アンドロイド アン・8
『今日から学校・3』
同じクラスだったらどうしようかと心配したが、さすがにそれは無かった。
俺は一組だが、アンは二つ向こうの三組だ。
二つ向こうということは、体育や芸術でいっしょになることもないし、校舎の都合でフロアも違う。
生徒の関心は移ろいやすい、正門前のラノベじみたあれこれも、来たるべき行事や部活や試験やら個人的なアレコレで三日もたてば消えていくだろう。
しかし、それは甘かった。
「あんたたち婚約してるんだって!?」
一年で同級だった三組の玲奈が休み時間にやってきて、容疑者をゲロさせる刑事のようにドンと俺の机を叩いた。
「な、なんだよそれ?」
「だって、アンが宣言してたわよ」
今度は前の席に座って顔を寄せてきた。
「新一の従妹でさ、生まれた時に親同士が二人を許婚(いいなづけ)にして、そんでもって、もういっしょに住んでるんだってえ!」
「え? ええ!?」
「もう、このこの、この~!」
昼休みには、俺とアンの弁当の中身が同じだということが暴露され、週末まで格好の話の種にされてしまった。
「でも、安心して」
週明けは、どんな顔をして登校すればいいのかと悩んでいると、戸締りをちゃんとやったというような調子で答えが返って来た。
「同居の従兄妹で、婚約までしていたら、もう、その先はないでしょ。多少くっ付いていたりしても当たり前だし、二人が、この先どうなるんだろうなんてことも興味ひかないと思うわよ。それになにより、わたしにも新一にも言い寄って来る者は居なくなるって!」
そりゃそうだろ、同居の婚約者という鉄壁に挑もうなんて奴はいないだろう。
「ね、わたしのスペックって、アイドルグループのセンター並みなんだから、これくらいの虫除けしとかないとね」
そうか、そういう深慮遠謀があったのか!
しばし感心した……が……待てよ?
それって、俺の高校生活……女の子と付き合うことが完全にできなくなるっちゅうことじゃねーのか?
だろ? 同居の許婚と付き合ってくれるような女の子っているわけねーじゃねーかあああああああああ!
☆ 主な登場人物
新一 一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった
アン 新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明
町田夫人 町内の放送局と異名を持つおばさん
町田老人 町会長 息子の嫁が町田夫人
玲奈 アンと同じ三組の女生徒
小金沢灯里 新一の憧れ女生徒
赤沢 新一の遅刻仲間