大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・12『P音』

2018-08-26 14:11:20 | ノベル

アンドロイド アン・12
『P音』

 

 

 今度は動画だった。

 

 ほら、食堂で早乙女采女(さおとめうねめ)って美少女三年生がやってきてアンにいろいろ話したろ。

 なんでも采女さんの知り合いがスーパーに居て、エスカレーターでオタオタしてるアンを写メってネットで流した。

 一応、そのお詫びってことだったけど、直後にアンの後ろを通った女子がズッコケて、トレーに載っていたものがひっくり返った。なぜかコショウが載っていて、コショウの灰神楽がたって、もろに被ったアンはクシャミを連発。

 その情けない姿を十秒ほどが動画に撮られている。

 クシャミを堪えようとして、堪えきれずに――グフッ!――と噴いてしまい、涙と鼻水が爆発してしまった。

 瞬間的に腹圧が急上昇して、PU~~~と可愛いP音を発してしまったんだ。

 

 写メの時は赤沢が教えてくれたんだけど、動画を発見したのは町田夫人だった。

 

「こんな動画許しちゃダメよ!」

 回覧板のついでに「こんなのが出回ってるわよ」と教えてくれて「削除依頼をしよう!」との励ましに続き、こっちの返事も待たずに、その場で運営会社に電話してくれた。

「「ありがとうございます」」

 二人でお礼は言ったけど、不安だった。

 こういうやつらは反応すればするほどカサにかかってエスカレートしてくるもんだ。

 町田夫人の義侠心が裏目に出ないことを祈った。

 

 アハハハハ

 

 たいして興味もないアジア大会の中継を観ているとキッチンの方でアンの笑い声。

 また感電して狂っちまったか!?

「ほら」

 振り返ると、鼻先にスマホが突き付けられる。

 例の動画。今度は目の所に申し訳程度の目隠しが施され、P音の所はリフレインするように加工されていた。

「こ、こいつーーー!!」

 さすがの俺も血が逆流した。

「スレも面白いよ~」

 

 HEこき女! 笑い死ぬ~! HHHHHHHHHHHHHH~ こえ~~ 8888888888 よく撮った!

 撮ったやつサイテーー! サイテー言いながら見てるし! ただの生理現象 WWWWWWWW 削除削除!

 挙げた人削除しなさい、天誅が下ります! るせー! 目隠ししてるしー! 魚拓とったし~

 

「通報する!」

「いいよ、ほっといて。飽きたらやめるだろうし」

「しかし、再生回数1000超えるぞ」

「ほっときゃいいのに……」

 

 通報してから気が付いた。

 アンはアンドロイドだ。

 それも、よくできたアンドロイドで、人間同様に食事はするが100%エネルギーに変換してしまう。

 だから、その……排泄するということがないし、P音を発することもない。

 それに呼吸することもないから、グフ! という具合に鼻水を爆発させることもない。

 

 アンのやつ何のために?

 

 そう思って再び振り返ると、拳銃を持つような手をした。

 PU~

 なんと口からP音を発しやがった!

 

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

 

 

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高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 14『舞は両手で顔を覆って泣き出した』

2018-08-26 07:00:10 | 小説・2

高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 
 14『舞は両手で顔を覆って泣き出した』

 


 俺に聞くなよ

 目を合わさずに呟くように返事した。


 はた目には、すれ違っただけにしか見えなかっただろう。
 俺は振り返ることなく階段を下りて食堂に向かった。俺の数歩後ろには、トイレから出てきて追いつこうとしている武藤が居る。
 武藤はイカツイ柔道部だが、保健衛生的な潔癖症がある奴で、トイレを出る時には手術前の医者かというくらいきっちりと手を洗う。だから、昼飯前の連れションでも俺に後れを取る(あ、俺が全然手を洗わないってことじゃないからな)
 昼飯前がいつも連れションというわけでもないしな。
「柔道部の今後についてアドバイスが欲しい」
 俺を勧誘したいという下心見え見えのフリなんだけど、逃げてばかりでは友人関係にヒビが入る。
 俺は、なにごとも波風立てず平穏無事に生きて行こうという模範的高校生なんだ。

「おい、芽刈さん、なにか言ってなかったか?」

 廊下で追いついた武藤が横並びになりつつ聞いてくる。

「え、あ、歌でも口ずさんでたんじゃねーか」
「にしては真剣そうだったけど」
「芽刈さんは多忙だからな、関根さんに誘われてモデル業も始めたって噂だし」
「ああ」

 舞がモデルになったというのはバレている。

 だれかがネットで見つけたらしいんだけど、舞自身のイカシタ雰囲気が、学校関係者をして大いに首肯せしめた。担任のみくるちゃんなどは「えー、今まではモデルじゃなかったの!?」とラブライブサンシャインのキャラみたく目をきらめかせて驚いていた。

 俺は、こういう驚き方をするみくるちゃんを不覚にも可愛いと思ってしまった。

「でもモデルだったら歌か?」
「声優とモデルってのはオールマイティーでなきゃやってけないんだぞ、お前の筋肉脳みそじゃ理解できないかもしれないけどな」
「はー、そういうもんか……」
 武藤は無邪気に感心した。潔癖症はともかく、こういう無邪気なところは好ましい。

「あ、新藤君、先生が呼んでる!」

 角を曲がったら食堂というところで舞と鉢合わせ。
 こいつ、校舎をぐるっと回って待ち伏せしてやがった。額に汗を浮かべ息を切らしてやがる。

「え、すぐに?」
「うん、わたしも付いていくから、ね」
 
 ウ……とちくるって俺の手を握りやがった。

「すまん、ちょっと行ってくる」

 羨ましそうな武藤の視線を感じながら俺はひかれるまま職員室への階段を上がった。
 で、職員室の前は素通り……予感した通り生徒会室に拉致られた。

「こんなことしたら、目立っちまう……」

 意見しようとしたら、舞の目は涙に潤んでいた。
 生徒会室に連れ込まれたらローキックかハイキックかと覚悟していた俺は戸惑ってしまう。
「どうしよう、どうしたらいい?」
 この狼狽え方から、梶山のことだと見当がついた。
「落ち着け、落ち着いて問題を整理しろ」
「だって、デートしてくれって言われちゃったよ!」
「デート?」
「困るよ困るよ!」

 そう言うと、舞は両手で顔を覆って泣き出した。

 この狼狽えぶり、兄の俺でも半分分かって半分は分からない。

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