アンドロイド アン・1
『アンとの遭遇』
十七年の人生で、こんなに驚いたことはない。
――よう新一、約束の品物、明日の午後には着くから……え? それは着いてのお楽しみじゃ……ワハハハ!――
お祖父ちゃんからの電話。
なぜ驚くかというと、お祖父ちゃんは七日前に亡くなっていたから。
電話を切ってから気づいた。これは、お祖父ちゃんが亡くなる前にコンピューターにプログラムしていたものだ。
二言ほど言葉を交わしたけれど、今日日のコンピューターは、それぐらいのことはやってのける。
だから、それほどの驚きじゃない。
ほんとうに驚いたのは、これの続き。
あくる日に届いた品物……品物と言っていいかは、皆さんで判断してください。お祖父ちゃんが品物と言ったので、そう表現しておきます。
「高階新一さん、お届け物です」
「はい……」
インタホンの画面をチラ見して、ハンコを持ってドアを開けた……で、驚いた、ドアの外にはサロペットスカートの女の子が、柔らかな日差しの中で立っていたのだ!
「よろしく、今日から、あたしが新一クンの面倒を見ます。ちょ、じゃま……う~ん、これは、まずお掃除だなあ」
そう言うと、そいつは勝手に上がり込んで、高校生の一人暮らしには広い家の中を掃除し始めた。
「あ、そ、それは……!」
「掃除は、まず捨てることからよ。ほい、ほい……えと、これもね、あれもね」
「ちょ、ちょっと……」
そいつは、このひと月余りで、ボクなりに使いやすくした家の中をひっかきまわし、たちまち五つのゴミ袋を一杯にした。
「ゴミの回収は月曜日ね、それまでベランダに置いておきましょ。あたし三つ持つから、あなた二つね」
そいつは、優し気な言い回しと声だけど、抗じかたい力があって、掃除が終わるまで、ボクは口を挟めなかった。
「あの……きみは?」
やっと、そう聞けたのは、そいつがキッチンでお茶を入れているときだった。
「あたし、高階新之助さん、新一クンのお祖父さまからの贈り物よ。アンと言います……はい、お茶が入りました」
「アン?」
言葉を続けようとしたら、お茶の香りが素晴らしく、一口飲まずにはいられなかった。
「どう、美味しいでしょ?」
「う、うん……我が家のお茶だとは思えない……」
三口で飲み干すと、アンがじっと見つめる視線と合ってしまった。
「新一君、二日ほどお風呂入ってないでしょ」
「え、あ、いろいろあって……」
「九月と言っても、まだ夏のお釣りみたいなもの。お風呂には毎日入らなきゃ……」
アンは、ボクの目を見たままサロペットを脱ぎ、自分も風呂に入れる体制になると、ボクの腕をムンズと掴んだ。
「お、おい、なにすんだよ!?」
「言ったでしょ、新一クンの面倒は、あたしがみるって……」
見かけによらない力で引っ張られ、アブラムシの次に嫌いな風呂に連行された……!