大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・1『アンとの遭遇』

2018-08-06 07:12:50 | ノベル

アンドロイド アン・1
『アンとの遭遇』



 十七年の人生で、こんなに驚いたことはない。

――よう新一、約束の品物、明日の午後には着くから……え? それは着いてのお楽しみじゃ……ワハハハ!――

 お祖父ちゃんからの電話。

 なぜ驚くかというと、お祖父ちゃんは七日前に亡くなっていたから。
 電話を切ってから気づいた。これは、お祖父ちゃんが亡くなる前にコンピューターにプログラムしていたものだ。
 二言ほど言葉を交わしたけれど、今日日のコンピューターは、それぐらいのことはやってのける。

 だから、それほどの驚きじゃない。

 ほんとうに驚いたのは、これの続き。

 あくる日に届いた品物……品物と言っていいかは、皆さんで判断してください。お祖父ちゃんが品物と言ったので、そう表現しておきます。

「高階新一さん、お届け物です」
「はい……」
 インタホンの画面をチラ見して、ハンコを持ってドアを開けた……で、驚いた、ドアの外にはサロペットスカートの女の子が、柔らかな日差しの中で立っていたのだ!
「よろしく、今日から、あたしが新一クンの面倒を見ます。ちょ、じゃま……う~ん、これは、まずお掃除だなあ」
 そう言うと、そいつは勝手に上がり込んで、高校生の一人暮らしには広い家の中を掃除し始めた。
「あ、そ、それは……!」
「掃除は、まず捨てることからよ。ほい、ほい……えと、これもね、あれもね」
「ちょ、ちょっと……」
 そいつは、このひと月余りで、ボクなりに使いやすくした家の中をひっかきまわし、たちまち五つのゴミ袋を一杯にした。
「ゴミの回収は月曜日ね、それまでベランダに置いておきましょ。あたし三つ持つから、あなた二つね」
 そいつは、優し気な言い回しと声だけど、抗じかたい力があって、掃除が終わるまで、ボクは口を挟めなかった。

「あの……きみは?」

 やっと、そう聞けたのは、そいつがキッチンでお茶を入れているときだった。
「あたし、高階新之助さん、新一クンのお祖父さまからの贈り物よ。アンと言います……はい、お茶が入りました」
「アン?」
 言葉を続けようとしたら、お茶の香りが素晴らしく、一口飲まずにはいられなかった。
「どう、美味しいでしょ?」
「う、うん……我が家のお茶だとは思えない……」
 三口で飲み干すと、アンがじっと見つめる視線と合ってしまった。
「新一君、二日ほどお風呂入ってないでしょ」
「え、あ、いろいろあって……」
「九月と言っても、まだ夏のお釣りみたいなもの。お風呂には毎日入らなきゃ……」
 アンは、ボクの目を見たままサロペットを脱ぎ、自分も風呂に入れる体制になると、ボクの腕をムンズと掴んだ。
「お、おい、なにすんだよ!?」
「言ったでしょ、新一クンの面倒は、あたしがみるって……」

 見かけによらない力で引っ張られ、アブラムシの次に嫌いな風呂に連行された……!
   

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高校ライトノベル・秋物語り・18『タレコミ……』

2018-08-06 06:17:08 | 小説4

秋物語り・18
『タレコミ……』
        

 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗(シホ) 高階美花=呉美花(サキ)

 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名


 
 いきなりドアが開いて警備員のオジサンが二人入ってきた。


「女子高生は、どこにいる?」
 オチケンの部室のみんなが固まった。運悪く、わたしの他は、秋元君をはじめ、男子学生ばかり。
「なんですか、いきなり」
「いや、オチケンの部室で女子高生を連れ込んで、いかがわしいことをやってるって、通報があったんだ」
「ここにいるのは、みんなうちの学生かね?」

 一瞬動揺が、みんなの顔に走った。すかさず年かさの警備員さんが、わたしに目を付けた。

「わたし、東都短大の学生で、オチケンの交流に来てます」
 思わず去年のウソ八百が口をついて出た。
「うーん、高校生には見えないが……」
 多分警察のOBあたりの警備員さんなのだろう。目つきが険しい。
「これ、学生証です」
 言われもしないのに、わたしは去年のままに持っていた学生証を出した。
「じゃ、ガセですね」
 若い方の警備員さんが納得して、帰ろうとした。 
「氷川聡子さんね……東都短大は、どこの駅で降りるんだね?」
「C線、S駅の4番出口です」
「生年月日は?」
「平成12年5月15日です」
 これは、自分の生年月日に一年を足しただけのもの。去年東京を麗と美花の三人でフケルときに何度も練習した。
「干支は?」
「戌年です。警察じゃないんだから、これ以上は答えません!」
 正体を知っているオチケンの男子学生の方が動揺しているのだから、しつこいんだ。年かさの方が携帯をとりだした。
「もしもし……」
 なんと、東都短大に問い合わせし始めた。
「まだ、疑います?」
「いや、こいつは本物だ」
「こいつ呼ばわりはないでしょ!」
 秋元君が、つっかかった。案外……ってか、ほんとに怒ってる。
「いや、すまん。こいつってのは学生証のことだよ」
「じゃ、わたしも正直に言います」
 年かさの目が、また光った。
「わたし、この秋元君のレコ。で、わたしたちが本番までいかないように、あとの二人が監視役。ってか、あわよくば合コンにしたいの見え見えなんですけど。個人的にHの手前ぐらいやってもいいと思いません? もう高校生じゃないんだから、学内でやっていい線は心得てますから」
「分かった、分かった、君たちには学内自治の権利があるからね。じゃ、行こう」
「その前に、そんな虚偽のタレコミやった奴教えてもらえませんか?」
「文学部の学生と言っていたが、どうもそれも怪しいな。顔は覚えてるから、見たら注意しとくよ」

 で、ケリになった。
 
「亜紀ちゃん、なかなかやる~!」
 雫さんが、ドリンクとスナックの山とお腹を抱えて、笑いながら入ってきた。

 わたしは、そのタレコミが気になって、明くる日の昼休み、麗と美花の三人でカレーうどんを食べながら話し合った。
「その場は、笑い話で終わったけどさ、わたし、なんかヤな予感がするんだ」
「ひょっとして、大阪の頃のこと?」
 麗が滝を逆さにしたようにうどんを吸い込みながら(これが、この子の見た目に合わない芸)言った。
「もう、とっくに終わったつもりでいたのにね」
 美花は、出汁を残したまま、箸を置いた。それを当たり前のように、麗がすする。真剣なのか楽しんでんのか、こっちの身にもなれよな。その時校内放送が流れた。

――三年A組、水沢亜紀、すぐに生徒指導室まで来なさい。くり返します……――

「なんだろ?」

 美花が、ヘタレ八の字眉になって、本気で心配な顔をした。麗も、ドンブリを置いて、マジな目で、わたしを見た。

 大波乱の予感……。

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