大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・005『be動詞で友だちに!』

2019-03-20 15:45:55 | 小説

魔法少女マヂカ・005

『be動詞で友だちに!』 

 

 

 

  ノンコと清美を友達にするきっかけは、あくる日には巡ってきた。

 英語の時間にこんなことがあったのだ。

「二番の問題、藤本さん」

 英語の橋本先生が和文英訳の問題をあてた。ノンコは前回の定期考査で欠点をとっているので本人も橋本先生も意識している。

 

 〔問題・2〕以下の日本文を英訳しなさい。

 言語が大きく異なる欧米人と本当に理解し合うことは決してやさしいことではない。

 

 緊張の面持ちでノンコは黒板の前に立ち、数秒考えてからチョークを取った。

  It not easy by any means to really communicate with Westerners, whose languages are quite different from ours.

  書き終ると、ホッとため息ついて、上着の袖で額を拭って席に戻った。

 意味は通じる。まずまずの、いや、よくできた答えだ。ところが、橋本先生は腕組みして眉間にしわを寄せた。

「う~ん、なんか抜けてない、藤本さーん?」

「え?」

 気の弱いノンコの額は一瞬で汗をにじませた。

「あ……えと……えと……」

「よくできてるみたいなんだけど、大事なのが抜けてる。中一レベルの間違いだよ」

 中一レベルと言われて、ノンコは手の平にも汗をかきだした。

「中一レベルですか……えと……えと……」

 確かに抜けているが十分正解だ。

「小学校でも英語をやろうって時代よ、その感覚なら小学生レベルだわよ~」

 嫌味な言い方だ、ノンコはチック症のように目をしばたたかせている。

「他の人、分かるかな~」

 清美とユリは俯いている。先生のお道化た言い方に追従笑いをする者もいる。

「be動詞よbe動詞!」

It is not easy by any means to really communicate with Westerners, whose languages are quite different from ours.

 先生は「is」を赤チョークで書き入れ、その上を何重にも〇で囲んだ。教室の半分以上がケタケタと笑う。ノンコは真っ赤になって俯いてしまった。

「こういう基本的なことを押えておかなきゃ、いつまでたっても欠点取っちゃうわよ~!」

「は、はい……」

 ノンコは消え入りそうだ。

「先生」

 手を挙げてしまった。

「なにかしら、渡辺さん?」

「藤本さんの文章、十分正解」

「でも、be動詞が抜けちゃ話にならないでしょ。これがテスト問題だったら半分も点数あげられないわ」

「お言葉ですが、ニューヨークの街角でも通じる英語です」

「でも、ここは学校なの、日本の学校。be動詞抜けてちゃ話にならないわ」

「わたし、手を挙げて、こう言いました『藤本さんの文章、十分正解』。 助詞の『は』と『です』を抜きました。be動詞に擬態させられる『です』を抜いたんです。でも、こうやって意味が通じて会話になってますよね」

「ム……それは……」

 これ以上教師の権威を落としてはまずいなあ……収拾に掛かった。

「アハ、野々村さん、これだけやっときゃbe動詞忘れないでしょ?」

「あ、は、はい!」

 
 授業が終わって、野々村さんとは「ノンコ」「マチカ」と呼び合える仲になった。清美は友だち二人の友だちということで十分友だちになる事が出来た。

 

 

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・05『ガンバってみる!』

2019-03-20 06:22:42 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・05
『ガンバってみる!』
        

 わたしが感動したからと言って他人が感動してくれるわけではない。

 すごく当たり前のことなんだけど、いざ実感して見るとガックリだ。


 コンバットの新兵さんが敵中横断をやるみたいにドキドキして学校に着いても、感動してくれる人なんかいない。
 そりゃそーだよね。
 わたしは何百人もいる玉櫛中学の生徒の一人でに過ぎない。そして、何百人の生徒の半分は自転車で通っている。
 同じ制服着て同じような自転車に乗って校門を潜っても、犬や猫が迷い込んできたほどにも気づいてもらえない。

 だけど、尾道少女が自転車に乗れたというのは革命的なことなんだ!

 例えて言うと、女子中学生が初めて宇宙飛行士になるようなものなのだ! わたしにとってはね。
 でも、ここ大阪の高安では「人間だったら歩く」のと「自転車に乗れる」というのは、ほとんど同じ意味なんだ。
 分かってるんだけど、つまらない。

「如月さん、自転車に乗ってるのね」

 担任の和田先生に言われた時には、思わず「ハイッ!」と大きな声で応えてしまった。
「これ自転車保険のプリント。今週中に申し込んでね。それから、ほんまは自転車通学届を提出してからやないと自転車では通学できないから。ま、早く手続き済ませてね」
 和田先生は気づいていた。
 だったら「おめでとう!」の一言ぐらい欲しいと思ったけど、まあ、生徒に目が行き届いている、学校としては上等の方なんだと、自分を納得させる。

「さっそく乗ってきたんやね!」

 師匠の京ちゃんだけは喜んでくれる。
「帰りに二人だけでお祝いしよ!」
 一時間目の体育の後、ひまわりの妖精みたいな笑顔でハグしてきた。
 京ちゃんの体からはお日様のような匂いがした、新発見。
 考えてみると、匂いが分かるくらいの近さで人に接したことが、もう何年も無い。
 わたしって……考え込みそうになるので頭を切り替える。

「わー、ご馳走になってもいいの!?」

 放課後、図書館で十五分だけ時間を潰してから家庭科教室に行った。
「失礼します」の声を掛けて家庭科教室のドアを開けると、出汁の効いたいい匂いがした。
「こっちこっち!」と誘われたテーブルには鍋焼きうどんが二つ並んでいたのだ。
「これ、京ちゃんがつくったの?」
「まーね。あたして家庭科クラブやったりするわけなんよ」

 知らなかった、転校してきてから唯一友だちになった京ちゃんだけど、てっきり帰宅部だと思っていた。

「まあ、あんまり熱心な部員やなかったからね、さ、冷めへんうちに」
「うん」
「「いっただきまーす!」」
 友情の籠った鍋焼きうどんを美味しくいただきました。

「なんだか京ちゃんには世話になりっぱなしだね」

 高安の開かずの踏切にひっかかったので、電車の轟音に紛れる寸前に言った。

 ゴーーーー ガタンガタンガタンガタン ガタンガタンガタンガタン ガタンガタンガタンガタン

 通過してから京ちゃん。
「人も街もいっしょやと思う。同じとこしか通ってなかったら違う景色は見えてけえへん……てか、あたしもミッチーに世話になってるんよ」
「え、なん……」
 聞こうと思ったら、今度は特急電車の轟音に遮られてしまった。
 タイミングを外すとシビアな話は続かなくなる。
「大阪の子って、みんな、あんなにお料理が上手なの?」
 やっと開いた踏切に話題が変わる。
「材料がええんよ。安うて美味しいもんが一杯あるからね、あのおうどんなんか一玉十九円やねんよ」
「十九円!?」
「ミッチーも自転車乗れるんや、自分で探してごらん、他にもいろいろある街やからね」
「あ、うん。ガンバってみる!」

 その足で探検に行きたかったけど、まだ運転には自信が無いので――今週中には!――と決心するわたしであった。

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・5(The witch training・1)

2019-03-20 06:15:55 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・5
(The witch training・1)



 朝起きると、テレビで船の事件を二つ言っていた。

 一つはイタリアの客船が過積載のまま出港。波にあおられて船が傾き沈没の危機になった。しかし船長らの的確な判断と行動により、船は傾斜を五度に戻して無事に助かった……という目出度い話。
 もう一つは、南シナ海で、C国の巡視船にしつこく追いかけまわされたベトナムの漁船が、神業的な操舵で巡視船に体当たり。C国の巡視船は大きな船であったが、当たり所が悪く沈没。幸い怪我人だけで済んだが、C国とベトナムは、一触即発の危機的な状態になったものである。
「大変だね、世界は……」
 日本人を代表するようなのどかさで、お父さんが呟く。真由は高倉健に続き菅原文太が亡くなってしまったことと、AKBの新曲を半月も知らなかった方がショックだった。

「行ってきまーす!」

 いつものように玄関を出て横丁を曲がると、たまげた。沙耶が怖い顔をして立っているのだ。
「やっぱ、自覚ないんだ」
「え、何が? どうして沙耶が、ここにいるわけ? あなたの家、駅三つはむこうだったわよね?」
「今朝、船の事故のニュース二つやってたでしょう」
「え……」
 AKBの新曲の方が気にかかり、とっさには思い出せない。
「あれ、二つとも真由がやったんだよ」
「え……?」
「もう忘れちゃっただろうけど、真由は夢の中で、透視していたの。で、無意識にイタリアの船を助け、ベトナムの漁船をC国の巡視船にぶち当てたの。イタリアの船長は英雄視されると同時に過積載の責任を問われるし、ベトナムとC国は戦争直前までいってんのよ!」
「え、うそ!?」
「真由の魔力は、予想よりも大きい。今日から、ちょっと魔力コントロールの訓練やるわね」
 
 沙耶が、そう言うと一本向こうの道から、真由と沙耶そっくりの二人が現れて駅へ向かった。
「あ、あれ、あたしたち……」
「デコイよ。しばらくあたしたちの代理をやってもらうの。さ、あたしたちは訓練にいきましょう」
 そう言うと、沙耶はジーンズと、ブルゾンの姿に……そして、顔が今まで見たことのない子に変わっていた。
「すごい、本物の変身なんだ」
「感心してないで、真由もやるの!」
「あ、そか……エロイムエッサイム……」

 一瞬間があって、沙耶が呆れた顔で言った。

「渡辺麻友になって、どうすんのよ!」
「あ、ついAKBのこと考えてたから……どうしよう」
「あ、みんな気づいた! ご丁寧にステージ衣装なんだもん。走って!」
 二人は、横丁を曲がりながら、魔法をかけなおした。沙耶は、ブルゾンの色を変えるだけだったが、真由は大変だった。ステージ衣装は無くなって、当たり前のハーフコートとコーデュロイのパンツに変わったが、顔が決まらない。次々と変わるが、どれもAKBの選抜の顔だ。
「ええ、もう足して48で割る!」
 やっとAKBの顔ではなくなったが、集団の中では目立つかわいい顔になってしまった。で、駅前の百均でマスクとファンデとペンシルを買って、駅のトイレでメイク。なんとか群衆の中に溶け込める顔にはなった。

 改めて、魔法の難しさを実感した真由であった。で、訓練の場所は渋谷に決まった……。

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高校ライトノベル・時かける少女・43『女子高生怪盗ミナコ・9』

2019-03-20 06:09:10 | 時かける少女

時かける少女・43 
『女子高生怪盗ミナコ・9』 
      


 こんな簡単に会えるとは思えなかった。怪盗ミナミはハチ公前で気軽に声をかけてきた。

「蟹江さん、時間通りね」
「え……ミナミ!?」
 ミナコは学校帰りに通っただけで、別にミナミと待ち合わせていたわけではない。それどころか、どうやったらミナミに連絡がとれるか思案しながら歩いていたのである。
「あなたの、そういう無鉄砲なところと、計画性の無さが好きよ」
「隙って意味?」
「素直にとってちょうだい」
 そう言いながら、手を上げて一台の車を停めた。タクシーでも、仲間の車でもないことは止められたドライバーの表情で分かる。
「あぶねえじゃねーか! いったい……どうぞ、後ろのシートに」
 ミナミは、一瞬で、ドライバーのニイチャンに催眠術をかけたようだ。
「こういうテクニックも持ってるのね?」

 ミナミはフェリスの制服を着ていた。ミナコは青山学園である……ほんとうに。

 車は、六本木のIホテルの前で止まった。
「五時半になったら、迎えに来て」
 ニイチャンにそう声を掛けると、ホテルの中に入り、フロントに向かった。
「池之宮です」
 その一言でキーが渡された。ミナコは、初めて正体不明な人間に出会った気がした。

「不思議な感じなんでしょ、わたくしのこと?」
「あなたみたいなの初めてだから」
「わたくしは、池之宮南と、ご記憶くださいな」
「一応ね」
「うふふ、よくってよ」

「わたくし、あなたと組みたいの」
 ドアを閉めるなりミナミは切り出した。部屋には、お茶のセットが置かれていた。
「その前に、お茶いただいていいかしら?」
 ミナコは、ストレートで紅茶を一口だけ含んだ。
「毒も、変な薬も入ってないでしょ?」
「それは、あなたの表情を見れば分かるわ。いままでの仕事もパフォーマンスなのね」
「そう、わたくしを売り込むためと、あなた、蟹江ミナコさんを誘い出すためのね」
「なにか……大きな仕事を計画してるような感じがするわ」
「そう……世の中には、わたくしたちより、もっとスケールが大きく、許せない泥棒さんたちがいるわ」

 ミナコは、一時間ちょっとミナミの話を聞いた。デビューには、ちょうどいい仕事に思えた。

 五時半きっかりに、ホテルのアプローチに出ると、さっきの渋谷で掴まえた車が入ってきた。
「今度は国会議事堂前に」
 そう言うと、ミナミはカバンから衣装を出し、瞬間で議員秘書、それも革新系のそれになった。
「じゃ、わたしも……」
 ミナコも瞬間で、同じように衣装を替えた。どちらも変装にかけては同等の力を持っているように思えた。

 議事堂に入ると、そのまま予算委員会室の前に向かった。
 ちょうど休憩になったようで、議員達がぞろぞろ出てきて、記者達がぶら下がろうと後を付いてくる。
「先生、お迎えにあがりました」
 ミナミが声を掛けたのは庶民党の党首辻貴子であった。
「あ……ごくろうさま」
 そう言わせて、人だかりの中から、辻貴子を引っぱり出したが、誰も気づかず、どこから出てきたのか記者達は、カーネルサンダースの人形相手に質問を浴びせていた。

 待っていたニイチャンの車は、辻貴子を挟むようにして後部座席に三人を乗せ、羽田空港に向かった。

「やっぱ、あなたの力がなきゃ、ここまで上手くいかなかった。カーネルサンダースは傑作だったわね」
「え、あれ、あたしがやったの?」
「そうよ、あなたには気づいていない力がまだまだあるわ」

 車は、羽田空港のロータリーに入っていった……。

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