大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・173『原宿旧駅舎前・1』

2020-09-03 13:48:22 | 小説

魔法少女マヂカ・173

『原宿旧駅舎前・1』語り手:マヂカ    

 

 

 というわけで、大塚から山手線に乗って原宿駅に向かった。

 

 代々木を過ぎると右手に見えるのは明治神宮の森。

 九月とは言え日中はまだまだ夏の暑さ。車内は冷房が効いているけど、大塚から乗った体の芯は火照っているので、神宮の森の視覚的冷涼感は格別だ。

「あれ、駅が変わってる!?」

「おまえは話聞いてねえだろ」

 ブリンダに叱られて、ノンコはクエスチョンマークを人格化したような顔になる。

「この春から新駅になって、古いのは取り壊しが始まるから観に行こうってことになったんだろーが」

「あ、そうだっけ。キャハハ、ノンコ宿題やるので頭まわんなかったから(;^_^A」

「よく言うよ、急きょ原宿に行くってなって、みんなで手伝った」

「ほんの三十分前なのに忘れるう!?」

 友里も晴美も容赦ない。

「ほら、あっちが旧駅舎だよ」

 サムが指差したのは新駅の三十メートルほど代々木側で、工事用のパネルで囲われてしまって、先っぽの塔しか見えない。

「ちょっと残念」

「あんな塔があったけ?」

「原宿駅って山小屋風だと思ってた」

 パネルは駅舎の屋根まで隠して、銅葺き屋根の尖塔だけが覗いている。山小屋風のイメージが強いせいか、建物の大きさの割に小さいせいか、ふだん意識する者は少ないのかもしれない。

「ロッジの上に尖塔……ちょっと合わないような気がするぞ」

「そうかしら、ちょっと異世界の入り口めいていて素敵よ」

 アメリカ人と異世界人は意見が合わない。

「原宿空中戦(48話)以来だな」

 水を向けるとブリンダは小鼻にしわを寄せてくすぐったそうな顔になる。

 あれは安倍ちゃんが隊長になったころで、まだ北斗の運用が今ほどではなく、大塚台公園のライオンのオブジェに跨って戦っていた。東郷神社の池から現れたイズムルードを追いかけて、あれがバルチック魔法少女隊相手の戦いの端緒であった。

「昨日の事のようだな」

 言葉にせずとも同じ思いだったのか、ブリンダが応じる。思えば、まだ決着の付いていない戦いではある。

「尖塔だけ見えてもじゃつまんないよ」

 原宿空中戦に参加していないノンコたちは工事用の囲いを眺めても面白いはずもない。

「三人いれば、なんとかなるかなあ」

「何を考えている、マヂカ?」

「映像だけなら、時間を巻き戻して見れるだろうと思って」

「ああ、やってみるか」

「サムも手伝って」

「うん、いいわよ」

 魔法少女三人で手を繋いで、それぞれの間に半魔法少女の友里・清美・ノンコの三人を入れる。

「え、なにすんの?」

「早くして、ちょっと恥ずかしいから」

「じゃ、行くよ。ゆっくりと反時計回りに回って」

「六回周ったら、つないだまま手を空に上げて」

 

 掛け声をかけると、道行く人たちが怪訝な顔をする。まるで鬼が抜きの『かごめかごめ』だ。「なに、UFO呼んでるとか?」「新興宗教?」「ストリートパフォーマンス?」「見ない方がいい」道行く人たちに薄気味わるがれる。

 六回周って「えい!」の掛け声とともに繋いだ六組の手が挙げられる。

 周囲の人たちにはCGのように六人の女子高生が、少し浮遊したかと思うと虚空に掻き消えたように見えた。

 

 

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ぜっさん・18『おいしくな~れ、おいしくな~れ、ラブ注入~!!』

2020-09-03 06:35:44 | 小説3

・18 
『おいしくな~れ、おいしくな~れ、ラブ注入~!!』  


 

 

 おいしくな~れ、おいしくな~れ、ラブ注入~!!

 5回目だけど、まだ慣れない。
 何度やっても、顔が(#^0^#)こうなってしまう。
「そこがいいんだよ! そこが!」
 お客さま……もとい、ご主人様たちは言って下さる。
「あ、ありがとうございます、お客……ご、ご主人様」
 
 下見に来た時は、軽いもんだとタカをくくったんだけど、実際にメイド服を着てご主人様の相手をすると勝手が違う。

「見ときや、あたしが見本見せたるさかいな!」
 ご主人様の反応を新人であるための甘さだと思った瑠美奈が挑戦しにいく。
「お帰りなさいませ! ご主人様~!」
 三番テーブルに着いたご主人様のところに急ぐ。
「なんだか、遅刻して教室に入って来たときみたい」
 毒島さんがクスクスと目立たないように笑っている。笑っている姿も表情も、とても自然で貫禄のあるプリティーさだ。改めて、学校での彼女との落差に驚く。
「どーよ、板に着いたもんでしょーが!」
 三番テーブルから戻って来た瑠美奈が鼻を膨らませる。

「あの~ メイドさ~ん」

 三番テーブルから声がかかる。
「え、あ、ハイ!?」
 瑠美奈が頭のてっぺんから声を出す。店内のメイドもご主人様たちも、厨房からさえ笑い声が起こる。
「オーダー……まだやねんけど」
「あ、すみません!!」
 
 ドタ! ギョエッ!!

 足をもつれさせ、瑠美奈はカエルのように通路に倒れる、店内は笑いの渦になる。
 それまでニコリともしなかった見習いさんも、パーテーションの後ろで笑いをこらえている。

 そう、今日は、わたしと瑠美奈の新人の他に、小柄なメガネの見習いメイドが入っている。あたしたちの緊張の半分は、この見習いメガネさんのせいなのだ。見習いさんの前でブサイクなことはできないって、気負いがあるのよね。

 早くペースを掴んでおかないと、夕方にやってくる要ちゃんに合わせる顔が無い。

 でも、こういうことって意識すると余計に失敗する。
「もう大丈夫だからね」
 休憩を終えて出てきた瑠美奈は、一見落ち着いているように見えた。
「休憩したら、なんだか胸が楽になった……あ、お帰りなさいませ、ご主人様~!」
 元気に4番テーブルに向かう瑠美奈。

 ちょ、瑠美奈……!

 楽になったはず、休憩中に下ろしたんだろう、背中のファスナーが半開になっている! 気づいたご主人様やスタッフが笑っちゃう。

 ウゲェェェェ!

 店内の鏡で気づいた瑠美奈は、またしてもカエルになった。

「要ちゃん、こなかったわね……」
 あがる時間になっても要ちゃんは来なかった。
「この店、分かりにくいところにあるからね」
「それにしても、メールくらいしてくれたら……」
 スマホを確認しても、着信履歴はなかった。

「今日は、ありがとうございました」

 休憩室に入ろうとしたら、後ろから見習いさんの声がした。
「あ、どうも、お疲れ様」
「あ、あの……」
「はい?」

「お疲れさまです……」

 そう言って、見習いさんはメガネをとった。見習いさんは髪の毛をむしった……いや、ウィッグをとった。

 それは、メイド服を着た要ちゃんだった!
 
 

主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生
 藤吉大樹    クラスの男子 大樹ではなく藤吉(とうきち)と呼ばれる
 妻鹿先生    絶子たちの担任
 毒島恵子    日本橋高校二年生でメイド喫茶ホワイトピナフォーの神メイド

 

 

 

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ポナの季節・23『ミス世田谷女学院コンテスト②』

2020-09-03 06:22:03 | 小説6

・23
『ミス世田谷女学院コンテスト②』   
    


 ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名


 

「由紀、この寺沢新子って子の写真間違ってないか?」

「え、本人から目の前で転送してもたったから、間違いないよ」
「そうか」
「なにか?」
「いや、なんでもない。それより風呂入ってこいよ。お父さんの後だとやだろう」
「ああ、入る入る、今すぐ入る!」

 由紀は、親父の後の風呂には入らないが、いつものことで、わざわざ言われることじゃない。

 湯船に浸かりながら考えた。

――お父さんは嘘のつけない人間だ。小学校で盲腸になったとき、お母さんは「ほんの健康診断」だからと嘘を言った。でもお父さんの心配顔で、盲腸の手術を受けることが分かってしまった。お父さんは大学の人類学者で半分お医者さんや法医学の先生のようなところがある。だからあたしが盲腸の手術を受ける時も、手術の様子や、痛みに弱いあたしのことを分かってしまって顔に出てしまったんだ。さっきポナのポスターを見て「おや?」というような顔をした。何かに気づいたんだ――

 いつもなら三十分は入っている風呂を十分であがった。

「お父さん、ポナのポスター……なんかあるの?」

「いや、さすがは由紀が目を付けた子だけあって、可愛い子だなって思ったんだ」
「うそ、そんな顔じゃなかったわよ。盲腸のときみたいに一瞬真顔だった、なにか気になったんでしょ?」
「……風呂あがてっから教えてやるよ」

 父は、やっぱり嘘が付けない。風呂に入りながら、気づいたことを由紀にどう伝えようかと考えた。

 いつもなら十分足らずであがってくる父がニ十分かかってあがってきたところで声をかけた。

「で、どうなの?」

 由紀はビールのハーフアンドハーフを作りながら待ち構えていた。父はアルコールが入ると口が軽くなる。さりげなく出されたので、風呂上がりの勢いで一気飲みしてしまった。
「プハー!……あの寺沢新子という子は、お母さんやお姉さんとは血縁関係にない」
「……ほんと?」
「専門的な計測をしないでも、あれだけ同じアングルで撮っていれば分かる。お姉さん二人はお母さんの子だが、あの子は違う」
「う、嘘でしょ。たった一枚の写真で……」
「分かってしまうのがお父さんの仕事だ」
「ちょ、ちょっと見てよ。ここに家族の集合写真の写メがあるから、お父さんやお兄さんのも見てよ!」
 由紀は、スマホとパソコンをリンクさせ、集合写真を大映しにした。
「……この子を除く全員血縁関係。この子だけが違う」
「そ、そんな……」

「この子は、おそらく、そのことを知らない。知っていれば、こんな写真を提供するはずがない。この子とどう接するかは由紀の問題だけど、慎重にな……」

 とんでもないことを聞いてしまった由紀だった……。



※ ポナの家族構成と主な知り合い


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長


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かの世界この世界:60『Cアラーム』

2020-09-03 06:08:06 | 小説5

かの世界この世界:60     

『Cアラーム』     

 

 

 前にも言ったが、ムヘンは菱餅の形をしている。横に長い(菱形)と言ってもいい。

 

 菱形の、ほぼ真ん中を東西に流れているのがムヘン川。

 ムヘン川の真ん中と西の端に玉がぶら下がっている。

 真ん中の大きいのが城塞都市ムヘンブルグ。西の小さいのが今朝まで居たブァイゼンハオス(孤児院)があるシュタインドルフ。

 そのシュタインドルフとムヘンブルグを結ぶ川沿いの道を東に向かっている。ノルデン鉄橋を渡って北辺の港ノルデンハーフェンを目指しているからだ。

 何事もなく進んで行けば、ノルデン鉄橋までは三日の行程だ。

 二号戦車の倍ほどの広さのある四号戦車の車内だが定員五人のところを子どものロキを入れて六人が乗っている。

 大きいと言っても戦車だ。長距離バスのように休憩用のベッドも無ければ、シートがリクライニングになっているわけでもない。

「……お尻が痛い」

 主砲尾栓の下で声がする。

 ロキが情けない顔をして中腰になっている。

「振動で、お尻の方から骨がバラバラになりそうだよ」

「辛抱しろ、ノルデン鉄橋までは油断できないからな」

 来るときにシリンダー融合体に襲われた。なんとか切り抜けたが、いつ襲われるかしれないので、うかつに車外には出られないのだ。それに、襲ってくるのはシリンダーとその融合体とは限らない。ムヘンには確認されているだけでも九十九種類のクリーチャーが確認されている。

「ん……?」

 ロキの尻の方で動くものがある。ロキも気づいて後ろを見ると、シリンダーの幼体であるポチがスリスリしている。

「ポチ……そうか、お尻が痛いから撫でてくれているんだな」

 ロキがしみじみ言うと、ポチがこころなしポッと赤くなったような気がした。

「ごめんよポチ、気を使わせちまったな。いいよ、おかげでマシになった」

 ロキがやせ我慢を言うと、ポチはロキの頬に回ってスリスリする。

 尻のマッサージよりも効き目があるようで、ロキはくすぐったそうに目を細めている。

 

 ピピピピ ピピピピ ピピピピ

 

 突然アラームが鳴った。

「できた!」

 通信手席のブリュンヒルデが声をあげる。アラームはブリュンヒルデの手元からしている。

「なにをしてるんだ?」

 車内のみんなの視線がブリュンヒルデに集まって、バレンタインチョコを上手く作れた女子中学生のような笑顔で振り返る。その手には、スマホみたいなのが掲げられている。

「クリーチャーアラームを作ったんだ! 略してCアラームだ!」

 なるほど、ピピピのアラームはブリュンヒルデの手元のそれから発している。

「てことは、間近にクリーチャーが!?」

 ケイトが足を上げてアタフタする。

「ポチに反応したんでしょ」

「ポチは除外にしておいてください」

 車長と操縦手のシートから声がする。ブリュンヒルデが数回画面を操作するとアラームは消えた。

「ポチは、別の登録にしておいた」

「え、どんなの?」 

 乗り出したロキの鼻先のポチにCアラームが突き付けられる。

 

 ポチポチ ポチポチ ポチポチ

 

 これは分かりやすい、操縦桿を握ったタングリスまでが笑っている。

 タングリスは、笑うと意外に可愛い……思ったが言わない。

「じゃ、Cアラームが鳴らないのを確認して休憩にしよう」

 

 ブリュンヒルデがOKサインを出して、四号は停車した。

 ガチャリ

 一斉に五か所のハッチを開ける。

 うーーーーーん

 思わずのびをして、深呼吸したくなるような新緑の空気と日差しに生き返る五人であった。

 

 

☆ ステータス

 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 グニ(タングニョースト)と共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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