大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・004『こうならざるを得ない』

2019-03-19 15:19:41 | 小説

魔法少女マヂカ・004

『こうならざるを得ない』 

 

 

 要海友里との弁当はまずかった。

 

 いや、弁当がまずかったわけではないので念のため。

 自慢じゃないが弁当は自分で作っている。これでも一応女なのでな、いずれは相応しい男を見つけて幸せな生活をおくりたいと思っている。男は胃袋から掴まえなくてはならない。そういう方面にも怠りはないのだが、そのことは、またいずれ。

 ポリコウ(日暮里高校)関係者の脳みそに刷り込むまでもなく、わたしは美少女だ。

 ただ、キャピキャピとつるむことが嫌だから、孤高の少女という設定にしてある。

 その孤高の美少女が、その足元にも及ばないNPCというかパンピーというかエキストラというか、普通の女生徒要海友里と昼食を共にしたのだ。机をくっ付けて向かい合わせで。

 まずいことに、要海友里は初めての弁当だったのだ。初めての弁当を学校一の美少女と食べているのだ、当然注目される。

――ひょっとして百合?――

 面白半分の心の声が二三か所から聞こえる。

「渡辺さん、お弁当は自分で?」

「ええ、そうよ。お料理くらいしか取り柄が無いもんだから……」

 謙遜のつもりだが、このNPCたちには別の事に響くか?

「くらいしかなんて無いと思うけど、なんか、素人ばなれ……もちろん美味しいんだろうし」

「じゃ、この竜田揚げとか試してみる?」

「え! あ、じゃ、わたしの玉子焼きと交換」

「うん、いいわよ」

 おい、おかずの交換くらいで顔を赤くするなよ……。

 期せずして交換したおかずを同時に口の中へ。

「「おいしい!」」

 同時に称賛してしまった。はたから見たらなにかの兆候、今の時代はフラグというのか、それが立ったみたいに見えるぞ。お、美味しいからと言って涙流すなよ!

「あ、なんか感動しちゃって」

「わたしもよ。なんと言うのかしら、愛情の味……お母さんが?」

「は、はい!」

 思いのほか大きな声……心を読んでしまった。これは記念すべき(お母さん)の初お弁当なのだ。

 つっこんで話題にするわけにもいかず、取り留めのない話を心がけるが、わたしにへの崇拝に似た気持ちを持ち始めた友里は目を潤ませて聞いている。

「よかったら、またいっしょに食べましょうね」

「は、はい」

「友里って呼んでいいかな?」

「はい!」

「フフ、わたしのことは真智香。ね」

「真智香さん」

「さんなし」

「ま、まちか」

「うん、その平仮名の感じがいい」

 流れから、こうならざるを得ない。

 

 友里、いやユリには親友と言っていい友だちがいる。ノンコ(野々村典子)と清美(藤本清美)だ。女子にありがちなんだが、不可抗力とは言えユリとわたしが親しくなって、おそらくは面白くないはずだ。仕方がない、機会を見つけてノンコと清美とも友だちになっておこう。

 その日の放課後、職員室前の廊下で嫌なことを聞いてしまった。

「安倍先生」

「なんでしょう、教頭先生?」

「田中先生、もう三か月お休みになられます、講師の延長お願いできませんか」

「は、はい、お引き受けします!」

 

 くそ、安倍晴美もなんとかしなければ……。

 

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・04『敵中横断九百メートル』

2019-03-19 06:30:46 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・04
『敵中横断九百メートル』
        
 

 自転車に乗れたら世界が広がるよ

 京ちゃんに言われ、彼女に助けてもらって自転車に乗れるようになった!

 いつもより三十分も早く目が覚め、三十五分も早く朝の準備を終えて、四十分も早く家を出た。

 今日から、自転車で学校に行くのだ!

 見ている分にはダサイと思っていた通学用のヘルメットも、自分で被ってみると、なんだか出撃前の兵隊になったみたい。
「お、ルーキーだな!」
 早出のシゲさんが冷やかす。
 シゲさんの一言で、コンバットのテーマ曲が、わたしの頭の中で高鳴った。

 タカタッタッタタータタッタッタタタン!  タカタッタッタタータタッタッタタタン!

 外環を走る自動車の音が飛び来る弾丸の飛翔音に聞こえる。
 うちは戦車とかの特殊車両のレンタルを生業にしているので、事務所のモニターにコンバットが流れている。
 コンバットの第何話だったかに、サンダース軍曹の分隊に新兵さんが配属されてキンキンに緊張しまくるエピソードがある。
 今の今まで忘れていたけど、その新兵さんの感覚が、そのまま自分の中に蘇ってしまった。

 ゴーアヘッド! ゴー! ゴー! ゴー!
 
 突撃するときのサンダース軍曹みたく掛け声をかけてしまう。
 駐車場の角を曲がると生活道路だ。
 激闘の野戦を潜り抜け、市街戦が予想される街中に突入した感じ!
 十字路に差し掛かると、スーツ姿の企業戦士たちと合流。大阪市内の学校に通う高校生、OLの女性部隊、足早なのは公務員か学校の先生か。みんな、これから戦いに行くんだと連帯感を感じてしまう。
 恩地川に向かう緩い坂道、勇んだわたしは立漕ぎになる。

 景色が変わった!

 立漕ぎすると、ペダルの分だけ身長が高くなる。
 たかだか十数センチなんだろうけど、世界が違う。道行く人の半分以上が、わたしよりも低くなる。
 男子の女子を見下したような視線。やだと思っていたけど、少し分かる。
 視線が高いと言うのは気持ちがいい。
 いやいや、これは謂れのない優越感だ。思い直してサドルに座る。
 高安銀座通りに入る。
 駅に向かう人と、外環から近鉄の踏切を超える車とで、道幅五メートルの銀座通りは怖い。
 歩いていたころには感じなかった怖さだ。
 かといって、通学路しか分からないわたしは、下手に脇道には入れない。
 情けないけど、降りて自転車を押す。下りると、とたんに自転車はお荷物。
 あ、今だ! と思った隙間に入っていけない。
 いつもなら電柱とお店の間を通ったりするんだけど、自転車は通れない。

 チ!

 瞬間立ち止まってしまうと、後ろで舌打ちされる。
「すみません」
 条件反射で謝ると、同じ中学の一年生が忌々しそうに追い越していく。凹むなあ。
 転校生とは言え二年生だぞ! 腹は立つけど、お邪魔虫はわたしの方だ。忍耐、忍耐。

 やっと高安駅まで着いたら、開かずの踏切だ。

 すぐ横に駅舎を兼ねた跨道橋がある。  「高安駅踏切」の画像検索結果
 そうだ、昨日までは踏切待つのがまどろっこしいんで跨道橋を使っていた。
 自転車では跨道橋は渡れない。
 当たり前のことなんだけど気が付かなかった。なんだか、とても自分が愚かな子に思えてくる。
 高安駅は近鉄の拠点駅で、隣接して操車場がある。
 回送されてきた電車や営業運転に入る電車、中には洗浄中のために人が歩くほどのノロさの電車もある。
 すぐ右横に見えるホームの人たちが踏切を見ている。
 なんだか「この下民ども」って見下されているような気になる。気のせいなんだろうけどね。
 十分以上待って(体内時計の感覚)踏切が開く。
 次々と後ろから自転車に追い抜かれる。
 昨日まで気にも留めなかった自転車乗りの人たちがスタントマンのように思える。
 踏切の歩道は、幅が一メートルも無く、とても自転車に乗って渡る勇気は出ない。
 しかたなく押して渡るんだけど、そんなのはわたしぐらいのもので、とても焦る。
 舌打ちこそは聞こえないけど、無言のプレッシャーを感じ、小走りになって渡る。

 え、そんなー!

 半分渡ったところで警報機が鳴った!
 アセアセになって、やっと渡り終える。

 今朝は、この秋一番の冷え込みなのに、腋の下なんかに汗をかいている。
 明日からは通学路を考えないと、とてもこの踏切を渡ってなんかいられない。

 玉櫛川を渡る信号にひっかかる。
 黄色になったとこなんだけど、踏切で気弱になったわたしは渡れない。
 あとから来た自転車が黄色信号にかかわらず渡っていく。厳密にはルール違反なんだろうけど、これくらいの要領はかまさなきゃ、世の中渡っていけない……んだろうけど、むかつくなー!

 玉櫛川を渡ると自転車が軽くなった?
 あ、この道は下り坂になってるんだ! 歩いていたころには気が付かなかった。スイスイ漕がなくても進む自転車に嬉しくなる。

 学校に入る時は、なんだか晴れがましい気分になる。

 敵中横断九百メートル(昨日グーグルマップで確かめた)の爽快感!

 ヤター!

 密かに左拳を握って、小さくガッツポーズしたのだった。  

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・4(最初のエロイムエッサイム)

2019-03-19 06:14:11 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・4
(最初のエロイムエッサイム)



 沙耶が五時間目に事故死したことは、六時間目が終わって分かった。

 五時間目に救急車が来て校内は騒然とした。直ぐに警察が来て事件性はないか設備上の不備はないかと捜査を始め、マスコミもドッと押しかけてきた。
 そして、六時間目の間に、沙耶の死亡が病院で確認された。
 六時間目のあとは、臨時の全校集会になり、校長が沈鬱な表情で事情の説明をした。
 沙耶のクラスがごっそり抜けていた……警察の事情聴取を受けているんだろうということは容易に想像できた。全校集会のあと真由は事故現場に行ってみた。何人かの同級生が泣きながら実況見分に立ち会っていた。

――あたしのせいなんだ――

 真由は、どうしても自分を責めてしまう。気に掛けないでくださいと、最後に沙耶は言った。でも自分が殺したという気持ちから抜けきれなかった。
「……検死解剖」
 そんな一言が耳についた。そうだ、テレビのドラマなんかでもやっている。こういう場合、状況から死因が特定できても、本当に事件性がないかどうか検死のための解剖がされるんだ。
 冷たいステンレス製の解剖台の上に裸で寝かされ、喉の下から下腹部まで切り裂かれて、内臓を取り出され、あれこれ検査される。思っただけで真由は恐ろしく、おぞましく、かわいそうだった。

『この世よなくなれ』と『わたしを殺せ』という内容のことだけは願っちゃいけない……沙耶の言葉を思い出した。

――今なら助けられる!――

 真由は、そうひらめいた。ダメ元で、真由は小さく声にした。
「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……沙耶を助けたまえ!」
 効果が表れたのは家に帰ってからだった。

「ねえ、この小野田沙耶って、真由の友達の妹じゃないの!?」
 帰ると、母がリビングから顔を出し、興奮気味に言った。
――ああ、やっぱダメだったのか――
 そう思ったが、違った。

――さきほどもお伝えいたしましたが、A女子学院で階段から転落し、一時死亡が確認された女子生徒が、死亡確認後二時間たって蘇生したとA警察と病院から発表されました。当該の女生徒は、同校一年生の小野田沙耶さんで……――
 夕方のワイドショーのMCが自分の事のように嬉しそうに繰り返していた。母親は、それが伝染したように、涙ぐんでいた。
 真由は、魔法が効いたことを実感した。

「ちょっといいですか?」

 本人の沙耶が二日後の昼休みに真由の教室にやってきた。前回と違って、教室のみんなが注目「おめでとう」「よかったね」と声を掛けられていた。沙耶は照れながら真由の机にやってきた。
「ちょっと、例のところまでよろしく」
 今回は目立たないように、沙耶が先に行き、少し遅れて真由が続いた。

「朝倉さん、あなたとんでもないことやったんですよ……!」
 沙耶は、小さく、でもしっかりと真由の目を見つめて言った。
「なんのこと?」
「あたしが、今こうしてここにいること」
「やっぱり魔法が効いたのね!」
「シッ、声が大きい」
「ごめん、でもよかった。ほんとに効いて」
「よくないんです。沙耶は死んでいるんです。二日前に魂は、あの世にいっていたんです。人間は死ぬことが分かると、怖さや諦めから、魂だけ先に、あの世に行っちゃう人がいるんです。死ぬまでの何十時間は、いわば惰性みたいなもので、魂の無い状態なんです。こういうのを易学では『死相』が出ていると言います。あたしは、そんな沙耶の体を借りて、あなたに忠告にきたんです」
「じゃ……あなたは?」
「正体は言えないけど、この世のものじゃありません。でも、二つ言っときます。あたしはこの体が死ぬまで小野田沙耶として生きていくんです! それと……もういいわ、あなたを傷つけるだけだから。アドレスの交換やってもらえます?」
「え、ええいいわよ」
「これからは、時々真由さんに連絡しなければいけないことが起きそうだから」

 ちょうどそこへ、沙耶のクラスの子たちがやってきて、ピーチクやり始めたので、沙耶は、それに合わせ、真由は教室に帰った。

 真由は、まだ本当には自分の力が分かってはいなかった……。

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高校ライトノベル・時かける少女・42『女子高生怪盗ミナコ・8』

2019-03-19 06:05:13 | 時かける少女

時かける少女・42 
『女子高生怪盗ミナコ・8』 
      



 渋谷で妙な事件が起こった。ガングロ茶髪のギャルたちが集団に襲われたのだ。

 ところが、暴行もされなければ、なにを取られるわけでもなかった。
 ギャル達が数名でたむろしていると、どこからともなく、ごく普通の若者たちが十人ほどで取り囲む。ほんの二三秒取り囲み、姿を消すと、ギャルたちは素っ裸にされ、ルーズソックスさえ身につけていない。髪は黒髪や地毛にもどされ、山姥のようなメイクも取られ、スッピンにされる。
 周囲の人たちが「ええ!」「うわ!」「なんで!」とか声を上げ、JK達も気づく。

「きゃ!」「ぎょえ!」「なんで!」「ハズイぜ!」「分け分かんない!」

 その後、また別の集団が集まり、学校の校則通りの制服を着せていく。JKたちは、とても恥ずかしそうに、その場を三々五々離れていく。
 同じようなことが、池袋や新宿でも起こり、ギャル達は二日ほどで、姿を消してしまった。

「へえ、へんな追いはぎもいるもんだなあ……」
 爺ちゃんは薩摩白波をチビチビやりながら、テレビのニュースを観ていた。

――それでは、ここでいったんコマーシャルです――

 見慣れた女性タレントの長距離恋愛をテーマにしたJRのコマーシャルである。時間に間に合わせようと懸命にホームに向かう女性……ここまでは、いつものCMであった。
 その後、彼女は走ることを止め、カメラに向かって話し始めた。
「これ見て、ガン黒茶パツにしてた子の頭蓋骨。かわいそうだけど、一人だけ標本になってもらった。ね、骨まで茶色になっちゃうんだよお。ちなみに、この子はアツミ。明日ハチ公前に置いときます。知り合いの人取りに来てあげてね。あ、それから同業者のミナコちゃん。これ観てるかなあ……観てたら、あたしの上いってごらん。待ってます。あ、こんな顔してるけど、ミナミです。じゃ、提供は、みなさんのJR東海でした」

 そのあとスタジオは騒然とした。

――いま、不適切な映像・音声が流れました。原因は調査中です。分かり次第、視聴者のみなさんにはお伝え致します。くり返します……――
「おもしれえ、ミナコ、ご指名の挑戦状だぜ。どうする、受けるか、それとも布団被って寝ちまうか?」
「あたりき、布団被って……」
 ミナコは布団を被ってしまった。
「しょうがねえな、おめえにゃ意地ってもんが……」
 爺ちゃんが布団をめくると、ミナコの姿はなく、丸めた布団に書き置きが貼り付けてあった。
「本気になりやがったな。このオレが気配も感じなかったもんな……フフフ」

 爺ちゃんは、残った薩摩白波をなみなみと注いで、気持ちよく飲み干した……。

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