大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・20『アンとお彼岸・2』

2018-09-24 14:02:08 | ノベル

アンドロイド アン・20

『アンとお彼岸・2』  「彼岸花」の画像検索結果

 

 

 冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して振り返る。

 

 連休三日目、二度寝から目覚めると昼に近いので、朝飯をジュースだけど済まそうと思ったのだ。

 で、振り返ると、リビングのテーブルの上に仏壇が存在している。

 え、ええ?

 不信心な我が家には仏壇が無い。

 アンが珍しがるので、いっしょに行ったスーパーで仏さんのお花を買った。

 まあ、珍しい花束くらいに思って、アンは花瓶に生けて喜んでいた。

 その仏さんのお花が、テーブルの上の仏壇の中で本来の位置を占めて役割を果たしている。

 

「ね、その方がいいでしょ」

 

 不思議がっていると、いつのまのかアンが立っていて、自慢げに鼻の穴を膨らませている。

「でも、どうしたんだよ、この仏壇?」

「納戸にあったカラーボックスに黒い紙やら貼っつけたの」

「そーなのか……お釈迦さんの掛け軸とかは?」

「ダウンロードしてカラーコピー。他のパーツもカラーコピーのペーパークラフトだよ」

 

 そう言われてみると、鶴の形の蝋燭立てや香炉はCGのポリゴンみたくカクカクしている。ペーパークラフトじゃ丸みは出しにくいもんな。

 チーーーン

 手前の鈴を叩いてみると、しっかり金属音だ。これは?

「町田さんの奥さんにいただいたの」

「町田さんに?」

「うん、宗派とか分からないでしょ。それで、お仏壇見せていただくついでに聞いたら『うち浄土真宗だから真似するといいわよ。そうだ、仏壇屋さんにもらった鈴があるから、これあげる』って、いただいたの」

 町田夫人と聞いて、悪い予感がした。

 

「うわーー、すごい。まるで本物のお仏壇じゃないの!」

 

 開け放したサッシに町田夫人の姿。直で庭の方からやってきたんだ。

 町田夫人とは適当な距離を置いておきたかったんだけど、アンは無頓着なようだ。

「専光寺さん、こっちこっち!」

 専光寺? え? ええ?

 

 なんと、町田夫人に誘われて本物の坊主が現れた。

 

「うちにお参りに来てもらったついでにお願いしたのよ🎵」

「は、はあ」

 オタオタしているうちに、町田夫人も坊主もリビングに上がり込んで、仏壇の前で、にわかの彼岸法要になってしまった。

「過去帳は?」

「とりあえず、お祖母ちゃんのを用意しました」

 アンは、半紙を半分にしたのに『釋明恵』と書いたのを鈴の横に置いた。

「しゃくあきえ?」

「しゃくみょうえと読みます。お祖母さんは門徒だったんですか?」

「はい、両親の代でやめてしまったみたいで」

 坊主の問いに、アンはしっかり答える。

「それなら、正式の法名ですなあ……できたら、お写真とかあったら、拝みやすいですが」

 お祖母ちゃんの写真なんかはお爺ちゃんちだ。うちには無いぞ。

「パソコンで検索したんで、こんなのしかないんですけど……」

 アンが差し出したのは……若すぎる。

 お祖母ちゃんは、セーラー服のお下げ髪だ。

 

「出身高校の集合写真から拾ってきたんです。いいですか?」

「ハハ、宜しいでしょ。それでは……」

 町田夫人も加わって、我が家のお彼岸法要が始まった。

 

 アンは行き届いていて、ちゃんとお布施まで用意していて「あっちゃん、若いのに行き届いてるわねえ」と町田夫人に感激された。

 お寺さんのお参りなど初めてで、粗相があってはいけないと思い、俺とアンは玄関を出て前の道路まで見送った。

「なんだか、とっても良いことしたような気になったわねえ」

「ああ、そうだなあ」

 アンには振り回されてばかりだけど、今日のことは素直に喜んでやれる。

 

 リビングに戻ってビックリした。

 

「ほんとうに、どうもありがとうね」

 

 ソファーに座ってお礼を言ったのは、集合写真の姿のまんまのお祖母ちゃんだ!?

「あ、え、えと、えと……」

「実は、昭雄くんフッて浩一くんと付き合おうと思ってたんだけど、こんな素敵な孫ができるんならって……決心できたの。本当にありがとう」

 そう言うと、若き日のお祖母ちゃんは、アイドルみたいにニッコリ笑って消えて行った。

「よかったね! 浩一くんてのと付き合っていたら新ちゃん、存在しなくなるとこだったわよ!」

 

 こいつ、計りやがった?

 

 

☆主な登場人物 

  新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

  アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

  町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

  町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

  玲奈    アンと同じ三組の女生徒

  小金沢灯里 新一憧れの女生徒

  赤沢    新一の遅刻仲間

  早乙女采女 学校一の美少女

 

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高校ライトノベル・トモコパラドクス・6『友子のスペック』

2018-09-24 06:49:35 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・6
 『友子のスペック』  
    


 友子は紀香から、とんでもないことを聞かされた……。

「トモちゃんの娘が極東戦争を引き起こすの」


「え、ええ?」
「いまから五十年後の未来。トモちゃんの娘は極東戦争で、極東地域のリ-ダーになって戦い、最終的には極東地域の指導者になる。それをこころよく思わない人たちが、三十年前に大挙タイムリープして、首都高で、助けようとした国防軍のケインと共にトモちゃんを消そうとした。トモちゃんを消せば、娘は生まれてこないものね」
「ちょ、ちょっと待って。それなら、その子の父親を殺しても同じじゃないの」
「その子の父親は分からないの」
「え、わたしって、そんなふしだらな……」
「ううん、情報が欠落してるの。はっきりしてるのは、トモちゃんが母親だってこと。また、スーパーコンピューターのナユタで計算したらね、父親がだれでも、その子は生まれるの」
「そんな、父親が変われば、当然生まれてくる子も違うでしょ?」
「それが、トモちゃんの遺伝子は強力で、父親が変わっても、生まれてくる女の子は、ほとんど同じなの。トモちゃんの遺伝形質を八十パーセント以上受け継いで、同じ行動をとるの」
「でも……アハハハ、紀香さん、わたしって義体だから子供なんてできないでしょ?」

「それが、できるの」

「え…………!?」
 友子は、思わずズッコケて、椅子からずり落ちそうになった。
「トモちゃんの義体は、義体と生命テクノロジーの結晶なの。あなたには生殖能力があるのよ……」
「うそ!?」
 紀香は、じっと友子の下腹を見つめた。
「そ、そんなマジマジ見ないでくださいよ。なんだか恥ずかしい(#^0^#)」
「トモちゃんの遺伝子情報は、トモちゃんが三十年前に息を引き取る前にCPUに取り込んである。それに合わせて生体組織ができてるから、そういうことも可能なの」
 友子は、思わず自分の下腹に手を当てて、頬を染めた。
「で、わたしの時代では、トモちゃんの娘は生まれてるんだけどね……」
「え、生まれてるの。いやだ、どうしよう。で、どんな子なんですか?」
「それは言えないわ。ただ、そんな世界的な指導者になる兆候は、まるでなし。アジアの情勢も落ち着いてるしね。なゆたで演算しても、可能性は、限りなくゼロ!」

「じゃ、なんでわたしは……」

「そりゃ、国家的な事業計画だもの。義体産業やら生命工学産業のメンツや利権が絡んでるから、今さら中止はできないの」
「地球温暖化と同じ……」
「そう、アジアで将来危機的な国際環境になるって、アンケートに選択肢は三つだけ。『ある』『ない』『どちらとも言えない』があって、『どちらとも言えない』は『ある』に集計されてるの。まったく温暖化のアンケートといっしょ。で、予算執行上止められない計画だから、一応カタキ役として、この白井紀香が派遣されてるって分け……どうかした?」
「なんだか、虚しくなってきちゃった……」
「まあ、一兆円もかけたプロジェクトだから、簡単に中止にはならないでしょ。それまで、どうなるか分からないけど、お互い仲良くやりましょう。はい、ここにサイン」
「え……?」
「入部届!」
 友子は、しぶしぶ入部届にサインした。
「それから、トモちゃんの筋力は十万馬力。多分空も飛べる」
「わたしは、鉄腕アトムか……」
「あとのスペックは、目力は強力」
「おとこ殺し?」
「スペシウム光線出るからね。両手首からはジュニア波動砲、発射の時は手首が百八十度曲がって発射されるから、手首の皮に切れ込みが入って、しばらくはリストカットしたような跡がつくけど、ナノリペアーが三十分ほどで修復してくれる。あとは、わたしにも分からないブラックボックスがいくつか。まあ、自分で、少しずつ覚えることね。はい、ちょうだい」
 紀香は、入部届をふんだくると、保護者欄のところにサラサラと母親の春奈そっくりの筆跡でサイン。ハーっと親指に息を吹きかけると、書類に捺印。拇印かと思ったら、きれいに『鈴木』の三文判の跡。
「すごい、手品みたい!」
「一応これでも、トモちゃんのカタキ役。この書類今日中に出したら、目出度く部員三人で、同好会から正規のクラブになれるの。じゃ、連休明けからよろしく!」

 同窓会館を出ると、街はたそがれていた。

 乃木坂を、ため息つきながら駅へ向かっていくと、紀香が電柱の陰から出てきた。

「え、どこから?」
「わたしだって義体よ。これくらいは夕飯前」
「プ、朝飯前じゃないの?」
「だって、夕飯前の時間でしょ。ちょっと待っててね」
 紀香は、道を渡って、タイ焼き屋に向かった。
「はい、入部祝い!」
 小倉あんのタイ焼きをくれた。ふとタイ焼きの紙袋に目がいった。
「閉店特価……あのお店、閉店なんだ」
「うん、『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』からの名物だったんだけどね……」
「そうだよね、理事長先生が、まどかたちのためにたくさん買ってきてくれたんだよね」
「そう、演劇部再出発の日にね。ヘヘ、縁起担ぎ」
「おいしい……」
「それから、連休明けたら、いちおう先輩だから。言葉遣い、気を付けて!」
「はい!」

 乃木坂に、とてもアクションSFラノベとは思えない、緩くて長い影が二つ長く伸びていった……。

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高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・29『里中ミッション・1』

2018-09-24 06:41:15 | ボクの妹

が憎たらしいのにはがある・29
『里中ミッション・1』
    


 俺はねねちゃんになってしまった……。

 つまり義体であるねねちゃんのCPにボクの心がインストールされたということで、ボクの体は、今はねねちゃんである。
「インスト-ルは90%に押さえてある。完全にインスト-ルすると、太一は、自分の体も動かせなくなるからな。今日は一日、オレの家で休んでいてくれ」
「で、ミッションは?」
「ねねの行動プログラムに従って、学校に行ってくれ。問題は直ぐに分かる。じゃ、よろしくな」
 そこでボクは車を降ろされた。
 角を曲がって五十メートルも行けば、フェリペの正門だ。視界の右下に小さく俺の視界が写っている。まだ、しばらくは車の中なんだろう。

 五メートルも歩くと違和感を感じた。スカートの中で、自分の内股が擦れ合うのって、とても妙な感覚だ。
――女の子って、こんなふうに自分を感じながら生きてるんだなあ……大したことじゃないけど、男女の感受性の根本に触れたような気がした。

「里中さん、ちょっと」

 担任の声で、わたしは……ねねちゃんになっているんで一人称まで、女の子だ。わたしは職員室に入った。
「失礼します」
「こちら、今日からうちのクラスに入る、佐伯千草子さん。慣れるまで大変だろうから、よろしくね」
「チサって呼んでください。よろしく」
 チサちゃんは、立ち上がってペコリと頭を下げた。
「わたし、里中ねね、よろしくね」
 ほとんど自動的に、笑顔が言葉と手といっしょに出た。チサちゃんがつられて笑顔になる。
 で、握手。
「やっと笑顔になった」
 担任の山田先生が、ホッとした顔をした。ねねちゃんは、単に可愛いだけじゃなく、人間関係を円滑にするようにプログラムされているようだ。

 教室に着いた頃、本来の俺は、里中さんの家にいた。
 車の中からここまではブラックアウトしている。セキュリティーがかかっているんだろう。たとえ一割とは言え、自我が二重になっているのは、ややこしいので、本来の俺は直ぐにベッドに寝かしつけた。

 朝礼まで時間があるので、わたしはチサちゃんに校内の案内をした。

「ザッと見て回ってるんだろうけど、頭に入ってないでしょ」
「うん……」
「こういうことって、コツがあるのよね」

 わたしは、教室、おトイレ、保健室。そして、今日の授業で使う体育館と美術室を案内した。そして、そこで出会った知り合いやら、先生に必ず声をかける。そうすると、場所が人間の記憶といっしょにインプットされるので、ただ場所だけを案内するよりも確かなものになる。
 しかし、行く先々で声を掛ける相手がいるというのは、わたし……ねねちゃんもかなりの人気者なんだ。

「佐伯千草子って言います。父が亡くなったので、伯父さんの家に引き取られて、このフェリペに来ることになりました。大阪には不慣れです。よろしくお願いします」
 短い言葉だったけど、チサちゃんは、要点を外さずに自己紹介できた。最後にペコリと頭を下げて、大きなため息ついて、ハンカチで額の汗を拭った。それが、とてもブキッチョだけども素直な人柄を感じさせ、クラスは暖かい笑いに包まれた。
「がんばったね」
「うん、どうだろ……」
「最初に、自分の境遇をサラリと言えたのは良かったと思うよ」

 三時間目が困った、チサちゃんじゃなくてわたし。

 体育の時間で、みんなが着替える。女子校なもんで、みんな恥じらいもなく平気で着替えている。わたしは、プログラムされているので、一見平気そうにやれるけど、この情報は、寝ている「ボク」の方にも伝わる。案の定、「ボク」は、真っ赤な顔をして目を覚ましたようだ。

 美術の時間、チサちゃんは注目の的だった。

 静物画の油絵だけど、チサちゃんはさっさとデッサンを済ませると、ペィンティングナイフで大胆に色を載せていく。そして五十分で一枚仕上げてしまった。

「まるで、佐伯祐三……佐伯さん、ひょっとして!?」
「あ、その佐伯さんとは関係ありません……」
 それまで、絵に集中していたんだろう、先生やみんなの目が集まっていることに恥じらって、俯いてしまった。
 一枚目は習作のつもりだたのだろう、与えられた二枚目のボードを当然の如く受け取った。
「そこ、場所開けて」
「は、はい……」
 チサちゃんは堂々と自分の場所を確保。だれもが、それに従順に従った。
「先生、この作品は、まだまだ時間が要ります。放課後も描いていいですか?」
「う、うん、いいわよ」

 チサちゃんは、たった一日で、自分の場所を作ってしまった。まあ、それについては、わたしも少しは寄与している。
――これでいいんでしょ、里中さん?
 連絡すると意外な答えが返ってきた。
――これからが、本当のミッションなんだ。

 ターゲットは、帰りの地下鉄の駅前の横断歩道にいた……。

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