大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・メタモルフォーゼ・3・うちの家族は呑み込みは早いんだけど……

2019-03-02 06:51:56 | 小説3

メタモルフォーゼ・3

うちの家族は呑み込みは早いんだけど……        


 留美アネキが会社帰りの姿で近寄ってきた……。

「ボ、ボクだよ。進二だよ……!」

 押し殺した小さな声でルミネエに言った。

「え、なんの冗談……?」
 少し間があってルミネエがドッキリカメラに引っかけられたような顔で言った。ボクはここに至った事情を説明した。
「……だから、なんかの冗談なのよね?」
「冗談なんかじゃないよ。ここまで帰ってくるのに、どれだけ苦労したか!?」
「ねえ、進二は? あなた進二のなんなの?」

 ボクは疲れも忘れて、怖くなってきた。実の姉にも信じてもらえないなんて。

「だから、ボクは進二。ルミネエこそ、ボクをからかってない。どこからどう見ても女装だろ?」
「ううん、どこからどう見ても……」
「もう、上着脱ぐから、よく見てよ、これが女の……」
 体だった……ブラウスだけになると、自分の胸に二つの膨らみがあることに気づいた!

 ルミネエには、小五までいっしょに風呂に入っていたことや、ルミネエが六年生になったときデベソの手術をしたこと、そして趣味でよく手相を見てもらっていたので、門灯の下で手相を見せ、ようやく信じてもらった。

「進二、下の方は?」
「え、舌?」
「バカ、オチンチンだよ!」
 ボクはハッとして、自分のを確認した。
「この状況に怯えて萎縮してる」
 すると、やわらルミネエの手がのびてきて、あそこをユビパッチンされた。小さい頃、男の子は、今は就職して家を出てる進一アニキしかいなかったので、油断していると三人の姉に、よくこのユビパッチンをされて悶絶した。それが……痛くない。

「よく見れば、進二の面影ある……」

 お母さんが、しみじみ眺め、やっと一言言った。ミレネエとレミネエは、ポカンとしたまま。

 その真剣な状況で、ボクのお腹が鳴った。

「ま、難しいことは、ご飯たべてからにしよう!」
 お母さんが宣言して、晩ご飯になった。お母さんには、こういうところがある。困ったら、取りあえず腹ごしらえ、それから、やれることを決めようって。それで回ってきた女が強い家なんだ。

「進二、学校から歩いて帰ってきたから、汗かいてるだろ。ちょっと臭うよ」
「ほんと? う、女臭え……!」
 我ながらオゾケが走った。この汗の半分は冷や汗だ。
「進二、食べたら、すぐにお風呂入ってきな。それからゆっくり相談しよう」
「お風呂、お姉ちゃんがいっしょに入ってあげるから」
「え、やだよ!」
「あんた、髪の洗い方も分かんないでしょう!」
「わ、分かってるよ。昔いっしょに入ってたから」
「子どもとは、違うんだから。お姉ちゃんの言うこと聞きなさい!」
 矛盾することを言っていると思ったが、入ってみて分かった。女の風呂って大変。
「バカね、髪まとめないで湯船に入ったりして!」
 ルミネエが短パンにタンクトップで風呂に入ってきた。後ろでミレネエとレミネエの気配。
「バカ、覗くなよ!」
「着替え、置いとくからね」
「下着は、麗美のおニューだから」
「え、あたしの!?」
「だって……」
 モメながらミレネエとレミネエの気配が消えた。お母さんの叱る声もする。

「進二……完全に女の子になっちゃったんだね」
 シャンプー教えてくれながら、ルミネエがため息混じりに言った。ボクは、慌てて膝を閉じた。

「明日は、取りあえず学校休もう。で、お医者さんに行く!」
 風呂から上がると、お母さんが宣告した。
 寝る前が一騒動だった。ご近所の人との対応は? お父さん進一兄ちゃんへ報告は? 急に男に戻ったときはどうするか? 症状が続くようならどうするか? などなど……。
「ボク、もう寝るから。テキトーに決めといて」
 眠いのと、末っ子の依頼心の強さで、下駄を預けることにした。

 朝起きると、みんな朝の支度でてんてこ舞い。まあ、いつものことだけど。

「なによ美優、その頭は?」
「美優?」
「ここ当分の、あんたの名前。じゃ、行ってきまーす!」
 レミネエが、真っ先に家を飛び出す。0時間目がある進学校の三年。
「あたし二講時目からだから、少し手伝う。髪……よりトイレ先だな、行っといで」
 トイレで、パジャマの前を探って再認識。ボクは男じゃないんだ。
 歯を磨いて、歯並びがボクのまんまなので少し嬉しい。で、笑うとカワイイ……こともなく、歯磨きの泡をを口に付けた大爆発頭「まぬけ」という言葉が一番しっくりくる。

「じゃ、がんばるんだよ美優!」
「え、なにがんばるのさ?」
「とにかく前向いて、希望を持って。じゃ、いってきまーす!」
 ルミネエが出かけた。

「ちょっと痛いよ」
 朝ご飯食べながら、ミレネエにブラッシングされる。
「こりゃ、一回トリートメントしたほうがいいね」
「……ということで、休ませますので」
 ボクはどうやら風をこじらせて休むことになったようだ。
「ああ、眠いのに、なんだかドキドキしてきた」
「その割に、よく食べるね」
「それって、アレのまえじゃない?」
「え……?」
「ちょっとむくみもきてんじゃない?」
 そりゃ、体が変わったんだから……ぐらいに思っていた。
「あんた、前はいつだった?」
「おかあさん、この子昨日女の子になったばかりよ」
「でも、念のために……」

 お母さんと、ミレネエが襲ってきた。で、ここでは言えないような目にあった。

 ただ、女って面倒で大変だと身にしみた朝ではあった。

 つづく 

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高校ライトノベル・時かける少女・25『プリンセス ミナコ・7』

2019-03-02 06:39:42 | 時かける少女

時かける少女・25 
『プリンセス ミナコ・7』 
        



「しかたありません、少し早いけど公表しましょう」

 お祖母様の決定は早い、その日の午後には記者会見のダンドリになった。

「お祖母様、この制服姿でええんでしょうか?」
「出すときは、包み隠さず。ミナコの制服姿は、とても清楚に見えます。国にも中継されるけど、その姿の方が好感が持たれるでしょう。奈美子さんは、これに目を通してちょうだい。マスコミは、あなたにもインタビューするでしょう。息子との馴れ初めがまとめてあります……」
 お祖母様はレジュメをお母さんに渡した。
「えー、てっきり結果意外は秘密だと思っていました!?」
「ダニエルと、その組織を見くびってはいけません。ええと、変更点があったわね?」
「付箋をつけてあります」
 同じ物を見ながら、お祖母様が言う。
「そうそう。ファーストキスは、息子からしたことにしてあります。ミナコを身ごもったのは、パリのシェラトン……」
「あ……わたしのアパートなんですけど」
「その事実は、アパートごと存在しません。あなたは、モンマルトルのアパートにいたことになっています」
「モンマルトルは、友だちが住んでて、二三回行っただけです」
「それで、十分。ヨーロッパでは、どちらで? と、尋ねられたら、モンマルトルに……。うそではありませんし、居住記録も用意させました。具体的な質問には、遠い思い出なので……と答えてちょうだい。それから、息子の歯ぎしりがひどかったこともシークレットね」
「は、はい……」
 お母さんは、二人だけのアバンチュールだと思っていたことが、全部バレテいたことがショックだったようだ。
「真奈美ちゃん。今までのことはしかたないけど、これからは男の子とケンカなんかしないように。それから一人称は『わたし』です『オレ』『あし』は控えてください。それから、来年の進学先は、この中から選んでね」

 真奈美に、A4の紙が渡された。

「うわー、一流私学ばっかり!……でも、偏差値と学費が……」
「大阪は、学費免除の制度があるでしょう?」
「そうですが、正規の学費以外の出費が……」
「なかなか、いい経済観念を持っているわ。ミナコ公国の奨学金が受けられるようにします。それから、もうしないと思いますが、AKBのなんとかという子のそっくり関係のことで、マスコミには出ないように。あちらが、真奈美ちゃんに似ているんです。いいですね」
 お祖母様が、一息ついた。
 代わってダニエル。
「これからは、言葉を改めさせていただきます。敬称は、お三方ともレディを使わせていただきます。レディミナコは、正式に王位継承者になられたときにはハイネス(王女殿下)になります。午後の会見にそなえて、レディミナコ、レディ真奈美の制服はクリーニングさせていただきます。それまで、こちらにお召し替えを。レディ奈美子は、この半袖のワンピースに……」

 ミナコは、王室のマークがついたトレーナーに着替えさせられた。そして、即席で王女の立ち居振る舞いが教えられた。女王陛下直々に。

「そうそう、歩くときは真っ直ぐ前を見て。笑顔を絶やさぬよう……背筋は不自然にならない程度に、そう、座るときは、自分で椅子をひいたりしないこと。膝は揃えて、けして脚を組んではいけません。耐えられなくなったら、足首を組むのはかまいません……そう、そうよ……ミナコは筋が良いわ」
「おおきに、お祖母様」
「ああ……アクセントはしかたありませんが、言葉はなるべく標準語で。将来は、英語とフランス語はマスターしてもらいます」
「英語! フランス語!?」
「喋れても、不思議ではない顔をしているわよ」

 たしかに、ミナコの顔は父親似ではあった。

 念入りにヘアーメイクから、薄いメイク、ネイルケアーまでして、午後の記者会見に臨んだ。

「みなさん、日本のマスコミの仕事熱心に、まず敬意を表します。そして、ミナコ公国として発表が7時間ほど遅れたことをお詫びいたします……」
 から始まって、お父さんのジョルジュ・ジュリア・クルーゼ・アントナーペ・レジオン・ド・ヌープ・ミナコ・シュナーベ皇太子の悲劇へと続き、ミナコ、正式にはミナコ・ジュリア・クルーゼ・アントナーペ・レジオン・ド・ヌープ・ミナコ・シュナーベ姫が生まれたいきさつにいたるまで、延々一時間に渡って女王は語った。マスコミをくたびれさせて、質問を減らそうという腹である。
 驚いたことに、クラスメートのメグとトコがマスコミ席の端にいた!

「お祖母様、なんで、あの二人が」
「だって、学校の放送局でしょ。きちんと見せておいた方がいいの」

 たしかに女王の目論見は当たった。メグとトコは、大方の記者といっしょに祝福と疲労のの混ざったまなざしになった。でも、何人かの猛者は、矢継ぎ早に質問を繰り出した。

「わたしどもの情報では、お二人が出会われたのは、ニースで奈美子さんがバイトをしてらっしゃったときに、ジョルジュ皇太子に出会われ、そこで、その……愛を育まれたとか」
「それは、出所はわかりませんし、興味もありませんが、二人が出会ったのは、パリのモンマルトです。情報は公開しませんが、みなさんの取材能力ではすぐにお分かりになるでしょう」
 ベテランの女性記者が、すぐに本社のCPとコネクトして、公的な資料を確認した。
「奈美子さん、わたしが確認した情報に間違いはないでしょうか?」
「はい、モンマルトルに住んで、ソルボンヌ大学に聴講に行っておりました」
 
 あと、二三の質問があったが、全て女王に丸め込まれてしまった。

「お祖母ちゃん、すごい、みんな丸め込んでしもた!」
「言葉は正確に、理解していただいたのよ。それから『しもた』じゃなくて『しまった』です。ああ、そうそう、今夜の飛行機でミナコ公国に発ちます。今夜は領事館に泊まって、それからミナコは一週間ほど滞在することになります。学校には奈美子さんが電話してください。直接の保護者でないと受け付けてもらえないようで。日本の学校は、お役所みたい」
「でも、お母さま、わたしたちパスポートが」
「それは、もう用意してあります。こういうこともあろうかと……」

 ダニエルの手で三冊のパスポ-トが示された……。

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高校ライトノベル🍑MOMOTO🍑デブだって彼女が欲しい!・55『ちょっと歩こっか』

2019-03-02 06:31:21 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

55『ちょっと歩こっか』


 そのまま帰るのには惜しい日和だった。

「ちょっと歩こっか」
「そうだな」
 大学の正門に立った時は、バス停一つ分ほどの散歩のつもりだった。
 他のエキストラの面々も歩いている。大方は1キロほど離れた駅を目指しているが、春本番の日和と、もらったばかりの2万円ほどのギャラで、いずれの足どりもゆったりとしている。

「ね、あのレンタサイクル乗り捨て自由だって」

 駅近くまで来て、桜子がレンタサイクル屋にときめいてしまった。
「この二人乗りいいなあ!」
「ディスプレーじゃないのか?」
 店の前にある黄色い二人乗りが目に留まった。
「いいえ、ちゃんと乗れますよ」
 店のスタッフが教えてくれる。
「試しに乗ってみます? ちょっとコツとかがいりますから」
 続いた言葉でその気になった。だが二人跨って自転車に乗ってみると、恐ろしくペダルが重くハンドルもフラフラする。
「やっぱ、コツがいりそうね」
 桜子はそう言ったが、オレは自分の体重だと思った。二人の体重と自転車の重さを加えたら、優に200キロを超えるのだ。
「やっぱ別々にしよう」

 そうして、お揃いのオレンジ色の自転車に乗って自分たちの街を目指した。

 おおよその道をスマホで調べ、国富川沿いの道を進んだ。
 自転車は風上に向かって走る。緩い風だけど、自転車の速度が加算されて気持ちのいい抵抗になって頬をなぶってくる。
 とても気持ちがいい。
 土手道に入ると、どちらが言うともなくじゃれ合うように並走した。少し道幅が出てくると、子どもみたいに抜きつ抜かれつになる。
「桜子になんか負けないからな!」
「なによ、派手な歯ぎしりして!」
「これは自転車の音だって!」
「自転車かわいそう!」
「あ、犬のウンコ!」
「え、うそ!?」
 フェイントをかまして前に出る。
「きったねー、桃斗!」
「ハハハ……」
 土手道が下っていくころには、二人ともうっすらと汗をかいていた。
「あ、自販機めっけ!」
「あ、そこは……」
 オレの制止も聞かず、桜子は坂を下って自販機の前で自転車を停めた。

「こういう時は、やっぱ炭酸だよね」

 オレに一本渡しながら、桜子はグビグビとサイダーを飲む。なんだか、そのままCMに使えそうなくらい爽やかな可愛さになる。だが、二人の後ろは、ちょっと爽やかじゃなかった。
「ここってさ……」
「うん……?」
 桜子はペットボトルを咥えたままフリーズした。
「い、いくか」
 オレはペダルに乗せた足に力を加えた。でも、桜子は付いてこない。
「桜子……」
「……あたし、明日には街を離れるんだよね」
「あ……そうだったな」
 桜子は、明日お父さんの転勤に伴って街を離れる。ここのところ触れないようにしてきた運命だ。
「離れる前に、桃斗と確かめておきたい」
「桜子……」
「こういうところは男がリードしなくっちゃね」
「……いいのか」
 桜子はかすかに、でも、しっかりと頷いた。

 オレたちは幼馴染から、もう一歩前に踏み出そうとしていた……。
 

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