大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・8『今日から学校・3』

2018-08-14 10:35:12 | ノベル

アンドロイド アン・8
『今日から学校・3』

 

 

 同じクラスだったらどうしようかと心配したが、さすがにそれは無かった。

 

 俺は一組だが、アンは二つ向こうの三組だ。

 二つ向こうということは、体育や芸術でいっしょになることもないし、校舎の都合でフロアも違う。

 生徒の関心は移ろいやすい、正門前のラノベじみたあれこれも、来たるべき行事や部活や試験やら個人的なアレコレで三日もたてば消えていくだろう。

 

 しかし、それは甘かった。

 

「あんたたち婚約してるんだって!?」

 一年で同級だった三組の玲奈が休み時間にやってきて、容疑者をゲロさせる刑事のようにドンと俺の机を叩いた。

「な、なんだよそれ?」

「だって、アンが宣言してたわよ」

 今度は前の席に座って顔を寄せてきた。

「新一の従妹でさ、生まれた時に親同士が二人を許婚(いいなづけ)にして、そんでもって、もういっしょに住んでるんだってえ!」

「え? ええ!?」

「もう、このこの、この~!」

 

 昼休みには、俺とアンの弁当の中身が同じだということが暴露され、週末まで格好の話の種にされてしまった。

 

「でも、安心して」

 週明けは、どんな顔をして登校すればいいのかと悩んでいると、戸締りをちゃんとやったというような調子で答えが返って来た。

「同居の従兄妹で、婚約までしていたら、もう、その先はないでしょ。多少くっ付いていたりしても当たり前だし、二人が、この先どうなるんだろうなんてことも興味ひかないと思うわよ。それになにより、わたしにも新一にも言い寄って来る者は居なくなるって!」

 そりゃそうだろ、同居の婚約者という鉄壁に挑もうなんて奴はいないだろう。

「ね、わたしのスペックって、アイドルグループのセンター並みなんだから、これくらいの虫除けしとかないとね」

 そうか、そういう深慮遠謀があったのか!

 しばし感心した……が……待てよ?

 それって、俺の高校生活……女の子と付き合うことが完全にできなくなるっちゅうことじゃねーのか?

 だろ? 同居の許婚と付き合ってくれるような女の子っているわけねーじゃねーかあああああああああ!

 

☆ 主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト・『あたしたちは戦う』

2018-08-14 06:43:46 | ライトノベルベスト

ライトノベルベスト
『あたしたちは戦う』
          


「今年は反戦劇をやりましょ」

 不意にカッパが言いだした。
 カッパとは、この四月にベテランの乙女先生が退職し、その後任で顧問になった代々木民子……本当は「先生」を付けならあかんねんやろけど、心の中では呼び捨てにしてる。普段は見た目そのままに「カッパ」や。

 去年、先輩が就職試験に落ちた。名目は適性がないいうことやったけど、あたしは民族差別やったと思うてる。

 うちの学校は、入学時に本名宣言を勧めてる。あたしの友だちにも外国籍居てるけど通名で通してる。世の中そんなに甘いない。
 先輩は、はっきり言わへんけど、本名宣言に乗せられたんやと思うてる。そやかて中学までは通名でやってきた人や。
 学校の人権推進委員会の先生らはカッパも含めて一回だけ企業に抗議に行った。企業は適性で落とした資料をきちんと揃えて待ち構えてた。で、企業の説明鵜呑みにして、そのまんま。

 結局、部員の事はほっとかれへん言うて、乙女先生が長年の人脈を使うて、学校の推薦やったとこよりもええ企業を先輩に斡旋してくれはった。進路指導部の先生らは「ありがとうございます」と口では言うけど、メッチャ迷惑そうな顔してた。

 変化は毎日現れて来てる。

 いままで使えてた視聴覚教室を追い出された。ブラバンやらダンス部が練習用に、椅子どけるだけで広いスペースがとれる視聴覚教室を以前から狙うてた。
 演劇部いうのは、舞台と実寸が同じとこで稽古せんと、本番ではぜったい間尺が合わへん。せやから視聴覚教室は死守してきた。それが、あっさりと……。

 昨日は十年以上続けて出てたピノキオ演劇祭に出えへんことになった。
「先生、夏休みは仕事で忙しいから、夏のピノキオ演劇祭には付き合われへん。あんたらの安全考えたら本番だけの付き添いいうわけにいかへんさかいね」
 仕事てなんやねん。組合の教研集会やらなんやら……仕事なんかやあらへん。はっきり言うて政治活動や。知ってんねんで、生徒はアホやないねんで。

 今日は、いとも簡単に、こない言いよった。
「コーチは、今年ベテランの人にお願いしたから、いずれ紹介するけど、よろしゅうにね」
 あたしらになんの相談もなしに、コーチまで変更しよった。

 うちの演劇部は、専業は二人しかいてへん。去年は先輩入れて三人。乙女先生が、そのつど声掛けしてくれて、兼業部員が何人か入ってくれて、やっと文化祭やら、コンクールに出られてた。
 カッパの人間力では、絶対人集まらへんし、集める気もない。

 あたしは思い余って、高校演劇連合の先生に電話した。二日かかってやっと通じた。
「校内のことは、口出しでけへんからな……」で、おしまい。なんのための連合や。

 で、今日の放課後は、視聴覚教室を明け渡すために、道具の移動。

「怪我せんように気いつけてなあ」
 カッパは気楽に声だけ。
 演劇部は貧乏やから、道具のきれっぱしでも無駄にはでけへん。
「先生こそ気いつけてくださいね。足許散らかってるよって」
「ありがとう、ほんなら……」

 あたしらに背を向けようとした瞬間に、落ちてた切れ端にカッパはけつまずいて仰向けに倒れよった。

 持ってた道具を手放して、手え伸ばしてたら助かったかもしれへん。けど、せえへんかった。あたしの第一歩やと直観したから。
 カッパが倒れこんだとこには、五センチの釘が突き出たきれっぱしが落ちてる。九分九厘首に刺さる。

 あたしは、ちゃんと事前に「気いつけてください」と言うといた。ね、五行前に、ちゃんと書いたあるでしょ。

 あたしの戦いの第一歩が始まった瞬間でした。

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高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 02『二人の美少女』

2018-08-14 06:29:34 | 小説・2

高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 
 02『二人の美少女』




 また入ってる……

 口の形だけで分かる。


 靴箱を開けると手紙が入っていたのだ。
 学校では他人のクラスメートなので声はかけないが、ここのところ三日に一度の割で、舞の靴箱には手紙が入っている。
 見せてくれることはないけど、状況と反応から男からの付文だと分かる。

「おはよう、マイッチ」

 学校で一二を争う美少女の関根さんが声を掛ける。
 学校で一二なんだから、クラスでは一番かというと、そうではない。
 妹の舞も学校で一二の美少女の誉れが高い。
 この二人が並んでいると、そこだけスポットライトが当たったように華やかになる。

「ね、考えてくれた?」

 関根さんの一言で舞は小さく狼狽える。

「あ、えと、まだ考え中」
「あ、うん、いいわよ。一昨日話したところだもんね」
「ごめんね、サクッチ」
「ううん、そんな、ごめんだなんて」
 関根さんは胸の前で右手をパーにしてブンブン振る。
「でも、マイッチならきっと……」

 美しく語らいながら二人の美少女は階段を上がっていく。

 話の内容は分かっている、ティーン向けファッション雑誌のドクモをやっている関根さんが舞を誘っているんだ。
 関根さんと一二を争うんだから、舞も十分モデルが務まる。
 でも、舞は二の足だ。
 舞は忙しい奴で、やることが一杯ある。十五歳の舞の日常は特盛なんだ。

 

 踊り場まで上がったところに手紙が落ちている。
 関根さんと話しながらだったので、ハンパにポケットに入れていたのが落ちてしまったんだ。
――あとで渡してやろう――
 拾ったところで後に気配。
「させるかあ!」
 横っ飛びに逃げると、斜め上を通学カバンがかすめた。
「これかわせるんだから、柔道部入れれよー!」
 クラスメートの武藤健介だ。
 こいつも過年度生なんだけど、なかなか前向きな奴で、入学早々休部になっていた柔道部を復活させた。
 で、俺を柔道部に入れたくて仕方がない。

 このドタバタで、俺は拾ったばかりの付文を落としてしまったのだ。

 むろん俺は気が付いていない……。

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高校ライトノベル・秋物語り・26『それぞれの秋・1』

2018-08-14 06:07:10 | 小説4

秋物語り・26
『それぞれの秋・1』
        

 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗(シホ) 高階美花=呉美花(サキ)

 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名


 稲穂は実り、プラタナスは枯れ、イチョウは枯れ葉をまき散らしながらも実を付け始める。


 生まれて十八年ちょっとだけど、こんなに秋の移ろいに敏感になったのは初めてのような気がする。

 美花が、突然韓国へ行くと言い出した。

 三人の中で、一番子どもっぽく、人の(主に麗)のあとばかり付いていた実花が突然言い出した。

「どうして?」

 いま思うとバカな質問だった。だって、美花は、自分のことを説明するとか、とても苦手だから。
「大人になる前に、一度見ておきたかったの……かな……よくわかんない」
 と、ローラのようなことを言う。
「それは、君の中に流れている民族の血が求めているんだよ!」
「………」
 学校に届けを出した時に、民族教育担当の北畠というオッサンの言うことが、一番つまらなく、保健室の内木先生が言ってくれた言葉が、一番ピンときたそうである。
「高階(もう本名の呉は使っていない)さん、水には気をつけてね。あなた、よく水道の生水飲んでるじゃない。外国は水が違うからね」
「あ、はい」

 ちゃんと生徒手帳に「ミネラルウォーターを飲むこと!」と書いていた。

 出発の日は、羽田まで見送りに行った。
「あたし、なんで行くのか、やっぱし分かんない……」
 そう言って搭乗口にトボトボ歩いていく様は、まるで、アテのない落とし物届けを学校の生指へ届けに行ったときのようだった。うちの学校で忘れ物やら、落とし物をしたら、まず返ってこない。

 振り返ってビックリした。

 遥か向こうの到着口の方に、吉岡さんが見えた。

 一瞬、去年のサカスタワーホテルでのことが頭に浮かんだ。雄貴にさんざんな目にあったことや、そのことを(おそらく確実に)吉岡さんがカタを付けてくれたこと。女の子がお店で喋る言葉で、出身が分かることなど、懐かしく思い出しているうちに、仕事仲間とおぼしき人たちと、姿を消してしまった。
「どうかした?」
 麗が聞く。
「ううん、べつに」
「そう」
 簡単な会話で終わったのは、麗自身が揺れていたからだろう。

「あたし、卒業したらさ、銀座で働こうかなって……」
「ほんと?」
「こないだ、銀座線に乗ってたら、メグさんに会っちゃって、ほんの十分ほど立ち話したんだ。ガールズバーって、なんだかアマチュアな感じじゃん。だから、プロになりたいって」
「メグさん、なんか言ってた?」
「ハハ、叱れちゃった。接客業なめんじゃないよって。おっかなかった」
「だろうね、あのメグさんなら」
「お店はちがうけど、リョウのサトコさんも銀座に来てるんだって……」
「そうなんだ……」
「でね、学校卒業したら、じっくり考えなって……教師とかもそうだけど、一度他の仕事を経験したほうがいい。デモシカじゃ、銀座は通用しないってさ……なんか言いなよ」
「うん、なんだか麗、大人になった感じ」
「アハハ、そんなこと言うのは亜紀だけだよ」
「わたしも、こんなこと言うの、麗が初めて」

 学校には、わたしが通学途中で、体調が悪くなって病院に行き、麗がそれに付き添ったと言った。
 あの梅沢が本気にしてくれた。いつもだったら「じゃ、病院の領収書見せろ」ぐらい言うんだけど。
 わたしも嘘が上手くなったのか、美花、吉岡さん、麗の話し……そんなのいっぺんに見聞きしてショックだったのかもしれない。その日の五時間目は、ほんとうにしんどくなって、入学以来初めて保健室のベッドで横になった。

 明くる日は、元気に学校にもバイトにも行けた。

 でも、ここでも、一つ秋を発見した。

 秋元君の元気が無い……。

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