高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・007
女子高生は仲良くなると、つまらないことにこだわる。
一人が特定の人物を嫌うと、みんなで嫌う。
逆に言うと、女子一人に嫌われると、その仲間全員に嫌われる。場合によってはクラスの女子全員に嫌われる羽目になる。
英語の授業中、橋本先生がbe動詞を書き忘れた清美を指導した。ちょっとしつこい指導だったので、手を挙げて助け舟を出してやった。おかげで、仲良くなれたのだが、わたしが先生をやり込めた感じになってしまって、女子の橋本嫌いに拍車をかけてしまった。ちょっと橋本先生が気の毒だ。
お仲間の中心はユリ(要海友里)だ。そこにノンコ(野々村典子)と清美(藤本清美)が連なっていて、今度の件でわたしが加わった。中心はユリのはずなのに、弁当とbe動詞の件以来、三人がわたしを立てようという雰囲気になってきている。教室移動などで廊下を歩いていると、他の三人も並んで歩く。狭い廊下を四人が横一列は物理的に無理なので、のこぎり型の変則的横一列になる。正直通行の邪魔になっている。「ちょっとお手洗い」とか言って列から離れようとすると「「「あたしもー」」」ということになって余計に面倒だ。
もう一つは昼食だ。
わたしとユリは弁当だが、ノンコと清美は食堂なのだ。ユリも食堂だったのだが家庭事情で弁当になっている。
人間関係の基本は食事だ、飯だ。同じ釜の飯を食うという言葉にもある通り、けしてないがしろにしていい問題ではない。
「よし、四人で食堂いこう!」
「わたし、お弁当だし」
「同じテーブルで、ノンコと清美は学食。わたしとユリがお弁当ならいいじゃない?」
「あー、でも、四人揃ってテーブルってむつかしいよ」
「任せてよ!」
三人を引き連れて食堂へ。ノンコが言った通り席はほとんど一杯だ。
まあ、少しくらいの魔法はいいだろう。
「ほら、そこ!」
指さすと同時に、四人掛けのテーブルを出現させる。
「あ、こんなところに!?」
すかさず四人で掛けてしまう。ノンコと清美は座席の背もたれにリザーブを示すハンカチを掛けて券売機へ。
無事に仲良くランチタイムになる。
わたしも女の子だ。いささかのズルはやっているが、こういうのは、ちょっと楽しかったりする。
「マチカは横綱だ!」
「えー、わたしってお相撲さんみたいなのお!?」
「セキトリのチャンピオンだよ!」
お仲間には、テーブルの増設ではなく発見と思えるようにしてある。
ところが、三日目には担任の三橋先生に呼び出された。
「食堂からクレームがきててなあ、弁当持参の利用は控えて欲しいって言ってきてるんだ」
「あー、ちゃんとデザートとかジュース買ってますけど」
「でも、メインの食事がなあ……食堂が言ってくるということは、他の生徒からも苦情が出てるってことだと思うよ」
言いにくいことでも伝えるのが担任なんだろう、三橋先生も辛いんだ。
「分かりました、善処します」
人のいい三橋先生を困らせるのは本意ではない。とりあえずの返事をして、三人で中庭に向かった。
「ユリは食堂ランチじゃダメなの?」
「あ、うん……」
ユリの弁当には事情がある。ノンコは気づいているようだが、清美は事情を知らない感じだ。もっと大仕掛けな魔法を使えば解決できるんだけど、それはしたくない。
「わたしも当分はお弁当だしね」そう答えるしかない。
「わたしたちがお弁当にするってのはどうかな?」
ノンコらしい解決案を出す。
「えー、わたしお弁当なんて作ってらんないよ」
清美が拒否反応、声の調子から、面倒くさいのが1/4、料理に自信が無いのが3/4と知れる。
「よし、そんならさ、料理教室しよう! 不肖渡辺真智香が教えてあげようじゃないの!」
「ムリムリ! わたし、お料理なんてとってもムリ!」
顔の前で手をハタハタさせる。
「大丈夫だって、それに、作れるようになるまで、わたしが二人のお弁当作ってきてあげるから!」
「「ほ、ほんと!?」」
地味で孤高の女子高生をやるつもりだったのが、ちょっと方向性が変わって……ま、なんとかなるさ!