大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・169『耳をすませば・2』

2020-09-16 13:43:47 | ノベル

・169

『耳をすませば・2』    

 

 

 アニメの『耳をすませば』はこういう話。

 

 中三の月島雫は大の読書好き。

 ある日、図書室で借りた本の帯出カードに自分より先に本を借りている天沢聖司の名前を発見する。

 同時に借りた他の本を見ると、どの帯出カードにも雫より先に借りている天沢聖司の名前がある。そこから聖司への関心が生まれる。

 その後、雫のドジが原因で聖司本人と知り合うことになるが、印象はさんざん。

 やなやつ! やなやつ! やなやつ!

 家に帰って机の前に座っても悪態が止まない雫。しかし、いろんな事件があって、二人は急速に接近していって恋に落ちるという青春ラブストーリー。

 

 実は、うちのおっちゃんとおばちゃんも、似たような経過をたどって結ばれたというお話。

 

 当時大学四年やったおっちゃんは大学の図書室で卒論を書いてた。

 そんなある日、三回に一回同じテーブルの対角線の席で本を読んでる小柄な下級生に気づく。

 チラ見すると、保母さん志望なんか、絵本や児童書、保育関係の本を熱心に読んでることが分かった。

 下級生は、読み切れない本を閉館間近に借りに行く。おっちゃんはチャンスやと思た。

 おっちゃんも、適当な本をカウンターに持って行って、彼女の後ろにくっ付いて帯出のために出した学生証で名前を確認――そうか、月島美保というんか――

 こういうことを繰り返して、おっちゃんは一計を案じた。

 彼女が読んでる叢書は文学の棚の中段にあるのやけど、それをこっそり最上段に移した。

「あ、届かない……」

 彼女が困っていることを隣の書架の隙間から見てたおっちゃんは、自然な感じで文学の棚に回って彼女に声をかける。

「どうかしました?」

「あ……その……」

「あ、高くて取れへんねや……蔵書点検で配置が換わったんやね。ちょっと待ってや」

 おっちゃんは、そばの壁に脚立があるのを確認してて、その脚立を取りに行こう……としたら、その脚立が無い。

「あ、いいです。司書さんに頼みますから」

「いやいや、これくらいのもんは……」

 おっちゃんは、書架の一番下に足を掛けて(ちゃんと靴は脱いだ)、うんと背伸びをした。

「う~~~ん」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫……ほら、届いた!」

「やったあ!」

「あ……うわ!」

 安心して着地しようとしたおっちゃんは、バランスを崩して倒れる!

「うわーー!」「きゃーー!」

 ドッシン!

 二人仲良く通路に倒れる、彼女が下でおっちゃんが上というラブコメ的展開。

 これで接近に成功したおっちゃんは『キネマ旬報』でジブリの新作アニメがロードショウになることを知って彼女を誘った。

 主人公が彼女と同じ月島という苗字なのはスクリーンを見るまで気が付かへんかったらしい……ほんまかな?

 とにかく、シュチュエーションとしては完璧!

 そして、彼女が卒業するのを待ってプロポーズしてゴールインしたそうな。

 

「でも、それだとアニメ観ないでも結婚したんじゃないですか?」

 

 銀ちゃんが身もふたもないことを言う。

「それがね、アニメ観るまではプロポーズされたら断るつもりでいたの」

「そうなんですか、だったらどうして?」

 留美ちゃんが膝を乗り出す。

「だって、諦念先輩の家ってお寺さんでしょ……」

 ああ、分かる、陰気臭いし大変そうやし。

「でも、映画観たら、なんか運命みたいに感じて、影響されやすいのよね……あ、付き合わせちゃったわね。そうだ、晩御飯食べてってよ(^▽^)/」

 留美ちゃん、銀ちゃんもいっしょの晩御飯になりました。

 部室が我が家というのんは、ほんまにええことです。

 

 

 

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ポナの季節・36『ヘブンリーアーティスト!?』

2020-09-16 05:56:47 | 小説6

・36
『ヘブンリーアーティスト!?』
     
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名


「ヘブンリーアーティストになってくれない!?」

 いきなり幽霊の安祐美が身を乗り出して言った。
「え、ヘブンリーアーティスト!?」

 英語が苦手なあたしでも意味が分かる。

 ヘブンとは天国の事だ。だからヘブンリーというのは『屁を分離する』という意味でなければ『天国の』という意味で、そこにアーティストが付くと『天国のアーティスト』という意味でになり『さっさと死んであの世で芸術家になろう!』ということだ(;゚Д゚)!

 やっぱり幽霊を友だちになんかするもんじゃない~~(;'∀')

「あれ……なんで青い顔してんの?」

「え、あ、いや、だって……」
「えと、お台場とか日比谷公園とかで、大道芸とか歌うたってる人たちがいるでしょう?」
 ポナは、ももクロが、そんなことを言っていたような気がした。
「あれをヘブンリーアーティストってゆって、都の生活文化局のライセンスが必要なの。六月三十日〆切、当日消印有効!」
 さらに安祐美は身を乗り出した。
「え? あ、そか……でも、急に、そんなこと言われても……」
「とにかく人前で歌うことから始めたいの。ウンと言ってよ。こうして姿が見えて話ができる相手なんてめったにいないんだから……」
 安祐美は、もう鼻息が感じられるほどの近さになった。

 幽霊の鼻息でも暖かいよ……ちょっと感動。

 そして、安祐美の目から一筋の涙が流れる……もっと感動。

「……と言うわけなのよ」
「で、引き受けちゃったの?」
「引き受けたわけじゃないんだけどね……見つめあってるうちに、ありがとうって安祐美ちゃんが言って消えちゃった」
「どういうことよ、それって?」
「なんてのか……圧倒されちゃって。安祐美ちゃんは、世田女に入って歌をやりたかったのがヒシヒシと伝わってきちゃって、応援したい気持ちになったの」
「あーあ……」

 由紀と奈菜が、そろってため息をついた。

――あとは、あたしがお話しするわ――

「え、だれ……?」
 由紀と奈菜が講堂の裏手一帯を見渡した。これが暗闇ならば悲鳴の一つもあげただろうが、真昼間の梅雨の晴れ間。だれかが声をかけたと思ったのも無理はない。
「安祐美ちゃん……」
 
 ポナには見える。

 二人は及び腰で、ポナの視線の先を探るが、なにも見えない。

――音楽的なスキルは、あなたたちが寝ている間に少しずつ頭と体にインストールする。オーディションまでには人並み以上にできるようにしてあげるわ。時間がたって、この奇跡が信じられるようになったら、あたしのことも見えるようになる。そして、次には、あたしも生きてる人間みたいに動くことができるようになる。がんばろうね、由紀ちゃん、奈菜ちゃん!――

 あまりに明るい声に、由紀と奈菜は呆然だったが、ポナには花壇の前ではしゃいでいる安祐美が健気にもおかしく見えた。そして消える刹那、足許のポチが「ワン!」とご挨拶したが、由紀と奈菜がキョトンとするだけで、もう安祐美の姿は見えなくなっていた……。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

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かの世界この世界:73『プリンツェシン・ローゼンの御業』

2020-09-16 05:45:53 | 小説5

かの世界この世界:73     

 『プリンツェシン・ローゼンの御業』    

 

 

 フラワーポッドは祭りの参加者が見えるように、式台の上に円形に立てかけられている。

 

 プリンツェシン・ローゼンのブリュンヒルデは悠然と剪定鋏を構えてポッドの周りを周り始めた。

 わたしたちには見えないが、ブリュンヒルデには司祭が示したバラが黒く見えているのだ。

 チョキン

 一つ剪定するごとに音楽隊の小さなシンバルが鳴らされ、広場の端の見物人にも見えるようになっている。

 選定されたバラは、そういう仕掛けなのか悪しきもの性なのか、旋回しながら二メートルほど空中に舞い上がり、旋回の遠心力によってハラハラと花弁に分離する。分離した花弁は一瞬輝いて消滅し、消滅と同時にトライアングルがチリリンと可愛く鳴らされる。

 シリンダーとかのクリーチャーを見慣れているので、花が命あるもののごとく飛翔しようが飛散しようが驚くもんじゃないのだが、儀式の雰囲気もあって、とてもファンタジーなときめきを覚える。

「なかなか、いい祭りだな」

 タングリスが、いつもの軍服姿なら相応しいぶっきらぼうさで呟く。しかし、いまのタングリスは花の妖精と見紛うばかりのピンクのドレスだ。髪も相応しくドレスアップし、同性のわたしが見てもドッキリするほどに美しい。そのギャップが面白く、クスリと笑ってしまう。

「テルだってきれいだよ」

 横で、ケイトがニヤニヤ。そのケイトもラノベのヒロインが務まりそうなくらいにイカシテいる。

「おまえだって」

 ロキに言われてアタフタ。

 肩にとまったポチが面白そうに丸まっちい体を揺すっている。

 

 オーーーーーーーー!

 

 見物人のどよめきが上がる。

 なんと、剪定するたびに、残りのバラがムクムクと大きくなるのだ。それも、ポッドのバラだけでなく広場から見渡せるバラの全てが身を震わせながら肥えていく!

 そして、ブリュンヒルデが最後の一輪を選定した時には、ブルンと音がして町中の幾万幾百万のバラがキャベツほどの大きさになった!

「これがプリンツェシン・ローゼンの御業なのです!」

「「「「「「「「「「オーーーーーーーー!」」」」」」」」」」

 司祭が宣言し、広場中の人たちが感動の歓声を上げた。

「ありがとうございます、ブリュンヒルデ殿下! おつきの皆さん! こんなにうまくいった降誕祭は初めてです、このローゼシュタットにもみなさんにも神のご加護があることでしょう!」

「さあ、ローゼンシュタッテンの滞りない成就を祝して飲み明かそう!」

 ミュンツァー町長が宣言すると、広場を取り巻く家々、辻々から大小さまざまなワゴンが繰り出される。ワゴンの上には満たしたビールジョッキが並べられていて、人々がいっせいに飛びつき、町長の「乾杯!」の音頭で、さらに一斉の乾杯になった!

 われわれも、厳しさが予想される旅の前途を忘れ、しばしの酒宴に興じたのだった。

「あ、おまえらノンアルコールな」

 ケイトとロキが持ったジョッキをジンジャーエールに替えてやった。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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