大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・008『家庭科主任 徳川康子先生』

2019-03-23 15:43:33 | 小説

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・008

『家庭科主任 徳川康子先生語り手・ユリ     

 

 

 高校の先生というのは職員室に居るとは限らない。

 教科別の準備室、国語、生物、化学、体育、社会とか。分掌別というのもある、分掌というのは分担された学校の仕事。進路とか生活指導とか保健とか図書とか。そういうあちこちの部屋に散らばってる。だから、直接授業を習ってないと――こんな先生いたっけ? 先生の方からすると、こんな生徒いたっけ?――ということが結構ある。

 その――こんな先生いたっけ?――というところに向かっている、四人揃って。

 向かっている先は家庭科準備室。旧館一階の西側に被服室・調理室・作法室・家庭科準備室と並んでいる。つまり、一番奥。わたしたちが習っているのは脇坂先生なんだけど、用事があるのは徳川先生。

 徳川先生と言うのは家庭科の主だ。

 脇坂先生とは親子ほど歳が離れている。むろん徳川先生の方が上で校長先生と同い年。徳川という苗字は伊達じゃなくて、マジで徳川家康さんの子孫。でもって、帝都タクシーの社長夫人であったりする。なんでも、東京都の家庭科教育のボス的存在であったりもする。

 なんで、そんなにオッカナイ先生の所に向かっているかというと、例のお昼ご飯のためなのだ。

 三日間はマチカが作ってきてくれたお弁当を頂いた。マチカのお弁当に不足は無い、無いどころかメチャクチャ美味しい! 美味しいのは、先日おかずの交換をやって承知してるんだけど、ノンコと清美の分も作るようになって、さらにグレードが上がった。三段重ねの重箱に色とりどりのお料理が入っていて、お正月のお節かお花見弁当かっていう感じ。マチカは、どうってことないという顔をしているけど、三人は恐縮した。材料費だけでもすごいと思う。トリュフとか伊勢エビとか入ってる。こういうところにビビるのが三人の良いところでもあると思うんだけどね。

 それなら、本格的にお料理講習会をやろうということになった。

 時間的にも場所的にも学校でやるのが一番。だから、脇坂先生に頼んで調理室を貸してもらおうと思った。

「わたしの一存では決められないわ、主任は徳川先生だから、直に頼んでくれる?」

 というわけで、奥つ城の家庭科準備室を目指しているのだ。

 ノックする前に互いの服装身だしなみをチェック。「「「「よし!」」」」の声が揃って、ジャンケンで負けたわたしがノック。「入れ!」の声にビクッとして「「「「失礼します」」」」。入室して最後尾の清美がドアを閉める。

「学年・組・氏名・用件を言いなさい!」

「ハ、ハヒ!」

「二年B組、要海友里」「渡辺真智香」「野々村典子」「藤本清美」「以上四名、家庭科調理室の使用を許可していただきたくて参りました!」

「奥に進みなさい」

「はい、失礼します……」

 

 徳川康子先生……名前からして徳川家康を思わせる先生は、机に向かって提出させた実習ノートや被服作品のチェックの真っ最中。三十秒ほどあって、チェックに区切りをつけてあげた顔は一見穏やかそうなうりざね顔だ。去年やってた大河ドラマの西郷隆盛の奥さんに似ていた……。

 

☆ 主な登場人物

マチカ(マヂカ)     魔法少女としてはマヂカ、日暮里高校2年B組の渡辺真智香として72年ぶりに復活

ユリ  要海友里     マチカのクラスメート

ノンコ 野々村典子    マチカのクラスメート

清美  藤本清美     マチカのクラスメート

安倍晴美         日暮里高校 国語の講師

ケルベロス        魔王の秘書 魔法少女世話係 黒犬の姿だがいろいろ変身して現れる

田中先生 田中実     2年B組の担任

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・08『崩れる生駒山・2』

2019-03-23 06:27:20 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・08
『崩れる生駒山・2』
        

 山が崩れると地震が起こる

 地震が起こるから山が崩れる? どっちだろ?

 生駒山がポロポロ崩れているというのに、わたしは、そんなことを考えていた。
「ミッチー、あれ!」
 京ちゃんが指差したのは高安山の頂上。
 引っ越してきた日に気づいていたんだけど、山のテッペンには大きなたこ焼きがある。てか、第一印象がたこ焼きだったんだけど、正体は分からない。そのデカいたこ焼きが、遠目にもグラグラ揺れているのだ。
「あ、転んだ!」
 たこ焼きが土台から外れて、山の斜面をゴロゴロ転がり始めた。
 たこ焼きは、山の斜面の木々をなぎ倒し、麓の家々をペチャンコに!
 と思ったら、斜面の途中でバラバラになった。
「え、張りぼて?」
「あれは、気象レーダーのドームや。そうか、きみらにはたこ焼に見えたんか。卒業した子らは目玉おやじとか言うとったけどな」
 藤田先生の言葉に――そういうふうにも見えるなあ――と感じる。

      

「恩地川が決壊した!」「山津波がおこった!」「玉櫛川も溢れてる!」

 立て続けに誰かの叫び、教室から飛び出した生徒たちが右往左往している。
「外には出るな! 屋上へ上がれ!」
 藤田先生が叫ぶ。叫ぶだけじゃなくて、校舎の出口に立って、グラウンドに出ようとしている生徒や先生を押しとどめている。
「緊急避難はグラウンドや、先生、そこどきなはれ!」
 教頭先生が藤田先生を押しのけようとする。
「マニュアルは通用しません! 恩地川が決壊してるんです、大和川を遡って来た津波が来るんです! グラウンド行ったら飲み込まれる!」
 恩地川は大和川に繋がってるなんて知らなかった。とんだところで地理の勉強。
「階段上がらせたら、慌てて怪我人が出る! マニュアルに沿ってせなあかん!」
「問答無用!」
 なんと、藤田先生は教頭先生を張り飛ばした!

「みんな屋上へ!!」

 教頭先生を張り倒したことで、迷っていた人たちの気持ちが一つになった。廊下のみんなは屋上を目指した。先生たちも踊り場に立って、パニックにならないように誘導し始めた。
 屋上に出てフェンスに掴まると、恩地川から溢れた水が街を浸し始めたのが分かった。グラウンドは、ほんの数秒で濁流に呑まれ、自動車やら家の壊れたのが押し寄せてきた。グラウンドに逃げていたら危ないところだった。
「ああ、あれー!」
 京ちゃんが叫ぶ。叫んだ方角を見ると、街の人たちが、いろんなものといっしょに流されて行くのが見える。中には、なにかに当たったのか、首があらぬ方向に曲がっている人も居る。京ちゃんは口を手で覆い必死で堪えている。京ちゃんは生まれながらの街だ、流されて行く人たちの中に大勢の知った人がいるんだろう。
「みんな、給水塔の上に上がれ!」
 藤田先生が、また叫んだ。
「生駒山が!!!」
 南北に長い生駒山が、あちこちで大崩れになり、崩れた土砂が麓のもろもろのものを飲み込みながら迫ってくる。そして崩れの向こう側からは、さらにいろんなものが、山の向こうは奈良県、その奈良県がグズグズになって押し寄せてくる。
「あ、奈良の大仏!?」
 なんと、大仏様がアップアップしながら、それでも仏様なので、なんとか抜き手で泳ごうとされている。
「コントロールが効かへんねんわ」
 大仏様は流されながらも、人の邪魔になってはいけないと身をくねらせているが、自然の猛威には勝てず、あちこちぶつかっては手を合わせて念仏を唱えている。
「念仏はいいから!」
 なんと大仏様は、校舎の方に流されてきている。

 わ ごめん!

 大仏様が言うのと、校舎にぶつかるのがいっしょだった。
 いかに耐震工事が終わっているとは言え、大仏がぶつかってくるところまでは想定されていない。
 なにかが折れる音がして、足許の校舎はゆっくりと崩れて行った……。

 おい、大丈夫か? 恩地! 如月!

 藤田先生の声がすると、元の廊下に戻った。
 わたしと京ちゃんは、抱き合ったまま廊下にへたり込んでいたのだ。
「校舎が崩れ……?」
「大仏様が……?」
「とりあえず、起きなさい」
 スカートをはたいて立ち上がる。廊下は、いつもの昼休みの景色だ。
「すまん、なんか暗示がかかってしもたみたいで」
「あ、暗示?」
「あ、いや、怪我とかなかったらええねん。いやいや、すまなんだ」
 先生は、頭を掻きながらペコリとすると行ってしまった。

「久々にひっかかってしもたわ、さ、行こか」

 ため息一つして、京ちゃんは歩き出す。
 どうも、この街は一筋縄ではいかないようだ。とんでもないところに越してきてしまった……。
 

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・8(The witch trainingのつもりが……)

2019-03-23 06:19:39 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・8
(The witch trainingのつもりが……)



 三条河原のアベックは川に沿って等間隔に並ぶことで有名である。

「じゃ、とりあえず河原に降りようか」
 ろくに紹介もされないうちに、青年の一言で真由は三条河原のアベックの一組になってしまった。
「ボク、安倍って言います。よろしく」
「あ、あたしは……」
「朝倉真由さん。ひょんなことで魔法が使えるようになっちゃって、そのエクササイズのために、沙耶さん、ハチ公、そしてボクのところへまわされてきたんだよね」
「あ、はい。その通りです……なんで分かるんですか、一言も喋ってないのに?」
 それには答えないで、安倍は続けた。ハチは、おまかせとばかりに少し離れてリラックスしている。
「なんで、ここのアベックたちは等間隔で座っているか分かる? それも、この冬に」
 真由は、改めて周りを見まわすと、同じようなアベックが並んでいるのが分かった。等間隔なのかなと思うと、上空から見たビジョンが目に浮かんだ。何十組というアベックが等間隔で並んでいる。ビジョンが見えたこと自体が、もう魔法なのだが、真由は、この程度では驚かなくなっている。魔女慣れしてきたことと、安倍青年の不思議な雰囲気にも呑まれてしまっているようなのだ。

「これも一種の魔法。日本の古い言い方で呪(しゅ)がかかっているという」
「呪……ですか?」
「それも、二つの呪だよ。一つは互いの愛情……愛は多少の寒さもものともしない」
「なるほど……」
 納得して、真由は驚いた。真由も寒さを感じない。小春日和のような温かさを感じる。
「ハハ、真由ちゃんが感じてるのは愛情じゃないから。ボクが暖かくしている。そこのハチ公までは届いている。病気の時、お母さんが手を当ててくれたり、さすってくれたりすると病状が和らぐね。あれも原始的な呪の一つ。西洋で言う魔法とは呪と同じで、その能力を増幅させたものなんだよ。ハチは上手く教えてくれたようだね、君の頭の中にはコントローラーが見える……いまR2ボタンでボクのこと透視しようとしたね」
 無意識にやってしまったのだが、言われれば、その通りなので、またまた驚いた。で、真由のレベルでは透視しても安倍の正体は分からない。
「もう一つの呪はね……この三条河原は、むかしは処刑場だったんだ。有名なところじゃ豊臣秀次の一族やら石川五右衛門やらが処刑されてる。アベックの間には、そういう霊が座って心を温めているんだよ」
 となりのアベックが笑った。どうやら男の子が女の子にプレゼントをしたみたいだ。
「なるほど、恋は魔法だ。でも、あたし処刑された人たちは見えません」
「経験値があがれば見えるさ。真由ちゃんにはハチが見えてるだろ。でも、他の人には見えないんだ」
「え、見えてないんですか?」
「渋谷じゃないからね、ハチもリラックスしてるんだよ。ちなみに隣にいるのが、いま言った五右衛門……おかしい、五右衛門が気を付けろって言った……いかん、ボクに掴まって!」
 言うが早いか、安倍は真由に覆いかぶさってきた。真由は反射的に安倍にしがみついた。

 次の瞬間、安倍と真由の体が爆発……したように見えた。

「しとめたか?」
「……だめ、一瞬早くテレポされてしまった」
 アベックが悔しそうに言った。
「いて!」
「痛い!」
 ハチが、アベックの男女に噛みついて消えた。周りの何組かのアベックが咎めるように二人を睨んでいた。どうやら、仲間の失敗に怒っているようだ。

 魔女の初級訓練が、いきなり実戦に入ってしまった。


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高校ライトノベル・時かける少女・46『女子高生怪盗ミナコ・12』

2019-03-23 06:11:46 | 時かける少女

時かける少女・46 
『女子高生怪盗ミナコ・12』 
  



 ワールドトレードセンタービルのテロを忘れようと、爺ちゃんと三人でディズニーシーへ行った!

 ちゃんと入場料を払って!

 出来て、もう半年はたとうかというのに、でもって、学校も休んで平日に来たというのに、ディズニーシーはイッパイだった。でも、シッパイだったとは思わない。怪盗ドロボープリンセス(自分たちで付けただけ)と言っても、根はハイティーンの女の子である。こういうテーマパークではいくら待っても退屈はしない。
 待ち時間の間にブルジョアと思われるオッサン……たいがい玄人と思われる風俗の女の子(女の人?)をハベラセて得意そうにしている。そういうオッサン達のカードを預かってはスキャニングして、コピーを作り、園内のアチコチにあるショップで大量に買い物をし、リストアップした児童施設などに送った。
 で、とても使い切れない(なんと三時間ほどで、5億円分ぐらいスキャニングした!)金額なので、後日、本当に必要なものを考えて送ることにした。まあ、普段アコギなことをして稼いだお金なんだろうから、これくらいの散財は、オッサン達の功徳にもなるだろう。

 驚いたことに、K国の将軍様の坊ちゃんが、お忍びで来ているのに出くわした。よく観察すると、日本の公安のオニイサンたちが、5人ほどつかず離れずしていたが、どうやら、ただ見守っているだけのようだった。
「いっちょう、やるか!」
「そうですね」
 ミナコとミナミの意見は直ぐに一致した。動画を3分、エレクトリックレールウェイでは、直ぐ後ろに座り、音声まで採った。会話の中にK国の要人の固有名詞がバンバン出てくる。
 ミナミは、特注のSONYのケータイ型パソコンで、自分のスタッフに送った。また、夜のゴールデンタイムに割り込み放送をするつもりである。

 謙三爺ちゃんは、船長服を着て、コロンビア号のデッキを歩いていたが、あまりにシャメをねだられるので、普通のオッサンのナリになって、デッキチェアーでまどろんでいた。

「なんだ、爺ちゃん、どこにも行ってないの?」
「そこで、おもしろい人にお会いしましてよ」
「ああ、K国のボンボンだろ」
「うん!」
「その様子じゃ、またビデオに撮ってテレビで流す腹だな」
「だって……」
「いや、止めやせんさ。やりたいだけやれ。ただ、あんまり期待すんなよ。辻貴子のときも、世間は見向きもせんかったからな」
「お腹空いちゃった。ちょっと遅いけどランチにしようよ。カードこんなにあるし……」
「貸してみろ……うん、使わせてもらってもいいやつばっかりだな」
「お爺様、見ただけで、お分かりになるんですか!?」
「オレの指輪は、スキャナーになってるんでね」
「指輪だけ?」
「あとは、孫でも教えられん」
「ちぇ!」

 で、三人はCデッキのラウンジで、昼食にした。
「ああ、おいしかった!」
「食った食った~!」
「もう、こんなマガイモノの海やら船は飽きた。どうだ本物の船に行くか?」
「え、本物ですの?」
「ああ、超ホンモノだ。少し仕事もしてもらうがな……」

 ワクワクと、不安な予感が一度にしてきたミナコであった……。

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