魔法少女マヂカ・004
要海友里との弁当はまずかった。
いや、弁当がまずかったわけではないので念のため。
自慢じゃないが弁当は自分で作っている。これでも一応女なのでな、いずれは相応しい男を見つけて幸せな生活をおくりたいと思っている。男は胃袋から掴まえなくてはならない。そういう方面にも怠りはないのだが、そのことは、またいずれ。
ポリコウ(日暮里高校)関係者の脳みそに刷り込むまでもなく、わたしは美少女だ。
ただ、キャピキャピとつるむことが嫌だから、孤高の少女という設定にしてある。
その孤高の美少女が、その足元にも及ばないNPCというかパンピーというかエキストラというか、普通の女生徒要海友里と昼食を共にしたのだ。机をくっ付けて向かい合わせで。
まずいことに、要海友里は初めての弁当だったのだ。初めての弁当を学校一の美少女と食べているのだ、当然注目される。
――ひょっとして百合?――
面白半分の心の声が二三か所から聞こえる。
「渡辺さん、お弁当は自分で?」
「ええ、そうよ。お料理くらいしか取り柄が無いもんだから……」
謙遜のつもりだが、このNPCたちには別の事に響くか?
「くらいしかなんて無いと思うけど、なんか、素人ばなれ……もちろん美味しいんだろうし」
「じゃ、この竜田揚げとか試してみる?」
「え! あ、じゃ、わたしの玉子焼きと交換」
「うん、いいわよ」
おい、おかずの交換くらいで顔を赤くするなよ……。
期せずして交換したおかずを同時に口の中へ。
「「おいしい!」」
同時に称賛してしまった。はたから見たらなにかの兆候、今の時代はフラグというのか、それが立ったみたいに見えるぞ。お、美味しいからと言って涙流すなよ!
「あ、なんか感動しちゃって」
「わたしもよ。なんと言うのかしら、愛情の味……お母さんが?」
「は、はい!」
思いのほか大きな声……心を読んでしまった。これは記念すべき(お母さん)の初お弁当なのだ。
つっこんで話題にするわけにもいかず、取り留めのない話を心がけるが、わたしにへの崇拝に似た気持ちを持ち始めた友里は目を潤ませて聞いている。
「よかったら、またいっしょに食べましょうね」
「は、はい」
「友里って呼んでいいかな?」
「はい!」
「フフ、わたしのことは真智香。ね」
「真智香さん」
「さんなし」
「ま、まちか」
「うん、その平仮名の感じがいい」
流れから、こうならざるを得ない。
友里、いやユリには親友と言っていい友だちがいる。ノンコ(野々村典子)と清美(藤本清美)だ。女子にありがちなんだが、不可抗力とは言えユリとわたしが親しくなって、おそらくは面白くないはずだ。仕方がない、機会を見つけてノンコと清美とも友だちになっておこう。
その日の放課後、職員室前の廊下で嫌なことを聞いてしまった。
「安倍先生」
「なんでしょう、教頭先生?」
「田中先生、もう三か月お休みになられます、講師の延長お願いできませんか」
「は、はい、お引き受けします!」
くそ、安倍晴美もなんとかしなければ……。