高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ
06『俺たち兄妹の秘密・その二』
ちゃんとしたお家に住めるわよ
それが最後の言葉だった。
いつもより軽い足取りで、アパートの階段を駆け下りて行ったお袋。
「勇者レイディーンを四週分くらい観たら帰って来るから」
お気に入りのアニメをセットして「ちゃんとしたお家に住めるわよ」と続けたんだ。
四週分観終って、玄関の呼び鈴を押したのは警察官だった。
子ども心にも、お袋は殺されたと思った。
「あんたのお母さん、忘れたわけじゃないでしょ……」
舞がガチガチのマジになって言ったのは、そういうことだ。
俺は、自販機の陰でイヤホンを装着した。
舞のスマホは親父の会社の試作高級機で、いろんな機能がついている。その一つがこれだ。
舞がいる場所の映像が、俺のスマホに送られてくる。
どんな仕掛かは分からないが、舞を中心の3D映像だ。
舞の前にはヒッツメの女の人。
化粧っ気はないけど美人だ。
勘だけど、モデル上がりのプロディユーサーかなんかだと思う。
以前、関根さんのブログを見ていて、そんなことを見たか読んだかした記憶がある。
暇つぶしのネットサーフィンで得た情報なんで確実じゃないけどな。
斜め前には関根さん。
太めのボーダー柄のタンクトップにピンクのショートパンツ。膝の上に揃えた両手の指は淡い水色のマニュキア。
ちょっと露出が多くてドキドキする。
モデルをやっているとはいえ、冷房も効いてるんだろう、寒くないのかなー。
と、思ったら、椅子の横にトートバッグを置いていて、中からサマージャケットみたいなのが覗いている。
なるほど、怠りのない美人さんだ。
「ユイちゃん、あれを」
「あ、はい」
ヒッツメさんに言われて、トートバッグを探る。
当然前かがみになるので……胸の谷間が見えてしまう。
!!
関根さんて着やせするタイプなんだろうか……スゴイ。
すかさずアップにしてみるが、ブツはすぐに見つかってヒッツメさんに渡される。
「こういう感じなの」
ヒッツメさんが舞に手渡したんだろう、画面は手渡されたパンフだか雑誌だかの背表紙の陰になる。
「うわーー……」
舞の感嘆の声、ブツが邪魔をして関根さんが見えなくなって、音もくぐもってきた。
でも、さすがは親父の会社の試作品、カメラはブツから見えている関根さんの下半分にピントが合った。
関根さん、教室では、よく足を組んでいる。
モテカワイメージの関根さんなんだけど、そいう足を組んだ姿も、ちょっと大人びたイメージでイカシテいる。
しかし、ここでは足を組まない関根さんだ。
ここは、モデルとしては職場で、上役と思われるヒッツメさんがいるのでわきまえているんだろう。
なかなか大したもんだと感じ入る。
それにしてもきれいな脚だなあ……
そうこうしているうちに視界を遮っていたブツがどけられ、一瞬トンネルから出てきた時みたいにホワイトアウト。
「「「「失礼します」」」」
「どうぞ、入って」
女の子が四人入って来た。
これは、関根さんのモデル仲間だ!
俺は、一人一人に注目した。なんとも目の保養だ。
ヒッツメさんの前だからではあるんだろうけど、派手なファッションのわりには、清楚って言っていいくらいキチンとしている。
ちゃんとオヘソの前で手を組んで、脚もそろえて立っている。
喋る時には、接頭語のように「ハイ」がつく。
女の子がキチンとしているのは、清々しいだけじゃなくて、魅力を倍増させるよなあ。
そうこうしているうちに、パチパチと拍手が起こった、
ガサゴソとマイクが擦れるような音がしたのは、舞がお辞儀をしたせいだろう。
どうやら、めでたく舞はモデルの仲間入りをするようだ。
七つの部活に生徒会、加えてのモデル業の開始。
妹ながらよくやるよなあ……。