々。シャワ-の音がしたら入っといでよ」

 照明のせいだろうか、自分の肌が白くきめ細やかに感じる。自分の体じゃないみたい……自分で自分の体にトキメイテどうするんだ、落ち着け亜紀!
 シャワーしながら、部屋を見る。ボクネンジンはテレビを見ていた。ただ本人は点けたチャンネルがNHKのニュース解説だとは分かっていない様子だ。

 けっきょく秋元君は、いっしょにはバスルームに入らなかった。

 秋元君がシャワーしている間に、部屋をムーディーな照明に切り替え、FMの大人しめのニューミュージックにする。シャワーを浴びている秋元君の体は、意外に鍛えられていた。さすが警察官の息子。それともいざというときにたるんだ体を見られたくないため? 
 わたしの頭の中をドーパミンやセロトニン、アドレナリンなんかが駆けめぐっている。

 ようは初体験の予感に興奮している。

 秋元君が、小さな衣擦れの音をさせて、ベッドに入ってきた……いよいよ!

 五分近くたってもボクネンジンは、三十センチ隣りで横になっているだけ。

「秋元君。このままだと眠っちゃうよ……」
「……亜紀ちゃん」

 あとが続かない。

「お互い一歩前に進むんだよ」

 それでも返事がなかった。

 わたしは、ガウンを自分で開き、秋元君の手を握った。そして……ゆっくりわたしの丘に誘った。
「キスしてもいい…………?」
「フ……わたしたち、それ以上のことをしようとしているんだよ。秋元君」

 ちょっと意地悪な目で見てやった。やっと秋元君の重いスイッチが入った……。

 お互い初めてなんで、少し時間がかかった……思ったほど痛くはなかったけど、秋元君のスイッチはONしかなく。彼のサーモスタットが切れるのを待つしかなかった。
 
 で、秋元君のサーモスタットが切れると、やはり、何かが吹っ切れたような気がした。

「……ねえ」

 数分あって、やっと息が整い、声が出せた。

「ごめん、亜紀ちゃん」
 秋元君の声は、まだ弾んでいた。
「ごめんなんて言わないの。悪いことしたんじゃないんだからね」
「そうか、よかった。亜紀ちゃん苦しいんじゃないかと……でも、止められなかったから」
「もう……すんだことは言いません」
「ありがとう、亜紀ちゃん……」
 秋元君の手が伸びてきたので、寝返りするふりして、距離を取った。
 しばらくすると、意外にかわいい寝息が聞こえてきた……。 

「亜紀ちゃん、どうかした?」

 わたしをどうにかした張本人が、朝の目覚めで口にした第一声がこれだった。

「大丈夫……」

 わたしは、何か体の芯に残った違和感で、変な足つきでシャワーを浴びに行った。
 驚いたことに、秋元君はNHKも見ないで、いっしょにシャワーを浴びに来た。
 わたしは、さっさとシャワーを済ませると、服を身につけた。あのまま、サーモスタットが切り替わって、もう一度挑まれては体がもたない。

「いっしょにバンジージャンプを飛んだ、それ以上でも、それ以下でもないからね」
 わたしは言わずもがなのことを言った。
「分かってる。亜紀ちゃんには感謝してる。それ以上でも、それ以下でもない」
 モーニングをかっ込みながら、秋元君は、いつもの顔に戻って言った。

 それから、喫茶店を出て、駅の改札に入ってから別れた。わたしは駅のトイレで制服に着替えた。

 制服が、とても白々しいものに感じながら、いつもより少し早い時間に学校に着いた。

 それぞれの秋は、さらに鮮やかに色を変えつつあった……。

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