大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・19『アンとお彼岸・1』

2018-09-21 14:32:13 | ノベル

アンドロイド アン・19

『アンとお彼岸・1』

 

 

 あの花は何ていうの?    「彼岸花」の画像検索結果

 

 路傍の花に目を止めて、アンが聞く。

 揃ってスーパーへの買い物の途中、交差点を曲がったところの空き地にホワっと咲いた赤い花を見つけたんだ。

「彼岸花」

「え、花がひがんでるの?」

「ちがうよ、お彼岸の頃に咲く花で、曼殊沙華(まんじゅしゃげ)ともいう。あれが咲くと秋なんだなあって思うわけよ」

「へえ、新一って詳しいんだ、これからは博士ってよぼうか!」

「ハハ、たまたまだよたまたま」

 

 そう言って、思い出した。

 

 柄にもなく彼岸花を曼殊沙華と言う別名込みで覚えていたのはお祖母ちゃんが教えてくれたからだ。

――新ちゃん、あのお花、知ってる?――

 祖母ちゃんが指差した花を見て、ドキッとしたのは保育所のころだ。

「ううん、知らない」

 正直に答えた。名前どころか、赤い触手がホワっと開いて獲物を待っているような様子に、子ども心にもビビったもんだ。

――お彼岸の頃に咲く花でね、あの花が咲くのはご先祖様が戻って来るってお知らせなんだよ――

 そう教えてくれた祖母ちゃんは、その年の暮れに逝ってしまった。

 俺一人置いて海外で仕事ばっかやってる両親は、いたって不信心で、伯父さんがやった法事にも顔を出さない。

 だから、彼岸花の記憶は祖母ちゃんの思い出もろとも記憶の底に沈んでいた。

 

「わあ、お花が増えてる」

 

 スーパーの入り口付近が小さなフラワーコーナーになっていて、言われてみれば陳列されている花が豊富になっている。

「地味な花束がある」

「ああ」

 それは菊を中心にコンパクトにアレンジされた花束で、親譲りの不信心者にも分かる。

 仏壇にお供えする仏花、いわゆる『仏壇のお花』だ。花束ではあるんだが、どうにも陰気臭い。

 その奥の花のアレンジメントが目に入った。

 バスケットに青や紫、ピンクの花がアレンジしてあって――お水に気をつければ三週間もちます――と書いてある。

 

 そして買ってしまった。

 

 まあ、バアチャンのことを思い出したのも縁だろう。

 仏壇もないことだし、仏花よりは、これだろうと思ったわけだ。

 

 レジを済ませて思った。

 アンのやつ、俺にお彼岸とか祖母ちゃんの思い出させるために、わざと花の名前を聞いた?

 だよな、アンのCPUはネットにリンクしているし、独自のアーカイブを持っているフシもある。

 彼岸花を知らないわけはない。

 そっか、そうやって、俺のことフォローしてくれてるんだ……ちょっとだけ胸が熱くなる。

 

「ね、あの花は何ていうの?」

 

 また、空き地の花を指さしやがる。

「彼岸花、さっきも言ったろーが」

「え、そうだっけ?」

 

 キッチンで感電してから、ときどき具合が悪い。

 アンドロイドの認知症か?

「失礼ね!」

 こういうことは口にしなくても反応しやがる。

「アハハハ……」

 

 二人して笑ったが、俺たちのお彼岸はこれからだったのだ……。

 

☆主な登場人物 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一憧れの女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

 

 

 

 

 

 

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高校ライトノベル・トモコパラドクス・3『あの日の秘密』

2018-09-21 06:57:02 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・3
 『あの日の秘密』  
     


 あらかわ遊園から帰った夜、一郎は夢を見た。

 三十年前の、あの日の夢だった……。


 首都高某所で、事故が起こった。夜の九時頃だった。
「家で待ってなさい!」
 そう言われたが、迎えに来たパトカーに、無理を言って乗り込んだ。代々木に出たところまでは覚えていたが、そのあと意識がもどったのは、病院の待ち合わせのようなところだった。
「もう目が覚めたのか」
 通りかかった白衣のお医者さんのような人が言った。子供心にも「まずかったかな」という気持ちになった。
「この子は、あの子の弟だ、多少、同じ素因をもっているんだろう」
「かもな、我々を見てしまったのなら、見せておくべきかも知れない」
 その時代には存在しない携帯のようなもので、そのお医者さんのような人は連絡をとった。
「分かりました。連れていきます。あれ飲ませといて」
 もう一人の、見れば若そうなお医者さんみたいな人に指示して行ってしまった。

 さっき飲まされたジュースのようなもののせいかもしれないが、一郎は、すごく落ち着いた気持ちでエレベーターにのせられ、地下何階かで降りて、長い廊下を歩いた。
 扉が二重になった部屋は機材の少ない実験室のようだった。

 そして正面のガラスの向こうに、姉が裸で横たわっていた。

「おねえちゃん……」
 その姉の姿には命を感じなかった。姉の手術台が百八十度回った。見えた姉の左半身は、焼けただれていた。
「おねえちゃん、死んじゃったの?」
「それを今から説明するの」
 いつのまにか、白衣の女の人が立っていた。とてもきれいな人だったけど、地球の人ではないような気もした。
「お姉さんは、首都高を車に乗せられてすごいスピードで走っていたの」
「……誘拐されたの?」
「その逆。誘拐されかけたのを仲間が助けたの。でも間に合わなくて、車ごと吹き飛ばされた」

 女の人が、リモコンみたいなのを押すと、逃げ回る車を追いかけている、ローターの無いヘリコプターみたいなのが三つ見えた。それがSF映画のように逃げる車を追いかけ回し、目に見えない弾のような物を撃っていた。弾と、その周辺の空間が歪むので弾なんだと分かった。路面に落ちたそれは、微かに光って消えてしまうが、巻き添えを食った他の車に当たると、ハンドルを切り損ねたようにスピンしたり、前転したりして、車や側壁に当たって、事故のようになる。
 やがて、トンネルに入る寸前で、その車に命中し、車は三回スピンし、トンネルの入り口に激突。ボンネットから火が噴き出し、またたくうちに、車は火に包まれた。なんだか外国語で命ずるような声がして、カメラは路面に降り立ち、他のヘリからもまわりの空間が歪むことで、それと知れる人間達が降りてきた。

 やがて、車から、煙をまといながら男がおねえちゃんをだっこして出てきた。一瞬身構える男。見えない弾丸が空間を歪ませながら飛んでいく。身軽に男は、それをかわすが、おねえちゃんを庇って背中に二発命中した。男は再び燃え上がり、おねえちゃんは路面に投げ出された。
 その直後、敵の男達が、どこからか飛んでくる弾に当たって、次々と倒れ、画面も横倒しになって消えてしまった。

「これ、オバサンたちが助けたんだね……」
「理解が早いわね。このあとお姉さんだけを救助して、ここに運んだ」
「……男の人は、おねえちゃんを庇って死んだんだね」
「そう、そしてお姉さんも、さっき息を引き取ったの」
「じゃ……」

 映画の出来事のように冷静に喋れるのは、さっき飲んだ薬のせいだろう。

「でもね、こっちを見て……」
 ガラスの向こうでカーテンが開き、金属で出来た骸骨の標本みたいなものが現れた。よく見ると、そいつの骨の間には、部品のようなものが入っていて、見ようによっては作りかけのサイボーグのようにも見えた。
「作りかけのロボット。お姉さんの記憶は、脳が死ぬ前に、こっちのロボットのここに入力した」
 女の人は、自分の頭の当たりを指差した。
「じゃ、おねえちゃんは!?」
 初めて感情のこもった声が出た。
「そう、死んじゃいないわ。体が替わっただけ」
「おねーちゃん!」
 一郎は、ガラスを叩いた。
「ぼく、ガラスを叩いちゃ……」
「いいわよ。感情を抑制しすぎると精神に影響するわ」
「おねえちゃん……生き返るの……?」

 一郎は、聞いてはいけないクイズの、最後の答を催促するようにオズオズと聞いた。

「動力炉、それと生体組織がなんとかなればね」
「なに、それ……?」
「エンジンと、ボディー。エンジン無しじゃ車は走れないでしょ。ロボットもね。それにスケルトンのままじゃ外に出せないでしょう。わたしは、これの専門家じゃないから、そこまでは手が回らないの。都合をつけてもどってくるわ。それが、明日になるか、十年後になるかは、分からないけどね。時間軸の座標を合わせるのは、少し難しいの。それに、これは違法なことだしね」

 親たちには、娘は事故死したと伝えられ、焼けただれた右半身を隠した遺体をみせられ。両親は娘は死んだことで納得した。
 晩婚だった両親の悲しみは深く、葬儀のあと、急に老け込んだ。それでも幼い一郎のためにがんばり、父は去年亡くなり、認知症の母は介護付き老人ホームに入っている。

 事故そのものは、首都高の連続事故として処理され、そして、三十年の歳月が流れた。

『明日、十時、代々木の○○交差点でお待ちしています』
 そのメールがやって来たのが一カ月前だった。

 そして、三十年ぶりに会った姉は、当時の十五歳の姿のまま、羊水の中でまどろんでいた。

「ここまで、歳が離れちゃお姉ちゃんというわけにはいかないなあ」
 当時若かった、初老の医者が、そう言った。
「大伯父の孫娘、親が亡くなって見寄なし……という線でいきましょう。書類やアリバイ工作に時間がかかるから、一カ月後ということにしましょう」
 女の人は、ひとりだけ、三十年前の若さで、そう言った。

 そこで目が覚めた。血圧の低い春奈は、まだ眠っている。

「おーい、友子、もう起きろよ……」
 すると、後ろで声がした。
「どう、さっき来たの。乃木坂学院の制服。似合うでしょ!」

 制服を着て、スピンした女子高生の姿は、とても姉とは思えない可憐さであった。

「二十八年下の姉ちゃんか」

 振り返った友子が、スリッパを投げてきた。見事に命中し、いかにも軽い音がした……。

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高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・26『高機動車ハナちゃん』

2018-09-21 06:19:44 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある・26
『高機動車ハナちゃん』
    


 平穏な日々が続いた。

 校舎の屋上でのねねちゃん爆殺事件は、里中副長と幸子の手際の良さで、だれも気づかなかった。
 

 情報衛星が一機、爆殺の瞬間の熱をサーモグラフィーで捉えていたが、調子に乗った生徒が、ちょっと多目の花火遊びをやったということでケリが付いた。
 当然甲殻機動隊が手を回したことだけど、ご丁寧に大量の花火の燃えかすまで撒いていった。
 おかげで、全校集会で、生徒全員が絞られ、屋上は当面生徒の立ち入りは禁止された。
 向こうの幸子は姿が消えた。グノーシスの誰かがリープさせたようだ。しばらくして『当方の幸子は、こちらで預かる。義体化はしない。グノーシス評議会』というメールが入った。

 ブログが炎上した。

 と言っても、屋上の事件とは関係ない。

 幸子のモノマネは、マスコミでも頻繁に取り上げられるようになり、話題になった。特にAKRのセンター小野寺潤と、初代オモクロの桃畑律子のモノマネは、前者は過激なファンから。後者は、アジア問題を気にする有象無象から。それぞれ賛否両論のコメントが数万件も来た。
「なんだか昔のわたしみたいね。でも、頑張ってね!」
 と、モノマネの大御所キンタローさんからも応援を頂いた。

「サッチャン、がんばってね~」

 練習を終えたばかりの演劇部の子達が、ブンブン手を振って送り出してくれた。
「幸子、ほんとにこの調子でやってくつもりか?」
「うん。このお陰で、神経回路がすごく発達してるような気がするの。幸子、ニュートラルの状態でも笑顔になれるようにがんばるわ」
 幸子は、学校とモノマネタレントとしての使い分けを見事にやりこなしていた。学校の授業はもちろんのこと、演劇部とケイオンの部活も休まず。放課後と土日だけを、タレント業にあてている。

 まいったのは俺の方だ。俺は、テイのいい付き人。
 マネージャーはお母さんがやっている。

 放課後と土日だけのスケジュールなので、お母さんはラクチン。車の運転さえしない。車はガードを兼ねて甲殻機動隊が貸してくれた完全オートの高機動車。音声を女の子にして「ハナちゃん」と名付けられた。
『オカアサン、編集のラフできました(^0^)』
「ありがとうハナちゃん。助かるわ」
『いえいえ、ハナも勉強になりま~す』
 ハナちゃんは、目的地まで運転している間に、お母さんのアシスタントまでこなしている。
「ハナちゃんの学習意欲は、よく分かるわ。今のわたしといっしょ」
『そんな、幸子さんとハナとでは機能が二桁違いますからね。ま、励ましのお言葉として受け止めておきます。太一さん起きて下さい。あと一分で到着ですよ~♪』
「☆○×!!……その電気ショックで起こすのは止めてくれないかなあ」
「これが、一番効果的だと学習したの~」
 ハナちゃんと、お母さん・幸子は相性がいいようだが、俺は、もう一つ馬が合わない。

「おはようございます。今日は小野寺さんと、共演になりましたのでよろしく」
「え、やだ。わたし緊張、チョー緊張!」
 プログラムモ-ドの幸子は、憎たらしいほどに可愛い。衣装をかついで控え室へ。お母さんは幸子を連れて、ゲストのみなさんに挨拶回り。

 控え室には先客がいた。寝ぼけ頭の俺は一瞬部屋を間違えたかと思った。

「少しだけ時間を下さい、太一さん……」
 モデルのようにスタイルのいい女の人が、部屋間違いでないことを間接的に。で、次の言葉で直接的な目的を言った。
「この二人を預かっていただきたいんです」
「あ、どうぞ掛けてください……あ、あんたは!?」
 ボクは、ナイスバディーの女の人のヒップラインで気づいた。
「美シリ三姉妹……」
「の……ミーです。でも今は敵じゃありませんから」
「その二人は……」
 二人は、ニット帽とパーカーのフードをとった。
「き、君たちは……!」

 ボクは、しばらくフリーズしてしまった……。


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