大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・12『戦車が走ってるよ!』

2019-03-27 06:55:01 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・12

『戦車が走ってるよ!』       
 

 

 今日も中河内中学校に向けてペダルを漕ぐ!
 

 要するに気にいっちゃったんだ。

 うちと中河内中学校の標高差は、目測だけど二十五メートルくらい。 やっと自転車に慣れたばかりの身にはきついんだけど、上っていくというのは気持ちがいい。 人生には、いろんな上り坂があって、坂道を上っていくほど簡単じゃないことぐらいは分かっている。 だからこそ、ニ十分ほど奮闘して目的地に着けるのは、なんだか人生の坂道を一つ制覇したみたいで気分がいい。  そして上りきった170号線から見える下界の姿もなかなかだ。

「こんにちは! お弁当ですよ!」
 

 元気に叫ぶと、畑中植木店の職人さんたちが白い歯を見せて喜んでくれる。 畑中のオバサンは「バイト代出すわよ」と言ってくれたけど、わたしは好きでやっていることだからと笑顔でお断りした。 それじゃあ……ということで、オバサンはわたしの分までお弁当を作ってくれている。

「オバサンのお弁当って、ほんとうに美味しいですね!」  

 職人さんたちと並んでお弁当。

「昔は、外環沿いで食堂出してはったからなあ、そこらへんのファミレスなんかより、よっぽど美味いで」

 石田さんというチーフの職人さんが目を細めて言う。

「どのおかずが、一番好きですか?」  

「「「「玉子焼き!」」」」
 

 職人さんたちの声が揃って、みんなで笑った。わたしも玉子焼きが一番好きだ。

 「関西の味付けには馴染めなかったんだけど、オバチャンの弁当食ってからファンになったよ」

 東京から来たという葛西さん、若いので一番早く食べ終わる。

「ハーー、食った食った!」

 立ち上がって、葛西さんは大きく伸びをして、なぜだか屁っ放り腰になる。

 「えと……食後の運動に行ってきまーす」

 葛西さんは、わたしと視線が合うと屁っ放り腰を止めて、グラウンドの方へ走っていった。なぜか、他の職人さんたちが笑う。

 「あいつね、食後屁ぇこく癖があるねん」

「屁!?」

「美智子ちゃん居てるから、ちょっとお上品ぶっとる」

「え、あ、は、そうなんだ(#.ω.#)」

  しばらくすると、葛西さんが興奮して帰って来た。

 

「戦車が走っとる!」

 

「「「「戦車?」」」」

 

  職人さんたちが一斉に、見晴らしのいいグラウンドの西側に走っていく。わたしも付いて走る。

「外環のほうやなあ」

「あれ、ガルパンで見た、たぶんアメリカの戦車だ!」

「ほんまもんやろか!?」

「なんか、映画の撮影かなんかかな?」

 「傍で見てみたいなあ!」

「あ、ホムセンの陰になってしもた」

 職人さんたちは、少しでもよく見えるように、グラウンドの北の方に移動する。

「あ、えと……」

 「美智子ちゃん、見たかったら肩車したげるで」

 肩車されてはかなわないんで、正直に言う。

 「あれ、うちの家のだから、よかったら後で見に来てください」

「「「「え、ほんま!?」」」」
 

 戦車が見られるというので、職人さんたちの午後の仕事ははかどった。
 

 植木職人さんたちの仕事が珍しいので、わたしも、傍で見学してしまう。

 ふと、背後に視線を感じた。

「え…………」

 振り返ると、体育館の角っこに隠れるようにして男の子が立っている。
 

 その子は、どう見ても、今の時代のものではない服装と髪形をしていたのでした……。  

 

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・12(促成魔女初級講座・実戦編・2)

2019-03-27 06:41:25 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・12 (促成魔女初級講座・実戦編・2)
 

 

 まき散らした紙屑は、真由の周りに一杯になって旋回し、広がったかと思うと、数百人の真由になった。
 

「あたしがいっぱい!」

 びっくりしたのは、国際通りのお土産ビルの最上階のフロアーだった。ちょっとしたレストラン街になっているフロアーで、様々な食材の匂いが立ち込めていた。現実の国際通りと、そこにあるお土産ビルと少しも変わらないんだけど、ビルの中には真由と清明しかいなかった。 表通りでは、無数の色の薄い者たちと、真由そっくりな式神たちが、睨み合っている。
 

「やつらは、本体の真由を探しているんだ。見つかる前にバトルを始めなさい」

「あ、はい」

 真由は、無意識に戦闘を開始した。

 瞬間コントローラーの〇ボタンが頭に浮かんだ。

「安心して戦いなさい。Z指定の様式にはなっていないから、相手をやっつけても血が流れたり、手足が吹き飛んだりはしないから」

 少し安心した。ゲームでも『バイオハザード』みたいなものは苦手だ『ファイナルファンタジー』のような、血しぶきが出ない、やりこみ系のRPGが得意だ。
 

 式神たちは、数は少ないがHPの値が高く、敵の攻撃を受けても容易には倒されなかった。また式神同士の連携がよく、一人の式神が敵に取り囲まれると、どこからか仲間の式神が集まり、敵を倒していく。 中には、仲間の支援が間に合わずに苦戦する式神もいた。つい助けてやりたくなる。

「助けちゃ、この場所が分かってしまう。じっと辛抱して見ているんだ」
 

 敵の式神は、真由の式神のツーアタックぐらいで消えてしまうが、真由の式神はガードが高かった。一撃をくらうと、着ている服が一枚ずつ無くなっていく。どうやら、服が防壁になっているようである。 中には、仲間との連携が悪く、裸同然になっている式神もいる。

「あの裸になっていくの何とかならないんですか?」

「あれは、君の頭の中で作った最高のガード方法だからね。ボクには手の出しようがない」

 と言いながら、清明はニヤニヤしているようにも見えた。
 十分ほどのバトルで、敵のザコの式神はほとんどいなくなった。
 

「これ、チュートリアルですか。なんだかあっけなく済んでしまいそうなんですけど?」

「いや、実戦だよ。そろそろボスが……」  清明が呟くと、あっさり消えてしまった!
 

 なんと、数少なくなった敵の真ん中で、光り輝いている小学生低学年程の少女がこちらの窓を見上げている。
 

「あれがボスだ。外に出るよ!」

 テレポして路上に出ると、今までいたお土産ビルが、一瞬でカオスに飲み込まれたようにグニャッとなって消えてしまった。

「あなたね、私たちの新しい敵は?」

 小学生の姿ではあるが、言葉には凄味があった。
 

 不意に魔法攻撃が頭に浮かんだ。

 観察を頭に思い浮かべると、敵のHPとMPが分かった。なんと真由の倍はある。  

 いきなり火属性の魔法攻撃をくらった。防御が間に合わず、真由は下着姿になってしまった。

 「フフ、ザコと同じように服で防御しているだけのようね。じゃ、素っ裸にしたうえでトドメをさしてあげるわ」

 真由は反射的に魔法防御をかけた。だが、敵は、まさかの風属性の魔法をかけてきて、下着の上が吹き飛ばされてしまった。

「ハハ、あんたってバスト貧弱なんだね」

 小学生の姿で言われるので、恥ずかしいより腹が立つ。

 再生魔法をかけると、服は元通りになった。

「バカね、見場に気を取られて。今の再生魔法で、あなたのMPゼロになってしまったわよ。下手な羞恥心が命とりになるの覚えておきなさい!」

 敵は、連続攻撃を加えてきた。真由は反射的にガードしていったが、そのたびに着ているものがなくなり、あっという間に、元のパンツ一丁になってしまった。
 

「トドメ!!」
 

 閃光が走り、真由は自分の浅はかさを思い知らされた……その瞬間、敵が倒れた。

「仲間がいたのね。ぜんぜん気配を感じなかったけど、あんたの周囲に二つエネルギーを感じる……」

 そう呟きながら、敵の姿は滲むようにして消えてしまった。
 

 静かになった国際通りには、清明とシーサー姿のハチが居るだけだった……。

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高校ライトノベル・時かける少女・50『女子高生怪盗ミナコ・16』

2019-03-27 06:22:34 | 時かける少女

時かける少女・50  『女子高生怪盗ミナコ・16』          

  モニターに現れたのは、ブロンドの長い髪の美しい女性だった……。
 

「わたしはミスカンダルのアイドルーシャ……蟹江艦長、大和のみなさん。歓迎……したいところですが、どうぞこのまま、お引き取りください」

「アイドルーシャ、そうもいかん。これ以上地球の周辺をゴミラスの自由にさせておくことは、地球のドロボーのハシクレとして、見過ごしておくことはできんのだよ。とりあえず月は取り返す」
「月が……」

「取られてんの?」  

 ミナミとミナコが呟いた。
 

「月が、地球のものだというのは、地球人の思いこみです。古くから、ゴミラスやミスカンダルは、月を、宇宙旅行の中継基地として使ってきました。つまり、流行りの言葉で、実行支配をしているのです。今、にわかに地球が領有権を主張なさっても困惑するばかりです」

 「われわれ地球人は、その想いで月を支配してきた。ウサギを住まわせたり、蟹をすまわせたり。ロマンの中では、数万年前、いや、まだ言葉すら定かに持たないネアンデルタール人の昔から、人類は月を認識し、地球の存在に欠くべからざるものだったった。返していただこう」

「わたしたちは、月の裏側にささやかな中継基地を持っているだけなのです。なにも月そのものを持ち去ろうというのではないのです。地球人が、月をロマンや尊崇の対象としてあがめ、憧れることを妨げるものではありません。地球人の領有を認めれば、月は百年も待たずに乱開発され、宇宙の秩序破壊の元になります」

「ミナミ、ミナコ、両舷の対空監視を厳となせ。今が危ない……」

「艦長、地球の裏側、右舷165度にゴミラス艦隊!」

「シールドを、右舷後方に張れ! 面舵いぱーい!」  

 大和の巨体が、意外な早さで旋回。同時に大きな衝撃が来た。

 

 ズッガーーーーーン!!

「シールド損傷、第三主砲被弾。損傷なし!」

 副長の被害報告に、蟹江艦長は冷静に答えた。

「両舷後進、シールド復旧急げ。主砲、対空砲応射急げ。砲雷長、マトホーク即時サルボー」

 ガクンと体が前のめりになった。急速な両舷後進にショック……と思う間もなく、艦首前方を、ショックカノンやパルスレーザーが数十本の光の束になってかすめていった。
 

「危のうございましたね」

 左舷のミナミは長閑にため息。ミナミは右舷の高角砲に見せかけたパルスレーザー砲や、パルス機関砲で、敵の弾を相殺射撃。ミナコそっくりの砲雷長は、マトホークの初弾十二発を発射。次弾をリリースした。

「進路そのまま、最大戦速。射撃続け!」  

 大和は、敵艦隊を右に見ながら、応射を続けていく。
 ミナコは、いつのまにか射撃管制機をマニュアルに切り替え、必死の形相で、ロックオンと射撃をくり返していった。頭の中を、ある若い男性の姿がかすめていく。 ――だれ、だれなの、あんたは!?――  そう想いが噴き出してくると、一瞬で山野中尉の名前と姿に結晶した。

――わたしは、時任湊子……――

 そこに思い至ると、ミナコの視界は真っ白になっていった……。

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