大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・メタモルフォーゼ・9・受売神社の巫女さん

2019-03-08 06:51:40 | 小説3

メタモルフォーゼ

9・ 受売神社の巫女さん         


 あたしを、こんなにしたのは優香かと思った……。

 だって、優香が自転車事故で死んだのと、あたしが男子から女子に替わったのはほぼ同じ時間。
『ダウンロード』は優香が演りたがっていた芝居で、優香は、よくYou tubeに出てる他の学校が演ったのを観ていた。
 しかし、それは一人芝居で、あれを演ろうとすれば当時発言権を持っていたヨッコ達をスタッフに回さなければならず、ヨッコ達は、そんなことを飲むようなヤツラじゃない。自分は目立ちたいが、人の裏方に回るのなんかごめんというタイプだ。

 あたしは、訳が分からないまま部活を終えて、気がついたら受売(うずめ)神社の前に来ていた。鳥居を見たら、なんだか神さまと目が合ったような気になり、拝殿に向かった。
 ポケットに手を入れると、こないだお守りを買ったときのお釣りの五十円玉が手に触れた。
「あたしのナゾが分かりますように」
 が、手を合わせると替わってしまった。
「うまくいきますように」
 なぜだろう……そう思っていると、拝殿の中から声がかかった。

「あなた、偉いわね」

 神さま……と思ったら、巫女さんだった。
「あ……」
「ごめん、びっくりさせちゃったわね。売り場と拝殿繋がってるの。こっち行くと社務所だから」
「シャムショ?」
「ああ、お家のこと。神主の家族が住んでるの。で、わたしは神主の娘。自分ちがバイト先。便利でしょ」
「ああ、なるほど」
「あなた、AKBでもうけるの?」
「え、いえ……あたし……」
「あ、受売高校の演劇部! でしょ?」
「は、はい。でもどうして」
「これでも、神に仕える身です……なんちゃってね。サブバッグから台本が覗いてる」
「あ、ホントだ。アハハ」
「でも、偉いわよ。ちゃんとお参りするんだもの。こないだお守りも買っていったでしょ?」
「はい、なんとなく」
 なんとなくの違和感を感じたのか、巫女さんが聞いてきた。
「あなた、ひょっとして、ここの御祭神知らない?」
「あ、受売の神さまってことは、分かってるんですけど……」

 詳しくはしりませんと顔に書いてあったんだろう。巫女さんが笑いながら教えてくれた。

 ここの神さまは天宇受売命(アメノウズメノミコト)という。
 天照大神が天岩戸にお隠れになって、世の中が真っ暗闇になったとき、天照大神を引き出すために、岩戸の前で踊りまくって、神さまたちを一発でファンにした。
 前田敦子のコンサートみたく熱狂させたアイドルのご先祖みたいな神さま。
 あまりの熱狂ぶりに、天照大神が「なにノリノリになってんのよ!?」と顔を覗かせた。そこを力自慢の天手力男神(アメノタジカラオ)が、力任せに岩戸を開けて無事に世界に光が戻った。
 そして、タジカラさんはお相撲の神さまで。ウズメさんが芸事の神さま。今でも芸能人や、芸能界を目指す者にとっては一番の神さまなのだ!

 あたしは、ここで二度も神さま(たぶん)の声を聞いた。と……いうことは、神さまのご託宣?

 訳が分からなくなって、家に帰った。
「美優、犯人分かったらしいわね!」
 ミキネエが聞いてきた。ちなみに我が家は、今度の映像流出事件と、その元になったハーパン落下事件は深刻な問題にはなっていなかった。
「イチゴじゃなくって、ギンガムチェックのパンツにしときゃオシャレだったのに」
 これは、ユミネエのご意見。
「しかし、男子の根性って、どこもいっしょね」
 これは、ホマネエ。
「まあ、これで、好意的に受け入れてもらえたんじゃない?」
 有る面、本質を突いているのは、お母さん。

 もう、あの画像は削除されていたけど、うちの家族はダウンロードして、みんなが保存していた。
「あ、なにもテレビの画面で再生しなくてもいいでしょ!」

 と、うちはお気楽だったけど、この事件は、このままでは終わらなかった。

 つづく

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高校ライトノベル・時かける少女・31『プリンセス ミナコ・13』

2019-03-08 06:43:30 | 時かける少女

時かける少女・31 
『プリンセス ミナコ・13』 
       

 

 ミナコはローテの腕を掴んで離さなかった……!

 すぐにSP部長のダニエルと侍従武官長のダンカン大佐がやってきた。
「だめ! みんな来たら、重みで残りのバルコニーも崩れてしまう!」
 ミナコはあらん限りの声で叫んだ。
 そのとき一陣の風が吹いてきて、ミナコのドレスの裾を派手にまくり上げ、キティーちゃんのおパンツが、丸出しになった。
「寄るな、ここから先は国家機密だ!」
 ダンカン大佐が、宮殿ごと壊れそうな大声で怒鳴った。
「かまわないから、ザイルか……カーテンでもいいから、投げてちょうだい!」
 ダニエルの部下が、カーテンを引きちぎり始めた。

「ローテ嬢は、我々が下で受け止めます。どうかミナコ殿下は、お手をお離しになって下さい!」

 下の庭で、警備兵が四人ほどで腕を組んで、受け止める体制をとっていた。

「ローテ、どっちにする? カーテン待つ? それとも下で受け止めてもらう?」
「下で受け止めてもらう!」
「おパンツ見えるけどいい?」
「見えないようにするもん!」
「じゃ、決まりね。下の人たちよろしく!」

 ミナコが手を放すと、ローテは実に物理法則に従順に墜ちていった。本人の努力虚しくスカートは、おちょこになった傘のようになり、スターウォーズのアミダラ女王のパンツガむき出しになった。
「うまくいったわ、直ぐに助けに行ってあげて」
「お前たち、すぐに行け!」
 ダニエルが、ミナコと同時に叫んでいた。
「お姉ちゃん、せめて花柄ぐらいにしとけばよかったのに」
「お祖母ちゃん、ここは、わたしが指揮を執るわね。王女としての最初の仕事よ」
「少し派手だけど、記録に残すのには劇的でいいわね」

 これで、案外簡単にローテのクレルモン家との確執は解決しそうな気配がした。しかし事態は思わぬ方向に展開していった。

「大変です、ローテ嬢が何者かにさらわれました!」
「下にいた警備兵はにせ者でした!」
「怪しい警備車が、東北の方に!」
 ダニエルの部下たちが次々と報告をあげてきた。
「バルコニーには、小型の爆薬が仕掛けられていました。これです」
 ダニエルの手にはコオロギが載っていた。
「こうなります……」
 ダニエルが、広間の真ん中に置くと、鳴き声と共に、発火し指向性の強い閃光がして、飾りのヨロイの胸に穴を開けた。
「こいつを幾つか仕込んで、お庭の虫の声に紛らせて、バルコニーを少しずつ破壊していったんでしょう。犯人は、おそらく警備兵に化けていた連中です」
「いったい、だれが、こんな怖ろしいことを……」
 女王がため息をつき、みなが顔を伏せた瞬間、すごいスピードで紙飛行機が飛んできた。
「だれだ!?」
「無駄だ、庭の木のどこかに細工がしてあって、時間が来たら、ここに飛び込む仕組みになっていたんだろう。かすかに火薬の臭いが……それよりも、付いている手紙が問題だ」

――ローテは預かった、ローテの命が惜しければ、明日の夕刻に我々が指示する場所にミナコ王女が一人で来るように。場所と時間はおって連絡する――

 差出人は、ミナコ民族解放戦線とあった……。

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高校ライトノベル🍑MOMOTO🍑デブだって彼女が欲しい!・61『片桐胡桃さん……』

2019-03-08 06:34:37 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

61『片桐胡桃さん……』


 自分のことを「ボク」などと言うのは小学校の低学年以来だ。

 気取って言ったんじゃない、自然にそうなった。片桐胡桃さんという人は、そう言わせるほどに大人びている。
 ソレイユ国富での初日はお客の帰った後のテーブルの始末と準備だけだ、いちおう接客のあれこれを教えてもらったが、直にお客さんと接触するのは3日目以降になるとのことだ。
 だけど胡桃さんは、働き始めて2時間もすると、お客さんの案内からオーダー、配膳までやり出し、それがまたバイト初日とは思えないくらい上手でしっくりいっている。接客の自然な笑顔は幹部社員級だ。
「胡桃さん、すごいですね!」
 ディナー前の休憩がいっしょになって、思わず賞賛してしまった。言葉も敬語になっている。
「エヘヘ、以前、元町店でバイトしてたから」
 幹部社員級の笑顔がデビューしたてのアイドルみたくフレッシュなものになる。
「そ、そうなんですか!」
 圧倒されて声が上ずってしまう。この人は大学の2年生ぐらいで、将来は民放のアナウンサーとかを目指しているんじゃないかと腰が引けてしまう。

 胡桃ショックから明けて、今日は新学年の始業式だ。

 クラスは持ち上がりなので、担任もクラスメートも変化が無く新鮮味が無い。
 学年はじめの短いホームルームが終わると、腐れ縁の八瀬が寄って来た。
「すまん、生徒会に頼まれて午後の入学式の撮影をするんだ、付き合ってくれよ」
「おまえ、いつから生徒会なんだ?」
「だ、だから頼まれたんだって、副会長の瀬楽さんに」
「瀬楽さんに恩でもあるのか?」
「あ……まあ、ちょっとな」
 八瀬の頬が赤くなる。当たり前なら「ホ」の字の話なんだろうけど、八瀬というやつは普通に動揺しても、こういう顔になる。

 言いにくそうなので、学食のA定食を奢らせて引き受けてやる。

「オレはビデオを撮るから、桃斗はカメラな」
「写真ならスマホの方が慣れてるけど」
「スマホだと盗撮に間違われる、このカメラで撮ってくれ」
 おっきいデジカメと「生徒会」と刺繍の入った腕章を渡された。

「じゃ、よろしくお願いします。プロのカメラマンも入っているけど、生徒ならではの視線で撮って頂ければ嬉しいです」

 入学式の10分前に瀬楽さんがやってきて、挨拶をした。
 こういう一言が撮影の熱意に影響することを知っているんだろう。同学年とは思えない配慮と落ち着きぶりだ。
「八瀬、ひょっとして瀬楽さんに惚れたか?」
「バ、バカ言え!」
 八瀬の反応は「そうだ」とも「もっと深い事情が」ともとれた。

 威風堂々のBGが流れる中、ピカピカの一年生が入場してきた。

 写真は素人なので、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる式で、バシャバシャ撮りまくる。
「3組の4番目の女子可愛いぞ」
 式の半ば、入り口付近で控えていたオレに八瀬が声を掛けに来た。瀬楽さんへの気持ちのカモフラージュかと思ったが、3組のその子は、後姿だけでもイケているのが分かった。
 きっちりしたツインテール、頬から喉にかけてのラインがシャープで背筋がピンと伸びている。
「おい、前の方からも見てみようぜ」
 こういう時に撮影係というのは便利だ。怪しまれずに回り込めるしファインダーを覗いていれば遠慮なく観察ができる。
「惜しいなあ、眼鏡ちゃんだ」
 オレは隣の八瀬にだけ聞こえる声で言った。オレは眼鏡は苦手だ。
「あれはあれでいい」
 八瀬には偏見が無い。
「お……」
 八瀬の観察は続いた。
「あれは伊達眼鏡だな……」
 八瀬の観察力は、その子の眼鏡は度なしであることを見破った。

 で、その後、入学式が終わって新入生たちは教室に入る。最初のホームルームだ。

 オレと八瀬は、緊張感が抜けた彼女を見ようと、下足室の出口で待ち受けた。
 3組の生徒はなかなか降りてこなかった。オレたちは先に終わった新入生たちを撮りまくった。何もしないで待っていてはいぶかしがられると思ったのだ。
「いいアイデアね、ここにいれば緊張がほぐれた新入生たちを撮れるものね」
 瀬楽さんに褒められる。
「でも、特定の女の子に偏ったりしないでね」
 そう言うと、フフと笑って行ってしまった。瀬楽さんはタダモノではないようだ。
「おい、3組が下りてくるぞ」
 一年生の教室は4階にあるので、下から見ていると生徒たちがゾロゾロと出てくるのが分かった。

 その子は、流れ出てくる生徒たちの後ろの方に居た。

 緊張から解放された一年生は、いちおうに晴れやかだったが、その子は落ち着いていた。
「クールビューティーだな……」
 八瀬が呟いて、それがきっかけだったように、その子が振り返り眼鏡をとった。
「え、あれは……」

 眼鏡をとったその顔は……バイト仲間の胡桃さんではないか!?

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