大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・007『四人でテーブルを囲むぞ!』

2019-03-22 15:56:51 | 小説

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・007

『四人でテーブルを囲むぞ!』 

 

 

 女子高生は仲良くなると、つまらないことにこだわる。

 

 一人が特定の人物を嫌うと、みんなで嫌う。

 逆に言うと、女子一人に嫌われると、その仲間全員に嫌われる。場合によってはクラスの女子全員に嫌われる羽目になる。

 英語の授業中、橋本先生がbe動詞を書き忘れた清美を指導した。ちょっとしつこい指導だったので、手を挙げて助け舟を出してやった。おかげで、仲良くなれたのだが、わたしが先生をやり込めた感じになってしまって、女子の橋本嫌いに拍車をかけてしまった。ちょっと橋本先生が気の毒だ。

 お仲間の中心はユリ(要海友里)だ。そこにノンコ(野々村典子)と清美(藤本清美)が連なっていて、今度の件でわたしが加わった。中心はユリのはずなのに、弁当とbe動詞の件以来、三人がわたしを立てようという雰囲気になってきている。教室移動などで廊下を歩いていると、他の三人も並んで歩く。狭い廊下を四人が横一列は物理的に無理なので、のこぎり型の変則的横一列になる。正直通行の邪魔になっている。「ちょっとお手洗い」とか言って列から離れようとすると「「「あたしもー」」」ということになって余計に面倒だ。

 もう一つは昼食だ。

 わたしとユリは弁当だが、ノンコと清美は食堂なのだ。ユリも食堂だったのだが家庭事情で弁当になっている。

 人間関係の基本は食事だ、飯だ。同じ釜の飯を食うという言葉にもある通り、けしてないがしろにしていい問題ではない。

「よし、四人で食堂いこう!」

「わたし、お弁当だし」

「同じテーブルで、ノンコと清美は学食。わたしとユリがお弁当ならいいじゃない?」

「あー、でも、四人揃ってテーブルってむつかしいよ」

「任せてよ!」

 

 三人を引き連れて食堂へ。ノンコが言った通り席はほとんど一杯だ。

 まあ、少しくらいの魔法はいいだろう。

「ほら、そこ!」

 指さすと同時に、四人掛けのテーブルを出現させる。

「あ、こんなところに!?」

 すかさず四人で掛けてしまう。ノンコと清美は座席の背もたれにリザーブを示すハンカチを掛けて券売機へ。

 無事に仲良くランチタイムになる。

 わたしも女の子だ。いささかのズルはやっているが、こういうのは、ちょっと楽しかったりする。

「マチカは横綱だ!」

「えー、わたしってお相撲さんみたいなのお!?」

「セキトリのチャンピオンだよ!」

 お仲間には、テーブルの増設ではなく発見と思えるようにしてある。

 

 ところが、三日目には担任の三橋先生に呼び出された。

「食堂からクレームがきててなあ、弁当持参の利用は控えて欲しいって言ってきてるんだ」

「あー、ちゃんとデザートとかジュース買ってますけど」

「でも、メインの食事がなあ……食堂が言ってくるということは、他の生徒からも苦情が出てるってことだと思うよ」

 言いにくいことでも伝えるのが担任なんだろう、三橋先生も辛いんだ。

「分かりました、善処します」

 人のいい三橋先生を困らせるのは本意ではない。とりあえずの返事をして、三人で中庭に向かった。

「ユリは食堂ランチじゃダメなの?」

「あ、うん……」

 ユリの弁当には事情がある。ノンコは気づいているようだが、清美は事情を知らない感じだ。もっと大仕掛けな魔法を使えば解決できるんだけど、それはしたくない。

「わたしも当分はお弁当だしね」そう答えるしかない。

「わたしたちがお弁当にするってのはどうかな?」

 ノンコらしい解決案を出す。

「えー、わたしお弁当なんて作ってらんないよ」

 清美が拒否反応、声の調子から、面倒くさいのが1/4、料理に自信が無いのが3/4と知れる。

「よし、そんならさ、料理教室しよう! 不肖渡辺真智香が教えてあげようじゃないの!」

「ムリムリ! わたし、お料理なんてとってもムリ!」

 顔の前で手をハタハタさせる。

「大丈夫だって、それに、作れるようになるまで、わたしが二人のお弁当作ってきてあげるから!」

「「ほ、ほんと!?」」

 地味で孤高の女子高生をやるつもりだったのが、ちょっと方向性が変わって……ま、なんとかなるさ!

 

 

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・07『崩れる生駒山・1』

2019-03-22 05:52:39 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・07
『崩れる生駒山・1』
        


 自転車に乗るようになって発見したことがある

 土地の高低差


 歩いていると高低差なんてほとんど気づかない。
 自転車だと、直にペダルの重さで分かってしまう。
 家から学校にかけては、おおむね下り坂だ。

「下り坂だったんだよ!」

 発見がうれしくて京ちゃんに言う。
「え、あ、うん、そうやよ」
 つんのめるような返事。当たり前のことを何言ってんだ、という感じ。
 京ちゃんは、なにごともきちんと聞いてくれるけど「下り坂だったんだよ!」っていうのは「上を見たら空があった」というくらいに当たり前で、わざわざ「!」を付けて報告するようなことではないようだ。
「でもさ、なんで下り坂なんだろ? なんで?」
「え、ええ?」
 京ちゃんは面食らって、廊下の真ん中で立ち止まった。
 ちなみに、今は昼休み。給食の後、窓から見える校庭が日差しの中、とても暖かそうに見えたので日向ぼっこに行った、その帰り。
 溢れるような日差しだったけど、風が強いんで挫折したんだ。

「ええとこに気が付いたなあ」

 後ろから声が掛かった。振り返ると授業の道具一式をカゴに入れた、社会の藤田先生が立っている。
「それはなあ、生駒山が崩れてるからや、ほら」
「生駒山て崩れてるんですか!?」
 びっくりした京ちゃんと窓から見える生駒山に目を向けた。

 すると、生駒山のダラダラした頂上がポロポロと崩れていくのが目に入った!
 
 

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・7(The witch training・3)

2019-03-22 05:47:40 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・7
(The witch training・3)



「あんたも、えらいもんしょっちゃったね……」

 ハチ公がしみじみとした声音でため息ついた。
「なんでも、血筋だから仕方無いらしい……」
「他にも血筋で、名前だけ引き継いでるのいるけど、からっきし。まあ、魔法が使えたってろくなことないけどね」
「うん、なんだか使い方むつかしいみたいだし。ハチ公も魔法使いなの?」
「魔法犬ってとこか……」
「魔法犬?」
「ああ、ご主人の上野先生が無くなってから、九年間も渋谷の駅前で待ち続けてさ。それを、世間様は『帰らぬ主人を待ち続けた忠犬』ってことにしちまった。俺は、ただ犬としての……俺って秋田犬なんだ。秋田犬ってのは主人に忠実ってのが売りだったしさ。俺自身のレーゾンデートルのためにも、秋田犬の代表としても引っ込みつかなくなってしまってさ。なんたって生きてる間にマスコミが騒いじゃってさ。俺ぐらいのもんじゃない、本人が生きてる間に銅像まで造られちまって。除幕式には俺自身引っ張り出されっちまってさ。映画になるは教科書に載るはで……けっこう大変。で、もう九十年も、ああやって銅像やってるだろ。自然と魔法犬っぽくなちまってさ、あの沙耶ちゃんの体に憑りついてるやつと仲良くなったりするわけ」
「沙耶ちゃんに憑りついてるのって、誰なの?」
「それは……内緒。いずれ分かる時もくるさ。けして神さまとか天使とかじゃないけど、悪い奴じゃないから。気楽に付き合ってていいと思うよ。ほんと新人の教育って大変だから……あ、真由のこと嫌がってるわけじゃないからね。これでも使命感があるんだ。真由も大変だ、たまたま四代前がイギリス人でさ。この人が魔女の血をひいてたから、真由がやらざるを得なくなっちまった。さて、基本からやろうか」
「ああ、お願い、沙耶途中で投げ出しちゃうんだもん」
「あの子にも都合があってね、真由一人のことにかまけてらんないんだ。真由、ゲームってやる?」
「うん、たまにね。いまは『ファインファンタジー13ヘッドライトニングリターンズ』やってんの」
「ああ、あのラスボスがバカみたいに強くって、何度も『最後の13日間』やらなきゃならないやつだね。あの世界観、ちょっと魔法に似てる」
「そうなんだ」
「コントローラーを頭に思い浮かべて」
「うん……」

 真由の手は無意識にコントローラーを持つ手になった。

「〇ボタンが攻撃、あ、ちょうどいいや、あそこでチンピラに絡まれてる気弱そうな大学生がいるだろ。△ボタン押して、地図を出す。ターゲットを大学生にマーク、合わせるのはL3のグリグリボタン。キャッチしたら〇ボタンで決定。あとは〇ボタンで攻撃になる」
 襟首を締めあげられていた大学生が、振りほどいて、チンピラの顔に頭突きをくらわせた。
「連打すれば、コンボ攻撃」
 大学生は、頭突きのあと、パンチと背負い投げを二回繰り返した。
「ああ、攻撃ゲージの使い過ぎ、□ボタンでガード。その間にゲージを貯める。×ボタンで相手の攻撃能力を弱くして……」
 あとの説明はいらなかった。真由は無意識にバーチャルコントローラーを操作して、HPゲージも満タンにして、さっさと逃げさせた。あとには三人のチンピラが唸って転がっている。
「さすがにゲーム慣れしてるね。これなら、すぐにコントローラー思い出さずに魔法が使えるようになる」
「R1ボタンは?」
「カーソルを……自分に合わせて押してごらん」
 R1ボタンを押すと、次々に自分の姿が変わるのが分かった。相変わらずAKBの選抜メンバーになってしまう。
「弱く押せば、コスだけ変わるから」
「……なるほど、ファッション雑誌でいいなと思ったのに変わっていく。ハハ、これいいわね」
「あんまりやると、人に怪しまれる」

 雑踏の中、真由の変化を信じられない目で見ている人が何人かいた。真由は急いで元の姿に戻った。

「魔法属性とか、戦闘、防御の属性は暇なときに切り替えとくといいよ。慣れれば、これも無意識に瞬間でできるから」
「こうやりながら、経験値をあげていくのね」
「ま、そういうこと」
「あの……さっきから、同じとこばっか回ってない?」
「バレたか。テレポのゲージを上げてんの」

 ハチ公が、そう言うと一瞬目の前が白くなり、回りの景色が変わった。東にダラダラした山並み、擬宝珠の付いた橋。その下に南北に流れる川。托鉢のお坊さんに、溢れんばかりの観光客。振り返ると京阪三条の駅。どうも京都にテレポしたみたいだ。

 首を前に戻すと、ヒョロリとした若者がやってくるのが分かった。若者の魔法ゲージは、真由とケタが二つも違っていた……。

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高校ライトノベル・時かける少女・45『女子高生怪盗ミナコ・11』

2019-03-22 05:38:06 | 時かける少女

時かける少女・45 
『女子高生怪盗ミナコ・11』 
  

 


 
 ワールドトレードセンタービルは、あっけなく崩れてしまった……。

「無慈悲なことをしやがるぜ……」
 謙三爺ちゃんは、朝から何度目かのシーンを見て、ため息をついた。
「爺ちゃん、もう三度目だよ……」
「何度でも見て心に刻んでおくんだ。泥棒稼業で、やっちゃなんねえのは、困っている人の物を取ること。それ以上に、人の命を取ることだ」

 この時、市民派のスポークスマンとニュースキャスターが余計なことを言った。

「このテロのやり方の源流には、戦時中のカミカゼ特攻隊の流れがあるような気が致します……」
 その横で、飾り物の女子アナと、どこかの大学教授が深刻そうに相づちをうった。
「なんだと、下郎ども、許せねえ……」
 爺ちゃんは、酒を飲み干したあとの、茶碗を片手で握りつぶした。
「爺ちゃん……」
「脅かしたな、ミナコ。ちょっくら、一仕事してくらあ……」

 スッとお爺ちゃんが居なくなった。かわりに気配がしたかと思うと、ミナミがフェリペの制服で、茶の間の入り口に立っていた。
「謙三爺お爺様は?」
「あ、たった今、仕事に行くって……」
「さすがね、気配も感じさせずに、お行きになったのね……座布団の温もりさえ残してらっしゃらないわ……この、お湯のみのカケラは?」
「爺ちゃんが、握りつぶしたの。初めて見た、あんなお爺ちゃん」
「さすが、握りつぶしても、血の跡もないわ」
「ミナミ、どうかした?」
 ミナコがお茶を入れようとすると、寸前に爺ちゃんの剣菱を湯飲みに注ぎ、一気に飲み干した。
「あんた、まだ未成年でしょ?」
「さ、どうだか……でも、謙三のお爺様よりは若輩ものです」

 ミナミは語った。学校の教師が、うわっつらに説明をし、アメリカがテロを受ける背景を、よその国の天気予報の説明のようにしたこと。日本人も何十人も犠牲になったというのに。

 

 そして、驚くべき事を言った。

「アメリカのユニオンも、このテロには気づいて、あらかじめ犯人たちに接触していたんですけど、改心したと報告してきていました。たった一人、ベテランのメンバーが犯人を尾行して、同じ飛行機に乗り、これは墜落させて失敗させました。自分と同乗者の命と引き替えに……」
「ミナミ……」
 気が付くと、ミナコも、湯飲みで剣菱を干していた。
「人の心を取るというのは、難しいものなのですね……」
「こないだの拉致未遂は、どうやら効果ががあったじゃない」
「まだまだ、未熟です」

 そのとき、点けっぱなしになっていたテレビの画面に異変が起こった。

 一瞬の間に眼鏡のキャスターと、女性アナウンサー、大学教授のコメンテーターの三人が下着姿になってしまい。女性アナウンサーの悲鳴で、画面は切り替わった。この間10秒ほどは、慌てふためく三人が、逃げ隠れする姿が映された。10秒後、草色の旧海軍の軍服を着た温厚そうな老人が、気楽にソファーに座った姿で現れた。

「失礼いたしました。ここからは、最後の海軍大臣を務めましたわたくし、米内光政が、お話いたします。キャスター氏は、カミカゼ特別攻撃と言っておられましたが、正確にはシンプウ特別攻撃と申します。カミカゼとは米軍が付けた名称であります、まず、これを訂正いたします。そして、シンプウ特別攻撃と今般のテロを同等に述べられたことも訂正いたします。シンプウ特別攻撃は無謀な攻撃ではありましたが、テロではありません。攻撃目標はあくまで、敵の軍艦であり爆撃機であり、時に戦闘機などであり、あくまでも武装した敵に、それこそ身をもって攻撃したのであって、民間人や民間施設を狙ったことは、ただの一度もなく、まして民間人を巻き添えにしたことなど一度もありません。今般のテロは許し難いものではありますが、これにひっかけて日本をおとしめる言説をいたすのは、いかがと思い、しゃしゃり出てきた次第であります。それでは、視聴者のみなさん。これにて失礼いたします。米内光政がお送り致しました」
 カメラはロングになり、マントルピースを背景ににこやかに微笑む米内の全身をカメラ前の花と重ねてフェードアウトしていった。

「米内さんて、とっくに亡くなった方ですよね……」
「うん、昭和23年……」

 呆然としていると、爺ちゃんが戻ってきた。
「あ、今の、ひょっとしてお爺ちゃん!?」
「三人剥いてやったのはオレだが、米内海軍大臣は別人だよ」
「あ、藤三のお爺ちゃん!?」
「さあてね……あ、おめえら、オレの剣菱呑んじまいやがったな。池之宮のお嬢も一人前だなあ」
「あ、あたくしのこと、ご存じなんですか?」
「最初は分かんなかったけどよ。ミナコから聞いた話と、仲間内のうわさでよ……池内様も三代目なんだねえ」
「謙三お爺様のことも、父や祖父から子守歌のように聞かされたものです。光栄です。お会いできて!」

 ミナコが見たこともないハニカミを見せる爺ちゃんであった……。

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