アンドロイド アン・10
『あわわわ(*#O#*)』
地震かと思った!
遅刻仲間の赤沢が「ぜったいおもしれーって!」と押し付けてきたラノベを読んでいるうちに居ねむっちまって、突然グラグラガシャガシャの家鳴りがして飛び起きたのだ。
このー! くそー!
家鳴りにアンの罵声が混じっているのに気付いて音源の玄関にまろび出る。
「な、なにやってんだ、アン!?」
「なにって、ドア開けて買い物に行くとこなのよ! この~! この~!」
「や、やめろ! おまえの力だと家が壊れる!」
「だ、だって……!」
「落ち着け!、玄関のドアは外に向かって押すんだ! 押すんだよ!」
「え? え? え……ほんと、開いた! 新一、エラーい!」
「の、のわーーーー!」
無事にドアが開いたのが嬉しくて抱き付いてくる。その勢いで玄関ホールに重なって倒れてしまい、昨日の感電事故に続いて、アンの柔らかさに包まれてしまう。
「じゃ、行ってくるねー!」
「あ、ああ、気いつけてな……あ、おれも一緒に行くわ」
アンを一人にしてはいけない気がして、俺はご近所お出かけ用のサンダルをつっかける。
施錠していると、またしてもアンのトチ狂った声!
ワ、ワ、ワ、アワワワワ!
「どうした?」
家の前に出ると、町田夫人が急ブレーキをかけた自転車の前輪に跨るようにして至近距離でお見合いしているアンだった。
「ご、ごめんなさい!」
「いえいえ、こちらこそ💦」
どうやら、道路に出たところで、自転車の夫人と出くわし、双方、互いの進行方向に避けてしまってお見合いになってしまったようだ。
「す、すみません、アンのやつが」
「いえいえ、わたしもドジっちゃって」
「アン、いつまで跨ってるんだ」
「え、あ!」
前輪に跨ったものでスカートがめくれ上がって縞パンが見えている。
「わ、あわわわ(*#O#*)」
「アンちゃんも意外にそそっかしいのね(⌒∇⌒)」
「いえ、あ、はい、粗忽ですみません」
「ううん、こういう女の子って好きよ。運動会の時のスーパーウーマンみたいなのもいいけど、ドジっ子も好きよ。じゃ~ね」
にこやかにペダルを漕ぎ始める夫人に真っ赤な顔でペコペコ頭を下げるアン。
「新一も頭下げる!」
「俺もか?」
夫人がもう一度振り返って手を上げてドンマイのサイン。
揃ってため息ついてスーパーに向かった。
スーパーでも、エスカレーターに乗り損ねてアタフタしたり、特売に目を奪われてワゴンをひっくり返したりした。
スーパーにはご近所の人もチラホラ居て、明るい笑いを誘っていた。
どうも、感電事故から、ちょっとおかしくなってきたアンだった。
☆主な登場人物
新一 一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった
アン 新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明
町田夫人 町内の放送局と異名を持つおばさん
町田老人 町会長 息子の嫁が町田夫人
玲奈 アンと同じ三組の女生徒
小金沢灯里 新一の憧れ女生徒
赤沢 新一の遅刻仲間