大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・011『よろしくお願いしまーす!』

2019-03-29 14:25:52 | 小説

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・011

『よろしくお願いしまーす!語り手・安倍清美   

 

 

 頼まれごとの一つは常勤講師になってくれちゅうことだった!

 

 同じ講師でも、頭に「非」の字が付くか付かないかで大違いなんだぞ。

 非常勤講師は週に何時間かの授業を教えるだけ、一時間教えていくらっちゅう、まさにアルバイト。月収十万以上を確保しようと思ったら二校以上持たなきゃならない。

 常勤講師ってのは、担任以外の教師の仕事を全部やる。ほとんど本職さんと同じなんだぞ。

 当然ギャラもイッチョマエに頂ける。嬉しい限りだ🎵

 ただ、教科が国語以外に保健体育を受け持つ。国語以外に地歴公民と保健体育の免許を持っているんで、まあ、ラッキーなわけです。免許は身を助けるっちゅうことなんだよ🎵

 

 もう一つの頼まれごとは部活の顧問だ。

 

「安倍先生、一昨日できたばかりなんだけど、調理研究同好会の主顧問やってもらえないかしら?」

 校長室で辞令もらって廊下に出た途端、徳川先生に頼まれた。

 常勤になったからには二つ以上の部活の顧問もやらなければならない。運動部の顧問が回ってきたら大変だと覚悟はしていた。運動部の顧問は休みがないしねえ。

「はい、承知しましたあ!」

 二つ返事で引き受ける。

 なんたってポリコウの女将軍と噂の徳川康子先生なのだ。断ると言う選択肢は無い。

 それに、主顧問ということになれば、もう一つ運動部の口が回ってきても副顧問なのでお気楽なんだ。

 

 いそいそと体育準備室の机を整えていると、先輩の先生の声が掛かった。

「安倍先生、調理研の生徒が来てます」

「はい、ただいまあ」

 額の汗を拭って準備室の外へ……出てみて驚いた。

 二年B組の要海、野々村、藤本、そしてケロケロから頼まれていた魔法少女の渡辺真智香の四人だ!

「徳川先生から、安倍先生が顧問になったと聞いて、ご挨拶に参りました」

「なんだ、B組のお馴染みばっかじゃない」

「はい、よろしくお願いします」

 四人揃って頭を下げる。

「あんたらが作ったのかい、調理研?」

「「「「はい、乙女のたしなみです🎵」」」」

 プハハハハ

 声が揃ったと思ったら、四人とも噴き出して、つられて笑ってしまう。

「実は……」

 

 そう切り出した渡辺真智香の創部理由がふるっていた。

 ひょんなことで、仲良し三人組に真智香が加わって、四人でお弁当を食べたいのだが、真智香以外は料理が苦手。そこで、三人揃ってお弁当を作れるように練習しようということになり、徳川先生の一言で調理研究部が立ち上がってしまったということだ。

「きっかけなんて、なんでもいいじゃん。友だち同士にしろ部活にしろアグレッシブにやるのはいいことだし」

「つきましては、創部会をやりますんで、放課後、調理室に来ていただけますか?」

「うん、べた付きはできないけど、行かせてもらうわ」

「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」

 

 四人を見送って席に戻ると、机に手紙が置いてあった。

 開いてみると真智香からだ。いつの間に……と思ったが、真智香の正体からするとなんでもないことなんだろう。

 便箋は白紙……と思ったら、十センチほどの真智香が現れた。

「ケルベロスから聞きました、先生には分かっているんですね、わたしが魔法少女だということが。わたしは休養の為に渡辺真智香として復活しました。普通に高校生をやっていくつもりですので、魔法少女だということは秘密ということでよろしくお願いします。では、調理室でお待ちしております。失礼しました」

 ペコリとお辞儀をすると、真智香は薄紫の花に変わった。

 え、この花は……?

 花に変わったことは驚かないが、花とか植物には疎い女なのだ、意味が分からない。

 すると、封筒からノソノソと消しゴムほどの大きさのケロケロが出てきた。

「ま、ときどき空回りする奴ですが、よろしくお願いしますよ。あ、その花はビオラと申します、和名は三色すみれ、花言葉は……よかったらググってみてください。それから、わたしはケルベロスですのでよろしく」

 ケロケロもペコリと頭を下げて封筒の中に戻っていった。

 

 

 

 

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・14『イリヒコ』

2019-03-29 06:44:42 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・14

『イリヒコ』         

 

 

 やっぱりやめた。
 

 スマホのディスプレーは自分の息で曇っていた。それを拭いもせずにポケットに突っ込むと、ダイナモのレバーをキックして自転車に跨った。
 

 お弁当を届けに通っていたので、中河内中学校への道は迷わない。 あの男の子のことが気になって、会いに行こう、そう決心したのは目が覚めた六時前。 ちょっとおっかないので、京ちゃんに電話し掛けて止めた。 早朝だからということじゃない、朝の早い京ちゃんは、もう起きているはずだ。
 京ちゃんなら、気持ちよく付いて来てくれる。そのことに疑問は無い。
 でも……たぶん、京ちゃんには、あの子の姿は見えない。 見えなきゃ混乱するし、混乱すれば、あの男の子は二度と現れない。そんな気がしたから。
 

 生駒山が崩れる幻想を見たのは、藤田先生に触発されたからだけど、先生は、あたしにも素養があると言っていた。 だったら、京ちゃんには九分九厘見えないだろう。
 

 外環状線こそは、いつも通りに車が流れていたけど、上り坂に差し掛かると、まだ正月の余韻。東高野街道との交差点に着くまで、誰とも出くわさなかった。 目の前が衝立のような生駒山脈なので、空の底が見えない。登り始めた朝日からは完全な陰。  街灯があるから、山陰とは言え真っ暗じゃない。でも、自分の意志で明るくしているのは、ダイナモで自家発電した数メートル先の道路を照らす愛車のライトだけ。

 もし自転車に乗れていなければ、こんな時間に男の子に会いに行くなんて絶対していない。

――自転車に乗れたら世界が広がるよ――

 京ちゃんが言った言葉そのものだと思う。
 

 中河内中学校の正門は閉まっていた。こんな時間だから当たり前なんだけど、今の今まで思い至らなかった。 蒸気機関車みたいに白い息を吐きだし、サドルに跨ったまま佇んだ。間が抜けてるんだけどミステイクだとは思わない。

――もう少し北に進んで――

 あの子の声が頭に響いた。

「うん、分かった」

 呟くと、北に向かってペダルを漕ぐ。

 十分ほど走ると、左前方にロケットの発射台のようなものが見えてきた。なんだかシュール。 ひょっとして宇宙人の秘密基地!?  ひょっとして、わたしにしか見えない? 宇宙人に連れ去られる?  よく見ると、発射台の周囲には、宇宙人みたいなのが並んでいて、じっとわたしを見つめている。

 ヤ、ヤバイかな……。
 

 ポチャン!
 

 え、な、なに!?
 

 ちょっとパニック。お尻のあたりが、ジーンと痺れたようになる。
 またポチャンと音がする……魚の撥ねた音だ。
 発射台の前が堀になっていて、黒々と水をたたえているのが分かった。ホッとする。 発射台は、コンクリートではなく、小さな石を一面に敷き詰めたものだった。
 

 これって、前方後円墳……。
 

 分かったとたん、二十メートルほど先に男の子の姿が現れる。
 

「ありがとう、ここまで来てくれて」

 少し疲れたような感じで男の子が口を効いた。小さな声だけど、意味はしっかり分かる。

「きれいな声だね……」

「僕はねイリヒコ、あの学校の体育館の下……」

 途中から声が聞こえなくなる。男の子は恨めしそうに山の頂を見る。 山の向こうの空は朝日を孕んで茜色に染まりつつある。

――今度は、僕から会いに行くよ――

 男の子は、声に出さず、直接思念を送って来た。
 

「君って、お日様が苦手なんだね」
 

 残念そうに頷くと、男の子は恥ずかしそうに消えていった。

 お堀の水が、上り始めたお日様にキラキラ輝き始めた……。  

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高校ライトノベル・時かける少女・52『正念寺の光奈子・2』

2019-03-29 06:22:53 | 時かける少女

時かける少女・52 

『正念寺の光奈子・2』         


 

 光奈子は最後まで悩んだ。

 弔辞や、焼香順は、自分ちがお寺なので、簡単に決められたが……。
 

 最後の送り方に迷った。
 

 中学の頃から、卒業式に違和感を持っていた。自分もひなのも。

 中学の時の卒業ソングは、AKBの『GIVE ME FIVE!』だった。前の年が『桜の木になろう』だったので、予想はしていたが、違和感があった。光奈子はAKBは好きだが、卒業式は違うと思った。

 こういう式には型があると思うのだ。

 お寺の娘だからこだわるんじゃない。

 日本人は、結婚式や、お葬式では、実に従順に型に習う。学校でも入学式は国歌斉唱から始まり、校歌の紹介を兼ねた斉唱と型が決まっている。

 卒業式の歌だけが、毎年ころころ変わって異質なのだ。
 

「やっぱ、こういうのいいね」  

 中三のお正月にひなのが遊びに来たとき、YOU TUBEで初音未来の『仰げば尊し』を聞いて新鮮だった。

 そこで、『仰げば尊し』で検索し、ある高校が卒業式で歌っているのを見た。卒業生全員が歌っていた。『二十四の瞳』のそれは、思わず涙が流れた。
 

「型というのは、おろそかには出来ないよ……光男やってみな」

 なにやら、アニキに振った。

「もう、勘弁してくれよ」

「いいから、やれ!」

 お父さんが一喝した。で、アニキがしぶしぶやったのを、二人は大笑いした。 「帰命無量寿如来 南無不可思議光……」

 字で書けばあたりまえの正信偈(しょうしんげ)なんだけど、アニキはこれをレゲエ風にやってのけた。さすがに、最初のところで止めたけど、全く大笑い。

 「いや、寺にも新しい風をさ。ゴスペルなんかレゲエ風のってあるからさ……」

 「今、二人の女子中学生が爆笑した。もう結論だろ」

「まあ……」

 このことがあったんで、卒業式にはこだわりが出てきた。
 

 AKBでいいんだろうか? 『GIVE ME FIVE!』は、メンバーが、本当に楽器をマスターし、演奏しながらアップテンポで歌って、光奈子も好きだ。たかみなのドヤ顔もイケテルと思った。でも、卒業式には合わないと思った。 第一リリースされたばかりで、覚える時間があんまりなくて、おまけに、これをピアノ伴奏でやるもんだから、なんともチグハグ。
 

 で、自分たちの高校の卒業式は、『仰げば尊し』『蛍の光』でいきたいもんだと思った。
 

 葬儀会館と、ご両親はOKだった。

 問題は学校だった。

「いまどき、そんなもの右翼だと思われるぞ!」

 組合バリバリの学年主任の梅沢先生に反対された。

「おまえらは、知らないかも知れないがな、あの二つの歌には三番以降があってな、軍国主義、帝国主義丸出しの歌なんだぞ」

「三番以降があるのは知ってます。それに対しての意見も持ってます。でも二番まででいいんです。入れさせてください」

 「やめとけ、やめとけ」

 「じゃ、自由主義的ならいいんですか。それなら『先生』なんて呼び方は、軍国主義どころか、封建主義です。たった今から自由主義でいきます。梅沢さん!」

「う、梅沢さん……おれは先生だぞ!」

「アメリカでも、先生のことはミスター、ミズって呼んでます。『さん付け』が相応しいんじゃないんですか。それに先生というのは、正式には教育職の公務員です。公務員には『さん付け』です」

「しかしなあ、藤井」

 「なんですか、梅沢さん?」

「……おれ達は、公務員であり、先生であるという特殊な立場なんだ」

「ああ、教師は、労働者か聖職かって、カビの生えた論争ですね」

 光奈子は、いきなりポンと手を叩いた。

「今鳴ったのは、右手ですか、左手ですか?」

 「屁理屈を言うな」

「両手がなきゃ、音は鳴りません。右が聖職者、左が労働者です……という古い言い回しがあります」

 「そう、古い言い回しだ」

「実は、片手でも音は鳴るんです」

 

 パッチン!

 光奈子は、右の指を見事に鳴らした。
 

「右は鳴りますけど、左は利き手じゃないんで鳴りません。梅沢さんは左利きだから右手は鳴らないでしょ?」

 「藤井……」

「なんでしょうか、梅沢さん?」

 「先生と呼べ、先生と!」
 

 で、勝負が付いた。
 

「……ひなのは、ずっと友だちだよ!」

 光奈子は、涙を堪えながら、弔辞を読み終えた。そして付け加えた。

 「これから、ちょっと早いけど、ひなのを卒業式で送り出したいと思います。『仰げば尊し』斉唱、みなさんご起立願います。  同時に曲の前奏が入り、式場いっぱいの『仰げば尊し』『蛍の光』になった。ご年配の方々や、校長先生は自身の思い出と重なるところがあるのだろう、みんな涙を流していた。現役の仲間達も、曲がスローなので、しっかりついて、歌ってくれた。
 

「それでは、御出棺でございます。皆様、合掌にてお送りくださいませ」

 

 パオーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

  霊柩車のクラクションが長く伸びて響いた。

 BGになった『蛍の光』はまだ続いている。すると、仲間達は再び『蛍の光』を歌いだした……!
 

 どうやら、合掌と合唱を間違えたようだ。でも正しい間違い方だと、光奈子は思った……。

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・14(楽観的リフレイン・2)

2019-03-29 06:07:25 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・14

 (楽観的リフレイン・2)
 

 

 学校からの帰り道、サンタクロースに出会った。
 

 一見恰幅がいいだけの地味なお爺さんだけど、一見してサンタクロースだと分かった。多分魔力のせい。

 だから、目が合ってニッコリされると、思わず笑顔を返してしまった。

「よかった、一目で分かってもらえて」  

 そう言って、サンタは実のお祖父ちゃんのような気楽さで真由の横を歩き出した。

「そこに車が止めてある。ちょっといっしょに乗ってくれるかな」

 サンタが示したところに、赤い軽自動車が見えた。運転席には、きれいなオネエサンがアイドリング掛けながら待っていた。
 

「ウズメさんから話は聞いていると思うんだけど……」
 

 後部座席のドアを開けながらサンタが言った。

「話は、ゆっくりでいいんじゃないですか?」

 オネエサンが言った。

「そうだね、時間は十分ある。どうも歳を取るとせっかちになっていけない。あ、運転してくれるのは、専属のアカハナさん」

「赤鼻のトナカイ?」

「それは、先々代のお祖父ちゃん。まあ、赤鼻ってのは世襲名みたいなもんだから、それでいいんだけど。ニュアンスとしてはカタカナで呼んでくれると嬉しいわ」

「わしも、カタカナのアカハナに慣れるのには苦労したよ」

「こだわるんですね」

「主義者だと思われるのヤダから。そんなことより肝心の話を」
 

 そのとき、びっくりした。ズラリと渋滞した車列を飛び越して、車が空を飛び始めたからだ。
 

「ウソー、空飛んでる!」

 「もともとサンタの橇だから、空ぐらいは飛ぶ。だけど他の人には見えていないから」

 「飛行機にぶつからんようにな」

「自動衝突防止装置付ですぅ。それよりもお話を」

 「そうそう、まずこれを」

 サンタは、真由にパスのようなものを渡した。

「え……ヘブンリーアーティスト認定証?」

「ああ、本物だよ。東京の指定された場所なら、どこでも自由にパフォーマンスができるという優れものだ」

「あたし、なにもできないわ」

「なにを言っとる。日本のみんなが幸せになるんなら、なんでもしますって、ウズメさんに言ったんだろ?」

 ウズメさんとの話は、いっぱいありすぎて、全部は覚えていない。ただ楽観的リフレインでやって欲しいと言われたことだけを覚えている。希望的リフレインと聞き間違ったからだ。
 

「意味は似たようなもんだが、希望的にすると著作権の問題が絡んでくるんでね」

「どうも年寄りの考える言葉はダサくってさ。楽観的なんて付けると、あたしなんか小林多喜二の『蟹工船』なんか思い出しちゃう」

「あれはあれで、存在価値がある。プロレタリア文学の代表作だ」

「お祖父ちゃんみたいなこと言わないでくださいね。あんなの文学的には、ただのオポチュニズムで、無頼派ほどの価値もない」

「傑作とは、言っとらん。そういうものがかつてあったことは記憶に留めておくべきだ」

 「本題からずれてま~す」

「あ、そうそう。リフレインというのは、一昔前の言葉ではヘビーローテーション。同じ曲を何度も歌ってもらう。今日から年末にかけて、真由くんは超特急でアイドルになってもらう」

「そ、そんな、あたしできない」

「エロイムエッサイムで一発じゃ。あれは敵を倒すためだけの呪文じゃない」

「今の日本は、軸が無いの。だから孫悟嬢みたいなハスッパに式神使われたりすんのよ。団結って言葉は嫌いだけど、なにか拠り所になるものが居る。それをウズメさんは、真由ちゃんに期待したのよ」

「それが、アイドルなんですか?」

「ウズメさんは、芸能の神さまだからね。得意分野できたんだろう」

「あたしは、正攻法だと思う。人の心を掴むのは歌が一番よ」

「とりあえず、上野あたりからいこうか?」

 「そうじゃな。コスは儂からのプレゼントじゃ」

 サンタは、女もののサンタコスをくれた。

「ここで着替えるんですか?」

 「エロイムエッサイムと、唱える」
 

 慣れない真由は、呪文を唱えると、一瞬下着姿になってしまった。着替えはまず脱ぐことからだという固定観念が抜けていない。
 

「アハハ、目の保養だったわね、サンタの爺ちゃん。そういう人間的なところが抜けない魔法使いになってね」
 

「え、あ、あたし魔法使いなんだ」
 

 サンタの車はなごやかに上野についた。

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